アフロディーテを目指して奮闘する物語。
こんにちは、私の名前はアフロディーテ。只今・・・修行中である。
「ちょっとちょっと!!真面目に死んじゃうからやめてください!!」
「大丈夫だ、アフロディーテ。あとは黒バラを100本避けるだけだ」
「それが危ないって言ってるんです!!私はあんたみたいな人外じゃないですから!ごく普通の人間なんです!!」
「ほう、アフロディーテよ。師匠に向かってあんたとな。そうかそうか、そんなに修行がしたいのか。赤バラ100本も追加してやろう」
「ちょ・・・待って!!ホントに死んじゃいますからぁぁ!!」
赤バラ(ロイヤルデモンローズ)と黒バラ(ピラニアンローズ)のダブルコンボをくらって宙に浮いた私は、薄れゆく意識の中ここに至った経緯を思い出していた・・・。
アフロディーテに転生する前の僕(前世)は日本の普通の学生だった。あの日僕は宿題を終えてから、ベッドの上で寝転んで聖闘士星矢を読んでいた。アフロディーテ格好いいなって思いながら寝た・・・はずなんだ。次に目が覚めると何故か自分の部屋とは違う光景が目に入ってきた。
「おぎゃあ(ここどこ?)」
「生まれてきてくれてありがとう。あなたの名前はアフロディーテよ」
「おぎゃあ?(ん?アフロディーテ?)」
「ふふっ、元気な子に育つのよ」
目の前には水色の髪を持つきれいな女性。視線を落としてみると、小さい手足が見える。極めつけはおぎゃあやうーといった言葉しか出ないこと。最初は、夢だと思って安心していたけど、しばらくたっても夢から覚めなかった。なんでだ。
しかもこの女性、今アフロディーテって言ったよね?死亡フラグ満載の聖闘士星矢の世界に転生した可能性があるということか!?確かに格好いいって言ってたけども。
・・・まだ慌てるような時間じゃない。これは夢だ。夢の中で、偶然水色の髪をもつアフロディーテという名前の少年になっただけかもしれないじゃないか(震え声)。とりあえず目立たないようにしてほのぼの過ごしていけばいいんだ、と目標を立てた。
しかし現実は非常である。何年たっても夢から覚めなくて、過ごしていくうちにだんだん転生したという実感がわいてきたのだ。意識がある状態でおしめを変えられるって、何気にきついことだったんだと気が付きたくないことも知ってしまった。
原作のアフロディーテが聖闘士になった経緯はわからない。しかし、僕は普通に過ごしてただけなのに、突然家まで教皇が迎えに来たんだ。わざわざ教皇の装備をこんなところまでしてるんだなと現実逃避をしている間に、彼はお母さんを説得していたのである。僕は彼に聖域まで連れていかれて修行することになった。
・・・少しは引き留めてくれても良かったんじゃないか、お母さんよ。教皇とお母さんの間にどんな話が展開されていたのか、今は知ることができないが。
他の訓練生と混ざって修行していたある日、魚座の黄金聖闘士である師匠に実力が認められ、師匠の下で修業をすることになった。・・・他の訓練生はその時羨ましそうな顔をしていたけど、今の修行内容を聞いたらあっさりと手のひらを返しやがった。誰か代わってくれ。
その修行段階で、口調や一人称を叩き直され、自分のことを僕から私と呼ぶようになった。
聖域に連れていかれた時は、何故自分のことがわかったのか不思議に思っていたけど、小宇宙が他の人とは違ったのかもしれない。調子に乗って岩砕きとかしなきゃよかったかな(遠い目)。
双魚宮で目が覚めた私は、痛む体を引きずりながらベッドに向かいそのまま倒れこんだ。師匠はどうやらもう寝てしまったらしい。あの男、絶対に許さんぞ!!
