転生とかもっとこう・・・なんか違くね?   作:九十九夜

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「ぐ、ぐわあああああ。」

「は、柱間様!?」

「ミ、ミト・・・俺はもう・・・だめかもしれん。」

「そ、そんなッ」

「さ、最後に・・・雑炊「お薬と重湯と白湯お持ちしました。」

「あら、ありがとう。柱間様、お食事だそうです。」

「う、ううっ。確かに飯は飯だが・・・固形物が食いたいんぞっ!!うっ!ぐあああっ」

「は、柱間様!ファイトです!!」


以上。便所の前での会話である。



宿敵との初対面とか・・・なんか違くね?

「おい!!替えの包帯はまだか!」

 

「痛み止めの予備は?はあ?そんな数で足りるか!!後六十は作っとけ!!」

 

「何?針が間に合わない?この際縫い針でもいい!!あるもんは使え!!煮沸忘れんなよ!!」

 

響く怒号に、漂う薬品と、血の匂い。

誰に言っているのかわからない「死にたくない」「助けてくれ」。

「生きたい」と言わないあたり、それでも内心では諦めているのかも知れない。

数日前までそんな空間の一部であった少女。芳改め芳枝は出入り口でカタカタと震えていた。

 

(どうしよう、どうしよう)

 

芳枝の懐には書状が一つ。

決して読んではいけないと言われていたものを好奇心から開けてしまって後悔した。

その内容は決して、今この惨状を知る者として渡してはいけないものだと思う。世間的には渡さなければならないということも。

どうすればいいのかわからなくなって、焦燥は不安、不安が恐怖へと変わり芳枝は途方に暮れていた。

 

そんな彼女の横を通ろうとする者が一人。

咄嗟にその人物の着物の端をひっ摑んだ。

驚いた様な表情の後に此方を配慮した笑みを浮かべるその様にボロボロと涙を零しながら芳枝は言った。

 

「どう、しよ・・・かが・・・ま」

 

一瞬キョトンと此方を見てから、同様に入ってきた者に何やら一言二言残して、男・・・鏡間は芳枝を抱き上げた。

 

 

 

 

 ――――――――――――――――

 

 

 

 

明け方近くなってやっと治療役を終えた鏡間はその足で扉間の書斎に向かっていた。

声をかける間も無く「入れ」と簡潔に指示される。

 

「治療役ご苦労。呼び出してすまんな。」

 

部屋の中は思いのほか暖かく、テーブルの上には湯気の立つ番茶と料理が並んでいた。

おそらく昼の芳枝との依頼書のやりとりからここまで、食事をしていない鏡間への配慮であろう。

扉間が席に着いたのを確認した鏡間も後に続く様に着席し手を合わせ、父が箸をつけたのを見計らって自身も食事を開始した。

扉間もどこで覚えてきたのかそんな行儀の良い息子に苦笑を漏らしつつ、大皿の料理を二人揃って突いた。

 

双方黙々と箸を進めていると、先に食べ終わったらしい扉間が一息つき、口を開いた。

 

「食いながらでいい、聞け」

 

そんな改まった父の様子をまだ咀嚼の終わっていない鏡間は頷きでもって返した。

 

「お前を呼び出したのは他でも無い。昼間の依頼の件だ。」

 

ようやく口の中が空になった鏡間は父から渡された依頼状を見てその秀麗な顔を少しばかりしかめ、書状を父へ返す。

自分を落ち着けるためなのか、番茶を一口呑んで一言。

 

「無理だ。」

 

予想していた答えなのか「お前もそう思うか・・・。」と眉間の皺を伸ばすように手をやって扉間は溜め息を吐いた。

 

「まずこの大名の治める土地だが、部下に秘密裏に探らせた所ここ数年は飢饉が頻発してあちこちで一揆が起きている。故に税収も滞りがちだ・・・あまり考えたくはないが請け負った後に千手か、それとも此処に名を連ねるいずれかの一族が割りを食うことになるだろう事は火を見るより明らか・・・最悪、契約自体が反故になるだろう・・・。」

