気持ちは分からなくもない。
俺はボールの中でケイブさんとあの人…今は所長さんだったかな?…の話を聞きながらそう思った。
「…沈むってのはどういうことだ。まさかその三聖獣の萌えもん達がジョウト地方を潰すってことか?」
ケイブさんは先程まで茶菓子に伸ばしていた手を口元に置いている。…もう怒り饅頭に手を出す気はないようだ。…ケイブさん、俺達の分も残しておいてくれよな!後は帰る時にしっかりと持ち帰ってくれ、ケイブさん!
「…分からない。だから推論なのさ」
「焼けた塔…三聖獣の萌えもんにとっては家みたいなもんか…」
「それを壊されただけで?」
ケイブさんが呆れた様に軽く笑う。それを見た所長さんが顔をしかめた。俺もボールの中でケイブさん達は見てないだろうけど顔をしかめる。…リリーラの姉貴の表情は分からない。多分いつもの無表情なのだろうか…?
ケイブさんは分かってない。
俺は焼けた塔の伝説とか三聖獣の萌えもんの話とかはよく分かってないけど所長さんの話を聞く限りでは彼女達にとっての焼けた塔とは大切な存在なんだと分かる。
彼女達にとっては『かつての住み処であり、一度命と住み処を失いかけるも何とか守り抜いた思い入れのある大切な場所』だ。それを壊されただけと簡単に言えるものじゃないよ。ケイブさん。
焼けた塔崩壊の直接的原因である大規模地震による行き所のない不満や怒りが…その後の人間達により行われた焼けた塔の撤去作業に対して矛先が向いたのか?
気持ちは分からなくもない。
…再び俺はそう思う。もし俺がトレーナーであるケイブさんを失ったら多分周りに当たってしまったりするかもしれない。ちょっと意味が違うかもしれないが馬鹿な俺なりにそう解釈し、理解する。
「まぁいいや。で…俺はどうすればいいんだ?」
ケイブさんも少し言葉を止めて頭の中で考えていたのであろう、少し経ってから所長に問う。
「………まだ発見していない三聖獣…ライコウのヒントになりそうな場所の捜索だ。恐らく地下洞窟内だろう」
「………雷か。炎や水に比べると分かりにくいもんだが…」
不精髭を触りながら考えている。…雷かー。地面や壁に電気が残ってるとか?そりゃ怖過ぎる…。いや…そんなレベルの異変ならすぐ気がつくだろ。もっとこう…簡単な…
「…地面や壁が荒れている。それも洞窟としての形状を残しつつ…か?」
ケイブさんが呟いた。
「………そこら辺の判断はあんたに任せる」
所長さんがその呟きに答えた。…呟きの内容を否定する気はないらしい。俺は今の予想でいい線行ってると思うぜー。
「地下洞窟内であんたが正しいと思った場所の痕跡があったら報告してくれ。…それが今回の件に対する私からのお願いだ」
今回の件…ロケット団とかの話だろうか。ケイブさんが所長さんと話す前に『何か仕事をさせられるかもしれねぇ』と面倒臭そうに言っていたのを思い出す。
「………そりゃ…大層なお仕事だ」
ケイブさんは口角を上げて微かに笑う。………面白いことを見つけた子供の様な表情だ。ま、ケイブさんはおっさんなんだけどねー。
「なぁ…?」
「…何だい?」
「…捜索と報告だけで良いのか?」
ケイブさんは笑みを浮かべながら所長に聞く。…あ、これ絶対また俺達が苦労するやつだ。ケイブさんも所長さんの答えを分かっているだろうに…。やれやれ…
「それだけでいい」
「…!………そうか…」
しかし所長さんからの答えはケイブさんや俺が予想していた答えとは異なるものだった。ケイブさんの顔から子供の様な笑みが消える。それを見た所長さんが言葉を続けた。
「あんたには三聖獣の相手は無理だ」
所長さんが広げていた地下洞窟に関する資料を纏め始めている。その動作はこの話はもう終わりだと主張しているみたいだ。
俺には…所長さんがケイブさんには三聖獣の相手は無理だと言ったその…
気持ちは分からなくもない。