閃乱カグラ~この眼の先に何がある~   作:Die六天

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第6話 山も平地もどっちもいい

出会いというのは数奇なものだ。何時何処でどのような相手に出くわすかわからない。だからこそ人生は面白いと語るものがいるらしいが…

 

「ほれほれ、もっと食べるがよい」

 

「むぐ…このトロとか言うのは脂がのっていて実にうまい。こんなにうまいものを食ったのは生まれて初めてだ」

 

俺にとってはこれほど奇妙な出会いはないだろう。

 

「ところで、なんで俺にこんないいものを食わせてくれるのだ?」

 

「ん?アレ(・・)のお礼じゃ。気にせんでいい」

 

「べつに、お前が落としたのを拾ってやっただけだ。あんなのを見て楽しいのか?」

 

「何を言う!女の裸はええぞぉ~、特におっぱいがなッ!」

 

「黙れじじい」

 

伝説の忍と遭遇するなんて誰が想像しただろうか。

 

 

ある日、いつものように宛もなくぶらぶらしている時のことだ。

 

「ああ、今日もいい天気だぁ。なれると太陽の光というのも悪くないものだ」

 

などと波旬らしくない言葉を言いながら太陽を直視しながら歩いていた。普通の人間なら確実に目がやられているがそこは波旬、なんともない。が、よそ見をしていたせいか誰かと肩がぶつかったようだ。

 

「ああ、すまん」

 

「む?いや構わんよ。気を付けなさい」

 

着物をきた立派な髭の老人だ。そのまま老人は行ってしまった。

 

「ん?なんだこりゃ」

 

どうやらさっきの爺さんが落としたらしい雑誌があった。表紙は水着と言われる布切れを纏った女の写真。少々興味が湧き開いて見ると中には女の水着姿の写真ばかりだった。ちなみに写真の女性はどれも胸が妙に大きい、俗に言う巨乳というやつか。

 

(……なんだかこれを見ていいると中から込み上げてくるものがあるが、何だ?とにかくさっきの老人にこれを届けねぇと)

 

しかし、さっきの老人はいつの間にか消えていた。この雑誌を見ていたのはほんの数秒だったし見失うほどの時間じゃなかったはずだが。

 

「ふむ、この先を右に曲がってその先100Mほどの所か」

 

天眼を持つ俺にとっては再び探し出すことなど造作もない。

 

「おい、落としたぞ」

 

「む?気づかんかった。すまんの」

 

そういって俺が差し出した雑誌を受け取った。なんというか少しも動揺がなかったな。肝が据わっているのかただの変態爺なのか…

 

「おぬし、何か失礼なことを考えてはおらんか?」

 

「いや別に?」

 

「まあよい。そうじゃ、ぬしが構わんのなら礼に寿司を馳走しよう。どうじゃ?」

 

「寿司か……そういえばまだ食べたことがなかったな。では馳走になるとしよう」

 

ここから冒頭に戻る。

 

「ムグムグ…そういやじいさん、俺に何か聞きたいんじゃないのか?」

 

極上の寿司をほおばりながら俺は目の前で寿司を握っている老人に尋ねた。すると、彼は手を止め真剣な眼差しでこちらに顔を上げた。

 

「どうしてそう思った?」

 

「お前の目には何かを探ろうとする意思があった。ただそれだけだ」

 

それ以前に心が見えるので俺には他人の心情など筒抜けだ。

 

「なるほど、流石は噂の男と言ったところか。」

 

「噂?(…妖魔を潰しまわっている謎の男ねぇ、妙な噂が流れたもんだ)」

 

ああ、でも今思い返せば俺が妖魔を潰しに行くと多くの場合数人の生き残りがいた気がする。俺が出向いたときに限って生存者がいるのは偶然なのか?

それとも

 

(俺が無意識に生存者を感じていたからわざわざ出向くようになったのか…)

 

時が経てば経つほど俺が『俺』で無くなっていく。俺という存在がわからなくなっていく。俺はなぜか胸の辺りが苦しくなるのを感じた。

 

「…それでどうして俺が噂の男だと?」

 

「目撃情報と外見が一致しておったからな。それに、血の臭いがするからのう」

 

「なるほど血の臭いか、流石は『伝説の忍』といったところか」

 

「いいよる。それで寿司を馳走したかわりにひとつ聞かせてもらいたいのじゃが」

 

「初めからそのつもりだったんだろ?なんだ」

 

「お主は何故妖魔を潰して回っている?」

 

 

 

 

 

 

 

『大量の妖魔が現れると褐色の肌をした金髪の男が現れ妖魔を皆殺しにする』

この噂が流れ出したのは、今から数十年前。わしがまだ若かった頃じゃった。

あの頃はこんな噂を信じるものなどいなくて誰かが流したホラ話だろうといった。当然だ、妖魔とは今も当時も恐ろしい存在なのだから。そんな存在をたった一人で殲滅するなど想像することすらできなかったじゃろうな。

 

しかし、ある時その男を見たと言う妖魔との戦いの生き残りが現れた。錯乱していた可能性があり、決して多くはなかったがあの噂が本物かもしれないと思わせるには十分すぎた。

 

そして、その男が今わしの前にいる。

 

「何故か……そうだな、その前にたとえ話をしよう」

 

例え話?と儂は疑問に思ったが黙って聞いていた。

 

「目の前に異常に臭くて見るだけで吐き気がするようなゴミ、特に生ゴミが目の前にあったらどうする?」

 

「そりゃあ、当然片付けるのう」

 

この例えで何を言いたいのかわしには皆目見当がつかない。

 

「ああそうだな。誰だってそうする、俺だってそうする」

 

『だから俺はあのゴミ共を片付けた。俺がしているのはそれだけのことに過ぎん』

 

「ッ!」

 

儂はこの言葉を聞いて驚かざるを得なかった。妖魔を屠るのを塵掃除と例えるこの男の異常さに、それを当たり前だと言っている瞳の意思に恐れを覚えながらも感服した。

 

この男は儂らにとってどのような存在になるのか――――妖魔を滅ぼす救世主となるのか、それとも全てに終わりをもたらす禍となるか――――そんなもしもがわしの頭をよぎった。

 

 

 

 

「じっちゃーん!きたよー」

 

「おお、飛鳥」

 

俺と半蔵が話していると突然勢い良く扉が開き小学生位の少女が店に入ってきた。じっちゃんといった辺半蔵の孫だろう。

 

「あれ、お客さん?」

 

「ん?気にせんでいい。わしの知人じゃ」

 

「へ~、こんにちわ!」

 

「……こんにちわ」

 

やりづらい…こう純粋なガキは非常にやりづらい。なんというか後ろめたいことがあるわけでもないのにまともにガキを見られない。

飛鳥は俺の隣にちょこんと座って太巻を口いっぱいに頬張っている。半蔵がそれを微笑ましくもややイヤらしい目で見ているのは突っ込んだほうがいいのだろうか。こいつ確か巨乳が好きなんじゃなかったか?

 

「何を言っておる。確かに巨乳は好きじゃが貧乳も好きじゃよ、わし」

 

とんだ変態だった。こんなのが伝説とは忍は色々と大丈夫なのか…

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