転生とかもっとこう・・・なんか違くね?   作:九十九夜

11 / 14
デートとか・・・なんか違くね?

「鏡間―。次はあっちの店がいいですっ」

 

「・・・。」

 

「ま、まて。アルテイル!!貴様金を持っておらんくせに先に行くな!!」

 

金髪の青年に、金髪の少女。そして黒髪の童女。

この珍しいというか、派手な取り合わせに極力目立ちたくない鏡間は何とかアルテイル・・・金髪の少女にそこらの町娘の間で流行っている服を着せたりと多少の努力は見て取れるのだが、如何せんアルテイルが事あるごとに彼の名を大声で呼ぶため全く意味を成していない。

 

「ったく・・・ゾウカ。貴様はどうする。」

 

そんなアルテイルの様子に、チャリっと手に持っていた美しい細工のかんざしをもとの位置に戻して鏡間がゾウカに問う。

 

「・・・どこでもいいわよ。」

 

黒髪の童女。ゾウカは何処かぶすくれながら返事を返した。

その手は片方を鏡間に、もう片方はかわいらしい巾着を持っている。

ゾウカ・・・キャスターは童女姿という事もあって心身ともに疲弊しきっていた。

 

(若い子は元気ね・・・。)

 

自分があんなにはしゃいでいたのは一体なんじゅ・・・何年前だっただろうか、とアルテイルの姿を見て黄昏るくらいにはもうすべてがどうでも良くなってきている。

赤外套からの依頼なんか知るか、もう自分で調べれば?相方は既にご到着済みよ。と内心で鼻で笑うくらいにはフラストレーションも溜まっている。

そんな彼女の心持を察してかどうかはわからないが鏡間が休憩を提案したことにより何とか最寄りの休憩所に立ち寄ることが出来た。

 

ちょっとお手洗いに!!と言って果実水を飲み過ぎたらしいアルテイルが何処かに行ってしまうと、それと入れ違いになるように鏡間が帰ってきた、手にはゾウカに配慮してか温いお茶を持っている。

 

「ありがとう。」

 

「ああ。」

 

沈黙。時々どちらともなく飲み物を飲む。

それをお互いに三回ほど繰り返して、ゾウカが口を開いた。

 

「聞きたいことがあるのでしょう。例えばそう、私がスパイじゃないか、とか。」

 

それに鏡間は答えず、こくりと残りの自分のお茶を飲み干した。

 

「・・・なんだ、聞いたら答えてくれるのか?」

 

「あら、将来の旦那様になるかもしれない人だもの。信用して欲しいわ」

 

わざとらしく幼子らしい無邪気な笑顔を浮かべた。

 

「・・・どこから聞いた。」

 

「ふふ、聞いたんじゃないわ。分かるの。あの(ヒト)の考えそうなことだもの。今後の手駒として是非とも千手は欲しいわよねって話よ。それで・・・ほら、消去法で言うと次の世代で頭領に選ばれそうなのって貴方じゃない?」

 

鏡間の苦虫を噛み潰したような顔を見て幾分かイラつきを抑えることができたゾウカは無邪気な笑顔をやめて、鏡間からも視線を外し、彼と同じように休憩所越しに通りに目を向ける。今日は人通りが多いらしくちょっとやそっとの内密な話はすぐに喧騒に掻き消された。

 

「そうか・・・だが、残念ながら我は今のところ誰とも婚姻など結ばんぞ。」

 

「あら?どうして。あなた、より取り見取りそうだけど」

 

鏡間がぽつりと落とすかのような呟きを丁寧に拾い上げ、わざとらしく聞き返した。

容姿が容姿、且つどことなくその警戒すべき人物に似ているところのあるこの男の言葉をそのまま鵜呑みにするのもつまらないからという、鏡間がそう言った負の感情を自分に向けないという前提があってのちょっとした意地悪のつもりだった。

 

「我はお前のようなこれからのある者とはごめん被る。ロリコンではないんでな。」

 

「あら?趣味嗜好?あなた熟女が趣味なの?」

 

今だ感情らしい感情を載せていない、というより逆に削ぎ落とされていくかのように変わらないその表情に、納まったであろうフラストレーションが再度大きくなる。

 

「違う。我の理想は我への愛がなく。ただの取り決めのためだと割り切ってくれるような女とだという事だ。」

 

これからのあるものだともしかしたら何かの間違いで愛とやらが芽生えるかもしれんではないか。とゾウカをみて付け足した。

 

「はあ?なあに其れ。あなた変わってるわね。マゾヒストとかいう奴かしら?」

 

「いや。・・・ああ、余命僅かなものなら例外としてありだな。」

 

「・・・ますます変わってるわね。普通何かしらの有益なつながりが出来たらこじれないように歩み寄ろうとするものじゃないの?」

 

結婚=自分を追い込むものなら恐らく万人は結婚などしないのではなかろうか。というかゾウカ改めキャスターなら絶対しない。自分が想像していたのとは違っていた、が、ますます男が分からなくなっていく。

