萌えもん~multi travel~   作:マクドール

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ここはヤドンの井戸。別名雨降らしの井戸。


ヤドンの井戸の底で-4

 

水面に浮かぶ大小の小島…その中で一際大きい小島の中央に古びながらも輝きを持つ小さな王冠に似た被り物がある。

 

 

あれだ。あれが王者の印だ。

 

 

私…ヤドはその存在に目を奪われる。ドラ殿も小さいながらもあれの存在に気付いたのか目を向けている。

 

 

一方ヤドランはそれに対して全く興味を示さず、水面から予め冷やしていたのだろうか…瓶を取り出し、それを手に腰掛ける。

 

 

「トレーナーさん。座ってくれ」

 

 

そう言いながらヤドランは瓶から二つの容器に飲み物を入れ、そっとドラ殿の前に置く。それを見たドラ殿がゆっくりと座った。…あらら?

 

 

「…ヤドラン、ヤドのは?」

 

 

「井戸の水でも飲んでろ」

 

 

「そんなー」

 

 

冷たくそう告げられ、ヤドもしぶしぶ座る。ヤドが座るとヤドランをヤドを小突く。

 

 

「さぁ、この子の話をしよう。飲んでくれ」

 

 

「あ、はい…」

 

 

ドラ殿が目の前に差し出された容器を手に取ろうとする。…いいなー。あれ確か良いものだった気がしますぞ。

 

 

 

 

「…決めてたんだ。この子のトレーナーさんと飲むって」

 

 

ドラ殿の手が止まる。

 

 

「えっと…ヤドラン…さん。すみません。これは頂けないです」

 

 

その一言で場が固まる。

 

 

「…僕は本当のヤドのトレーナーではありませんから」

 

 

「………え?」

 

 

そして…

 

 

止まっていた場が、体が動き出す。

 

 

 

 

 

「お前はぁー!!他所のトレーナーさんにこんな所まで連れてきて貰ったのかぁ!?」

「…痛い!痛いですぞ!頬を引っ張るのは止めて下されー!」

「…あぁ!ヤドが!ごめん!…でも流石に嘘付くのも悪いかなって」

「そんなの黙ってれば良いのですぞ!コイツは気付いて無かったんですからな!」

「コイツだとぉ!?儂をコイツ呼ばわりか…良い度胸だな」

「………あぁーっ!尻尾はっ!…尻尾はらめえぇぇぇ!!!」

「…なんてこった!ヤドが気絶しちゃった!」

 

 

 

 

あ…すみませぬ。読者の皆さん。ヤドの意識が回復まで暫しお待ちを…

 

 

…今回はヤド視点だしこんなグダグダでも皆さんは許してくれるでしょ…

 

 

 

 

 

 

「…で、君はこの子の本当のトレーナーじゃない訳だ」

 

 

「…はい。本当はセーレさんと言う女性なんですよ」

 

 

ヤドが目を覚ますとヤドランとドラ殿が話し合っていた。…起きたヤドをヤドランは見下す様な目で見ている。…はい、ごめんなさい。

 

 

「……ヤドン!いや、ヤドって呼ぼうか…」

 

 

ヤドランがヤドのことをヤドと呼んだ。ヤドランがマスターのくれた名前でヤドを呼ぶ。それだけで何故か嬉しくなった。

 

 

自然と頬が緩む。そこにヤドランはいつの間に手元に持ってきたのだろうか…一枚のディスクをヤドの頭に叩き付けた…

 

 

………って痛っっったぁ!!何するのですか!!ヤドラン!!

 

 

「お前はさっきあの技が欲しいって言ったが…今のお前には無理だろうね。気合が足りないよ」

 

 

…そう言ってディスクをヤドの頭から離す。気合…か。

 

 

「成程。…だから駄目だったのですか」

 

 

「だからね…」

 

 

 

 

「そこの王者の印を付けな。他所のトレーナーさんにお前はここまで想われてるんだ。ここで渡さないと儂は只の嫌な奴だ」

 

 

「ヤド…、僕なりに一応説得はしてみたんだ…そしたら良いってさ!」

 

 

ヤドランが小島に浮かぶ王者の印を指差す。ドラ殿が私の手を掴み喜んでくれている。…ドラ殿ぉぉぉー!よくこの頑固野郎を説得しましたなぁ!…でもこれを口に出すと取り消しになりそうだから言葉には出せません!すみませぬなー!

