『平穏というやつなのか?俺は其れのみを求めている』
『さほど大層な願いじゃないだろう…』
『誰もが当たり前のように得られるそれを俺が手に入れられないのは…』
『誰のせいだと思う?』
『なぁ、
「
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「…今日は満月か」
地下の倉から『空』を見上げて一人呟く。ちなみに、諸事情により倉の天井もとい地面は跡形もなく消し飛んでいるので空に浮かんだ月や星が見える状態だ。
「となると、また塵共が沸くかもしれんな」
ある時俺は気づいたのだ。この里を中に存在する異界は満月の夜に外と内の境界に歪みらしきものが現れる。そもそも、この異界自体俺から
ちなみにこの異界、ただ隔離された空間というわけではなくこの空間自体は俺の身体と同義だと思ってくれていい。つまり、そこに侵入されるというのは異物が体内に侵入することと同じなのだ。
つまり何が言いたいかというと、俺はわざわざ侵入されるまで待つ気はない。誰だって体の中に異物が入るのは嫌だろう?
「塵掃除にいくか…」
凝り固まった体の節々が音を出しながらゆっくり立ち上がった。
同時刻、異界と同位置に存在する森では妖魔と忍達との戦闘が繰り広げられていた。しかし、忽ち戦況は忍側が不利となり忍の最上位であるカグラが配属されていたにも拘らず部隊はほぼ壊滅してしまっていた。
「はぁ、はぁ……ここまでなの?」
圧倒的だった。ここで繰り広げられていたのは戦いなんて生易しいものではなかった。初めのうちは、どちらも拮抗していたのに、どれだけ殺しても妖魔たちは無尽蔵に湧いてきた。その結果、皆疲弊し次々と仲間たちは妖魔に殺されてしまった。そこから先は一方的な虐殺だ。
かなりの大人数だった部隊も無残に壊滅、少なくとも私以外に生きているものを認識できない。かく言う私ももはや虫の息、逃げるどころか身動きひとつままならない。
「大道寺……決着付けてなかったね」
私を倒すことが卒業試験なんて言ってたっけ?もし本当にそう定めてるんだとしたら、悪いことしちゃったなぁ………これじゃあ卒業できないじゃない。
「霧夜先生………」
ああ、だめだ。言いたい事多すぎて思い浮かべることもできないや。
「会いたいよ……」
ギュッと瞑った目の端から一筋の涙が頬を伝う。それをあざ笑うかのように目を4つ持った狼の姿をした妖魔の爪が私の喉元を掻っ切る為に降りおろされた。しかし、それはこなかった。かわりにズシャリと何かが地面に叩きつけられる音と大地が震えたと思えるほどの衝撃が身体を掠めた。
「チッ、いつにも増してウジャウジャいやがる……どうやら神様とやらはよっぽど俺を怒らせたいみてぇだな。糞!居場所さえわかれば今すぐぶち殺すところなんだが」
開いた目に飛び込んできた光景は、肉塊と化した妖魔の山とその上に立っている男だった。月明かりに照らされた男の姿を見る。逆立った金髪、褐色の肌、額の三眼、そして、彼から放たれる圧力に意識が飛びかけた。恐ろしい、彼を見てはじめに思った。同時に神々しいと思った。手の届かない遥高みの存在という言い方がまるでパズルの型にはまったかのようにスッと私の頭に入っていった。どうしてかわからないけど、薄れゆく意識の中で彼に向かって手を伸ばそうとした。
「あぁ?まだ生きてる奴がいたのか」
彼がこちらを向いたと同時に意識が途切れ、伸びきっていない腕は弱々しく地面におちた。
「死んだ……か?いや、かすかに息があるな」
塵掃除を終えると、俺を見ている視線に気づいた。俺よりも
「だからどうしたというんだ。放っておけばいいだろう、俺には関係ないことだ」
そうだ、此奴がここでのたれ死んでも俺にはなんの損もない。それでいいんだ。俺はそう考えこの場から立ち去ろうとする。その時だった。
「…先……生」
その一言が俺の何かに引っかかったのか俺はごく自然に、なんの疑問を抱くこともなく足を止めた。そして俺の心に芽生えたのは苛立ちだった。俺は引き返して女を担ぐと来た道を戻って行く。その時の俺を突き動かしていた感情、それはこの女をこのまま放っておくのは俺に後味のよくないものを残す。それだけだった。倉まで戻ってくるとボロい布を引いた上に女を寝かせて、隅っこに並べられている入れ物の一つを取る。
「まさか、暇つぶしで作ったコレを使う日が来るとは……そもそも、俺なんで暇つぶしで薬作ったんだ?」
