チャックを下げると目の前に目玉。
思わず気を失うかと思った。
いや、失いたかった。
そのまましっかりと土下座をしなおす。
『お願いします。殺さないでください。私、まだ生きたいんです。』
とりあえず、このくらいは言えると上出来だろう。
よし、勇気を振り絞って。
「頼む。殺すな。死ねない。」
うん。なに言ってんだこいつ。
なんだよ。死ねないって!
これじゃあ、見逃してくれるものも殺されるよ!?
「妖怪対して警戒するのは結構なのだけど。私、貴女を殺す気はないわよ?というか、話しづらいから顔を上げなさいな」
ホントか?
嘘の可能性も…。
とはいえ、逆らってもどうにもならんか。
はぁ。なんか考えすぎて疲れたし、信じとくか。
なんとかなる…だろ。
顔を上げると辺り一面の気味の悪い目玉なんか、一切気にならなくなるほどの美女、いや、美少女がいた。
紫色のドレスを身に纏い。腰近くまであろうかという金髪を何ヵ所か赤いリボンでまとめ、名前と同じ色をした、少し細められている瞳にどこか呆気にとられたような表情の私が写っている。
口元には笑みを浮かべ、瞳と相まって怪しい笑みと表現するほかない。
だが、その笑みは確かに怪しいのだが、その中のある妖艶さに私は囚われてしまった感覚に襲われた。
妖艶な笑みを浮かべるその顔には、どこか未成熟なあどけなさも感じた。
だから、私は美女ではなく美少女と言い直したのだ。
なんなんだこれは。
これが魔性というものか。
そんな風に見とれていると私は気がついてしまった。
そもそも、命乞いの前にお礼を言わなければいけないのではないかと。
あのままいっていれば、少なくとも大怪我はしていただろう。
先に抱いていた紫という人物像など、早速どうでもよくなった私は、彼女に礼をすることにした。
例え、利用する気で連れてこられたとしても、私にできることなどたかが知れてる。
食べられるって可能性はかなぐり捨てておこう。
『順番が逆でした。まずは助けていただき、ありがとうございます。』
これで完璧だろう。まぁ、今さらちゃんと言葉にできるとは思っていないけど、頑張れ私!
「逆だった。ありがとう。」
「えっ?」
これってさ。何に対しての礼か全然伝わんないよね!
あと一言頑張れよ!
ゆかりん困ってるしょや!
「助けてくれて…。ありがと」
「あ、あぁ、どういたしまして。貴女って変わってるわね。土下座して命乞いしたかと思えば、じっと見てきて、笑顔で急にお礼を言ったかと思えば、突然困った顔になって、困った顔のまま、助けてくれてありがとうなんて」
え、そんな百面相してたの。
私ってたしかに顔に出やすいらしいけどそこまで!?
「えっと、あの、それで、なんか用?」
「ええ、貴女はどうやって幻想郷に入ってきたの?急に結界内に現れたから警戒してたんだけど」
「え、急に、現れた?」
「ええ」
うん。神様さ。
そこら辺の処理しっかりしてくれないと私、あっさり死んじゃうよ?
「うーん、どうやってかは、わかんない。私も気がついたら、ここにいたから。」
嘘はついてないよ!
気がついたら転生し終わってたんだから。
「でも、本人がいうのもなんだけど、そんなに警戒しなくても大丈夫だと思う。私、戦う力とかないし。……ん?」
私、なんか変だなぁとは思ってたけど気づいてしまったわ。
言おうと思ったことがすごいスムーズに言葉になるんだけど何事!?
私、ついにコミュ障脱却か!?
「話しにくそうだったから、少しだけ境界を弄ってみたのよ」
「なるほど」
私の力ではなかったか。
なんとなくそんな気はしてたけどさ。
でも、今の私なら初対面の相手でもクーデレ風には話せるってことか!
なんだよ。クーデレ風って。
ゆかりんの魅力に圧倒される回でした。
主人公自身はコミュ障を治したいと考えてる。
コミュ力って生きてく上で大切だもんね!