 

「この間訪ねてきた農民がこの土地の出。故に言質もある。」とまで口にして鏡間の中に苦い思いが広がった。

ここ最近増加の一途を辿っている難民。それが最近では戦火で住処を失った者たちより領主の圧政から逃げてくる農民の方が多くなっていた。鏡間の朧げな記憶にある時代の組合やら相談窓口は当然のごとく無い、そして何より逃げ出そうものなら自らの役目を放棄し国に反したとして死罪か、それでなくとも重罪人として追われる身になる。それも本人どころか一族郎党が、である。

だから彼らは早急に何処か影響力があり且つ強力な庇護を見つけなければならず、こうして千手の様な忍一族に庇護を求めるのである。

そして、庇護下に入ってからは捨てられない様に努力する。庇護する側と庇護される側と言う格差が出来上がる。

なんらかの奇病が流行り出した時でもそれは変わらず、大体はその難民のせいでは無いかと真っ先に疑われてしまうこともザラだ。

 

「・・・そうか、が。そうもいってられん事態になってな・・・。」

 

ガリガリと面倒そうに頭を掻いた扉間がポツリと呟く。

 

「兄者に書状の事が知れた。」

「は・・・。」

 

「あやつ厠の住人と化した重病人ではないか。何故そこまで話が出回っている。」と首を傾げる鏡間。

そんな息子から横に視線をズラして扉間は湯呑みを手に持った。

 

「それがな・・・。」

 

ミシ、ビキ。と不吉な音が湯呑みから聞こえる。

 

「どこぞの族長 (バカ)が儂では承諾せぬことを見越して兄者のいる厠の前で土下座して説得したらしい。」

 

耐え切れなくなった湯呑みは遂にパアアンという小気味良い音を立てて割れた。

 

ここでああそうかと内心で鏡間はひとりごちる。おそらくその馬鹿とはここに滞在中のゾウカの父親の事であろう。

なるほど、だからゾウカとその父親・・・正確には父親の方が此の所強引にすり寄ってくる様になったわけだ、と。

ゾウカの最初の動きが不審すぎて其方にばかり気を取られていたが、確かに父親の方も彼女とは別の方向で千手との関わりを作ろうと必死だった。同盟内容の強化とか、政略結婚の勧めとか。途中でアルテイルの件と今騒ぎになっている病の件が立て続けに入ったのですっかり頭から抜け落ちていた。あの時には既にゾウカの一族を含めた千手以外の一族に話が回っていたとみた方がいいだろう。詰まる所ゾウカの父はなんとしてでも千手をこの戦に出し、牽いては末永く仕えさせるための交渉役だったという訳だ。

と言うことは・・・。

 

「・・・危惧すべきはうちは・・・か?」

 

先程の書状には十を越える一族の名が書き連ねられていた。例え弱小一族の集まりだったとしても数は足りるはずだ。

つまり、それでも千手にどうしても出てもらわねばならないと言うことは・・・自ずと分かってくる。

「しかし・・・。」と鏡間が更に言葉を続けるよりも先に、その断言じみた問いに扉間は緩慢な動作で頷いてみせた。

 

「ああ、そうだ。今はタイミングが悪い。と言うよりまるで仕向けられたかの様に悪いものが重なっている。」

 

現在千手は正体不明の流行り病によって少なくない被害が出ている。

最初はやはりと言うか、難民の誰かが持ち込んだのでは無いかとしていたが感染経路が判明し、皆治療中だ。

よくなるものがいる一方で未だ意識の戻らぬ危篤状態が続いている者もいる。

これにより主戦力の大半は使い物にならなくなっており、更に言えば我らが族長であるあの千手柱間もその病に感染してしまっている。

・・・生死の境をさまよう者がいる中で絶え間ない下痢の衝動ぐらいで収まっている辺り流石としか言いようがないが。

 

「・・・まあ、父上ではなく伯父上に情に訴える作戦に出た辺り小癪な奴よな。」

 

