「んぅ…」
どうやら私は寝てたらしい。
あれは夢だったのか?
あり得ない話じゃない。
普通に考えたら、私が転生なんておかしいしな。
それにしても、私は昨日、森の中でなんて寝てたっけな。
森林浴とか?
いやいや、やってないやってない。
ちょっと待て。
森…?
家の近くに森なんてない。
これで私が知らず知らずに夢遊病を発症してて森に来た可能性は0に限りなく近くなったはず。
あと、考えられる可能性は一緒に住んでた親に森に捨てられた説だが…。
これもないだろう。
いくらコミュ障が酷くて、バイトもしない娘だからといって、ポイされるほど親子仲は悪くないし。
…悪くないよね?
「なにやってるの?」
わかった。
まだ夢を見てるんだ。
じゃないとルーミアが私の前にいるなんてあり得ないし。
金髪に赤い瞳、同じように真っ赤のリボン、黒い服。
うん。確実にルーミアだね。
なんの能力もない人間からしたら危険度高めの妖怪のはずだ。
「あなたは食べてもいい人類?」
よし、わかった。
今度こそ、ちゃんと理解したよ。
あれは夢でもなんでもなくて、私はリアルに風呂場で死んで、今まさに転生してきたってことか!
ならば、私が今言うべきことはただ1つ!
『食べていいわけがあるか!私は転生できたばかりなんだよ!』
うん、無理!
言えない!
だって、初対面だし。
心の準備できてないし。
あと、10分くれたらNOくらいは言えるんだけど。
「食べてもいいの?」
待ってくれないよね!
知ってた!
えぇい!
ここはアレだ。
よくある転生モノの主人公みたいにチートで倒すぞ!
私の中に力を感じる。
集中して縛られてる力を解放させる。
掌をルーミアに向けて。
弾幕を出すイメージで、そう、紅い弾幕。
行け!なんかよくわかんないけど私の能力!
その瞬間、勢いよく掌から紅く丸い物体が出てきた。
これは弾幕出たか!?
その赤は重力に従って落下した。
「リンゴが出てきたわね」
うん。リンゴだね。
私の掌からリンゴ出てきたよ。
って!リンゴ!?
慌てて自分の中に感じる能力に集中する。
わかれ!能力の名称!
『飲食物を生み出す程度の能力』
わかった!
けど、これどうしたらいい?
「…くれるの?」
え?
あぁ、リンゴをってことかな。
落ちたリンゴを拾って、パーカーで拭く。
一応言っておくと私の服装はヘタレと書かれた黒のTシャツの上に白いパーカーを着ている。下はジーパンだ。
白いパーカーだから土で少し汚れてしまったのがわかりやすいが、下に落ちたものをそのまま渡すわけにもいかない。
「ん!」
私はトトロに出てくるかんたの如くリンゴを付きだした。
「もらっていいの?」
コクコクと首を縦に振ってみせる。
私、気づいてしまった。
食べていいか聞かれたときにも首を使って伝えればよかったんじゃないかと。
もちろん、振るのは横にだが。
「ありがとう!私、お腹空いてたのよ!」
お礼の言えるいい子だ。
私もありがとうとごめんなさいだけは初対面でもすんなり言える。
躾の賜物だね。
シャクシャクとリンゴを齧るルーミアは幼い子供のようだ。
とても人食い妖怪には見えない。
あ、私ってば食べられそうなんだった。
「ごちそうさま!このリンゴ美味しいわね。どこにあったの?」
どこにっていうか私の中からっていうか。
こればっかしは言葉にしないと伝わんないわけで。
頑張れ私!
ほら、『私の能力で出したんだよ』っていうだけだから。
「…能力」
これしか言えないのか私は!
大幅カットしたな!
私は削減のしすぎだと思うなぁ。
「能力?」
「私の…能力。『飲食物を生み出す程度の能力』」
うん。今回は頑張ったね、私。
「そんな能力あるのね。初めて聞いたわ」
そうだね。私も今日、初めて聞いたよ。
「それで、あなたは食べてもいいの?」
必死に顔を横に振る。
能力でリンゴをもう1つ出して突き出し、頭を下げる。
マジで勘弁してください。
リンゴの重みがなくなり、クスっと笑う声が聞こえたので、顔を上げた。
「冗談だよ」
思わず眉が八の字を描く。
「全然、冗談、聞こえない」
単語単語で話せるようになってきた。
ようやくなれてきたみたい。
「リンゴのお礼になにかしてあげる」
むしろ食べないでもらえてお礼したいのは私の方なんだけど、森の中で迷子は流石に困るし、ここは甘えようか。
「森から出たい」
切実な想いは他の言葉よりすんなりと出るように出来てるらしい。
主人公の能力が判明しましたね。
実は主人公の能力はこれだけじゃありません。
東方キャラの能力って自己申告制らしいからね。
主人公が死なないように神様がくれた能力はもう少しあります。
でも、主人公に戦闘能力は皆無です。