「…参ったな、これは」
僕は目の前にある現在頭を悩ませている存在…
大きな大木の前にいた。
今その大木に対してろすろすが角で攻撃したり、ヤドが火炎放射を使っているが一向に倒れたり、焼ける気配は無い。…どういうことだ?
「…これは無理じゃないかなー?大人しく他の道に行くー?」
僕に対しつーが痺れを切らしてそう呼び掛ける。まぁそれも無理もない。ろすろすやヤドにお願いしてから結構時間は立っているが一向に状況は改善していない。
「んー、でもなぁ…」
先程の看板で確認したのだがこの道がウバメの森の一般的なルートらしい。他の道に行って迷ったり、野生の萌えもん達を刺激してしまうというのも避けたかった。そう考えているとろすろすとヤドがこちらに戻ってきて、近くの祠を背に座り込んだ。
疲れているろすろすとヤドに対して大木は全く状態を変えていない。
「主よ、これは厳しいぞ…。このままでは日が暮れてしまう」
「…焦げ付く感じすらしませんぞ。参りましたなー」
………やっぱりちょっと怖いけど大木の横側から別の道を探した方が良さそうかな。ちょっと二人が休憩したら別の道を探しに行こう。そう思っていた時…
「あっしは木を切るー。ヘイヘイホー…」
…大木の向こう側から小さな歌い声と木が切り倒されて木が地面に落ちる大きな音が聞こえてくる。…ん?木を切る?もしかして…
「…すみませんー!!」
僕は大木の方に大きな声で歌いながら木を切っている人を呼ぶ。すると歌声と木を切り倒す音が止んだ。代わりに歌声と同じ声色の声が聞こえる。
「はいはいー。どちら様ですかね?」
………良かった。こちらのことに気が付きそしてこちらに対しての感触は悪くない。話が出来そうだ。
「旅の者なのですがー、この大木が邪魔で通れないんですよー。どうにか出来ますかー!?」
声を張り上げそう伝える。向こうの人は木を切り倒すことが出来るようだ。もしかしたらこの大木も切れるのではないか。そう考えたのだ。すると声が返ってきた。
「えー、………んー………」
「………あ!あっしの名前を当てられたら良いですよ!因みにあっしはカモネギですので」
…暫く黙ってると思ったら何か突飛なことを言い出した。何だそれは…。まぁ相手の機嫌を損ねる訳にもいかないか…。
というか向こう側にいるのは萌えもんだったのか。確かカモネギという名前の萌えもんがいた筈だ。
「…それならカモネギだ」
そんな突飛な問題に苛立ちを覚えたのか、ろすろすが少し怒気を含んだ声を張り向こう側に言った。
「ぶぶー。はい、ちょっと怒りっぽい貴方は回答権無しー」
「なっ…!」
「あらら、ろすろす殿は甘いですな。相手はカモネギ…なら名前はおしょうですぞ。どうですかな?向こうの方?」
怒るろすろすを宥めながらヤドがそう言った。カモネギならおしょうとかそういう決まりやルールがあるのだろうか?
「ぶぶー。はい、気まぐれな声の貴方も駄目ねー」
しかしどうやら外れみたいだ。ヤドがぐぬぬと唸っている。んー…
「ならじんすけ…とか?」
思わず考えていた名前が口に出てしまう。それを聞いたのか向こう側から外れを知らせるメッセージが聞こえてきた。
「ぶぶー。んーと…最初に呼び掛けた貴方も駄目ねー」
…しまった。うっかり口に出てしまった。後答えられるのはつーだけだ。つーの方を見るがつーはぼーっとして祠に寄りかかっている。
「…つー、何か良さそうな名前とかある?」
僕は小声でつーに聞く。するとつーはぼーっとした状態を崩さずのんびりと答えた。
「んー、もう少し待とうかー。まー駄目なら諦めよー」
そう言ってつーが動こうとしない。そんな中向こう側から微かに声が聞こえる。先程のカモネギの声とは別の大人の声だ。
「…おい、アッカ。仕事はどうした?とっとこいつを切って終わらせるぞ」
「………あっ、主人!?い、今はっ!?」
大人の声の後に慌てたカモネギの声が聞こえる。するとつーが祠の側から起き上がり大木の前に立った。
「………んー、成程ー」
「終わったら自由にしていいから。………いつもお前はこの作業に随分と時間をかけるよな」
その話につーが微かに笑う。そしてつーは大きな声で向こう側に対して声を張り、伝える。
「…へー、早くしたらー?アッカちゃんー?」
すると向こう側から先程と同じく慌てたカモネギの声と大人の声が返ってきた。つー…それで名前当てるのは反則じゃないか?僕はそう思うが黙っておく。
「…ん?旅人さんかい?この大木だろ?ちょっと待っててくれ。今切るからな」
「…なっ!卑怯だぞ!これは無しだー!」
カモネギがそう言うがそれに対してつーはにやりを微笑みそして大きな声量でからかうように向こうに伝える。
「………んー、切りたくないよねー。だってこれは主人さんとの大事な時………」
ズバッ………
ズドンッ!!!
大木が切り倒され大きな音が鳴る。そしてようやく見える向こう側には大人のトレーナーと顔を真っ赤にしたカモネギがいた。
「旅人さん、お待たせしました。この道を塞ぐ木を切るのが私達の仕事なんです。さぁこちらにどうぞ」
大人のトレーナーが僕達にそう言ってくる。その声に従い、僕達は向こう側に行く。大人のトレーナーはカモネギに仕事のお礼を言っているようだ。
「お疲れ様、アッカ。じゃ次の仕事までは森でゆっくりしていてな」
「…うん」
そう言ってカモネギは飛び立とうとする。その際につーの方を睨んでいた。その様子から僕はつーの方を見るがつーは全く気にしてないようだ。
「次も頼むな」
飛び立つ直前にトレーナーがカモネギにそう伝える。
「…!…分かった」
そう言ってカモネギは森の中に消えていった。…その後ろ姿は何処か嬉しそうに見えたのは僕の気のせいだろうか?