萌えもん~multi travel~   作:マクドール

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ここはコガネシティ。賑わいの大型都市。


そして彼らは…-4

「………」

 

 

とんだ邪魔が入ったものだ。

 

 

下へのエスカレーターを走りながら下る彼の背を追いながら私…リリーラは屋上に来た彼女達を思い出し、心の中で毒づく。

 

 

私が彼からのプレゼント…ミックスオレを飲んでしまうか取っておこうかを考えている中、彼女達は私達の所にやってきた。

 

 

彼女達の中に苦しそうなワニノコがいたのは分かったが正直私にはどうでも良かった。私には関係の無いことだ。…しかし彼は違った。彼女達を助ける気らしい。

 

 

彼のその雰囲気が読み取れた瞬間私は心の中で準備を整え、彼の側に立ち指示を待つ。彼の指示にすぐに応えたいからだ。

 

 

そう先程の出来事を振り返っていると走りながら彼がアノプスと私にこう言った。

 

 

「多分…相手はかなりの力量だ。アノプス、お前は無理して戦うなよ。俺の指示を聞いて…な?」

 

 

そう言って彼は少しだけアノプスの頭に手を置く。それはいつもの様に勝手で無茶なバトルをするなということだ。するとアノプスが何処か嬉しそうに彼に答える。

 

 

「…おう!落ち着いてな!」

 

 

「………頼むぞ、マジで」

 

 

アノプスの元気一杯の返答に対し、少し不安と呆れを含んだ彼の声が再度アノプスに念を押す。

 

 

………まぁアノプスは大丈夫だろう。その理由を彼には分からないだろうが私には分かる。

 

 

アノプスは彼の指示の元で戦えるのを心待ちにしているからだ。基本的に野生や道中のトレーナー相手では相手との力量差からか、私達は指示を貰わず戦うことが多い。………実際に私達はそれで勝ててしまう。それに彼は満足して指示を出さずに私達に任せてしまう。

 

 

…普段から私達は彼の指示の元で戦うことが少ないのだ。そんな中で彼から指示を出すからそれに従って戦えと言っているのだ。そんな誘いをアノプスは無下にする程馬鹿ではない。

 

 

まぁアノプスは普段の戦いから何処か無茶な動きやバトルをすることで負傷して彼の元に戻れば彼の指示の元で戦えるんじゃないかと考えているくらいには馬鹿な奴なんだが。

 

 

「…リリーラ。お前はいつも通りだ。アノプスや既に下で戦ってる奴等の援護だ。…細かい所は任せる」

 

 

「………」

 

 

………前言撤回。普段の働きからこうなることを考えていたならアノプスは馬鹿ではなさそうだ。意外と悪知恵が回るのかもしれない。…考え過ぎか。

 

 

そして私には指示無しか。

 

 

………狡い。

 

 

………まぁ、いい。私が頑張って下で戦ってる子達を助けて、敵を倒せば彼は褒めてくれるだろう。

 

 

エスカレーターが終わって一階に着いた私達は入り口へと駆け出す中、私は意識を戦闘へと傾けた。………誰だろうが容赦はしない。

 

 

 

 

 

 

入り口からすぐ近くで戦闘の気配がする路地裏に着く。…そして場を見ると

 

 

 

 

状況はやはり最悪だった。こちらは倒れたストライクとヤドン。そして意識を失っているのか動かないジュプトル…ドライに敵のトレーナーと萌えもんが迫ろうとしている。

 

 

「ん?何だあんた…」

 

 

「…アノプス!アイツらに岩雪崩!とりあえず牽制だ!動きを止めろ!…次はシザークロス!ドライから距離を取らせろ!」

 

 

「おう!」

 

 

いきなりこの場に割り込んだ彼は相手の問いを無視してアノプスに指示を出す。…アノプスが繰り出した岩が相手の萌えもん達やトレーナーの近くまで降り注ぐ。

 

 

その攻撃は一部の萌えもんに当たり、外れた攻撃も他の萌えもんやトレーナーの動きを怯ませる。…そんな中アノプスが切り込みドライに迫っていたトレーナーと萌えもんに対してシザークロスを放つ。その攻撃は萌えもんに直撃し、それに続けてアノプスは流れるようにトレーナーの前にもシザークロスを放つ。それはトレーナーに警戒心と恐怖を植え付ける一撃だ。

 

 

…ほらね。普通に戦えばアノプスはそれなりに強いのだ。

 

 

「………っ、てめぇ!」

 

 

「…落ち着け。邪魔をするなら敵だ。………」

 

 

「だね。…やるよ」

 

 

「………あれはデルタ種じゃないか」

 

 

シザークロスを目の前で見た黒服のトレーナー…と言っても皆黒服なのだが。激昂する彼を他のトレーナー達が止める。

 

 

