萌えもん~multi travel~   作:マクドール

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ここはコガネシティ。賑わいの大型都市。


コガネルーキーカップ-4

 

「期待しておけ、主よ」

 

 

そう言った相手のカイロスがヤドを見据えてくる。

 

 

運良く火傷状態出来たようだがまだ彼女の闘志は尽きていないようだ。流石はライが自分と互角かそれ以上の力量と言っていたライバルだ。

 

 

「…ヤド、まだ油断しないで。何かあるわ」

 

 

 

私はヤドにそう伝える。…まぁ私のアドバイスを聞く前からヤドは油断してないと思うけど…

 

 

「分かってますぞ。…恐らく次の動きは先程より速いですからな」

 

 

「…ろすろす!頼むぞ!ハサミギロチン!」

 

 

「…いざ参る!」

 

 

対戦相手の少年…ドラ君の指示を受けたカイロスがヤドに向かって突っ込んでくる。

 

 

…やはり先程よりも速い!…ドラ君、貴方虫取り大会の時から思ってたけど萌えもんに何か盛ってるでしょ!大会としてそれってOKなのかしら…

 

 

『おおーっと!!ここでハサミギロチンの指示が出ましたー!!果たして命中するのでしょうかー!!個人的には当たって欲しいー!!』

 

 

『ジツキちゃん、実況で贔屓は止めましょう。まぁ狙う価値はありますがさて…』

 

 

「ヤド!」

 

 

「………大丈夫ですぞ」

 

 

ヤドは私の指示に短く応える。もうカイロスは目の前…火炎放射の射程内だ。ヤドが火炎放射を吐きながら後退していく。

 

 

しかしその火炎放射はカイロスの勢いを止めるまでには至らず、頭の角がヤドの体に触れ急所に刺さろうとしていた…その時

 

 

 

 

ゴロン…

 

 

ヤドが体を地に落とし、寝転んだ。そして顔を上げ、再度火炎放射を浴びせる。

 

 

火炎放射が体勢を崩したカイロスを包み…吹き飛んだ。

 

 

「っ…ろすろす!」

 

 

『ハサミギロチン外れたっー!!カイロスこれは厳しいかぁー!!』

 

 

相手に起き上がる気配はない。一方のヤドはゆっくりと起き上がりカイロスの方を見る…

 

 

やった。取り敢えず一匹…そう考えたその時

 

 

 

 

ヤドが膝を付いた。…そして起き上がらない。どうやら立ち上がるのも難しそうな様子だ。

 

 

『…やっぱり』

 

 

…え?

 

 

場の光景と実況の声で私の浮かれた気分が消えた。

 

 

…え、当たっていた?嘘…。倒れたカイロスを見てドラ君がカイロスをボールに戻す。そして次に投げたボールからはツボツボが現れた。

 

 

『カイロスダウンー!!お次はツボツボの登場だぁー!!』

 

 

そのツボツボがヤドに寄りながらいきなり語り出す。ヤドは地面に伏せたままだ。

 

 

「ろすろすのハサミギロチンは正確には一撃必殺じゃなくてねー」

 

 

………いや、種明かしとか聞いてる場合じゃない!まだ瀕死じゃないのだ。取り敢えずヤドを…

 

 

トン…

 

 

ツボツボがヤドを軽く叩く。そしてヤドが目を回して倒れた。あぁ、間に合わなかった…

 

 

「割りと高確率で瀕死直前に追い込んでー、あわよくば一撃必殺らしいんだー。急所を広く捉えるんだってさー」

 

 

『へぇ…ルーキーとは思えない技術の萌えもんですね。驚きました』

 

 

「…らしいですよ。セーレさん」

 

 

ドラ君が苦笑しながらそう言った。えぇ、何その反則技…。まぁ現実に起こってるから認めるしかないけど…

 

 

…結果としてほぼ相討ちの形かー。そう考えながらヤドを戻す。そしてライを繰り出した。

 

 

「…やっぱカイロスちゃんは強いねー。ヤドさんが倒してくれて助かったわー」

 

 

「ま、ウチにこのツボツボは任せてなマスター」

 

 

「ウチに秘策ありや」

 

 

ライは悪い顔で笑った。…大丈夫かしら?

