足場が不安定だった。
…ここが洞窟の深部だからだろうか?それにしても不自然だ。凹凸の激しい地面、剥き出しの尖った岩肌…それが僕の歩みを妨げる原因となっていた。
それとも今の地震のせいか?…と考えたがその考えを僕は頭の中から即座に消す。地震があったとはいえこの洞窟内の環境には影響を及ぼさないだろう。考え過ぎかな…
「あっ………!」
僕は歩いてる最中、真下の地面の出っ張りに気がつかずにバランスを崩しかけるが、何とか両足で踏みとどまる。…バランスを取るのに両手は使えない。それは手をつく為の壁が荒れているからでない。
両手で倒れた萌えもんを抱えているからだ。
「っと、危ない………」
…ふぅ、転ばなくて良かった。僕は腕に抱えている萌えもんが大丈夫か確認する。………先程確認した状態と同じだ。気を失っているが危険な状態ではない。
改めて気を失っている萌えもんを見る。クリーム色で二本のはねっ毛のある髪、そして同じ色の服から僅かに覗く小さな緑の羽と尻尾………
………分からない。何という萌えもんなのだろうか?虫萌えもんの様な見た目をしている気がするが…僕には萌えもんを判別する機械やこの萌えもんを今まで見た経験がないので分からない。
今度はこの子のことを考えながらも足元への注意は欠かさない。幸い洞窟内は明るく、目を凝らせば足元や周りを見ることが可能だ。ここは繋がりの洞窟内の深部だった気がするのに妙に明るい…。そんな気もするが僕にとっては有り難い明るさだった。
………暫く足場の悪い地面を歩くと短い登りの坂道が見えた。んー…
…とりあえず上へ行った方がいいかな?そうすれば入った時の入り口にも近づくだろうし、もしかしたら僕を探してくれているつー達にも会えるかもしれない。…そんな淡い期待を込めての判断だ。足場の悪い坂道を登る…
「…ん?」
坂を登ると荒々しい足場が姿を消した。今の足場は洞窟らしさを残しながらも人々の往来によって踏み固められた道だ。そして微かに水が流れる音、仄かな薄暗さ………
これは先程まで僕がいた繋がりの洞窟の様相だ。………では今僕が通った道は?
…?振り返って坂の下を見てみるが特に何かあるわけでもない。………というより今の僕にそんなことを気にする余裕はない。
僕は振り向くのを止め、前を見て進み始めた。
~
「えぇ…」
…今度は岩だ。
大きな複数の岩が整備された階段を塞いでいる。これを遠目で見た時は整備された階段だったから出口に近づいているんだ!…と思ったがぬか喜びだった。肩を落とす。
「はぁ…」
「大丈夫。…ここはすぐ空きますよ」
僕の耳に聞き覚えのないが綺麗な声が聞こえる。その声に反応して僕は辺りを見渡す。しかし周りには誰もいない。…抱えている子は目を覚ましていないからこの子の声でもなさそうだ。
「…え?」
「ここですよ」
「…あ、ど…どうも?」
「あら?………」
声のした方向には…小さな池に青髪で背中に甲羅を背負った萌えもんがいた。彼女は僕が挨拶したのを見ると少し驚いて不思議そうにこちらを見てくる。
「…どうしてこちらに?…見たところ萌えもんトレーナーさんなのは分かりますがこちら側にいるのは少しおかしいですね?どうしたのですか?」
池の萌えもんが僕に対して質問してくる。…もしかしたら僕を心配してくれているのかもしれない。…この萌えもんの話が本当ならばこの階段を塞ぐ岩は取り除かれるらしい。ならば少しくらい話をするのもいいかな…?
僕は腕に抱えていた萌えもんをそっと地面に置き、池の方に近づくと彼女も僕の方に近づいて来た。
「貴方が優しいトレーナーさんで良かったわ。…面白い話が聞けそうね」
「いや、面白い話はないけど暇潰しにはなると…思う」
こうして僕は彼女の話を聞こうとする姿勢に応える為、何故こんなことになってしまったのかを話そうと今までのことを思い出し始める………。
「えっと…ここには新しい萌えもんを捕まえに来たんだ。…僕自身が強くなる為にね」
僕はつーやろすろすといった僕には勿体無い程の優秀な萌えもんとの練習では自分のトレーナーの力量が上がらない…と考えたのだ。だから新しい萌えもんを鍛えると同時に僕も成長したかったのだ。
「…それがあの子?」
池の萌えもんが倒れている萌えもんの方を見て言った。それに対し、僕は首を振る。
「いや…あの子は違う。あの子はさっきの地震の時に見つけたんだ。…何か知ってるかな?」
「………いえ、あの子はここ…繋がりの洞窟の萌えもんではなさそうですね。見たことが無いですね」
「…え?」
…それはおかしい。抱えていた萌えもんに出会ったのはこの洞窟内だ。
「あの…あそこだよ!地面が荒れてて…岩と砂が入り交じった…というか…」
僕はその萌えもんと出会った場所を思い出しながら彼女に伝える。………が彼女の反応は良いものではない。
「………?ここでその様な場所は覚えが無いですね。…どうやってそこに行ったですか?」
僕を見る彼女の視線にちょっと疑いが入った…気がする。本当なんだけどなぁ…。ちょっと腑に落ちないが話を続ける。
「…さっきの地震は分かる?」
「ええ」
「その地震で床が抜けたんだ。…そうしたらそこにいた」
「………床が抜けた場所は?」
「…ヒワダからの入り口近く」
「………」
…彼女が黙ってしまった。やっぱり怪しい奴だとか思われてるのかな…?まぁそうだよな、話だけ聞いたら完全に怪しい奴だ。………本当なんだけど。
「…ま、あの人が来れば分かりますか」
「…あの人?」
「この岩を退かしに来る人です。彼はヒワダ周辺の道の整備をしていますから。しかもこの非常事態…すぐ来ますよ」
「へー…」
彼女はそう誇らしげに断言する程『あの人』のことを信頼している様だ。この萌えもんが話すあの人が僕達を助けてくれる訳か…。出来れば早く来て欲しいけど…
「…君のトレーナーさん?」
そこまで信頼しているってことは彼女のトレーナーさんなのかな?…気になって聞いてみる。
「いえ、彼は決まった萌えもんを持とうとしませんから…でも」
「…でも?」
そう話す彼女の顔には憂いがあった。その上で彼女の言葉は続いているのに気づいた僕は続きを促す。
「…いずれ彼の初めての手持ちになりたい。それが私…ラプラスの望みなんです」
ちょっと長くなったので10-2に続きますー。
次の投稿は番外編ではなく、10-2になる…かも?