「まずは萌えもんを回復させましょう」
テン、テン、テレレン…!
大きな機械からそんな音が聞こえる。その音が終わると職員さんはその機械からボールを取り出し私に手渡ししてくる。
「はい、元気になりましたよ!」
「あ、ありがとうございます…」
私がそれを受け取る。
「それでは頑張って下さい!」
「はい…」
私はボールを受け取った後、近くの椅子に座りボールのボタンを押す。
するとボールが開き、光が溢れる。…その光の中から落ち込んだエレが姿を表した。
「マスター、すみません。不覚を取りました…」
「うん…」
エレは開口一番に謝罪してくる。うん…不覚を取ったわね。
「バトルというのはやはり難しいものですね…」
そうね、やはり難しいわ…
「うん…だからってさぁ、あんた…」
「…初トレーナー戦のコラッタに負けてんじゃないわよ!私言ったでしょ!最初は綺麗に勝とうって!こういうのは最初の肝心なのよ!あーもう…」
私は胸の内に溜まっていた不満をエレにぶちまける。それを聞いたエレはしょんぼりしているようだ。
先程、私達は初めてのトレーナー戦に敗北してしまい目の前が真っ暗になってしまいエレを回復させようと無我夢中でここ…ヨシノシティの萌えもんセンターまで走ってきた。そして現在、萌えもんの回復を終えた所だ。
ワカバタウンからヨシノシティまでの道中向かう所敵無しだった私達は浮かれていたのだろう。そのままキキョウシティまで行こうということになり、その道中で短パンの少年に萌えもんバトルを申し込まれたのだ。
正直その時の私は初めてのトレーナーとの萌えもんバトルを舐めており、勝った時に何言おうかなーとか考えていたくらいだ。
しかし結果は惨敗である。もーこれは完全にエレのせいだ…!
「大体あんた相手のコラッタの電光石火モロに喰らってたし…!」
「む…」
私はエレに愚痴をこぼしてると黙って聞いていたエレも我慢の限界だったのだろう、負けじと言い返してきた。
「確かにコラッタは攻撃力、素早さに優れた萌えもんですが私以上の素早さでは無かったと分析しており…」
「だからってモロに喰らうんじゃないわよ!あんた蹲ってたじゃない!」
「…しかしマスターのその後の指示にも問題はあるかと!『エレ!?大丈夫?ねぇ!?』って混乱して指示が無かったではないですか!」
「そ、そりゃあんたが心配だからそうなるわよ!」
「ありがとうございます!…その後の指示も問題です、『エ、エレ瓦割り!』…って。私は瓦割り使えませんから!無茶言わないで下さい!」
「それはノーマルタイプのコラッタに有効な格闘タイプの攻撃指示じゃない!見様見真似でやりなさいよ!瓦割りくらい!」
「見様見真似で技が使えれば苦労しません!それはシルフで技マシンの研究の一端を担っていたマスターならばご存知の筈です!」
「でもエレブーは瓦割り使えるでしょ!あんたのステータスはしっかり把握してるつもりよ!それよりエレ!最後の動き攻撃が大振り過ぎよ!しっかり一発当てれば勝てたかもしれないのに!」
「それはマスターの初陣に花を添えようと努力した結果です!急所を狙うならあの様な形にならざるを得ないでしょう!」
「結果惨敗じゃない!」
「ムムム…」「ムムム…」
私とエレはにらみ合いながらうなり声を上げる。
「…ねぇ、エレ」
「何ですかマスター。まだ何か…」
そんなことをしているのが馬鹿らしくなって…でも昔はこんなことしなかった…いや、出来なかったなと分かって先程に続き本音をエレに明かす。
「私、久し振りに負けっていうのを味わった気がするわ」
私がそう呟くと彼女も同じ様に呟きを返した。これはエレの本音なのだろうか。
「…私も恐らくシルフの事件以来無かった経験です」
「いくら前職の研究員として優れいてもトレーナーにおいては素人なのよ。私は」
「…私も萌えもんのバトルに関しては素人です」
また同じ様にポツポツと言葉を吐く。エレも同じだ。
「…幻滅した?こんな情けないトレーナーで」
…私は今まで出すのを恐れていた本音を洩らす。
「マスターこそ御理解の上でしたが想像以上にバトルに不馴れな私に呆れているのかと…」
…違う。
…エレはエレなりに頑張ってくれていたのだ。だから…
「…そんな訳ないわ!」「そんな訳ないです!」
私とエレは同時に同じ言葉を口にした。その声が重なったことに私は笑みを洩らす。…するとそれに釣られたのかエレも笑った。
…何か悩んでいたのが馬鹿らしくなってきたわ…!それよりも今やるべきことは…
「フッ…さて、あの短パン小僧の対策考えるわよ!」
「はい、同じ相手に不覚は取りません!」
私達はまた話し合いを始め、そして一時間後…
私達は求めていた綺麗な勝利とは程遠い初勝利を勝ち取るのであった。