閃乱カグラ~この眼の先に何がある~   作:Die六天

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今この小説を読んでくれている方は一体どれだけいるのやら…

大学に入ってしばらくバタバタしてたら執筆できませんでした(言い訳)

もし更新を待っている人がいたなら申し訳ない


第5話 沈んだ太陽を拾ってみた

『神、神、神だと?なんだ、神がそんなに気になるのか』

 

『ならば選ばせてやる。

―二元論、堕天奈落、非想天、永劫回帰、修羅道、無限、輪廻転生―

どいつも小指の先で消し飛ぶような雑魚だがな……』

 

『俺では不足?ああそうだろうな、俺も嫌だぞ。てめえらみたいな屑共に拘うなんてな』

 

『こんなゴミはさっさと取ってしまうに限る』

 

『俺は俺で満ちているから、俺以外には何も要らない』

 

 

 

 

「俺はもう『俺』にはなれない(ならない)

 

 

 

 

 

俺がこの世に生まれ落ちて、何十年になるだろう。ある時を境に肉体の成長は止まり、塵掃除に勤しむ日々。

望んでいた平穏なる日々など在りはしなかった。いつしか、奴らを憎むことが当たり前になっていた。別にそのことに戸惑っているわけではない。奴らはただの害獣に過ぎないから其処に躊躇が入り込む余地など微塵もない。奴らは一体どこから湧いてくるのか…それがわからない。俺の目をもってしても奴らの発生源がつかめないのだ。この世界全てを観測()回していても奴らはどこからともなく突然現れる。

 

わかっていることといえば、人気が多い場所にはあまり現れない。そもそも、奴らは忍の血に引き寄せられるのだから忍が衝突しにくい場所では現れる要因は全くないと言ってもいい。結界があるから多少の交戦はあるだろうが、奴らを引き寄せるほどの流血にはいたらないだろう。

 

要するに、俺が何を言いたいかと言うと…ゴミが無限沸きするような場所から引っ越したいのだ。あの劣悪な環境(当初はなんとも思っていなかった)で数十年も暮らしていたのはいつかは妖魔共が全滅すると思っていたからだ。が、きりがないと分かったならさっさと立ち退いたほうが楽だ。持っていくような荷物なんて殆どないし、さっさと行くとしよう。

 

「場所はそうだな……ああ、前にガキとぶつかったところでいいか」

 

正直場所にそこまでこだわる必要はなく、あくまで人気がある所であるならどこでもよいのだ。どの場所を寝床にするか考えながらブラブラと歩いていた。

 

「む、ここの隙間はなかなかよさそうだ」

 

偶然目についたボロい家と家の間にちょうど一人分の幅がある場所を見つけた。ジメジメしていて影が濃く、そうそう人は寄り付かないような場所だ。足跡も今俺が付けたもの以外見当たらない。

 

「ここに決まりだな。両隣の家も今は留守のようだしさっさと荷物を置いてしまうか」

 

隙間で一番影の深い奥まで行くと荷物を詰め込んだボロ布で作った即席の袋をゆっくり下ろした。中には以前カレーを作る際に使った鍋や偶然出来た謎の薬品など色々なものが入っているがどれも小物なため思ったより場所を取らなかった。長い間倉の中で生きてきたせいか(途中から穴になっていたが)薄暗い場所のほうが落ち着くのだ。

 

「まだ日が落ちていないのか、すこし歩くか」

 

さすがに日が昇っている内は眠る気がしない。あの空間が常に夜だったこともあるが、あの世界に順応しすぎて明るい所にいると眩しくてだるいのだ。

 

「完全に夜行性化しているな……。気にするほどのことでもないが、光に目を馴染ませんときつい」

 

眩しいが、妖魔の気配がないというのは実に清々しい。少々臭うがそれはいい、耳障りな雑音も聞こえない、俺の安息を妨げるものは少なくとも今は完全にいない。素晴らしいじゃないか。

そうしてちょうど商店街に差し掛かったところで俺はかすかに漂うある臭いに顔をしかめた。普通こんな人の多いところでは臭うことなどないのだが、俺の少し前方にある建物と建物の間から血の匂いがする。

 

「女…だな」

 