「珍しく父ではなく娘の方が謝っておったぞ」という返しに鏡間は苦笑いを返した。

部屋だの装飾品だのを見るうちにもしかしたらといくつか目星をつけていたが、まさか(前世からすれば)あんな大物がそんな風に頭を下げるなど・・・と思い浮かべ少し笑いが込み上げてくる。言っては悪いが烏合の衆の様な寄せ集めの、それも褒賞内容が払えもしない様な額の金プラスさり気無い家臣にしてやる宣言。そして極め付けに敵陣にうちはという如何にもな泥船案件。押し付けてしまったという罪悪感を抱いて貰うくらいには見知った仲になったという事だろうか。

 

「・・・兄者は這いずってでも行くと意気込んでいたがあの調子では無理だろう。ここは早急に断る旨の書状を「父上、その一件我が預からせてもらう。」おい。」

 

珍しく鏡間に声を荒だてた扉間。そんな長の代理でありながら父として子を案じる姿を見て、そんな彼に鏡間は微笑みでもって返した。

 

「何、どうという事は無い。我も泥船に乗るつもりはないんでな。策・・・と呼べるかわからんが既に考えはある。」

 

ではなと食器を持って下がろうとする鏡間を呼び止めようとした扉間に振り返って一言。

 

「ああ、後ほど白湯と薬を持ってこさせる故、くれぐれもおとなしく寝ているように。」

 

その一言を最後に襖が閉じる。

そんな鏡間の言葉に目を見開いた後、今度は扉間がその顔に苦笑を浮かべた。

 

「・・・ばれておったのか。」

 

 

 

 

 

  □ ■ □

 

 

 

 

 

 

あの手紙の件から数週間後、その日、芳枝は走っていた。

目指す先にいるのはいつも安心感を与えてくれる金髪。

その金髪目掛けて飛び込んだ。

 

「鏡間!!」

 

芳枝の渾身の一撃を難なく受け止めたその人はいつもと変わらない美しい笑顔で、いつもとは違う物々しい甲冑を身に着けていた。

 

「どうした芳。見送りに来てくれたのか?」

 

そんな男の問いにぶんぶんと力一杯首を左右に振る。

 

「ちがっ・・・く、ない。けど・・・そうじゃなく、て。・・・ごめんなさい。」

 

私があんな風に渡したから今こうして目の前の男が戦場に行くことになったのではないか、と実際は仕方のないことでも罪悪感で胸が痛んだ。

 

「・・・ありがとう。だが、我は死なんぞ?秘策もあるしな。」

 

この金平糖を賭けてもいい。と言って懐から金平糖がぎっしりと詰まった巾着を取り出して、渡される。

・・・何故、ただでさえ高級品な甘いものをそれもこんなにたくさん持っているのだろう。

 

「・・・でも、鏡間賭け事弱いだろ。頭領と一緒に賭場に行っても全然稼いでこないじゃん。」

 

そんな自分の声に周りの同じように戦支度をしていた男たちから「確かに!」「一本取られちまったな若頭!!」という声が上がった。

真面目に言っているのになぜ笑うのだろうか。

 

「ぐっ・・・いやその、それとこれは別物という奴でな?ほら、伯父上も賭け事はあれだが戦で負けたことないだろう?」

 

「頭領は頭領だからいいの!!お前は若頭だろ?ダメダメじゃん!!」

 

実のところ芳枝自身は頭領や鏡間の賭け事の腕前も、戦場での功績やら強さやらと言った難しいことはよくわからない。ただ単に何でもいいから理由をつけてこの目の前の男を戦場とかいう怖い場所に取られたくないだけなのだ。

「大丈夫だから」「ダメだ!!」という応酬を繰り返している二人の元に顔を壱と書かれた布で隠したくノ一が姿を現す。

 

「頭、そろそろ刻限です。」

 

その一言を聞いた者たちは先程とは違う硬い雰囲気を纏って規則正しく整列した。

その様をぽかんと見ていた芳枝の頭に何かがポンと乗っけられる。

 

