「………弱くなった?」
…フィーアのこの言葉は私への煽りや挑発でも無いのだろう。
私をまじまじと見ているその姿がその証拠だ。…そんな珍しいものを見るような目で見るな。私はな…
あの戦いの傷がまだ癒えてないのだ。
~
『ドンカラス、ナイトヘッドだ!』
グループの中の若い男の指示を受けた黒い萌えもん…ドンカラスが黒い霧を私の周囲へと発生させる。…それに対して私はサイコカッターそれを振り払おうとしたその時…
(貴女は邪魔…。要らないの…)
『………っ、お嬢…!』
突然お嬢の声が脳内に響き、頭が痛くなり、膝を付く。お嬢の声に反応し、私はお嬢が走っていったであろう背後を向く。………黄色髪の萌えもんを最後尾に置き路地裏を去るお嬢の姿が一瞬見える。よし、大丈夫。お嬢は無事だ…
『今だ。行ってこい…』
『…分かってるよ!ドンカラス!…捕まえてきな!』
…私は大丈夫じゃなさそうだな。先程の幻の声を頭の中から振り払い、立ち上がる。………が、ドンカラスは既に私の目の前まで距離を詰めている。不味い…私は攻撃を受け止める為に後ろに跳ぶ。
「…させませんぞ!」
私と一瞬にここに残ったヤドンがそう言うと同時に手から微弱な電気をドンカラスに放つ。私へと意識を向けていたドンカラスはその電気に触れ、動きが鈍くなる。………助かる!私は動きが鈍くなったドンカラスに対して私は腕にサイコカッターを纏い振り払う。…が私のその攻撃は相手にはあまり通じてないようで軽く後ろに引いただけだ。
『…おい!何してんだ!馬鹿!』
『…う、うるさい!お前のせいだからな!』
そのドンカラスの様子を若い男が叱る。それにドンカラスの方も怒り、若い男に罵声を浴びせている。…仲違いするなら結構だ。存分にやってくれ。
『…ナイトヘッドは効いてるな。もう一度頼む』
『ほら!もう一回だ!』
グループの中の眼鏡の男がそう呟く。それに従い、若い男をドンカラスに指示を出し、それを受けたドンカラスは同じ様な黒い霧を放つ。
グループの残りの人間の一人はこの状況を軽く笑いながら見る女性と側にいる魔法使いの様な服の萌えもん。そして後一人…萌えもんすら出さずにこちらを静かに見ている男性だ…。二人共、まだこちらに手を出す気は無いらしい。その様子は疑問だがこちらには都合が良い。
さて、この黒い霧に触れては駄目だ…。私は霧に対して距離を取る。…しかし背後からの鋭い痛みに私は体がよろける。力を振り絞り後ろを見ると私に噛み付いたであろう萌えもん…あれは見たことがあるな、ゴルバットとそれを慌てて空中から叩き落とすストライクの姿がある。…少し遅いぞ、馬鹿。
噛み付かれた場所から体が脱力していく…。ツヴァイが受けたのはこれか…!そんな状態では私はまともに動くことも出来ずに黒い霧に包まれる。
体が…、頭が…朦朧とする。…いや、私は立ち上がらなければならないんだ…!そう思っても体は言うことを聞かない。そしてそう思う意識さえ奪われていく…
最後に脳内に聞こえた言葉は…
(お前は俺の萌えもんじゃねぇだろ)
~
その後私は予選で戦った少年…ドラから治療を受け、体は回復した。その際にお嬢やツヴァイは無事だったことも確認出来たし、一緒にあの場にいたストライクとヤドンも無事だった。…結果として私はお嬢を守ることに成功したのだろう。
だがあれから私は何処か調子が悪かった。体は元気なのだが…相手の攻撃が恐ろしいものに見えてしまうのだ。あんな軽い噛み付くであってもだ。
「…アタシを舐めてんのか?ドライ。…そうだろ?」
「ドライ…大丈夫?」
そんな訳無いだろ。お前は舐めて相手出来る程柔な相手じゃないのは私は知っているんだ。…お嬢も私の異変に感ずいてしまったか…?これはお前のせいだぞ…フィーア…!
