龍田改二記念SS!

少々雑になってしまったこともありますが、突貫工事なので致し方無し。やっぱりネタは新鮮なうちにやっとかないと。

次はR18のリクエスト消化です。内容は、お楽しみに~

1 / 1
龍田改二記念SS(タイトル思いつかんかった)

「――大本営からの通信だ。貴様に関係することだから読んで置け」

「……あらあらぁ~?」

 

揃って黒縁の四角い眼鏡を掛けて書類仕事をしていた龍田と提督。余り抑揚のない声の提督から渡された書類を何気なく眺めると――

 

「えーとぉ、これは改装命令よねぇ?」

「そうだ」

「いちおう私も工廠班だけどぉ、こういうのは明石さんに直接渡せばよくなぁい?」

「最後まできちんと読め」

「読んだわよぉ?」

「……分かった、声に出そう。そうすれば現実を見てくれるな」

 

思考を放棄している様子の龍田に溜息をつきつつ、提督は眼鏡を外して龍田の正面に向き直る。

 

「軽巡洋艦龍田、貴様に改二改装命令が下った。これは命令である」

「……あらぁ~」

 

心ここにあらず、と言った様子の龍田は理解しているのかイマイチ分からない。提督は龍田から改装命令書を取り上げると、執務室から出て行く。

 

「あら? どこにいくのかしら?」

「明石にも伝えに行く。ついでにこれからの運用に関する会議を龍田以外の秘書艦隊で行う。筆頭の秘書艦様はぽんこつになっちまってるからなぁ?」

 

バタン、と執務室のドアが閉まる。龍田は不満げに頬をぷくーっと膨らませる。

 

「あーいうところは可愛げが無いんだからぁ、もぅ」

 

いつも可愛げがある態度をしているかと言えば、そうとは言えないのだが。

 

 

「よぉ龍田。改二決まったんだってな!」

 

恐らく遠征終わりに直接会議に向かったのだろう。いつもより遅めの時間に補給に来た天龍が若干興奮気味に話しかけてくる。

 

「ごめんねぇ天龍ちゃん~、先に改二になっちゃって~」

「いいよ別に。オレはそーゆーこと気にしないし、天龍型にも改二は来るんだってコト分かっただけでも充分だろ」

「天龍ちゃん……」

「それに、後々の方が強くなるだろ? 流れ的に。それに、折角妹の門出なんだ、オレが腐ってちゃダメだろ?」

「私じゃなかったら腐ってたんだ~」

「それは言うなよ……」

 

二人して笑い合ったところで、天龍の補給が終わり、天龍は再び遠征へと駆り出されていった。

 

「明石さんお疲れさま~」

「あ、お疲れさまです龍田さん。今日はもう上がっちゃってください」

 

明石の運ぶ台車には高速建造材がいくつか乗せられて運ばれていた。

 

「……大型建造の準備ですかぁ?」

「あれ? ああそっか、龍田さんは会議に参加してないんでしたっけ。これは龍田さんの改装に使うものですよ」

「あら~? そうなんですかぁ~」

 

ちょっと照れ気味に目を細める龍田。改装命令が出た時は工廠はなんとなく対象の艦娘を中心に回るのを龍田は知っている。それ故に、いざ自分にその番が回ってきた時、なんとなくむず痒くなってしまうのだ。

 

友達が自分の誕生日プレゼントを選んでいる場に偶然出くわしてしまった具合に気まずくなる感じと似ている。

 

 

「貴様の改装は1か月後に予定されている。練度は足りているから、しばらくは演習も遠征も出なくていい」

「意外とすぐにやるのね~」

「予定していたモノとは違うモノが要求されたからな。高速建造材と開発資材、貴様も見ただろう」

「やっぱり慣れないですよねぇ~。なんか、自分が主役になっちゃったみたい~」

「まあ、あながち間違いではないだろうな」

 

興味なさそうに書類から目を離さずに龍田に応対する提督。

 

「もーちょっと構ってくれてもいいんじゃないの~提督冷たぁい」

「見慣れた貴様など眺めていても飽きるからな。逐一視線を寄越してやるのも面倒臭い」

「ひっど~い」

 

ふくれっつらさえ見向きもしないと悟った龍田は、眼鏡を掛け直し、提督の正面で書類作業を始める。

 

「そう言えば、その眼鏡なんだかんだ掛けてくれてますよね~」

「壊れてないし、新調するのも面倒だからな」

 

二人が掛けているおそろいの眼鏡は、非番に仕事用の眼鏡を買いに行った提督が龍田とばったり出くわし、龍田の悪ふざけで同じモデルを購入したものだ。

 

本日の業務も、滞りなく進み、トラブルと言えば、島風が護岸に衝突して艤装に穴を空けた位。比較的平和に鎮守府は本日の業務を終了する。

 