そこで見たのはゴミ袋に寄りかかって倒れている黒い長髪の女だった。普通と違うのは体のいたるところに傷があり虫の息だという事。

 

「おい、生きてるか?」

 

「ぐっ…」

 

軽く肩を触って揺すって見ると僅かにうめき声を上げた。生きてはいるようだがあと一、二時間ほどで死んでいただろう。とりあえず可能な限りの応急処置をしようと自分の着ている布をちぎり血が多く流れているところを縛る。気休めにしかならんがないよりはマシだろう。

 

(見つけてしまった以上見殺しにするのは後味が悪いからな)

 

そして、病院に連れていこうと女の体を担ごうとした時だ。

 

「日向ッ!?」

 

「ん?」

 

俺の背後に緑色の髪をした少女が立っていた。だいぶ息を切らしているようでどうやら俺が今担いだ女の知り合いのようだ。彼女は幼いながらも俺を睨み、疑いの目と敵意を向けていた。

 

「あんたが、日向をやったんか?」

 

「ほう…その年で俺に敵意を向けるか。いや、幼いが故に大きすぎる力が認識できない?なんにせよ面白い」

 

「質問に答えて…さもないと」

 

「さもないと…どうするつもりだ?俺に立ち向かってこの女を取り戻すか?まあいい。信じるかどうかはしらんが、この女をやったのは俺じゃないし見つけたときには既に虫の息だった」

 

「そっか…」

 

少女はほんの少しだけ警戒を緩めたのが感じ取れた。だが、完全に警戒を解かないのはいいことだ。

 

「さて、この女を病院に運ぶぞ。こんなことで時間を食って間に合いませんでしたでは三流の素人芝居を見る以上に笑えん」

 

「あ、うん…でもお金ないんやけど」

 

「あ?金だぁ?んなもん俺が払っとく。どうせ食うこと以外には使わねぇ紙切れだ。こんなことにでも使ったほうが意味がある。いくぞ」

 

 

 

 

 

 

 

 

『言うまでもないが、彼の金は銀行から盗んだ金である』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺と少女は病室で静かな寝息を立てている日向と言う女の顔を見ながらベッドの横に座っていた。

 

「なあ、お兄さん」

 

「…お兄さん?まあいい、なんだ?」

 

「どうして日向を助けてくれたん?」

 

「どうしてか…正直な話、俺自身にもよくわからん。なんでだろうなあのままこの女を放って置いたら後悔…するほどじゃねぇがあまり気分は良くならないって確信があったから、といったところか」

 

「後悔しないって言う辺お兄さんって冷たいんやね」

 

「うっせぇよ」

 

言われちまった。ただ、本当にこの女を見殺していたなら俺は後悔したのだろうか。否とはっきり断言できない当たり俺が『俺』でなくなってきている事を実感する。

 

「この女、日向だったか?お前にとってこいつはなんだ?」

 

「わしにとっての日向は太陽みたいなもんかな。施設から抜け出したわしに色々なことを教えてくれたり、よう面倒を見てもろたし、大切な人やな」

 

大切な人。それは当たり前のようで、しかし俺にとっては無縁なものだった。それが指すのは紛れも無く他者のことであり自己愛のみを持ち利他愛を真っ向から否定した俺にとって忌避する言葉だった。

 

その未知を知るこの少女のことが、俺は少し羨ましかった。否定するだけで微塵も知ろうとしなかった自分にはその存在が他者にどのような影響を与えるのかが理解出来ない。

だから羨ましかった。

 

「そうか…」

 

「お兄さんには、そういう人おらんの?」

 

「ああ、いねぇ。もしかしたらいたのかもしれないが俺が全部遠ざけちまったから一人もいやしなかった」

 

「なんか、寂しいな」

 

「………そうかもな、だから俺は乾いているのかもしれないな」

 

それからしばらく日が暮れるまでお互い黙って座っていた。

 

「俺はそろそろ帰るが、お前はどうする?ガキ」

 

「わしはもうちょいここにいる。あとガキやない日影や」

 

「そうかい、まあ精々夜道に気をつけるんだな。縁があったら、まあ会おう。日影(・・)

 

俺は病室を後にし寝床に戻るとさっさと寝てしまった。

 

 

 

 

 

「やっぱり、なれねぇことはするもんじゃない」

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