まじで、あたたかい目で見てあげて。
「グルルルッ!」
これ、あれだよ?
お腹の音じゃないからね。
いや、マジで。
「お腹空いてるのね」
うん。よだれダラダラだもんね。
そう、私の前には一匹のよだれを垂らした大人二人くらいは全然乗れそうな狼がいる。
めっちゃ、私を狙ってるよね!
私って狙われやすいのよね。
前世でも動物園でガラス越しにメスライオンが興奮しながら、私が右へ行くと右へ、左に逃げると左へ目を爛々と輝かせてついて来ていたことを思い出した。
私って美味しそう?
ねぇ、ルーミア。
君も食べていいか聞いてきてたよね?
「うんうん、わかるわ。
そうかい、そうかい。
私が聞く前に答えが返ってきたよ。
私達はあれから森を歩いていた。
けして速くない私の速度にあわせてくれてるから、何時間も歩いていることになる。
私の心の壁もかなり崩れて、ルーミアとならそこまで緊張せずに話せるようになってきた。
だんだんと考えたことを口に出す前にアイコンタクトで伝わるようになってきた。
ルーミアいわく、私がわかりやすいらしいが。
途中で名前も教えあった。
いや、今にも飛びかかりそうな巨狼の前でこんなこと考える余裕があるのかというと、無いにきまってるよね!
現実逃避だよバカ!
いない誰かにあたっても仕方ないので解決策をない頭で必死に練る。
私にあるのは何もないところから食べ物を出すことだけ…。
目の前には私を食わんとする腹ペコ狼。
なんとなく私を庇ってくれてはいるものの、呑気なルーミア。
ん…?
飲食物を生み出す程度の能力。
腹ペコ狼。
…一か八かだよね。
やらずに死ぬよかマシか。
めっちゃ、怖くて手が震えるけど。
よし、イメージしろ。
目の前に巨大な肉の塊が存在するイメージだ。
テレビでしかみたことないような肉の塊を。
出てこい!牛肉!
「ルーミア、そこ退いて」
「私が退いたら確実に食べられるわよ?」
「大丈夫。きっと」
「ガウッ!」
ルーミアが退くと同時に飛びかかってきた狼。
次の瞬間、狼と私の間に巨大な肉の塊が出てきた。
私に食らいつこうと開けていた大口は牛肉に突っ込むこととなった。
ムシャムシャムシャムシャ
「まさか、餌付けするとはね。」
「お腹膨れたら、襲ってこないかもって。」
牛肉の塊に夢中な狼を眺めながら会話を交わす。
なんで牛肉なのかって?
そりゃあ、あれだよ。
私の好み。
好みといえば、この狼の毛皮の色は中々に好みだ。
綺麗な銀色をしている。
私がアバターを作るときは大抵銀髪になるのはもはや宿命とも言えようが。
「ウォン!」
食べ終えた狼は、帰ればいいのになぜかその場に座り込み、こっちを見つめている。
君、でかいんだからさ。
至近距離で見つめられると怖いんだけど。
なんで、私は立ち去らないかって?
それはね。
腰抜けちゃってさ。
しょうがないじゃん。
怖かったんだから。
ルーミアがおぶってくれるとも言ってくれたんだけど、女子高生が小学生くらいの身長の子に背負われるのはね。
流石に遠慮しました。
「この狼、そろそろ妖獣になるね。」
「そんなこと、わかるの?」
「私も妖怪だもん」
そういうものなのか。
ルーミアいわく、この狼…。
既にかなりの理性を持っているらしく、恩返ししたいと考えてるらしい。
え、動物の言葉わかるのも妖怪だからなの?
違うよね。
え、じゃあ、既に心通わせる仲なの?
何気に主人公の名前公開。
主人公は心を許した人には全然話せるタイプです。
ただ、長く会ってないと、緊張から片言で言葉を話します。
単純で相手をすぐ信じて心を許すので、仲良くなるのは簡単。