歩調を合わせられていた。
私も出来るだけ急いでいるつもりだが、ケイブさんの歩き方は私の早歩きの速度に合わせているなと感じられた。ギリギリで彼の背中を追いかける形になっている。…私が追いかける側なのに情けない話だ。
「…嬢さん。あんたはポケモンセンターで大人しくしてなって」
「…ならケイブさんもそうしたらどうですか?」
「…俺は良いんだよ、こういうのに慣れてるから」
「………この地震に何か当てがあるんですよね?」
早歩きを止めずにそう伝えるとケイブさんのバツの悪そうな横顔が見えた。…図星だ、やはり何かを知っている。
「…だから何だって言うんだ。嬢さんには関係無いだろ。…頼む」
ケイブさんが私にそう言いながらも歩みを止めずにボールからリリーラを繰り出した。そして繰り出されたリリーラは即座にフラッシュを使いながらスリバチ山内部を進んで行く。…そのケイブさんとリリーラの動作は手慣れたものだった。
私はフラッシュの光の中を進むケイブさんの背中に付いていく。…私の足でケイブさんに付いていけるのは前に来た時とは違い、フラッシュにより周囲が見えていることとケイブさんが多少は私に歩調を合わせているからだろう。
恐らく本当に置き去りにする気はないのだ。…そう思いたい。私も歩みを止めずにスリバチ山に入る際に有耶無耶にされた話を再び切り出す。
「関係ありますよ。だって…」
「…ケイブさんは私を何度も助けてくれましたから。…だから私も出来ることがあるなら手伝います!」
…私はそう大きな声で言うがケイブさんは歩みを止めない。そのまま何も言わずに先へと進もうとしている。
………しかしケイブさんがいきなり自分の頬を叩いた。…小気味のいい音が小さく響く。
「…痛っ」
「…ど、どうしたんですか?」
私はケイブさんの急なその動作に戸惑い、声をかける。…しかも自分で叩いときながら痛いと小言を溢したのだ。
「や…何でもねぇ。ちょっと力を入れ過ぎた」
そう言って自分が叩いた頬を擦っている。それが少し滑稽に見えるが…それがケイブさんらしいなと思えた。
「…で、私はどうすれば良いですか?…本当に邪魔なら帰りますよ?」
…しかし私には帰る気は無い。でもケイブさんが帰れと言うならば従うつもりだった。
「………いや、もう帰るよりも進んだ方が速いな。…とりあえずエンジュの萌えもんセンターにいてくれ」
「…分かりました」
…依然としてケイブさんは歩みは止めない。それに私は続いて行く。
………先程よりも彼の歩みが遅くなった気がする。…更に私に歩調を合わせてくれたのか。
「…まさか付いてくるとは思わなかった。…結構急ぎのつもりだったんだぜ?」
「…でも何処か私に合わせてくれましたよね?」
「…かもしれねぇな。…ん、ありがとな」
ケイブさんがボールを取り出し、お礼を言いながらリリーラを戻す。…既に洞窟の出口は見え、フラッシュが必要無くなったからだろう。
………戻っていくリリーラは私の方を一瞬見ながら戻っていった。その際にケイブさんにお礼を言われたからか満足そうな表情が覗けた。
………スリバチ山を抜けて少し歩けばエンジュシティだ。その方向に向かって歩くケイブさんの隣に私は続いていく。そんな中、彼が呟く。
「………もしかしたら」
「…もしかしたら?」
「………嬢さんに何かお願いするかもな、その時は頼むぜ」
「分かりました。…私以外にもドラ君やセーレさんならきっと手伝ってくれますよ」
私はケイブさんと同じく私に協力してくれると言ってくれた二人の名を出す。…ドラ君もセーレさんも優しい人だ。お願いすればきっと手伝ってくれる。
「………アイツらもか」
そう呟いて…
ケイブさんがまた自分の頬を叩いた。…今度は自分で力を調整したみたいだ。痛がってはいない。
「…ま、とりあえず萌えもんセンターだ。嬢さんを送らなきゃいけないからな」
「 …一人で大丈夫ですよ?」
「いや、一応な。その位はさせてくれ」
とりあえず…と言うことはその後何処かへ行くのだろうか?………私は何処に行くのかを聞くのを少し躊躇ってしまう。
するとケイブさんがそんな様子の私を察してくれたのか声をかけてくれる。
「もし何かあったら頼むから、嬢さんは萌えもんセンターで待機してくれ」
「…了解です」
ならば言う通りに萌えもんセンターにいよう。…何かあればケイブさんは言ってくれる筈だ。そう話ながら歩いている内に私の視界に古風な建物が並ぶ町並みが入ってくる。
…エンジュシティはもう目の前だ。