四人のトレーナーだ。そして彼らの側に手持ちなのだろう。その萌えもん達が寄ってくる。

 

 

一匹は黒の上品な帽子に服装…先程シザークロスを食らった萌えもんか。

次は紫の魔女みたいな容姿。…薄ら笑いしながらこちらを見ている。

最後はシンプルな赤と青基調の服に頭に青のトサカ?が立っている。…あの子は無表情だ。

 

 

「………ドンカラスにムウマージ、ポリゴン…2だったかな。ありゃ」

 

 

彼がそう呟く。各地を見て回った彼には実際の体験や他者の話からある程度なら見ただけで萌えもんの判断が可能だ。

 

 

しかし何処かおかしい。彼等から仕掛ける気も、ここから逃げる気配も無い。ただこちらの方を警戒しているだけだ。

 

 

「………アノプス、まずは岩雪崩からの牽制メインで立ち回ろう。そして丁寧に一体ずつ…まずダメージのあるドンカラスから落とす。良いな?」

 

 

「…ん」

 

 

彼も相手への目線を向けつつ、アノプスに小声で次の指示を出す。………私は倒れている周りの萌えもんの救出と追加の岩雪崩の援護…かな。私のやることは纏まった。

 

 

でも…

 

 

でも私も指示が欲しい。指示じゃなくても『頑張れ』とか『頼む』とか…そんななことだけでも…そう思い私は彼の方を向く。

 

 

 

 

…待て。

 

 

おい。

 

 

 

 

何をする気だ?お前は?

 

 

私は鋭い石の刃…ストーンエッジを彼の後ろに放つ。その石の刃は彼の顔すれすれを通り、後ろの萌えもん…彼に噛み付こうとしていたよく洞窟で見る蝙蝠の様な服装の萌えもん…ゴルバットに直撃する。

 

 

「…ちっ」

 

 

その私の攻撃に彼や相手のトレーナー達がざわめく中一人だけ舌打ちしたトレーナーがいた。

 

 

………そうか。

 

 

今回はそういう相手か。

 

 

私は急所にストーンエッジを食らい、倒れるゴルバットに追加のストーンエッジを当てる。…アノプスや相手のトレーナーや萌えもんが更にざわめく。先程舌打ちしたトレーナーも流石に焦りの表情だ。…彼は何も言わない。

 

 

「…あー悪いな。俺は萌えもんバトルしてお前らを追い払うつもりだったんだが…」

 

 

彼が頭を掻きながら話す。その言葉はざわめく状況ながらもよく響く。

 

 

「そっちが萌えもんバトルをする気がないなら…」

 

 

「容赦はしない。リリーラ、もう一度だ」

 

 

やった。私への指示だ。

 

 

私はもう一度ストーンエッジをゴルバットに放つ。ゴルバットは瀕死という状態をとうに越していた。その状況を見て彼は相手に顔を向ける。

 

 

「…これ以上やるか?今ならこいつも返してやるし、見逃してやる。…さぁ、どうする?」

 

 

彼がそう言うと反抗しようとする奴もいるが、何人かは冷静なみたいだ。反抗しようとしている人を止めている。

 

 

「…ふざけんな!誰が…」

 

 

「…分かった。ここは退こう」

 

 

「…いいの?」

 

 

「仕方あるまい。あいつの力はまだ必要だ。それに…な。分かった、君達の萌えもんは解放しよう。持っていけ」

 

 

「…アノプス。持ってこい」

 

 

「………えっ、…あぁ!」

 

 

トレーナーの一人が倒れている萌えもん達…ストライク、ヤドン、ドライに目を向ける。それに応じ、彼はアノプスに三体を回収させる。そしてそれが終わると彼は私に目を向けた。

 

 

「………リリーラ、解放してやれ。アイツらは約束を守ったんだ。俺達もそれに応えよう」

 

 

私は倒れているゴルバットを相手側に蹴飛ばす。トレーナーの一人がゴルバットをボールに戻す。

 

 

「…随分とやってくれな。覚えておけよ」

 

 

そう言い彼等は萌えもんをボールに戻し、路地裏の奥へと消えた…。その様子を私達は見ていた。彼等が消えるのを確認した彼は倒れている萌えもん達に目を向ける。

 

 

「…よし、じゃあコイツらの回復………って!」

 

 

萌えもん達を見る彼の目の色が変わる。あ、この状態は…

 

 

「あの毒…コイツらもか!薬使いの坊主の所に急ぐぞ!アノプス、リリーラ!」

 

 

「う、うん!」

 

 

「………」

 

 

彼が三体を抱え、またコガネデパートへと走り出す。それに私とアノプスは続く。デパートに入り、上へと向かう途中、私は考える。

 

 

 

 

あぁ…

 

 

結局褒めて貰えなかったな。

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