「それじゃ、行ってくる。ああ、それは一応お前に預けておくが・・・食うなよ?」そう言って結局鏡間も行ってしまった。

 

「・・・バッキャローッ早く来ねえと喰っちまうからなあ!!」

 

 

 

 

 

 

「頭。報告が。」

 

先程の壱と書かれた布のくノ一が出発して間もない鏡間に再度声を掛けた。

 

「なんだ。」

 

「は・・・。鮮神(アザガミ)が標的を捕捉。第二段階に移行してよいかとのことです。」

 

「ほう・・・だが少しばかり早いな。・・・せめて我たちが戦場に立った時あたりがベストだろうよ。」

 

神薙(カンナギ)は既に潜入済みです。・・・紗々神(ササガミ)・・・を差し向けますか?」

 

「いや、良い。あやつのことだ。待てと言えば待つだろう。」

 

「承知しました。」

 

そう言って煙すら出さずにくノ一が消えた。

 

「・・・というわけだ。良いな?」

 

そのままの体勢で鏡間が後ろを歩く仲間たちに声を掛ける。

それは先程まで芳枝に向けていた人としての鏡間のそれではなく、その他を率いる者としての千手鏡間のそれであった。

 

『はい。我々侘鏡(タカガミ)は貴方を主と誓った者です。どうぞご随意にお使いください。』

 

いっそ機械的とでもいうかの如く揃った声音と動作で恭しく鏡間に頭を垂れ、そしていつもの仲間に戻った。

 

 

 

  ―――――――――――――――――

 

 

 

 

ぱあん   ぱあんぱあん

 

「・・・やはり多いな。」

 

渦刀で向かってくる敵を減らしつつそう呟いた。

どうやら向こうもそれなりの数の一族を集めた連合軍の様で数が多い。

多い、多いは多いのだが・・・。

 

「何故こうもこちらばかりを狙いに来るのか・・・。」

 

近場で戦っている他の者の元にはこちらの五分の一ほどの敵しか向かっていないようだ。

何故だ、やはりこの容姿故に舐められているのであろうか。

 

「ああ、だが。」

 

「こう障害物のない場所では格好の標的よな」と言いつつ後ろに移動していた敵方の忍の腕を渦刀で破裂させる。自身に向かって振りかぶられていたそれは目的を果たすことなく消え、ただ血をまき散らすシャワーヘッドと化していた。声にならない悲鳴を上げて崩れ落ちるそれの両手足をついでと言わんばかりに爆散させる。

素早くその胴と首だけになった男の首を目線が合うように両手で持ち上げた。

持ち上げられた男は持ち上げられた意図が分からず、やまぬ悲鳴を上げつつ恐怖に悶えている。

         

「ふん。族長自ら他の者を囮にして弱ったところで背後を取ろうとするとはまあ、見下げた根性だ。」

 

その言葉に反応は返ってこない。

既にこちらの言っている言葉を理解することにすら五感を回す余裕がないらしい。

尚も悲鳴を上げ続ける男の傷口を黄色の溶液で覆った後、幾分か余裕の戻ってきた男に再度問いかける。

 

「さて、何故我を狙う?他の奴でも武勲は変わらんだろう?」

 

「・・・。」

 

「どうした?怒りの表情一つでも浮かべてみせよ。」

 

さっきもそうやって感情を高ぶらせるためにわざとらしく侮蔑の言葉を吐いたというのに目の前の男はだんまりである。なんだろう。我に尋問の才能はないのだろうか。

 

「・・・お前らのように何故か我ばかりを狙うものに聞いたことがある。転生、原作修正、改変。貴様もそうか?」

 

「くたばれ。偽物。」

 

取り付く島もなしである。めんどくさいことこの上ない。

 

「偽物・・・と言われてもなあ・・・。」

 

「てめえも俺と一緒のはずだろご同輩よおお!!ぶってんじゃねえ!このゴミクズ野郎おおぉっ!お、ぉ?」

 