確か数か月前だろうか、じっとしていることに少々飽きを感じボロボロの巻物らしきものを漁ってるときに偶然目に入ったのを作ったんだが怪我なんて生まれてから一回もしてないし正直意味ないなと思ったが別にそんなことはなかった。
「そういえば、気を失ってるのにどうやって飲ますか」
生憎ここには筒のようなものはないしというか衛生的に使えたものじゃない。となると残る手段は限られる。
「しょうがねぇ…」
入れ物の中身を口に含み、女の鼻をつまんで直接口に薬を流し込む。僅か1秒の出来事である。しばらくすると荒かった呼吸が穏やかなものに変わり傷口が塞がりかけていた。これほどの効果があったとは…『禁薬』とやらも侮れないな。
しかし、いったいどうなっている、いつからだ?俺はどうしてこの女に、いやそれ以前にどうしてここから出た? 塵掃除のため?侵入を防ぐため?違うだろう。『俺』は欲してやまなかった唯我を手に入れた。だが叶えられた渇望は最早渇望ではない。真の唯我を知ったからこそ俺は、他者を欲している。
『結局俺は俺ではないということか。
そういえば、止むを得なかったとはいえあの女とキスしたがまさかあれがファーストキスとか言わないだろうな。確か、はじめてのキスってのは大切なものだと記憶してるが…命を救うためだから仕方ないよな。うん。
(実は彼女この時わずかに意識が戻っていたがキスされたことで脳がオーバーヒートし再び意識を失ったことは知る由もない)
「そろそろ夜明けか」
ここはいつも満月の夜だが外はもう太陽が上がり始めている。波旬は女を背負うと最初に彼女を見つけた所に向かった。背負ったときにムニュと背中に当たる感触に波旬は不思議な感覚を覚えた。
「連れて帰るときもそうだったが、女の胸ってのは皆大きいのか?」
記憶をたどってみると見た限り女の忍は99%位胸が大きかった。残りの1%?真っ平らだったな。
『起伏はいらない、真っ平らでいいんだよ……』
なぜか頭の中で妙なセリフが流れたが気のせいだろう。そうこうしているうちに元の場所にたどり着き、女を寝かせておく。腐臭が思ったよりひどいが意識はもうしばらく戻らないだろう。(キスのせいです)
たった数時間とはいえいろいろ考えすぎて頭が痛い、さっさと戻ろう。
「………い、……おい!しっかりしろ!」
誰か私を呼んでる?自分を呼ぶ声に反応し、目を開けるとあの時見た彼とは別の人がいた。男性は忍装束を纏っていることから、後続の悪忍の部隊の人だろう。
「良かった、生きていたか」
「あ、はい。あの私の他には?」
私の問いに、男性は静かに顔を横に振った。話を聞くと彼らがここに到着したときには既に私を除いた忍と妖魔は全て事切れていたらしい。何より彼らが驚いたのは妖魔の死に方だ。内側からはじけ飛んだ物やまるで絞った雑巾のように捻じれて死んでいる物、どれも人間のできる領域を超えている死に様だった。
「生きていたのはお前だけだ、何か知らないか?」
「えっと褐色の肌の男が出てきて、多分彼が……」
「褐色の青年か……ここにも現れたのか」
「彼を知っているのですか!」
「と言っても噂程度だがな、今回のように膨大な数の妖魔が現れる時に現れると聞いたが真実だったか」
どうやら私が出会ったあの青年は都市伝説のような存在だったようだ。つまりあれは夢ではなく現実。
「ということは……っ~!」
あのキスも現実だったということで、私は顔から火が出そうになりうつむいてしまった。男性はどうかしたか?と聞いてくるが何でもありませんとだけ言った。他の部隊の人たちと合流するために男性についていった。
「また、会えるかな」
誰にも聞こえないような声で私はそうつぶやいた。
波旬「おい作者」
「なに?」
波旬「これ、誰だよ」
「ん~、なんのことかな?」
波旬「話数が進むごとにおれの原型消えていくんだが」
「そのためのオリ主?タグだ。元々、波旬らしさがどんどん消えていく話だしこれ」
波旬「それってネタバレというやつでは?」
「多分この話読んだ時点で大多数の人が『これ全然波旬じゃないじゃん』って思ってるだろうから心配はない」
波旬「………こんな茶番かいて何が楽しいんだか」
「うるせぇよ。」
さて、こんな駄文を読んでくださってありがとうございます。更新速度を上げることはリアルが色々厳しいため難しいですがこれからも更新を止めないよう頑張りたいと思います。
波旬「そういうのをフラグと言うんじゃなかったか?」
おまけ
謎の秘薬
ひまつぶしに波旬が作った秘薬。効果は自然治癒力の促進+???
材料に色々な植物や波旬の血が混ざっているので???はモンハンのドキドキノコ並みに効果がわからない。