大学のレポートが多くて中々時間が…(言い訳)
公園のベンチに腰掛けて俺はひとつため息をついた。視線の先には他所のガキ共と遊んでいる飛鳥の姿があった。なぜ俺がこんな状況にあるのか…それは数分前に遡る。
『そろそろ客がくる頃じゃのう。そうじゃ、ちょいと飛鳥の面倒を見といてくれんかのう』
初対面の人間に自分の孫娘の面倒を見させるのか?普通…まあそれを了承した俺も何も言えんがな。まあ、飛鳥が遊んでいるのを見守るだけの簡単な仕事だから楽なもんだ。
「伝説の忍の孫か…」
眩しい笑顔を浮かべてかけっこをしている飛鳥を見てつぶやく。恐らくあの少女はいずれ忍になるだろう。これは心を読んだわけではなくただの予想だ。しかし、あれほど爺になついているなら忍に憧れを抱いているかもしれない。
「はっ!何考えてんだか。あのガキがこの先どうなろうと知ったこっちゃないだろう。でも、憧れか…これも俺にはないものだな」
あいつらにとっては別にそんな物珍しくもなんともないんだろうな…子供が何かに憧れるなんざ当たり前のことだ。って、いつの間にか日が暮れてやがる。そろそろ飛鳥連れて帰らねぇと爺に何か言われそうだ。
「おい飛鳥、そろそろ帰るぞ」
「はーい」
ほかのガキ共も親が迎えにきて公園に残っているのは俺たちだけだった。俺たちも爺の店に帰ろうとしたのだが飛鳥がなにやらもじもじしていた。
「どうした?」
「えっと、トイレ…」
「あ~、さっさと行ってこい。ったく」
おなかを抑えてトイレに走っていく飛鳥を見届けると、俺は辺りを見渡す。
秋の中に1、右端の家の裏に2、10歩先の地面に1……計4人か。幾ら伝説の忍の孫とはいえガキ相手に大人数で来るわけないか。しかし、俺がいる以上何人いようと無駄だがな。
波旬が片足を思い切り地面にたたきつけると目の前の地面が突然爆散し人が飛び出した。
「ガァッ!?な、なぜ……」
「んだぁ?この程度で隠れているとでも?なってねぇ、なってねぇなぁ最近の忍とやらは。気配がダダ漏れなんだよぉ!」
倒れ伏す忍の身体を踏み付けると一瞬きしむ音が鳴り直ぐにグチャリと何かが潰れる音がした。しまったな、力加減を間違えた。死んじゃいねえがもう虫の息かよ。もう一人忍が背後から迫ってくるが振り向くと同時に拳を叩き込みカウンターを決める。
「ッあ…!?」
今度は勢い余って腹をぶち抜いたようだ。手のひらが何かヌメヌメした液体にまみれている。手を引き抜くと血とおまけにどれかわからんが臓物がくっついてきた…気持ちわりぃ。
「グゥ…ァア」
「おいおい、これでもギリギリ生きてんのかスゲェな」
伊達に忍やってるわけじゃねえわけだ。臓物抜けても生きてるなんてさすがに驚いたぞ。俺が言っても説得力ないが。
「でどうすんだ?ほかの隠れてる奴ら。別にかかってきても構わないけど『死ぬ』ぞ?死んでもあのガキさらうつもりならさっさと来いよ」
数秒の沈黙…ただ風に揺らされた木の葉の音だけが聞こえる。そして自然のものではない風が少し俺の肌を撫でた時には目下の半死体は不細工な赤い花を残して消えた。
「どうするかなぁ…この血痕。さすがに放置したら一悶着ありそうだ」
血塗れの砂を足で払って赤ができるだけ見えにくいようにして俺の手についてきた臓物を忍が隠れていた穴に放り込み埋める。手についた血は布きれのような服をちぎってふき取る。そろそろ布を調達しねぇと。服?なかなか気に入ったデザインがないんだよ。そんなの着るくらいならいつも通りの乞食みてぇなぼろ布のほうが落ち着く。
飛鳥が無事トイレから帰ってきたのを確認して俺たちは爺のもとに帰っていく。
「ん~…」
「眠いのか?」
歩いていると飛鳥が小さくあくびをして目をこすっていた。こんなところでぶっ倒れてもらっては困るので『仕方なく』おんぶした。おんぶした次の瞬間にはのび太もびっくりするほどの速さで眠りクークーとかわいらしい寝息を立てていた。…のび太ってだれだ?
「こんなガキが狙われなきゃならねぇなんてな…ひでぇもんだ人間ってのは」
「《腐っている…気持ちが悪い、吐き気がする。ああ、その上鼻がひん曲がるほどに臭ぇ。こんな屑共はさっさと■■■c,lrv]^\0l;/え℣ℍ…》ッ!?アッガアアアアア!」
痛い……痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛いィイイイイイイ!
背に乗っている飛鳥を落ちないように何とか片手で支えながら蹲る。
「ぐぅッ…これは一体、ゥウ!?」
一向に収まらない頭痛。脳に突き刺さる激しい痛みに足が震え意識が朦朧とし始める。それから十分程経つ頃に痛みは収まり震えも止まった。
「ハァハァハァ、なんだったんだよ今のは」
ただの頭痛ではないのは確かだ。今の身体では正直立っているのも少し辛いと感じる。それに…
「言葉が…どうして自分の言った言葉が聞き取れなかったんだ」
途中から言葉に雑音が重なり理解できないと思った瞬間からあの頭痛は始まった。ということはあの時の言葉がトリガーになったのだろうか、だが『俺は何か変なことを言ったのだろうか?』
結局その後なんとか飛鳥を半蔵のもとに送り届け俺はいつもの隙間に帰った。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
渇望…人が何よりも望み欲する最も強い願い。
渇望はその人物の本性を、本質を表す。故に大したことではかわりはしない。それこそ世界が変わるようなことが起きても変わらないかもしれない。
消えはしない、忘れることなど出来はしない。
世界をも壊す魂に刻まれた渇望は誰にも変えられない。
例え彼が別の渇望を見つけたとしても、彼の渇望が自己愛とは相反するものであっても。
あいつの自己愛は消せないんだよ。
何があってもな…なぜならあいつは
『波旬』なのだから。
おや?波旬の様子が・・・・