しかし悲しいことだが、次の日からの修行の大変さに殺意は忘却の彼方へと消えてしまったのだ。
「いつまで寝てるんだ君は!!」
「ぎゃああああああああ!!」
翌日おびただしい量のバラと共に私の朝は始まった。昨日の毒が抜けきってないため朝起きるのが遅くなってしまったのは悪かったと思っているけど、いちいちロイヤルデモンローズを投げてくるのはやめてほしい。ほらみろ、ロイヤルデモンローズが刺さっている私の額からおびただしい量の血が出ているじゃないか。ドクドクいってるぞ師匠。最近致死量の毒でも耐えれるようになってきた私の体が何か悲しい。
「すみません、起きました」≪ドバドバ≫
「ああ、起きたんだね。朝食はできているから早く食べるといい」
「はい」
重い体を起こし食事テーブルに向かう。食事は当番制であり、師匠の作る料理はとても美味しそうである・・・見た目だけなら。
実を言うとこの中にはたっぷり毒が入っているのだ。師匠が言うには毒殺される危険性を無くし、毒バラの毒に耐性を持つためらしい。思わず納得してしまった自分は、色々と毒されているようである。今では、ピリッとした旨味がいいなんて思ってしまっているまである。
自分が料理を作るときには流石に毒は入れない。たまには普通に美味しいものを食べたいのだ。前は日常的に料理をしていたおかげか、料理の腕はそれなりにある。師匠に褒めてもらったときは嬉しかった。
「いただきます」
「ああ」
「・・・・・」
「・・・・・」
そう言って食事を始める私。うん、この紅茶も美味しいな。流石師匠である。後は、毒が入ってなければ完璧なんだが。
食事が始まってしばらくしたが・・・さっきから師匠が私の顔をずっと見ているため、落ち着いて食事をすることができない。
「どうしたんですか?私の顔になんかついてますか?」
「いや顔についているも何も、ロイヤルデモンローズが額に刺さってるんだが・・・抜かないのか?」
「!!」
頭がさっきからぼうっとすると思ったら血を流しすぎていたためらしい。急いで抜いて応急処置を行う。疲れすぎて自分の生命の危機に気が付かないなんて・・・社畜ってこんな気分なのかな。私の場合笑ってすまされることじゃないんだが。毒の耐性がこんなところに生かされるなんて悲しいんだが。
「ご馳走様でした」
「食器は洗っておいてくれ」
「はい」
食べ終わった食器を洗い終えて師匠の下に戻ると師匠が支度をしていることに気が付いた。
「あれ、師匠今日どこかに行くんですか?」
「ん?ああ今日は教皇様に呼ばれていてな。おそらく任務があるのだろう。だから今日の修行は自分でやっておいてくれ」
「そ・・・そうなんですか(歓喜)」
思わぬところで休日ゲット!今日は一日中寝てようかな・・・体力回復のために。それか遊びに行くのもいいかもしれない。やっべえ、凄いワクワクしてきたぞ!!
「わかっているとは思うがサボるなよ」
「わかってますって」
他の黄金聖闘士やその候補生を誘って遊びに行くのもいいかもしれない。師匠を見送った後に僕は今日何するのかを考え始めた。
少し考えた結果今日は誰か誘って遊びに行くことに決めた。誰か暇な人いるかな~。双魚宮は12宮の1番最後に位置しているので外に行くためにはわざわざ歩いて降りていかなければならない。その途中で暇な奴を見つければいいだろう。
「カミュ、今日暇?」
「すまない、修行があるんだ」
「シュラ、今日空いてる?」
「すまん、鍛錬に忙しいんだ。もっと研ぎ澄まさなければ・・・」
「あ、アイオロスおはよう」
「ああ、おはよう。今日はいい天気だな」
「外に遊びに行かないか?」
「む・・・誘ってくれるのはありがたいんだが、今日は用事があってな。申し訳ない」
「わかったよ」
「ミロ、今日暇?」
「いや、今日はカミュと一緒に修行するんだ」
「シャカ今日暇?」
「いや、私は精神統一をしなければらなないのでな。良かったらお前もどうだ?」
「遠慮します!」
「アイオリア、今日暇?」
「早く兄さんに追いつけるように鍛錬しなければならないから行けないんだ」
「デスマスク今日暇だろ?遊びに行こう」
「なんで決めつけてんだよ。遊びに行きたいのは山々何だが今日は師匠と模擬戦があって行けないんだ」
「な・・・なんだと!?デスマスクに予定が・・・!?」
「おい、それどういうことだ!!」
予定が空いていると思っていたデスマスクに断られた。なんで皆修行ばっかりなんだよ!真面目ちゃんか!