眉根を寄せて渋い顔を造るゾウカに相変わらず視線を向けずに苦笑した鏡間はポツポツと話し出す。

 

「少し、昔話をしよう。・・・我が僕だった頃。基本的に僕は独りだった。近づいてくるものは大概利用しようとしてくるような連中ばかりで・・・ここら辺は貴様も経験があるのではないか?」

 

確かにこの童女・・・ゾウカも、そしてキャスターも権力にほど近いところに生まれ、そしてそれゆえに人の醜さを知ることとなった。それは、忍も貴族も王族も変わらないのかもしれない。

 

「だが、誰も僕を見ていなかったわけじゃない。一人、僕を理解しようと幼いながらに近づいてきた奴がいた。・・・既にほとんど覚えていないが。他愛のない話をして、馬鹿をしたときは一緒に謝るような、そんな奴だ。やがて僕も奴も戦場に出られるくらいの年になった時、奴が嫁を取った。幼馴染で、好きあっていて、とても幸せそうだった。」

 

何処か遠くを見ているような彼の横顔を見つつ、興味がないようなふりをしてゾウカはこくりと冷めたお茶を飲んだ。

 

「けれど、」

 

 

「けれど、奴はそれから三月後の戦で殉職した。忍にはよくある話だ。」

 

 

「そして、奴の通夜には棺桶が一つ。葬儀には棺桶が二つ(・・)、並んだ。」

 

「それは・・・」と言いかけてゾウカは口を噤んだ。

 

「・・・もうわかるだろう。葬儀の棺桶のうち一つは奴。もう片方はその妻だ。自殺だった。」

 

「・・・どう、して。」

 

ここで始めて鏡間はゾウカの方を見た。

彼の顔は何一つ動かない、無表情だったが、その瞳に移ったゾウカの顔は今にも泣きそうだった。

 

「・・・他の集落の暮らしぶりはわからんが、我たち忍はいつ死ぬかわからん。それが明日かもしれない。・・・我の一族にはくノ一もいるし、女のみで商いをしている者もいる・・・だが、それが出来ないものは?稼ぎ頭であった夫を失った、家の中で生きてきた女たちは、どうなると思う?」

 

ゾウカはごくりと生唾を飲み込んだ。

だって、そんなの、聞かなくても決まっている。

そんなの、生きていけない。

 

「大体は一端実家に戻って、喪が明けたとともに違う、親の見繕った相手と婚姻を結ぶ。他に生きていく道がないから、そうせざる得ないのだ。特に乳飲み子を抱えた奴などはそれこそすぐだ。なんせ、自分も飢えるが、子供も飢え、そして死ぬ。だから、仕方なく、生きていくために好きでもない男と婚姻を結ぶ。・・・おそらく奴の妻はそれが嫌で逝ったのだろうよ。」

 

「・・・鏡間。あなた・・・。」

 

呆然としたゾウカの口から震えた声が出る。

 

「何、我に特別そういったものがいるわけではないが。そうさなあ・・・できれば、俺の目の届かない何処かで、そんなこととは無縁に幸せになってほしい・・・か?まあ、もし、だが・・・。」

 

―――嘘だ。

この男が先程手にしていたのは女物の簪だった。いや、その前からちょくちょく特定の女が好きそうな女物を見ていた。大体が赤系統であまり派手過ぎず質素過ぎずといった具合だったため自分やアルテイルではないだろうなと思いつつきっとそういう趣味なのだろうと関心がないふりをしていたのだが・・・。

 

「・・・そう。叶うといいわね。」

 

 

ちょっとお手洗いに行ってくるわ。と言ってその場を立ち去ると物陰でアルテイルがうずくまっていた。

 

「邪魔よ。早くいってあげれば?」

 

「・・・いえ、私が行っても。今の彼には不要でしょう。」

 

「あ、そう・・・胸くらい貸すけど。」

 

沈んだ様子のアルテイルがぶんぶんと幼子のように首を振る。

全く、どっちが年上なんだか。と思いつつその場に腰を下ろした。

 

「・・・すごい決意というか・・・なんというか私もあれくらい言えるくらいに」

 

「そういうの私の前ではいいから、本音は?」

 

「・・・それでも、彼のうちにいる思い人が消えることは、無いのでしょうね。」

 

膝の上の拳が一層強く握られる。

 

「・・・そうね。私も後すうじゅ・・・数年若くて、まだ迷っていたころなら、あなたのように思っていたでしょね。・・・だって彼。」

 

とても居心地がよくって・・・残酷だもの。と続けた言葉にアルテイルはこくりと頷いた。

 

「ずるいですね。」

 

「ずるいわね。」

 

そう言って顔を埋めたアルテイルの頭をポンポンとあやす様にゾウカは撫でてやった。




イメージ的に外:AUO 中:コクトー

・・・に(違うけど)近い何か。・・・を目指してる。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。