どちゃっという腐った生ごみが落ちるような音とともに手元が軽くなる。

その音をまじかで聞いていた相手の男も不思議そうに言葉を切って、一瞬の間の後、絶叫した。

目線を足元にやると、そこには敢えて残していた男の胴部分が無残に転がっている。

そして、おそらく。いや、間違いなくその下手人であろう生首を挟んで向こう側にいる少女が一人。

 

「あれれー?もしかして、お話の途中でしたー?やだー私ったらごめんなさーい。」

 

「・・・お前の持ち場は確か向こうだったはずだが。」

 

「はい。確かに向こうが持ち場だったんですけど・・・頑張って早めにおわしてきちゃいました!!」

 

エッヘンと胸を張る少女に首だけになった男が涙と鼻水を垂らしながら「てめっ・・・何しやがる!!」などと言葉にならない罵詈雑言を喚き散らす。

 

「はあ?気安く話しかけないでくれません?折角の師匠と弟子の感動の再会アーンド会話だっていうのに邪魔しないでください。汚物さん。」

 

さっきの我との会話の時の声は何処に言ったというほどのワントーンどころかそれより二段階ほど下げたドスの利いた声で生首を睨みつける。

 

「・・・このものは手段はどうあれ我に向かってくるだけの気概を見せたのだ。多少の口の悪さくらい多めに見てやれ、あと、汚物はさすがにやめよ。」

 

多少嫌な顔をして渋ったものの「はーい。」と返事が返ってきた。うん。多少問題はあるが本当は素直ないい子・・・。

 

「・・・そうですよね。世の中にはこんな人でも必要として、助かった人もいるんですよね・・・わかりました。汚物はやめて、産業廃棄物に格上げします。」

 

あ、うん。多少じゃない。かなり性格及び社会性に難ありだった。

我が弟子ながらどうしてこうも問題が山積しているのだろう。

深窓の令嬢のような可憐な微笑を浮かべながら、悪魔ですらもっとオブラートに包むであろう毒舌を放つ己が弟子、鮮神涼音(10歳)を見て頭が痛くなった。

 

ちなみに更に備考として奴は見た目に反してかなりの戦闘狂で脳筋である。

どれぐらいかというといくら簡単な作戦を立てても「わかりました。まずここのをぶっ殺して、次に奥の奴をぶっ殺して、それから奥のおじさんをぶっ殺せばいいんですね!!」といい笑顔で言って単身突っ込んでいくくらいには脳筋・・・いや、アホの類である。

多分我の元居た世界であった戦争だとバーサーカーの適性がありそう。一言でいうとヤバい。

こうなった原因は行方不明になった際に狼に育てられたかららしいが・・・この調子じゃ狼も大変だったんだろうな。まあ、獣並みの五感は役に立つ機会が多くて重宝しているが。

そんなことを取り留めもなく考えて現実逃避していると涼音がクイクイと袖を引っ張ってくる。

 

「師匠、師匠。なんかよくわからないのが来ます。具体的にいうと焦げ臭い奴が。」

 

「焦げ臭い?・・・ちょっと待ってろ・・・ああ、なるほど」

 

混じり気のない黒髪に濃紺の装束の一団がこちらへと迫ってくるのが視えた。

とうとう本命の登場らしい。ちらりと涼音に視線をやる。

 

「はーい。現在の向こうの様子を実況しまーす。・・・ええーと、うん。もう標的の目の前です。隣の錫女ちゃんはやる気バリバリで針構えてまーす。団長もうやっちゃっていい?だそうです。あ、近衛兵に見つかっちゃった。」

 

「・・・取り敢えず目撃者と標的を黒の列に加えた後代わってもらえ。」

 

「・・・はーい!」

 

一際元気よく返事をした涼音が「じゃあ私は向こうに連絡とりますんで!退却しまーす!!」とこれまた元気よくその場を飛び跳ねるように去って行った。

それから暫くして件の集団と対面する。

幼い頃伯父から聞いていた通り。確かに面貌も姿勢も何もかもが整っている。

これがうちはかと、感心したわけでは無いが納得した。同時に何故こうも戦続きの中で今迄戦う機会がなかったのか疑問もあるが。

そんなことは今は瑣末なことだ、と思いつつ携帯していた発煙筒の筒に点火し、上空に向けて思い切り投げる。

 