・・・気を取り直して次行こう。
「サガ、おはよう」
「おはようアフロディーテ。今日はどこかに行くのか?」
「はい、今日は外に出かけようかと。それで・・・」
「私は行けないが楽しんで来い」
「ありがとうございます」
まさかの誘う前に断られるパターン。だ、大丈夫だ。まだアルデバランとムウがいる!私はボッチではない!
「アルデバラン今日・・・」
「すまん、忙しいんだ」
「ムウ・・・」
「シオン様に修行をつけてもらうんだ」
「そ、そっか。頑張ってくれ」
私はどうやらボッチだったようだ。私の人望の無さが辛い。・・・なんか悲しくなってきた。おかしいな、目から汗が・・・。
しょうがない、今日は1人でパーッと楽しもう!
調子に乗った私が町中で目立ち、それが師匠の耳に入り帰ってきたと同時にピラニアンローズを投げられたのは言うまでもないだろう。おかげで体はボロボロである。しばらくの外出禁止令が出た。
アフロディーテは憤怒した。必ず、この目の前の畜生を除かねばならぬと決意した。アフロディーテには外出の許可がなく、外の様子はわからぬ。このアフロディーテはポンコツである。けれども邪悪に対しては、人一倍に敏感であった。
・・・よってこの目の前の蟹が、何故
「き・・・貴様、私が外出禁止なのを知っているのに、私の目の前で食事をしているな!」
「うめえ、うめえ」≪モグモグ≫
「咀嚼をやめろッ!!」
私の目の前にいるデスマスクは、ようやく咀嚼をやめたと思いきや今度はこちらを見てニヤッと笑ってきた。
「いや~、期間限定で売られているこのステーキを食えないとはお前も災難だなあ」
「貴様・・・この前馬鹿にしたのを根に持っているのか?」
「ああ、なんて美味いんだろう。お前の悔しい顔を見ながら食うと、美味さが倍増するぜ!!」
「よかろう、喧嘩なら買ってやるとも。二度とその口を開けないようにな」
私は懐からデモンローズを取り出す。このニヤケ面ムカつくッ!!
「おおっと、いいのか?今日は双魚宮の掃除を任されていたはずだろ?戦闘なんかしたらまた叱られるぜ?」
「ッ・・・!?」
落ち着け、落ち着くんだ、アフロディーテ。これは奴なりの仕返しだ。私が肉を好んでいるのを知っていて、ステーキをチョイスしているのも奴の作戦だ。ここで戦闘なんてしたら奴の思うつぼだ。この仕返しは今度してやればいい。
そう考えると、気分が落ち着いてきた。大丈夫、私は今クールだ。
「いやあ、やっぱ高い金払って買う肉は美味い!!なんでお前は食わないんだ、こんなに美味いのに?・・・あ、そっかこの前ハメ外して浮かれちゃったからか」
「死ぬがいいッ!!」
気が付いたら私はデモンローズを投げていた。もう清掃なんて知るかッ!!今日こそお前の息の根を止めてやる!!
怒っている私の投げるバラの軌道は単調なのかデスマスクはひょいひょいと避けていく。辺り一面に亀裂が走り、煙が立ち込める。しまった、デスマスクを見失った!?
煙が立ち込める中、私は右の方に人影を見つけたので三本のデモンローズを投擲する。相手は動く様子がない。これは仕留めたッ!!
「これはどういうことか説明してくれるか?アフロディーテ」
ようやく煙がはれたとき、私の目の前にはデモンローズ三本を右手に持ち、修羅のような顔をしている師匠がいた。
「いや、これはデスマスクが・・・」
「デスマスクなんてどこにもいないじゃないか。人のせいにするなよ、アフロディーテ」
私はすぐさま説明しようとするが、師匠にばっさり切られる。デスマスクの奴ッ、逃げやがったな!!
「私は、宮の清掃を頼んだ筈なんだが・・・これは一体どういうことだ?」
「あ・・・あの、それは」
「どうやら罰が足りなかったようだな。私も甘くなったものだ」
「」
師匠によって罰が追加された。デスマスク・・・次会った時絶対殴ってやるッ!!
デスマスクの煽りスキルとアフロディーテのチョロさが合わさった結果()。