中は蒸し暑かった。
「ドラちゃんはさー、いつも詰めが甘いよねー」
地下洞窟を入ってからしばらくするとつーが僕にそう言った。洞窟内は中は少し蒸し暑いが動くには問題無さそうだ。
「萌えもん無しでここは無茶だよー、つー無しじゃ野生の萌えもんに指先一つでダウンだよー」
「…ゴールドスプレー使っても野生の萌えもんが近づいてくるとは考えて無かった。つーがいなかったら危なかったよ」
つーの言う通り僕の考えは甘かったと言わざるをえない。僕がゴールドスプレーを使っても何度か野生の萌えもんと遭遇し、そして戦闘している。
今までだとこの洞窟内でイシツブテ、アサナン、ブーバーに遭遇している。それをつーは僕の指示や回復薬の使用もあるが難なく倒して来たのだ。
…このことに一つの疑問が浮かぶ。それはつーがバトル慣れしているという程では無いもののバトルが初めてではないような動きをしている。ツボツボの能力値を生かした巻き付くと何処で習得したのか毒々を交えた耐久戦法を扱っているのだ。
「…つー、お前毒々なんていつ覚えたんだ?」
「んー、一月前くらいー?家の蔵にあったものを拝借したのー。まぁ埃被ってたしー、使って無いみたいだからいいかなーって」
「…技マシン!?…そんなのが家の蔵にあったのか!教えてくれよつー!」
何故そんな物が家にあるのだろうか…。その疑問もあるがそれは一先ず置いておこう。僕がそのことに驚くとつーはにやりと笑う。
「つーちゃんはドラちゃんが『旅に出るから教えて下さい。つー様』って言えば教えたのにー。ずっと隠してるからー」
「………んん?その口振りだとさ、つーお前俺が旅に出ようとしてたのを…」
ま、まさか…
嫌な予感がする。
「知ってるに決まってるじゃーん、一月前までずっと旅に出たいって言ってたのかピタッと止んで何か準備してるんだもんー、お客さんにこの洞窟の話聞いてからねー」
「………」
つーは僕の嫌な予感を見事に的中させることを口にした。…どうしよう。凄く恥ずかしい。僕が一月前から練りに練っていた計画がバレバレだったみたいだ…
落ち込む僕の肩をつーが軽く叩く。
「だから詰めが甘いって言ったのー。…あ、つーはねー我流だけどバトルの練習はしてたしー」
…成程。だから野生の萌えもん相手でも充分に戦えたのか。どうやらつーは随分と旅への準備していたみたいだ。
「そんなことまでしてたのか」
「…一緒にいるためにね」
「…?ごめん。何て言った?」
つーが何か言ったようだが聞き取れなかったので僕はつーに聞き返す。しかしその答えはつーの催促を促す言葉に阻まれて知ることはなかった。
「何でも無いー、それより密かに頑張ってたつーちゃんにご褒美をプリーズー」
「あ、あぁ…ありがとうなつー。ほら」
僕はつーの催促に対し、リュックの中からきのみジュースを取り出しつーに手渡す。つーはこれが好きだからな。ご褒美って言ったらこれだ。つーがきのみジュースを受け取る。
「…おぉー。ありがとー。でもさー、ドラちゃんやっぱ詰めが甘いよねー」
「え?駄目だったか?」
「いや、別にー」
つーはそっぽを向ききのみジュースを飲み始める。何が駄目だったのだろうか…
ま、気にしなくていいか。つーが飲み終わったらまた先へ進もう。
「飲み終わったら行こうか。つー、頼むぞ」
僕はつーの頭の上に手を置き優しく撫でる。するとつーの体がピクッと動いた…ような気がした。
「…ドラちゃんはさー、詰めが甘いけど詰め方は間違えてないのがつーは好きだなー」
「いきなり何言ってんだ。ほら…行くよ」
「はいはい、この先もつーにお任せあれー」
僕達はそのまま洞窟を進んでいく。目指す出口は以前薬屋に来た客が言っていた…エンジュシティ焼けた塔跡地だ。