FPSの達人だと自称する男がファンタジーを蹂躙できるかどうか?
『AK-47』
『無限リスポーン』(再生中50秒間無敵状態だが行動不可)
だけっ!!
突然だがFPSって知ってるか?
ファーストパーソンシューターの略で自分の視点で銃を撃って敵を倒すんだ。
あっ? 良く解からない? 何だよFPSも知らないのかお前ザコだな。
アレだよ、小学生にも解るような説明してやると、タイムクライシスとかバイオハザードとかいうのがゲーセンにあるだろ?
アレだ。相手がどんな化け物だって鉛玉や特殊弾頭を適切に当て続けてやれば絶対無敵だ。
何せ銃弾より速く動けて硬い生物なんてこの世には存在しない。
もしファンタジーの世界に転生できたらトロトロと詠唱している魔法使いや、弱点むき出しで名乗りを上げている騎士共、
銃より射的の短い弓矢で粋がっているエルフ達を蹂躙してウハウハしてやるぜ。
卑怯とか正道なんて知った事か、戦場には生きるか死ぬしかないんだ。
俺がそうやって独り言をブツブツ言っていた時、瞬間足元にポッカリと大穴があいて、突如その中に落ち込んだ。
| | | |
――――――――v・□・v――――――――
どう考えてもコンクリートジャングルな現代日本の都会とは似ても似つかない場所だった。
普通はこのような状況があれば混乱するものなのだが、若干妄想と現実が混同している所がある真栗には、コレがすぐに異世界転移だと理解できた。
因みに異世界転生とは、対象者が異世界で生まれ直す事であり、異世界転移とは対象者がそのまま異世界へと移動する事を指す。
彼の想像を裏付ける様に、彼は何時の間にかその手にAK-47、別名カラシニコフという世界で一番有名な銃を持っていた。
挙句にチュートリアルの様に、彼には此処は戦場であり、2つの陣営の過激派がやり合っている。
そしてこの世界には銃と言う存在の概念自体が無く、魔法使いは呪文を唱え、騎士は名乗りを上げて襲い掛かってくるファンタジーの世界であり、
転移する際に、真栗はこの世界にいる限り何度でも蘇る事が出来る『無限リスポーン』という特別な力を得た。
そのような情報が直接脳内に入り込んできた。
その時だった、
「やあやあ我こそは超凄い先祖を持つピャレント・S・セブンライトなるものぞ。
そこの怪しいヤツどうやら我が敵の様であるからしていざ尋常に―――――」
何やら真栗を発見した騎士の様な男が剣を天に向けて名乗りを上げ始めた。
ああ、これが攻撃の予兆か。
真栗はそれを理解した。だが、態々最後まで名乗りを聞いてやる必要はない。此処は戦場だ。
生きるか死ぬかの世界だ。
だからこそ、真栗はピャレントに向けて発砲した。
だが、しっかりと狙った筈の銃は見当違いの方向に弾丸を射出した。
狙った通りに必ず命中するのはゲームの主人公が凄腕な訳であって、真栗にはどんな状況下でも狙った通りに当てる百発百中の能力は無い。
真栗はその後も何度か撃ったが、ピャレントには一つも当たる事は無く、その間に名乗りが終わってしまい、
迫って来たピャレントから逃げ出した。
だが、直ぐに距離が縮まっていく。彼の後ろからは「逃げるか卑怯者」と叫ぶ男が迫ってきている。
ピャレントはどんどんと速度を上げてきているが、対照的に真栗はバテ始めた。
ゲームの主人公は無尽蔵のスタミナで疲れる事無く走り続けられるが、それはゲームの主人公がそういう設定なだけである。
別に真栗は元特殊部隊の隊員でも何でも無い。
だが、天はこの時真栗を見捨てなかった。
ピャレントは突如その場に表れた宿敵、ライス・U・ウエストライトの登場によりそちらに気を取られ、真栗は逃げる事が出来た。
真栗の背後では、
「我が先祖代々伝わる聖剣メチャツヨイバーの錆にしてくれる」
「フン、俺の愛槍ヒャックショーの前に朽ちるがいいっ!!」
そんな名乗り合いが始まっていた。
逃げていると途中に何故か木箱があった。これはゲーム的に考えて、何故かどの銃でも使える口径を無視できる銃弾が入っている箱だろうと真栗は理解した。
実際にその通りである。但し木箱は簡単に壊せなかった。金属製の帯で箱は包まれており、ニッパーも無い状況では真栗には開けきる事は出来なかった。