ドオォォォォンッ

 

三尺玉地味たとんでもない爆音とともに赤と白の粉が散らばる。

 

「・・・ちゃんと無色にしろと言ったというに・・・あのたわけめ。」

 

その音を聞いた千手の部隊が撤退して行く。それを不審に思ったらしい敵方の忍たちが追いかけようと態勢を変えるが、そんな事を許すつもりはないので秘密裏にあの金色に輝くゲート・・・・確か記録曰く王の財宝(ゲート・オブ・バビロン)だったか?からさっきの尋問していた忍含む多数の生首を相手の足元に出現させる。

結果相手方の跳躍しようとした忍たちは無様にすっ転ぶか、悲鳴を上げていた。

うん、驚くよな。正直すまん。

そんな事を心中で唱えていると先頭にいた長い黒髪の・・・あれ?

 

「おい、柱間は何処だ。・・・それともなんだ?お前が殿だとでも言うつもりか?砂利。」

 

「・・・まあ、その様な者だ。正確には少々差異があるが。」

 

外側で平静を保っている様見せかけてはいるものの内心荒れ狂っている。

え?嘘だろ?他人の空似?なんか今対峙してるおっさん見覚え滅茶苦茶あるんだけど。

正確にはミギワを後20年くらい年取らせて顔厳つくして少し老けさせて性転換させた感じ?

お義兄さん?お義父さん?イヤイヤイヤ、イヤイヤイヤイヤイヤイヤ。

ミギワ、ミギワ・・・2回しか会ったことなかったけど可愛い子だったなあ。

もっと早く出会ってればもっと友達らしいことできたんだろうか・・・。

うふふ、あはは・・・はあ。

現実逃避もそれくらいにしてミギワの親族(仮)に意識を向ける。

と、既にこちらに接近していた血気溢れる親族(仮)は強烈なジャブを繰り出した。

掠った頬に切り傷が出来るっていったいどんな拳してんだ。

この親族(仮)の相手をしつつ他の奴らの足止めは流石に骨が折れる・・・と言うか今の我ではまだ無理だろう。

アレもまだ回りきっていないだろうしなあ・・・。

 

『木遁・積木格子』

 

地面から発生した樹木が重なり合いまるで大きなケージの様なステージを形成する。

隙間から出ようとする者には脱出防止用に木が散け、余計に複雑な格子になる為、まず出られない。

更にある封印術との合わせ技もできる優れものだ。

 

「ほう、柱間以外の木遁遣いか・・・が、何のつもりだ。砂利」

 

我の技に感心した様に笑った後、再度鋭い視線がこちらに向けられる。

・・・木遁って伯父上以外出さないの不思議だと思ってたらコスパとか以前に使えんかったのか・・・衝撃の事実が判明した。

 

「何、ほんの少し隔離させて貰っただけよ。」

 

「そこを退け、砂利。俺は柱間に用がある。」

 

そんなこと言われても、親族(仮)の懸想する者は未だ厠の住人である。我で我慢してもらうしかない。

 

「す、すまん。まさか貴様がそこまで頭領を所望するとは・・・」

 

なるべく戦闘は避けたいので物は試しに伯父上の落ち込み方を真似てみる。

え?そんなことしたらぶっ殺されるんじゃないかって?HAHAHA煽って行くスタイルってやつさ!!

