誰かの泣き声を聞くと胸が苦しくなる。
誰かの笑い声を聞くと自分も楽しくなる。
自分の事じゃないのに知らない誰かの感情がまるで自分の事の様に感じてしまって、嬉しくて楽しくて悲しくて寂しい。
ボクは全然子供だった。年齢からしても、人間としても幼かった。ボクから見た大人はボクより圧倒的に長い秒数を生きていて、たった1秒長いだけでも学べるモノがあるだろう。この世界では人の感情や人の言葉を知れば知る程人の上に立てる。
産まれた家系がそうだったのもあるだろうがボクの見てきた大人達は汚かった。家の関わりで挨拶をする別の家の方々は表面上の笑顔を向けていたが、その瞳の奥には相手を下すイメージを浮かべていた。そう感じ取れるのもまだボクが子供なせいだろう。
子供というのは親を見て育ち、大人を見て育つ。なら物心ついた頃から汚い大人を見てきたボクが裏表のない綺麗な人間に育つ訳はなく、人の表情を伺いながら対応を変える人間になるのは必然なのだろう。ボクは大人から生きる為には嘘は必要なモノだと学んだ。
■■■■■■
「初めましてユキ君。唐突ですまないが君は不幸ながら先程死んでしまった」
「そう、ですか……」
唐突であったがその人の言葉聞いてボクは状況を理解した。ここはきっと死後の世界という場所なのだろう。
ボクは死んだ。なぜ死んだか、どう死んだかまでは思い出せないが自分が死ぬ感覚は今でもはっきり覚えている。宙に浮く感覚と共に記憶が一瞬にして蘇り、強く張って糸が切れて力が抜けていく感覚。
「おっと自己紹介がまだだったね。私は若くして死んでしまった霊を次の場所へ案内する仕事をしているんだ。そうだね、言うなれば神様って言われる存在かな」
その人、いやその神は初対面のボクに対して気楽に接してくる。表情は作られた笑顔ではなく本心で微笑んでいるが、その顔はボクのことについて知っていて尚且つ他人を利用しようとする裏があるって顔だった。ボクの内面を知っているなら別に取り繕っても意味が無い。
「おやおや、私の顔を見てどうしたんだい?あぁ、やはりわかってしまったか、流石だよユキ君。そうその通り私は君にお願いがあるんだ」
「お願いですか。既に死んでいるボクに拒否権がないのはわかっていますので余程無理難題じゃなければ構いません」
ボクの言葉を聞いて神様の表情が変わる。これは身内に内情を話して協力を得ようとする時の顔だ。少し話を盛りながら相手の興味をそそりながら自分の都合の良いように場を動かそうとする時の顔。生きていた頃なら盛っている部分を見極めて、ボクに利益がどれぐらいあるかを計算してから決めるが、今のボクは目の前の神様に逆らっても良い事はないことがわかりきっているからどんな話であろうとお願いを聞く事になるだろう。
「ははっ、やっぱ君は面白いよ。死んだ君を無理にでここに連れてきて正解だった。じゃあ聞いてくれないか、ここでは邪神と呼ばれ別世界では魔王とも呼ばれる私のお願いを―――」
■■
邪神とは神でありながら邪悪な存在。何かを創り守る神とは逆に何かを滅ぼそうとする神である。高次元な存在の神様の目的など一端の人間であるボクには到底理解できるモノではない。それ以前に興味もない。
「でさぁ、ある世界を征服しようとしてるんだけど、なんかあっち側が俺を倒すために別世界で死んだ人に神器とか能力渡して送り込んでるらしいんだわ」
「そうですか、確かに直接的に手を出してはいけないという世界の均衡を保つ為の規約は守らないといけないでしょうし、それ正しい手段ですね。で、逆にボクはその送り込まれた人間を殺せいいんですね?」
「いやいや、発想が残酷よ。そうしちゃうとね、ほらあれじゃん?なんつーかさ、未だに誰も来たことがない魔王城で待ち続けるのって暇なんよ。だからさユキ君にはあっちの世界に私の手先として行ってもらいたい訳よ。んで、あっちで強そうな人見つけて魔王城まで来て欲しい訳なんよ」
話初めて数分。この邪神には威厳とか風格を感じなくなった。なんでも神として存在している事に飽きて邪神になったが、やる事がなかったから魔王を始めて勇者と世界を世界の運命を決め大決戦がしたいだとか。
弱冠15歳にして今までに色んな人に会ってきたが、こんな思考の人には初めて会った。いや人ではないが。自分の遊び目的の為に大きなモノを使うのが神様っていう高次元な存在なのか。邪神というか駄神?って感じ。拍子抜けである。
「ユキちゃんさー、1個だけ特殊能力的なのあげるから行ってきてくれね?なんなら寝返って私を倒してもいいしさ、魔王城まで共に来た仲間が実は魔王の手先で最終決戦の前に信頼していた仲間に裏切られるっていう展開でもいいからさ」
「なんか軽いですね。ボクがいた世界って何だったんだろうって思えてきました」
「んや、あの世界担当の神が真面目過ぎるんよ。なんていうかアイツさ、クラスで1人浮いてるタイプっていうかさ、真面目過ぎて周りから1歩距離を置かれてるみたいなさ」
そういうモノなんだろうか。神々の基準はいまいちわからない。でも世界規模での遊びか、深く考えなくて純粋に楽しめそうだ。本来ならもう消えている存在のボクなんだ、延長で最後に思いっきり遊べるならそれもいいかも知れない。
そうして死んだはずのボクは人生の延長をここから始めた。
あのね、読んで詰まんなかったって人にはごめんなさいだけど、書いてて楽しかったです。
ではまた次回よろしくお願いします。