ナイフさえも真栗は持っていない。故に帯をゆっくりゆっくり横にずらしながら外そうとしていた。
割と時間がかかってしまった。
だからだろう、エルフの弓兵に見つかってしまった。
真栗のすぐ横に矢が刺さった。
どうやら射程が届かなかったのかも知れない。
そこで真栗は気が付いて、今までにFPSで培って経験を元に近くの岩影に隠れた。
エルフは矢を構えたまま跳躍してきたが、岩を貫通させる程の矢は放てないだろうから岩影に隠れきっている限りは安全だ。
だが、真栗はぽっちゃりという言葉でも無理がある巨漢…まあぶっちゃけてデブである。
岩からはみ出ていたお尻に矢が刺さってしまった。
ゲームの主人公は打たれても反動で仰け反るか、ウッと悲鳴をあげたりSHITと叫ぶ位で直ぐに反撃に移れるが、真栗は違う。
痛みで動けなくなってしまった。
その間にエルフは近付いてきている。
真栗はお尻に刺さった痛みで叫びながらうずくまっている所をエルフに止めを刺された。
『リスポーンが発動しました』
『但しその間50秒間の停止ペナルティが発生します』
エルフは気が付かなかったが、何時の間にか真栗は復活していた。
故に背後を向けていたエルフに向かって発砲した。今度は上手く当たったのでエルフは死んだ。
真栗はそれからも移動を続けていたが、デブには有酸素運動は向かない。
直ぐに疲れてしまった。
そこで先程のピャレントに見つかってしまった。
再び名乗りを上げている内に撃とうとしたが、今度は弾切れだった。
ゲームでは画面の端に残弾数が表示されるが、此処ではそんな親切仕様では無いようで、パニックで残弾を数えていなかった真栗には判らなかった。
まだ木箱から新しい弾薬は出していない。
急いで木箱に駆け寄ったが、親のコネ込みとはいえ、百人隊長にまでなったピャレントの攻撃を受けて真栗は死亡した。
『リスポーンが発動しました』
『但しその間50秒間の停止ペナルティが発生します』
その現場を魔術師であるセブンライト家付きメイドは見ていた。
親が凄いだけの楽天家な道楽息子ピャレントにお金の力と実家の威光で救われたという裏設定がある彼女は、
主人であるピャレントには滅法冷たい言葉を吐くが、その心に秘めた忠誠心は本物である。
相手が攻撃してきても、わざわざ戦いの前に名乗りを上げる事を中断しない主人のプライドと、その命を護る為に彼女はどちらかというと外道な手段を取る。
例えば、そう例えば、胴体から離れた頭が消え失せて、首から頭が再生している最中の真栗に対して、
その始まりから1秒も経たずに対象を焼き尽くす業火の呪文を唱え始める程度には彼女は戦場を割り切っていた。
詠唱時間は35秒。
停止ペナルティの時間よりも少しだけ早かった。
リスポーン中は謎パワーで無敵な真栗だったが、目が再生した辺りで寧ろ停止ペナルティの終了が永遠に来ないで来ることを願う他無かった。
そして、残り時間5・4・3・2・1―――――
「あづい”い”ぃい”いいいいぃっっ!!!!」
リスポーンしたばかりの所に範囲攻撃がセットされていた為に、再度死ぬ事となった。
『リスポーンが発動しました』
『但しその間50秒間の停止ペナルティが発生します』
銀髪ロングの美少女メイドのカセーフは真栗が再生する度に殺し続けてその身柄を自国に持ち帰った。
勿論手柄は主人のモノという事にしている。
氷のような表情と淡々とした声で、
「ピャレント様はこの不死身の男をちぎっては投げ千切っては投げ――――」
と嘘八百を並べて賛美した。
ピャレントはこの功績で千人隊長にまで出世した。
ついでにカセーフを妻にした。しかも正妻である。
一方、真栗は今日も薄暗い実験室で国王の不老不死の研究の為に日夜実験され続けて死に続ける日々を送っていた。
あらゆる毒物や責め苦、死亡の条件を探る為に徐々に内臓を抜きだしたり、焼いたり焦がしたりという地獄が始まった。
『リスポーンが発動しました』
『リスポーンが発動しました』
『リスポーンが発動しました』
『リスポーンが発動しました』
『リスポーンが発動しました』
――――――――――『リスポーンが発動しました』
登場人物の名前の元ネタ
『イキりまくり』
『親の七光り』
『魚沼産コシヒカリ米』
『家政婦』
ご意見・ご感想お待ちしております。