 

 

 

あ…でも…

 

 

「…戴冠の儀は?」

 

 

「…あんなの伝承に過ぎないよ。あんなことしたって何も変わりゃしない」

 

 

そう言うヤドランの顔は何処か哀愁が漂っているが…ヤド側からそれに触れるのも野暮ですな。

 

 

「…そうですか。では」

 

 

ヤドは王者の印が置いてある小島に泳いで向かう。そして小島に辿り着くと後ろのヤドランとドラ殿を見る。

 

 

 

 

 

…ありがとう。

 

 

そう心の中で伝える。すると二人が笑った様な気がした。…気のせいでは無いだろう。そう思いたい。

 

 

そしてヤドは王者の印を手に取り頭に置いた。

 

 

こ、これでヤドに新たな力が…!これならマスターや皆を守れますぞ…!

 

 

 

 

………

 

 

 

 

あれ?

 

 

 

 

「変わらない…ね」

「ヤドランー。…これ不良品では?」

「そんな訳あるか。歴とした本物だ」

「………」

「………」

「………」

「…やっぱり戴冠の儀が必要なのでは?…皆の衆ー!!!戴冠の儀ですぞー!!!」

「…あっ…馬鹿!上の奴等を呼ぶな!」

「お頭ー!遂にですか!」

「親分ー!…あ、一人だけ良いの開けてますぞ、頂きー」

「…勝手に飲むな!お前等!」

「…つー殿!落ち着いて!」

「ドラちゃん~、えへへ~。あの年増に何もされてないよね~」

「…どうしたつー!?言葉遣いが変だぞ!?」

「主が下に行ってから酒に手を出してしまいまして…」

「おい…年増って言ったか?」

「あ、親分に言ってはいけないことを…」

「皆思ってますけどなー」

「ヤド、王者の印没取な」

「すみませんでした」

「つー…そ、そこは駄目だっ!」

「…うるせ~、年増~」

「…おいコラそこの酔っぱらい表出ろ…!」

「お頭…!戴冠の儀の準備出来ました!」

「ありがとう。でもそれ所じゃなさそうですぞ。…つー殿をここから出さないとヤドンの井戸が崩壊しますからな」

 

 

こうして何とかヤド達は半ば逃げる様にしてヤドンの井戸から出て王者の印を手にいれたのですが…

 

 

結局…王者の印を付けても何も変わらなかったですな。

 

 

 

 

 

 

そして夜、ヒワダタウンの萌えもんセンターにおいて…

 

 

「…あ、ヤド!セーレさんなら連絡が来てる!…二件あるね」

 

 

「…おおー!どれどれ…」

 

 

ドラ殿に呼ばれ、ヤドはドラ殿が見ているパソコンを覗く。新着メッセージが二件…ヤドはドラ殿に早く開く様に急かし、それを受けたドラ殿が古い方のメッセージから開く。…時間的に今日の朝頃ですな。

 

 

『ドラ君へ。

こんにちは、セーレです。この連絡システムを使うのは初めてなので送れてるか分からないけど送ってみます。…本題ですがそちらにヤドはいるでしょうか?もしそちらにいるのならばドラ君の都合の良い時で構わないのでアサギの萌えもんセンターに送って欲しいです。どうやら交換システムを使えば出来るらしいの。私はよく分からないけど…。もしこれが届いてたら返信お願いします!

セーレ』

 

 

「…だってさ」

 

 

「…ふふ!さて帰り仕度をせねばなー。お土産も…」

 

 

ヤドは身仕度を始める。よーし、今行きますぞマスター!既にお摘みも買ってありますぞー!

 

 

「あ、後もう一件あるよ。ヤド。………ほら」

 

 

ドラ殿が画面を指差す。これは夜…、つい最近ですな。えーと、中身は………

 

 

『ドラ君へ。

送れてるか分からないけど一応もう一度送ります。…やっぱりヤドはまだ送らなくて大丈夫です!…むしろ送らないで!こっちが落ち着いたらまた連絡します!

セーレ』

 

 

 

 

ドサッ…

 

 

メッセージを見てお土産を落としてしまう。お、送らないでは酷くありませんかな…ヤドも勝手にこっちに行ったのは悪かったですが…マスター………

 

 

「うっ…」

 

 

「…あ、まだいいのか…ってヤド!?」

 

 

 

 

 

 

「…うわあぁぁぁん!!!マ、マスターがぁ………!」

 

 

………もしかしてヤド…嫌われた?




ヤド視点って今回が初だったのね…。今回はちょっとメタ的な文章も入れてみました。
…まぁヤドだし良いかなって(適当)
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