転生とかもっとこう・・・なんか違くね?   作:九十九夜

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「やっ、はあっ!!」

河原の傍で一人で修行する。

今日も待ち人は来ない。

まあ、約束もしてなかったし。
あの子一般人みたいだったから仕方ないか。

まともな友達がほしいなあ・・・。


そう思いながら僕は今日もここで修行を続けるのだ。


オレがうちはなのは、きっとなにかの間違いだ。

「・・・お腹、空いた。」

 

自分以外誰もいない空間に虚しく響く声。

そのまま天井の木目を眺めていたが、ゆるゆると重い身体を起こした。

もうかれこれ3日も何も胃に入れていない。

戸棚を開けて保存食の確認をする。と、何の気なしにすぐ横にある食器棚に目が行ってしまう。

そこには二人分の食器が鎮座していた。

 

「母さん・・・。」

 

流行り病だった。

町の方なら優秀な医者がいて、薬だってあっただろう。

しかし、このミギワの住む辺境の集落には一族の者しかいない。もちろん医者なんてものいはしないのだ。

ミギワが転生する前に読んだ漫画の中では医療忍術なる技があったが、残念ながらそんなものを使える者は一人もいなく、皆戦争やらで怪我をしたときや病気になったときは応急手当の真似事や民間療法の様な処置を行うことで何とか命を繋いできたのである。

いや、一応医者は来た。たまたまこの集落に流れ着いた戦争で住処を追われた難民の中に医者はいたのだ。

けれどミギワや他の一族との間にミギワを成した母を差別したように、頭の固い連中は一族以外の者が集落に入るのをよしとしなかった。

結果、流行り病は止まることを知らずただ羅患者が増えるだけ。

最初は代謝の激しい幼子。次は免疫の弱い老人。老若男女問わずバタバタ死んでいく。

ミギワの母もそのうちの一人だった。

 

もうどうしていいかわからず、本音を言えばミギワもこのまま死んでしまいたかった。

そう思うたびにその食器棚の更に奥の方にあるわっぱと水筒を見て思いとどまった。

死が怖い故の言い訳かもしれなかったが、返しに行かなければと、もう一度会いたいと思って命を繋いできた。

 

しかし、それももう限界である。

 

―――せめてもう一度あの河原に行こう。

 

この際別に待ち人が来なくともいい。晴れなかったとしても心残りは軽い方がいいのだ。

母から忍術の基礎は教わったし、きっと今度は大丈夫だろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

□ ■ □

 

 

 

 

 

 

 

 

パシャ パシャ ボチャ

 

運がいいのか悪いのか、先客がいた。

 

その見覚えのある、少し背の高くなった金髪がこちらを振り向く。

 

「久しぶりだね。ええと・・・。」

 

「・・・ミギワ。」

 

今更名前を教えてなんになるのかと内心で自嘲しながら呟いた。

 

「ミギワ・・・うん、覚えた。僕は鏡間。よろしくね。」

 

片手が差し出される。握手したいが、手を出さなかった。

 

「・・・よろしくしてくれるのはありがたいが、オレはもうここにはこれなくなるからあんま意味ねえぞ。」

 

ええ!?そうなの!?と思っていたよりオーバーなリアクションにこちらも驚いた。

どうやら少年は余程再会が嬉しかったらしい。ミギワとしては嬉しいやら悲しいやら複雑である。

 

「住んでたところが無くなったとか?なら、僕のいる集落においでよ。伯父上に掛け合ってみるから。」

 

「いや、いい。もう次の場所は決まってんだ。」

 

基本的にこの時代は引っ越すという事は珍しいことで集落の中で一生を終えるものがほとんどだ。

流れていくのは行商人やなんらかの理由で集落にいられなくなった罪人。そして戦争で集落から焼け出されてしまった難民である。

少年はミギワを後者だと思ったのか忍としては破格の提案をしてくれた。

ミギワもそれが出来たらどんなにいいかと思いつつ、即座にその提案を蹴る。

本当はミギワだって頷いて、その手を取りたいと思う。

けれど、忍の集落でよそ者がどんな扱いを受けるのかを日々身に染みてわかっているミギワだからこそ、それはできなかった。

よそ者にも冷たいが、受け入れた者にも冷たい。

そんな状況で精神をすり減らし腐っていく少年、鏡間の姿など見たくない。

そして仮にそこで折れるようなやわな奴で無かったとしても恐らくは自分の母親と同じような人生を辿ることになるだろうことは火を見るより明らかであった。

 

―――うまく笑えただろうか?

 

心配を掛けさせまいと必死に笑顔を取り繕ったが、如何せんあまり笑う機会もなかったためうまくできているかは微妙である。

そんなミギワの顔をじっと見ていた少年は、にこりと笑って口を開いた。

 

「じゃあ、今日は目一杯遊ぼう!」

 

「ままごとと祝言ごっこどっちがいい?」と聞いてきた鏡間に「なんでその二つだけなんだよ」とあきれ顔で言うと「いや、集落の女の子と遊ぶとき決まってこれをせがまれてね・・・ちなみに僕はおとうさん役・・・あれ、もしかして僕老けてる!?」と涙目になった。

 

「ちなみに後者の方は?」

 

「後者は・・・残念ながら今だ成し遂げられたことはないんだ。はじめの子と打ち合わせしてた時に違う子が入ってきて略奪ごっこ、駆け落ちごっことかにシフトしていって収集がつかなくなるから・・・。」

 

10にも満たない子供の集まりで略奪駆け落ちとはこれ如何に?

