以前の彼女からは想像出来ない光景だった。
彼女…フィーアを慕う怒りの湖内のギャラドスやコイキング達が彼女の別れを惜しんでいる。中には泣いている子も………というか大体の子が泣いている。そんな子達に囲まれてフィーアが戸惑い、怒鳴っている。
「「「姉ざぁぁぁぁぁん!!!」」」
「…うるせぇ!ギャーギャー泣くなっての!」
そう言いながらも集まった一人一人に対して丁寧に言葉をかけている。
………乱暴者だったフィーアがねぇ…。私はそう思うが、ツヴァイは『フィーアねーちゃんは優しい』と言うし、ドライは『アイツはあれでも情に厚い』と評価していた。
………私が知らなかっただけかもしれない。じっとフィーアとギャラドス達の光景を見る。…少しでも彼女を理解する為に。
「…後はお前らが好きに暮らしてくれ。そこら辺はお前らの良心に任せる」
「「「………」」」
「ソコんとこは信頼してるからよ…。…ん?どうした?」
「「「姉ざぁぁぁぁぁん!!!」」」
「…うるせぇ!ギャーギャー泣くなっての!」
そう言いながらも集まった一人一人に対して丁寧に言葉をかけ………
ってさっきと一緒じゃないの…!別れを惜しむ気持ちは分かるけど早くしてくれないかしら…
~
「…お待たせしました。姉さん」
「…はい。待たされました」
結局目の前で一連の流れを両手では数え切れない程、行われたのだ。小言の一つくらいは言っても許されるだろう。…ツヴァイは長過ぎて寝ているし、ドライは呆れて散歩に行ってしまった。
「さて、フィーア…改めて確認しないといけないわ」
「何ですか?姉さん」
「私達は一緒にいたデルタ種の萌えもんを取り戻す為に旅をしてるわ。…貴女もその一人」
「…はい」
私が目的のことを切り出すとフィーアは静かに応じてくれる。…これも以前からは考えられない。昔は適当に聞き流しているような…そんな感じだったのに。その応じ方は彼女の成長を実感させた。
「…ツヴァイ、ドライ、フィーアが揃ったわ。後は…」
「…アインスの姉さん」
私の言葉をフィーアが先に言った。………そう、後はアインスだ。
「…そう。彼女も必ず探して、取り戻す…。その為には貴女達には戦って貰うこともあるわ。………フィーア、大丈夫?」
「…なーんだ。そんなことか…」
フィーアが軽く笑う。そして即座に答えを出した。
「…大丈夫です!やってやりますよ、姉さん!」
「…ありがとう」
私がフィーアに笑いかけるとフィーアもこちらに笑いかけた。…その仕草から彼女の本質は変わってないのかもしれない。…そう感じた。
フィーアの決意を確認した所で私達はツヴァイとドライをボールに戻し、チョウジタウンへと戻ろうと草むらを歩く。…フィーアは出したままだ。時折怒りの湖の方へ振り向いている。
「…最後がアインスの姉さんかー」
「そうよ。まぁ彼女は大丈夫だろうけど…」
私がフィーアのことをしっかり見ていたからか、急な呟きにもすぐ応じることが出来た。
「………いやー、姉さん。………別に脅す訳じゃないんですが…」
「…どうしたの?」
だがフィーアの返答は歯切れの悪いものだった。長い赤髪を弄りながら言葉を探している。
私が答えを急かすとフィーアは髪を弄るのを止め、ゆっくりと口を開いた。
「アインスの姉さんは強いから危ない。………アタシはそう思いますねー」
「…強いから狙われるとかの心配じゃないです。狙われても返り討ちにする。それがアインスの姉さんですから。でも…」
「でも…?」
「何て言えばいーのかなぁ…、精神?心の方がって感じ?…です。まだホロン地方で姉さん探したり…それか何処かで精神が参ってそうな気がするんすよ」
「………」
………あー。前者は凄くありえる。私は強くて、頼もしいアインスの姿を思い出す。………あの子は飛べるしね。様々な場所を探してそうだ。
後者は…どうだろうか?あの子はそんな柔な子じゃない。その心配はツヴァイやフィーアにしていたけど…ツヴァイには私がいて…、フィーアには怒りの湖の萌えもん達がいたのだ。
………もしあの子の側に誰も居なかったら?
………元から急いでるつもりだが、一層急いだ方がいいかもしれない。
「…フィーア、ありがとね。アインスについてはまだ行方も分からないけど…必ずね」
「そうっすね、分かればすぐにでも…」
話している内に、チョウジタウンが見えてくる。最後にフィーアが怒りの湖の方を振り向いた。それを私は止めない。…フィーアが振り向くだけで我慢しているから。
「………また、来ましょうね」
「…っ………はいっ…!!」