『ヤドはヒワダのヤドンの井戸にご用があるので、ドラ殿の方にご一緒しますぞー。折角なのでヒワダ名物木炭で燻したお摘みでもお土産にしますぞ。お楽しみにー ヤド』
………え?
朝、萌えもんセンター内の宿泊施設内にてベットから起きた私はテーブルの上にある一枚の手紙に目を通す。
「な、何ですってー!!!」
萌えもんセンター内に私の叫び声が響き渡った。因みにその後職員さんに怒られた。すみません…
~
「おはよう、ねーちゃん。随分と騒いでたじゃねぇか」
慌てて旅の支度をして下の階に降りると予め決めていた待ち合わせ場所にいたケイブさんが声を掛けてくる。そんな彼の元に着いた私は息を整え彼に質問をする。質問の内容は当然…
「ドラ君は!?」
「ん?あいつなら朝早くに出たぞ。嬢ちゃんもだ。後はあんただけで今後のこと話したら俺も行くかーとか思ってた所だ」
「そ、そう…」
………最近の若者は早起きね。私はそんなどうでもいいことを考えていた。まぁ私もそれなりに若いし、ケイブさんとか間違いなく私以上の年だけど早く起きてるとかは気にしない方針で。
「…いやー、ドラ君の所にヤドが行っちゃったのよー。どうしましょ」
「そりゃ大変だな。ハハハ…」
「そうですよね。ウフフ…」
………
「「いや、駄目だろ!!」」
良かった、突っ込んでくれた。このまま話が流されたらどうしようかと思ったわ。すると彼は少し考えた後に口を開く。
「………坊主が戻ってくるの待つか、萌えもんセンターの交換システムで引き取れ。萌えもんセンターの連絡システム使えば時間合わせも出来るだろ」
連絡システム?そんなのがあるのか。使う機会が無かったから知らなかった。
「…来ますかね?ドラ君?」
「…微妙。気が付いて戻ってくるならもう戻って来ててもおかしくない時間だ」
…ならその交換システムとやらを使うか。私も足を止める訳には行かないし。そう決心し彼に次に私が行くべき場所を訪ねようとするが…その前に一つやるべきことを思い出した。
「分かりました。交換システムを使ってみます。あ、後…私の萌えもんがケイブさんにお願いがあるらしく…」
おずおずと聞いてみると彼はあっさりと答えてくれた。
「ん?何だ?言ってみろ」
「…出てきて、エレ」
私は腰に付けたボールの一つを投げ、エレを出す。昨日まで三つあったボールが二つになり今までの慣れからかエレのボールを取り間違えそうになったのは秘密だ。
「ケイブ殿!お願いがございます」
エレは畏まってケイブさんの方を向く。どうしたというのだろう。そういえばお願いの内容聞いてなかったわ。
「雷パンチの技マシンを下さい!!!」
綺麗な土下座を決めながらエレがケイブさんに言う。…そんなことかい!技マシンなら私が買ってあげるわよ!そう私は言おうとするが…
「あれはもう販売停止品だ。諦めろ」
………ケイブさん曰く販売停止品らしい。じゃあ無理ね。諦めなさい、エレ。
…というか雷パンチってエレブーなら普通に習得出来ないっけ?
「じゃあ何でホロさんのワニノコにプレゼントしていた冷凍パンチの技マシンは何処で入手したのですかぁ!」
「あ、あれはその…コネだ。相当貴重品なんだぞ」
尚も食い下がるエレに対しケイブさんはそう答える。………そういうコネがあるのか。なら…
「…エレ、ちょっと待ちなさい」
「はい、マスター」
私の命令にエレは意外と素直に応えた。頼み方ってもんがあるのよ、そういうのは…。私はエレに耳打ちする。それを聞いたエレはむむむと唸るが納得してくれたようだ。
それが終わるとエレは再びケイブさんの方に向かっていく。
「…ん?何だよ。悪いけど流石に…」
そしてエレはケイブさんに体を密着させ耳元になめまかしい声で呟く。………偶然だけどこれをやるのを恥ずかしがってるエレの顔も高評価だ。
「…お願い雷パンチの技マシン買って。お兄さん」
「………よーし!お兄さん何でも買っちゃうぞー!」
そう言ったケイブさんはエレの手を引いて萌えもんセンターから出ようとする。良し、成功ね。ついでに回復薬とかも買いましょ。そう思って彼等に付いていくと…
ゴスッ
いつの間にかボールから出たのだろうか。ケイブさんのリリーラが彼の頭に岩を落としていた。そして私の方を見る…
アッハイ。すみません。次の目的地は何処でしょうか。リリーラさん。
~
「アサギシティね。この子を…ねぇ」
私は萌えもんセンターを出て北に向かっていた。そんな中で先程のことを思い出す。
気絶するケイブさんを掴みながら全く話さずジェスチャーで説明する彼のリリーラのことだ。内容を読み取るのに結構苦労したわ…
アサギシティにはこの子が強くなれる当てがケイブさんにはあったらしい。その為に手紙も用意してくれたようだ。貰ったのはリリーラからだったけど。
「ま、強くなれるって言うならウチは万々歳だね」
そう考えていると私のパーティーの中のこの子…
ライがそう言った。
…そうね。よーし、アサギシティに向かいましょうか!