 

「ドロドロだな。」

「ドロドロだね。」

 

二人どちらともなく笑いあう。

 

「じゃあ、オレ。修行がいい。」

「え?」

「組み手。自信あんだ。勝った方のいう事なんでも一つ聞くってことで。はじめ!」

「へ?ちょっええ!?」

 

慌てるやつをそのままに拳を振るう。

当たった木がへし折れた。よし、チャクラコントロールは上々らしい。

 

「いくぜ!!」

 

 

 

 

――――

 

――

 

 

 

「はあ・・・はあ・・・て、てめえ・・・ばけもんかよ・・・。」

 

「いやあの・・・僕からしたらこの数か月でそこまでの力を付けた君の方にその言葉を進呈したいんだけど。」

 

少し汗を流す程度に止まっている鏡間を見遣って皮肉を言う。

首元には鏡間の手刀。どうやらミギワの負けらしかった。

 

「くそっ・・・煮るなり焼くなり好きにしやがれ。」

 

そんなミギワの言葉を余所にのんきに「もうそろそろ日が沈むね」と言った鏡間にミギワは更に膨れっ面になった。

 

「あ、そうそう。勝った方が何か一つ願い事を言う権利があるんだっけ?」

 

「あーそうだよ!!早くしろよ!!勿体つけんじゃねえ!!」

 

「ちょっそんな怒んないでよ。」

 

「怒ってねーよ!!」

 

「怒ってるじゃないか・・・。」

 

頬を掻いた鏡間は「あーじゃあ、目瞑って。」と告げる。

ミギワが薄目を開けているとしっかりと閉じるよう瞼を押された。

 

「いだだだだっ」

「閉・じ・て」

 

おとなしく閉じると今度は身体の前面と首元にぬくもりを感じる。

恐らく抱き締められているのであろう。

 

「きっとつらいことも、かなしいこともたくさんあるだろうけれど、君のこれからが幸多からんことを」

 

首元のそれが優しく、案じるように丁寧に告げる。

 

 

「君のこれからの世界が、優しい世界でありますように。」

 

 

 

雫が一つ。頬を伝った。

 

 

 

 

 

□ ■ □

 

 

 

 

 

 

 

鏡間が送っていくと言ったのを断ったミギワは一人黙々と夕暮れの中を歩く。

 

と、ぴたりと立ち止まった。

 

 

 

―――優しい世界でありますように。

 

 

 

「・・・くそ。」

 

 

ばかじゃねーの。と続ける。

優しい世界なんてあるわけないことをミギワは知っている。

あるとしたらそれはきっと綺麗事と虚偽で飾られた安っぽい何かだ。

そんな世界ミギワはごめん被る。

 

けれど・・・それを願う少年はとても尊いものに見えた。

 

 

 

優しい世界なんてミギワはいらない。

 

 

「・・・オレに優しいのは、お前だけでいい。」

 

 

奴さえいれば後は優しいものも、綺麗なものも何もいらないのだ。

 

 

 

また、止めていた足を動かしだした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

がらりと扉を開くと忍の間で広く普及しているタイプのサンダルに似た形状の靴が目に入る。

 

「・・・?」

 

客だろうか。葬式とは呼べないながらも母の弔いはもう終わってしまっている。

取り敢えず客だからなあと葬式時の来客への言葉をバカの一つ覚えのように胸中で繰り返しつつ襖を開いた。

 

最初に見えたのは団扇によく似たマークの付いた背中。

 

次に黒髪。

 

「あ、ごめんね。誰もいないみたいだから勝手にお邪魔させてもらったよ。」

 

「えーと、お母さんは?」と聞いてくる男に唖然としつつミギワは短くいないと答えた。

 

何故男・・・うちは一族の者が母に用があるのだろう。

背中の団扇のマーク。それは忍の中では知らないものがいないほどの高名な・・・うちは一族の家紋だったことを今更ながらミギワは思い出した。

 

「母に、何の御用で、しょう。」

 

 

 

「ああ、ごめん。そりゃ警戒するよね・・・本当は俺じゃなくて兄さんが来るべきなんだろうけどちょっと今立て込んでて・・・俺はうちはイズナ。君と君のお母さんを迎えに来たんだ。」

 

 

「は・・・。」

 

 

「わあ、その年で万華鏡写輪眼を?すごい!」と男、イズナが言うのを何処か遠くのことのように思いながら聞いているミギワの目は確かに赤く、歪な模様を描いていた。

 

 

 

 




というわけでミギワちゃんはうちはミギワちゃんなのでした。


写輪眼は母親に差別のことを言ったとき。

万華鏡写輪眼は母親が死んだときに開眼しています。

本人と周り(母親を除く)は知りませんでしたが。


そして差別の対象という事で碌な葬式も上げさせてもらえなかったためお母さんの身体は火遁の術で火葬。遺骨は箱に詰めて埋めてありますがそれだけ、後は辛うじてお花が供えてあるくらいです。しかも、普通にしていると荒らされるので家の床下に墓()があるという。
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