「…えぇ。避ける必要も無さそうでしたのでね…」
「テメェ…!」
私の言葉にフィーアが怒る。そうだ、怒れ。さっきのは私の舐めて掛かった失態だ。そう思っとけ。
怒ったフィーアが恐ろしい速度で私に組み付こうとしてくる。怖い……これは冗談では済まないかもな…。私は固まった体を必死に動かし、避けようとする…
「ドライ…」
「…無理はしないで!…で、でも頑張って!」
「…頑張れー!ドライねーちゃん!」
あ…
体が軽くなった…。
フィーアがお嬢とツヴァイの声援に目を奪われたこともあるのだろう。そんな精彩を欠いたフィーアの攻撃を私は何とか避ける。だがまだ体は本調子では無い…。
…分かったぞ!今の私に足りないものが…!
「ツ、ツヴァイ…!お前はアタシの味方だよな…!?」
「…今のフィーアねーちゃん、ちょっと怖いからやだ」
「………そ、そうか」
ツヴァイにそう言われてフィーアがちょっと落ち込んでいる。落ち込んでいる今がチャンスか…私は後ろの草むらへと駆け出す。
「…おい!逃げんのか!…ドライ!」
「…ふん」
私はフィーアを鼻で笑い、草むらの中を駆ける。…どうやらフィーアも私を追う為に草むらに入った様だ。私が駆ける途中で先程ツヴァイが倒したギャラドス達が起き上がり、こちらを見ている。私はそれを一瞥し駆け続ける…少ししてフィーアとギャラドスの声が聞こえる。
「…あ、姉さん!?どうしたんすか!」
「う、うるせぇ!ちょっと喧嘩だ、喧嘩!…お前等は手を出すなよ!」
「…姉さん自ら!?…分かりました!やっちゃって下さい!!」
…ふん。随分と豪華な応援だな。私はフィーアがギャラドス達に絡まれている間に離れた場所の木の上に上り、座る。
たが…
私の応援にはお嬢とツヴァイとアイツがいる…!
私は懐から一枚のディスクを取り出し頭にそっと当てる。すると…
ピピ…!
『…技マシン80を起動します!…中には岩雪崩が記録されています!…萌えもんに覚えさせますか?』
~
「…これがアイツの贈り物なのが気に食わんな」
私の目の前には倒れているフィーアとその周囲に散らばる無数の岩があった。そんな中倒れているフィーアの頭を叩く。
「きゅう…」
「部下に見られて完全に浮かれてたな、馬鹿が」
ま、見られているというのは悪いものではないがな。…お嬢がこちらに来て私達を見てくれるぞ。ほら、起きたらどうだ?フィーア。
「フィーア…!大丈夫?」
「大丈夫ですよ。大したダメージになってませんから…確かゲットはしなくて良いんでしたよね?」
「うん。前にフィーアが入ってたボールがあるから…」
そう言ってお嬢は鞄からボールを一つ取り出す。そしてお嬢は気絶して倒れているフィーアにそっとボールを当てた。
「戻れ…フィーア」
フィーア(ギャラドス)
性格:勇敢
以前はホロの手持ちだったデルタ種の萌えもん。タイプは水/炎。色違いのギャラドスであり、希少なデルタ種の中でも更に希少な存在である。(因みに普通のギャラドスのデルタ種は電気/鋼タイプ)その希少な存在から周りに追われることも多かったが昔に自分を受け入れてくれたホロに感謝している。性格は短気で荒っぽいが、自分と仲の良い萌えもんには言葉は荒っぽいが優しい。
ビジュアルとしては赤のロングヘアーに頭を守る赤の髪飾り、一昔前のスケバンの様な赤い服を纏っている。