 

 

 

 

 

 

「つー、いつもの感じで」

 

 

「了解ー」

 

 

『おっと、この戦法はっー!!毒守だー!!汚い!!流石ドラ選手!!汚い!!』

 

 

『まぁこのレベルの大会に持ち込むものじゃないですよね。よく練られています』

 

 

いつもの感じ…言わなくても私やライには分かる。

 

 

毒々だ。今まで何試合もこの戦法を使うドラ君を見てきた。毒々を当ててからの守る、そしてあの薬だ。

 

 

しかも詳しく分からないが今回の薬は飲むタイプではなく、舐めるタイプらしい。何度もこっそり舐めている姿が散見された。

 

 

これは私の推論だが…恐らく食べ残しに似た効果なのではないだろうか。まだ何かありそうだけどね…

 

 

ドラ君のツボツボは毒々をライに向けて出しながら待ちの戦法だ。ライも毒々を辛うじて避けているがこれでは埒が明かない。

 

 

そうしてるとライの方から私に提案があった。

 

 

「なぁマスター。毒々…」

 

 

 

 

 

「当たってもいい?」

 

 

…は?

 

 

「いや、駄目よ。頑張って避けて」

 

 

「いや、流石にキツそうだからさー。…ちょっと任せてよ」

 

 

ライがそう言いながら毒々をまた避ける。…確かにこのままじゃキツいのは明白だ。賭けに出るか

 

 

「…分かったわ。任せる」

 

 

「了…解!」

 

 

私の返事を聞くや否やライはツボツボに向かって素早く左右に動きながら近付く。

 

 

「つー、当たってもいい。まず毒々だ」

 

 

「分かってるよー、ドラちゃんー…えいー」

 

 

近付くライの体に狙いすまされた毒々が触れる。それにライは顔をしかめるがそのままツボツボに攻撃を加えた。…ツボツボはちょっとだけ後ずさる。ダメージはあまり入ってなさそうだ。

 

 

『毒々が当たったー!!これは厳しい展開!!』

 

 

『おっ…』

 

 

その後ライが戻ってくる。毒になってしまい、その代償があまりダメージの入ってない攻撃…任せたのはミスだったか。

 

 

だがライは笑っている。…何を笑っているのだ。私がそう言おうとした時…

 

 

 

 

 

ライが懐から何かを取り出し舐めた。

 

 

『あっー!!』

 

 

その様子に会場全体が驚く。正確には実況の真面目な方の人は反応無いけど…

 

 

そのなかでも一番驚き、体がぷるぷると震わせているのはツボツボだ。あれは明らかに…

 

 

「…うっま!やっぱこれ状態異常にも効くみたいですよ!マスター!」

 

 

ライが嬉々として話している。

 

 

「えーっとドラ君…その悪気は無いのよ…」

 

 

「いやー、味も良いですよ、マスター!」

 

 

ライは嬉々として話している。…いや、あんたはちょっと黙ってなさい!

 

 

「いや、良いんですけど…その…つーが」

 

 

「おいー…糞アマー…」

 

 

ツボツボが体を震わせながら呟く…あぁ、やっぱり…

 

 

 

 

 

「返せっーーー!!!」

 

 

………キレてるーーー!ウチの子がごめんなさいー!

 

 

『おおっとー!!これは挑発の技かー!?ツボツボが毒々を使わず殴り掛かっているー!!』

 

 

『いや、ストライク側が挑発は使った気配無いですね…まぁある意味挑発の効果出てますが』

 

 

ツボツボがライに向かって殴り掛かっている。それをライは飄々と避けていた。その様子を見ながら私はどう彼らに謝ろうか考えていた…

 

 

 

 

 

…え?

 

 

…その後?

 

 

…一応勝ったわよ。

 

 

結局ツボツボのパワーや足回りじゃライを倒せないし、ライはドラ君の作った薬舐めながらだったから…

 

 

只ね…

 

 

試合終了後の挨拶で私が必死に謝るとドラ君は笑いながら大丈夫ですよって言ってくれたけど…

 

 

ドラ君のツボツボの目線が凄く怖かったわ。私が指示した訳じゃないのに…

 

 

しかもライはへらへら笑って、またツボツボと取っ組み合いの喧嘩になるし…実況もその様子を煽るし…

 

 

結局私がライは殴って謝らせて、ドラ君がツボツボを抱き締めて慰めるまで場は大荒れだったわ…

 

 

はぁ…

 

 

…本当に疲れた。明日の決勝大丈夫かしら…

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