 

「は・・・柱・・・間?」

 

おっと、思ったより相手を揺さぶっているらしい。

もうひと押ししてみようとほんの少しの邪心が出てきた。・・・本当ならここら辺でおわした方が正解だったのかもしれないが。

 

「本当にすまない。まさかそんな獲物を選り好みする様な面倒くさい奴だと思わなかったから・・・」

 

「やっぱテメエ柱間だなッ!!」

 

冷静さを失って摑みかかろうとする親族(仮)を必死に「兄さんよく見て!!アイツ変化じゃないよ!柱間じゃないよ!!」と言う親族(仮)その2の言葉にはっとする親族(仮)。

ああ、お遊びで誘導してられるのもここまで「確かに・・・じゃ、じゃあまさか・・・奴の倅!?」

 

Tigeeeeeeeeeッ確かに煽ったの我だよ。でもさ・・・

よく見ろおおおお!あのマダオの要素ひとつもないだろうがあああ!!

オイィィッ親族(仮)その2なんでそんな今気づいたみたいな顔でこっち見てんだあああ!!!

違うからね?我甥っ子だから!マダオの弟の子だから!!

 

・・・訂正すべきだろうか。

 

「期待しているところすまんが「なるほど、それなら奴ほどでなくとも楽しめるかもしれん」

 

what?

 

え?何言ってんのこの人?

 

「さあ行くぞ、柱間の倅!!」

 

凶悪な笑顔とともに火炎が迫ってきた。

ひ、火に油を注いでしまった・・・?

 

「早くしてくれ・・・涼音。」

 

ここから遠く離れた場所にいる弟子を思い浮かべた。

 

 

 

  ―――――――――

 

 

 

 

ガアンッと青い巨人の刀が地面を抉り、切り飛ばしていく。

 

『水遁・水爆連鎖』

 

ボシュウという音を立てて水素爆発を起こした巨人の腕がなくなる。が、次の瞬間には再生する。

 

「厄介だな。」

 

巨人の迫りくる腕を交わしながら呟く。

頭にいくつかの対抗策を練るが尽く時間稼ぎとしては駄作である。

あれをやったらここら一体更地だし、あの族長らしい親族(仮)は助かるかもだが後ろで毒にやられた奴ら軒並み遺体も残らないだろうし・・・どうしたものか。

 

「ははははっうまく避けたな!なら次は・・・これだ!!」

 

そう言って一気に二対の腕全てで斬撃が繰り出される。

 

『口寄せ・三重羅生門』

 

もちろんこれで防げるとは思っていない。

 

『木遁秘術・樹海降誕、縮』

 

蠢くように広がっていく樹木を操作し自分の前方に集中させ、圧縮する。

これが初めての試みだが、無いよりはマシだろう。

 

ズガンッという音とともに我の真横を斬撃が通っていった。

あ、駄目だ。使えねえわコレ。

そう思いながら更に距離をとる。いつまで続くんだこれ。もう我キャラ持たない。疲れた。帰りたい。

 

「師匠ー。順次抜かりなく!終了しました。」

 

救いの一声が聞こえた。ああ、お前はやればできるやつだよ。よくやった!涼音!!

 

「よし、撤退だ。他はどうなっている。」

 

我の隣に着地した涼音に目配せして言うと満面の笑みで応えられる。

 

「はい!既に退却済みです。後は師匠だけかと。」

 

「そうか・・・おい聞けうちはの。我らは撤退する故勝鬨を上げるがよいぞ。」

 

「・・・それを信じると思うか?」

 

戦闘を中断された親族(仮)が不服そうにこちらを見る。

そんな顔をされても困る。・・・目が血走ってる。超逃げたい。

 

「・・・信じるも信じぬも好きにせよ。ただ我の戦う理由は無くなったということだ。」

 

「行くぞ涼音」と傍らの弟子に声をかけると「はーい!!」とかわいらしい返事が返ってきた。

今ばかりは普段は猛獣みたいな問題児が癒し系小動物に見えた。

 

「ではな」と言って煙球を使ってその場を後にする。

後は後方に・・・「待てぇ柱間の倅ぇ」・・・え?

追っかけてくる!?足早!!

