優愛の場合は心の中の声も多くなる。
私は黒い空間に吸い込まれた。
端からみたら自分から飛び込んだように見えただろうが、あれは進行方向に急に時空の割れ目的なのが口を開いたからだ。
けして、自分の意思ではないということだけは断言しておこう。
この黒い空間。
いや、もうスキマと呼んでしまおう。
私の制御の効かなかった体はスキマに入った瞬間、減速していき、最後には尻餅をついて着地した。
それにしても、見渡す限り、目、眼、瞳。
しかも、揃いも揃って此方を見ているときた。
これはなんとも気持ちが悪い。
絵とかではさほどわからなかったが、ものすごく気味が悪い。
とりあえず、コミュ障なうえに視線に恐怖を覚える私は、パーカーのチャックを途中まで下ろし、パーカーを上にずり上げて、またチャックを上げる。
秘技!視線は集まるけど、自分は見えない簡易個室空間!
小学生の時からよく教室の隅っこでやっていた技だ。
心を落ち着けるにはこれが一番だ。
狭いところって落ち着くよな…。
ん?技名長くないかって?よくやってたなら秘技じゃないだろって?
いいんだよ。そんなこまかいことは!
よし、自らにツッコミをいれる余裕が出てきた。
ルーミア達の元へ戻りたいところだが、私が中に入りきると同時に、スキマは閉じてしまった。
閉じていくスキマから見えたルーミアの表情は焦りと、驚きと、悲しみ、そんな色んな感情が渦巻いているようだった。
というか、このスキマに私を招いたのは明らかにあの人だ。
妖怪の賢者、スキマ妖怪の八雲紫。
彼女はいつも上品に笑っている。
強者ゆえの余裕から来るものなのかなんなのか。
紫というキャラクターはどんな小説を読んでも、大抵何処かに含みのある人物だ。
なんの用事も無しに私を、というか関わりのない人間をスキマで捕らえるとも思えないけど。
たまに聞くことのある。
人里以外では人間を襲ってもいいってルールに基づいた犯行じゃなければ。
そう考えるとルーミアってホントいい子だな。
リンゴやらなんやらで襲わないでいてくれるなんて天使かよ。
あ、妖怪だった。
にしても、もし私を食料としてスキマに入れたんだとしたら。
私にできることは精々土下座くらいだ。
プライド?
そんなもの、生き残るためならかなぐり捨てる!
それが、私の生き様だ!
うん。最低だなって自覚はある。
でもね。
小説でよく見る転生者のように、強いわけでも、鋼の心を持ってるわけでもなくて、頭もよくないし、本当に何処にでもいるような、中の下または下の上くらいの人間で、できることなんてたかが知れてるんだ。
でも、そんな私でも、やっぱり自分が可愛いんだよ。
それに、なんか、ルーミアが待ってる気がするんだよね。
決して付き合いは長くないけど、そんな気がするんだ。
ルーミアに案内してもらってる途中だしね。
これが私の思い上がりじゃないことに掛けて、私はなんとしても生き残らないと!
「あら」
ビックゥ!
背後から声が聞こえたよ!?
既に心折れそうなんだけど!
ルーミア!ヘルプ!!SOS!!
とりあえず、土下座だ!
「ーーーでっ!」
「貴女、何してるの?」
土下座に失敗しました。
チャック閉めたまま土下座しようとしたから、バランス崩して額から着地。
おでこをおさえて悶絶中なり。
もう、本当に誰か助けて。
あれ、ほぼ紫出てなくね?
主人公もほぼ喋ってなくね?
いや、主人公は通常運転か。