この状況下でドライが戻って来てくれたというのは渡りに船だ。
しかもドライは前に私を助けてくれたおじさん…ケイブさんに連れて来て貰ったらしい。彼には何度も助けて貰っており、本当に頭が上がらない。
彼はかなりの腕のトレーナーなのだろう。そういえば彼は私のことを知っていた。…どの位まで知っているのだろうか。そのことが疑問として浮かぶ。
「…ドライ。ケイブさんは貴女がデルタ種ということを知ってるの?」
「はい。彼は私のタイプまで御存知です。…ですが恐らく私達が追われてる訳までは知らないようです」
「そう…」
流石に完全に知っている訳では無さそうだ。だがドライのタイプまで知っているということはそれなりにドライには慕われていたようだ。
「まぁいいわ。この大会は二体の萌えもんがいないと申請出来ないみたいでね。ドライ、貴女が来てくれて良かったわ」
「それは幸いです。…ツヴァイも出るということが少々不安ですが」
「む…」
ドライの言葉にツヴァイの頬が膨れる。ドライからしたら昔のツヴァイしか知らないからそれも仕方無いことだろう。
「ツヴァイも大丈夫だよ!戦えるもん!」
「分かった分かった。でも無理するなよ」
「むむー」
そんなツヴァイをドライがあやしている。昔と変わらない光景だ。
…そう。この光景を取り戻さなければならない。その決意を私は新たにする。
さて、大会の申し込みだ。今度は滞りなく出来る筈だ。
~
「お、嬢さん。終わったのかい?」
「はい」
受付を終えて先程の場所に戻るとケイブさんと一匹の紫帽子の萌えもんがいた。確か前に私を助けてくれたリリーラという萌えもんだったか。
…もう一匹の萌えもんはボールの中かそれとも何処かに行っているのか近くにはいない。
「大会ってのはもう始まるのか?」
「いえ…予選があるようです。その後、本選みたいです」
「………すぐじゃないのか。面倒臭いな」
「…もし忙しいのでしたら無理しなくても…私の我儘ですし」
私は大会中は応援でコガネにいるという彼に迷惑を掛けていると考え、謝罪する。…すると彼は手を伸ばし私の頭を軽く叩いてきた。
「気にすんな。嬢さん。ゆっくりさせてもらうわ…あっ、す…すまん!」
「い、いえ…大丈夫です…」
その動作に驚きながらお互い距離を置く。…いきなりこんなことをしてくるデリカシーの無さは健在のようだ。
「………」
「…え、えーと…偵察でもすっか」
ケイブさんはリリーラの視線を受けながら会場を見渡す。…彼女に穴が開きそうな程見られているようだが大丈夫なのだろうか?
「て、偵察?」
「ま、そんな大したもんじゃねぇよ。周りのトレーナーを見るだけだ」
確かに今周りにいるトレーナーはリトルカップの出場者が殆どだろう。だが見るだけで分かるのだろうか。その疑問をそのまま口にする。
「見れば分かるんですか?その…実力とか」
「…何人かある程度は。虫取り大会で見た顔も結構多い」
虫取り大会…確か少し前に自然公園で行われていたものか。彼も参加していたのか。
そんな風に考えているとケイブさんは周りを見渡し、一人のトレーナーの詳細を語る。
「例えばあそこのガーディ連れの赤ジャージ…。あれは今回の虫取り大会の優勝者だ」
そう言われ、ケイブさんが話すトレーナーを見る…。後ろからガーディに噛み付かれている男は見覚えのある姿だ。
「あ、彼なら知ってます。前にバトルもしました。…ギリギリですが勝てました」
「…マジか。嬢さんって意外と強い?」
「…意外とは余計です」
その発言に私はムスッとして彼に訂正を求める。意外とは失礼だと思う…
「ま、悪かったな。…後はあのツボツボ連れのリュックの少年。あれは…」
私と同じくらい若い少年も見覚えがある。…が、思い出せない。
「あの少年…ですか?あの子は準優勝とか?」
「いや、結果は最下位だが…実際は分からん。…まぁ一応覚えとけ。もしかしたらバトルの方も問題児かもしれん」
発言を聞く限りではよく分からない。あの少年には何かあるのだろうか?一応覚えておこう…
そんな風に話していると一人の女性が慌てた様子で私達の前を通り過ぎる。
…どうやら受付に行く人のようだ。
…その様子を見てケイブさんが笑った。…知り合いなのだろうか?
「ハハ…噂をすればって奴だな…」
「…あの慌てた女性は?」
「俺とあの少年、そしてあのねーちゃんで虫取り大会の最下位組だ。まぁ…」
…ケイブさんも最下位だったのか。その事実に驚きながら私は彼の言葉の続きを聞く。
「気にしなくていいだろ。彼女は俺や少年と違って正真正銘の最下位だからな」
彼は一瞥してそう言った。