 

「・・・我は頭領の倅では無いんだが。」

 

「なん・・・だと・・・。ふ、そうか。では名を教えろ。覚えておいてやる。」

 

嫌だ。絶対にコレ何らかのフラグだよ。立てちゃいけないタイプのやつだよこれ。

具体的にはデッドエンドまっしぐらなやつ。

 

「・・・名乗るほどの「あ゛ぁ?なんだ?千手は名乗りも出来ないような躾のなってねえ連中なのか?」

 

あんた相手だから名乗りたくないんだよ。目えつけられたくないんだよ。わかれよ!

忘れててもらいたいんだよ!!

 

「さあ、名乗れ」

 

でもこの人きっと名乗らない限り帰してくれなそうだ・・・。

あれ?そういえば何か忘れているような・・・。

「師匠、師匠!」と言って涼音が己の手甲を指さす。

あ、マーキング。

 

「先に行け。涼音。」

 

言って、手甲に触れる。

「ふぁ!?」と言って驚愕の表情を浮かべたまま転送されていった。

さて、と。後は・・・。

 

「ほう、それは千手扉間の時空間忍術か・・・益々、面白いやつだ。」

 

ニイィッと凶悪な笑顔がすぐ傍に、恐怖だ。

と内心パニックに陥りつつ袖から火打石大の大きさのあるものを取り出す。

 

「・・・千手鏡間だ。今度こそ失礼するっ」

 

言い終わると同時に手に持っていた火打石大のそれを捻った。

パアンッという音とともに煙が上がる。

 

「うっ。」

 

そのまま我を追撃していた男はバキバキと枝を折りながら木から落下していった。

い、一応成功・・・か?

我がさっき使ったのは父上とともに息抜きとして作ったある死神漫画の「記憶置換」の類似品・・・のようなものだったのだが・・・。

1、2、3・・・這い上がってこないし、一応は成功だろうか・・・いや、改良の余地ありだな。デカすぎるから。

取り敢えず事は済んだ。・・・万全を期して飛雷神で帰るか。

 

 

 

 

 

 

  ―――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

ドシャッ

 

「ぐっ!?」

 

飛雷神で辿り着いた場所は父上の寝室・・・というか寝間着だった。

ああ、そういえば父上がどんな状況でも飛んでいけるように寝間着にマーキングしていたんだったか。

父上は・・・気絶してるな。よし。

装備をあらかた外して玄関、風呂の順に飛雷神して自分の部屋に帰る。

予め敷いてあった布団に潜り込んで目を閉じた。

疲れた・・・今日はもう寝よう。

 

早く・・・ラーメンみたいな主人公・・・登場しないかなあ・・・。

 

あ・・・伯父上の知り合いっぽいの・・・名前聞いてない・・・。

 

まあ、いいか・・・。

 

 

 

 

 

この戦で千手を含めた十を超える一族を雇っていた大名が崩御。

その後継として補助を務めていた長男が後を継ごうとするも流行り病にてほどなく病没し、家督は次男が継ぐ運びとなった。

尚、この一件から褒賞こそ受け取ったものの約束であった金額より大幅に減額されていたこと。恒久的専属契約といった契約の一切合切が破棄されたことから先の戦に参加していた一族から抗議の声が上がったが、何故か千手からは何一つとしてそのような苦言は無かったという。

そして、この一件の後。まるで示し合わせたかのように先代の近衛兵たちが姿を消した。




という訳で鏡間とマダラの対面(?)でした。
ちなみに主人公は原作の概要の初期の方しか知らないので創設期の知識はすっからかんです。ミト様とかは友人のキャラクター自慢で覚えていたけれど。

そしてあんまり関係ありませんがこの話で出てきた鮮神だの侘鏡だのは鏡間が秘密裏に編成した私兵部隊。まあ、暗部みたいなものです。
存在を知っているのは鏡間とその部隊の当人たちだけ。
おおまかに鮮神、神薙、紗々神、侘鏡、無神の五つに分けられています。

役割とかはおいおい・・・。まあ、あまり関係してこないんじゃないかなと思います・・・たぶん。


戦闘では敢えてギルガメッシュじみた対応を心掛けている・・・訳ではないのですが酷いので本人としてはあまり知られたくない、見られたくないという設定があったりします。
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