「……激戦時代から比べると、随分と楽になったな。ご苦労」

「ご苦労様~。それじゃあ、また明日ね~」

 

時刻は9時前。戸締りを終えた提督が正面玄関から出てきて、その後龍田と別れる。

 

「提督も酷いわねぇ、関心の欠片も無いんだもの~」

 

地味に、飽きたと言われた事がショックらしい。その後も提督に対するお小言をぶつぶつと呟きながら、艦娘寮へ向かう帰途へついた。

 

「お、龍田。おかえり」

「ただいま天龍ちゃん」

 

艦娘寮は一人部屋からルームシェアまで様々な生活スタイルを完備してある。天龍と龍田はルームシェアで、今二人の居る部屋とは別に、それぞれ個室を持っている。

 

天龍は翌日から連合艦隊による海域攻略が急遽立案された為に、遠征から引き返し、改装予定の龍田に変わって、秘書艦隊に臨時編入されるとのこと。

 

「聞いてよ天龍ちゃん~、提督ったら、私の事飽きたなんて言い出すのよ~」

「ぼふっ!? ……はぁ? お前らもうそんな所まで行ってたのか!?」

 

くつろいでいた天龍は脈絡のない龍田の話に飲んでいたお茶を吹き出す。

 

「あらあら~? 私はただ、提督が私の顔なんて、見過ぎて飽きてるって言おうとしただけよ~? 一体ナニと勘違いしたのかしらぁ?」

「んなっ……ったく、姉をからかうのもいい加減にしろ。全く、びっくりしたじゃねーか……」

 

天龍は先に夕食をとっていたらしく、冷蔵庫から料理を取り出して、レンジで温めていく。その間に龍田はお風呂を沸かす。取り決めた訳でもないが、姉妹で自然と分業出来ていたりするのだ。

 

龍田が夕食をとっている間に天龍はお風呂に入り、その後天龍が食器を片付けて、龍田がお風呂に入る。

 

11時頃、後は寝るだけとなった二人が居間でのんびりしていると、窓の外に雪がチラつく。

 

「珍しいな、この辺りでも雪は降るのか」

「そうねぇ~」

 

目を輝かせて窓の外を眺める天龍、そしてその様子を眺めながらワインのグラスを傾ける龍田は、唐突にソファーに身を預ける。

 

肩につかない程度に切りそろえられている自分の髪が、わさりと、ソファーにの上に広がる。

 

「髪、伸ばそうかなぁ……」

「いいんじゃねーの」

 

天龍はその呟きに無意識の肯定を返した。

 

龍田の仕事が工廠に集中するようになって数週間。改ニ改装の日までは数える程の日数となってきた。

隣で作業している夕張がふと、

 

「あれ、龍田髪伸びた?」

「そ~よ~。最近ちょっと伸ばしてみてるの」

「わぁ~なんかいいなぁそういうの。大人の魅力っていうの?マシマシって感じだよね~」

「そぉ? ふふ、ありがと」

「美容室とか行ってるの?私にも紹介してほしいなぁ」

「行き出したのは最近よぉ~。天龍ちゃんが調べてくれてぇ~」

「へえー天龍が……なんか以外だ」

「ああ見えても天龍ちゃん、女子力高いのよ~」

 

工業機械を前に繰り広げられるガールズトークに、近くを通りかかった北上が「なんかシュールだね」と評した。

 

日は巡り、あっという間に改ニ改装の予定日がやって来た。特にトラブルも不備も無く、改装は手順通り行われていく。

 

事前にサイズ合わせしていた制服も問題なく、工廠班の面子から挙がる歓声に小さく照れながら応じる。

 

「寒そー」

「わー、綺麗……」

「それじゃあ、艤装性能は後でテストしますので、1時間後、またここへ来てください」

 

北上のストレートすぎる感想を筆頭に、夕張、そして明石が今後の予定を伝えて締める。龍田は改めてお礼を言った後、工廠を出ていく。

 

「あ、天龍ちゃん」

「お、龍田か」

 

工廠を出た所で、外を歩く天龍と目が合う。

 

「どーお? 天龍ちゃん、これが改装された龍田よぉ」

「――す」

「す?」

「すっげええぇぇ! ナニコレカッコいいな! このマントの所とかさ! これは新しい近接兵装か? はぁ~これが天龍型の改二か……」

 

大興奮、と言った様子で改装された龍田を突っつき回す天龍。待ち望んだ天龍型の改ニは、やはり姉としても嬉しいことなのだろう。

 

「もぉ、天龍ちゃん?」

「っと、悪い悪い。ちょっと興奮しちまった」

「別にいいけどぉ、くすぐったいでしょ?」

 

少し頬を膨らませる龍田に天龍は両手を上げる。

 

「……改めておめでとうな龍田。先を越されたことはちょっとだけ、ほんのちょっとだけ悔しいけど、オレは嬉しいぜ?」

「うふふ、天龍ちゃんのそーゆーとこ好きよ~」

「うっせ、ばーか」

 

遠征に向かう天龍と別れ、龍田の足は執務室へと向かう。今日の午後から秘書艦勤務に復帰するというのもあるが、なんとなく、次は提督に見せるべきだと、そう無意識に思っていたのかもしれない。

 

まあ過程はどうあれ、結果として龍田は執務室の前に到着した。

 

「あ、あら~、いざ部屋の前まで来ると、き、緊張するわね~」

 

先程からノックしようとした手を下げて、また上げてという動作を繰り返している。あの、冷血で、一月前には自分の事を「飽きた」と言ったあの提督が、はたして、自分の変化に気が付いてくれるのだろうか。そんな不安で、中々踏み出せないのだ。

 

「部屋の前でうろつかれたら迷惑だ。さっさと入って来い」

「ひゃんっ!? て、ていとくぅ? 気付いてたんだぁ……」

 

扉の向こうから唐突にかけられた声に、驚いて飛び上がる龍田。どのくらい驚いたかと言うと、驚きすぎて頭のわっかが落っこちかけたくらいには驚いた。

 

「し、失礼しま~す……」

「いつもはノックさえすれば勝手に入ってくる癖に、やけに畏まっているな?」

 

龍田が扉を開けると、扉から離れていく提督が目に入った。ドアの前で待っていたから龍田に気づけたのかだろうか。今となってはそれを確かめる術も無いが。余裕のない龍田は、提督の耳がわずかに赤くなっていたことには、気づくことは無かった。

 

「さて、軽巡洋艦龍田。今回の改二改装、祝福す―――」

「?」

 

振り返りながら業務的な会話を始めようとした提督は、振り返って、視線を釘づけにされてしまった。他でもない、龍田に視線が固定されて動かない。

 

「――綺麗だ」

「――へっ? え、あ、ちょ、あら~?」

 

思わず飛び出た発言に提督は口元を抑え、龍田は唐突の事に混乱する。

 

「……くっ、思っても口に出すまいとは決めていたのだが……」

「ちょ、ちょっとていとく~? 今のは、その、どういうことかしらぁ?」

 

上目使い気味に至近距離で聞いてくる龍田に、提督はのけぞりながらも溜息をついた。龍田の紅潮した頬が妙に色っぽく、提督は目のやり場に困る。

 

「一度言ったことを撤回する気にもなれん。綺麗な髪だな、龍田」

「……服でも、艤装でもなく、髪なの?」

「そりゃ、そうだ。艤装も制服も事前に確認しているし、カタログスペックも折り込み済みだ。本人が変えた部分しか、褒めようがないだろうに……って、何を言っているんだ俺は」

 

慣れていないのか、若いプライドが邪魔をしているのか、何かを口に出す度、赤面して顔を逸らす。龍田には、その意外な行動が、とても愛おしく思えた。

 

「ふふっ、ていとくかわいい~」

「なっ、からかっているのか貴様は! いいか、誰の為かは知らんが、付き合いの長い、近しい奴が、自分で火曜用として、結果綺麗になって、自分に見せに来た。それだけで随分と役得というものなのだ、わかったか……くっ」

「……うん」

 

正直なのか、真面目なのか、恥ずかしいセリフをつらつらと並べ立てる提督に、龍田まで赤くなってうつむき始める。その問答がしばらく続いた末に、二人とも羞恥からか、黙り込んでしまった。

 

「……とにかくだ、今の貴様は見ていて飽きが無い。化粧も変えたな」

「……そ~んな事細かに解説しないでいいじゃないのよぅ……」

 

ゆでだこみたいになって、消え入りそうな声で話す龍田に対し、開き直ってしまったのか、げんどうはそのままに、いつも通りの態度に戻った提督

 

「はぁ、貴様がそこまでするに至った奴が知りたい。是非礼を言いたいものだ」

「……貴方ですよぅ」

「……ん? なんだ」

「なぁ~んでもありませぇ~ん。仕事しましょ、仕事」

 

そう言って、自分の持ち場にパタパタと向かう龍田。その後ろ姿に、提督は二度目の溜息をもらす。

 

(その原因が、俺であったなら。これ以上喜ばしいことは無いのにな)

 

と、ぼうっとした頭で考えて、次の瞬間には、「いや、何を考えているんだ俺はッ」と、頭を振って余計な思考を追い出した。

 

「……白の紐か」

「……っ!?!?」

 

余計な思考を追い出した結果、純粋な感想が口を突いて出てしまい、後ろ回し蹴りを顔にくらったのは、大体において、彼が悪いだろう。

 

その時破壊された眼鏡の買い直しに、一緒に行く約束を取り付けたのは龍田の功績で、手帳にデートと記入してしまって、それを天龍に見つかって自爆したのもまた、龍田の落ち度と言うことになるだろう。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。