美少女に"格闘戦"をしかけるのは合法である   作:くきゅる

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第十二話 一転攻勢

 エリオとの模擬戦で圧勝したシャロンだが、勝負の方は完敗を喫して心が折れてしまった。

 一応、美人な大人組に労われてロッジまで運ばれたのだが、その時はもう興奮できる精神状態ではなかった。

 "それだけの代償が伴う魔法だったのか"と勘違いされているが、言うまでもなく精神的なショックが原因なのでその辺に転がしておくのが最適解である。

 どうせ暫くすれば、ゴキブリ以上のバイタリティをもって蘇るのだから。

 ロッジ内のソファで仰向けになり、天井で回るファンを仰いだ。

 

 

「……エリオには勝てない」

 

 

 遺伝子レベルで、"勝てない"と思い知らされたシャロン。

 今回は色んな要素が絡んだ結果だと思われるが、それでもトラウマになるには十分過ぎた。

 ステゴロはおろか、シャロンさんに対して近距離での真っ向勝負で勝てる同世代なんてまずいない。

 実際、真正面からエリオを圧倒してみせた。

 初見なのはお互い様なので、状況も五分だった。

 

 なのに惨敗とは、変態が背負った宿命というか、業というか、なんというか。

 

 

「お疲れ様~、シャロン君!」

 

 

 おっとりとして、間延びした声がシャロンを労う。

 

 

「……メガーヌさん」

 

「本当にびっくりしたわ~! 凄く強いのねぇ~!」

 

 

 "これ、良かったら飲んで"と、差し出されたフルーツジュースを起き上がって受け取るシャロン。

 冷たい甘味が喉を通ると、沈みきった心はどこへやら。

 

 

「ありがとうございます」

 

「いいえ~」

 

「そういえば、ヴィヴィオ達はどうしてるんですか?」

 

「ふふ、あの子達ならシャロン君に触発されたみたいで、練習しに行ったわよ。皆、ほんと元気ね~」

 

 

 "そうですか"と素っ気なく返して、残りのジュースを胃に全部流し込んだ。

 メガーヌがディスプレイを展開すると、各地の様子が映し出される。

 魔力補助無しで壁をロープでつたい、的に向かって高速射砲撃を即座に繰り出す。

 一線級の局員が行う訓練を、わざわざ休暇に行うというのは誰でもできることではない。

 いや、一線級の局員だからこそ、オフで鍛えているというべきか。

 

 

「なるほど、これが強さの秘訣ですか。頭が下がります」

 

「あらあら、シャロン君だって普段からあれくらい鍛えてるんじゃないの?」

 

「俺のはフィジカルだけですよ。あそこまで多方面に負荷をかけるようなトレーニングはしてませんから」

 

 

 見れば、エリオも重りを背負って救助隊のトレーニングのようなメニューを悠々とこなしている。

 手加減なしでぶん殴られ投げ飛ばされた筈なのに、シャロンに負けないリカバリーの早さであった。

 

 

「……エリオ、やりますね。俺とは違って、多彩な技能を持っています」

 

「彼、器用だものね~。でも、一芸に特化して極めるのも凄いことよ?」

 

「一芸、と呼べる程のものじゃありません。ただ身体を普通に鍛えて、自分が使いたい技をかじっただけです。打撃に関しては、力任せな所が大きいですし」

 

「謙遜しすぎも良くないわ。ああみえて、エリオ君すっごく悔しがってたんだから」

 

「……俺も悔しかったですよ。なんか負けた気がして」

 

 

 まごうことなきシャロンの本心だった。

 "やっぱり男の子は負けず嫌いなのね"と、メガーヌは心の中で微笑む。

 

 

「にしても、どんな鍛錬をしたらあんな身体になるのか興味があるのだけど……」

 

「普段のメニューですか」

 

 

 "そうですねぇ"と、シャロンは鍛錬内容を思い返す。

 才能があったとはいえ、その力と肉体が一朝一夕に身につき仕上がることはない。

 シャロンの数年間の鍛錬は、それだけ苛烈を極めていた。 

 

 

「基本的にはジム通いです。別に特別なものはありません」

 

「へぇ、そうなの~?」

 

 

 "意外と普通なのねぇ"と、いつぞやのリオと同じような感想を述べるメガーヌ。

 

 

「そうですよ。他には週一くらいで、岩石を浮かせて身体に落とし続けたり、激流の中でひたすら耐えたりですかね。強くなるのに、特別な鍛錬はいらないんです。"普通"を絶えず継続していくことが大事なんです」

 

「週一でやってるメニューは、ちょっと普通じゃないわねぇ」

 

 

 至極真っ当な意見だが、シャロンの内面を知る者からすれば胡散臭さが尋常じゃないだろう。

 されど、目的の為には努力を惜しまない姿勢は、変態であろうと見習うべきだ。 

 

 

「懐かしいわね~。私もシャロン君くらいの頃は、ライバルと切磋琢磨したものだわ」

 

「メガーヌさんが言うと、ほんのちょっと前くらいの話に聞こえますね」

 

「まぁ! お世辞がうまいんだから~!」

 

 

 メガーヌさんもDSAA強豪選手だったなら、もし過去にタイムスリップしても安心して公式試合で不退転出来ると訳の分からない妄想をするシャロン。魔法戦技に造詣が深くておっとり癒し系のメガーヌとシャロンの相性はかなり良いらしく、選手あるある等の話で会話も弾む。

 さりげに若かりし頃のメガーヌを初めとした美少女選手達の写真を拝む事ができて、エリオ戦で折られた心は完全復活を遂げた。   

 

 

「ちわーす! メガーヌさんいるー?」

 

「あら、セインいらっしゃい」

 

 

 シャロンとメガーヌが談笑していると、青髪のセインと呼ばれた修道女の恰好をした少女がロッジ入ってくる。

 ノックもなしで普通に入ってくるものだから、余程親しい人物なのだろうとシャロンは推測した。

 

 

「はいこれ、教会からの新鮮野菜とたまごの差し入れ!」

 

「いつもありがとね~!」

 

 

 修道服、教会、シャロンが導き出した結論は聖王教会の修道女(シスター)。

 ただの宗教組織と侮ることなかれ。

 聖王教会は管理局とも大きな繋がりがあり、慈善活動団体を初め、スポンサーにその名を聞く事も多い。

 正式な騎士階級ともなれば、管理局の尉官にも相当するとかなんとか。

 

 ちなみに、聖王教会の女性職員のレベルはかなり高いので、シャロンも学院に所属している修道女をよく目で追っている。将来、女騎士狙いで騎士資格取得も悪くないのではと思案したことは一度や二度じゃない。

 

 閑話休題。

 

 

「えっと、その方は……」

 

「おっと、噂の不退転の子だな! あたしは、聖王教会のシスターでセインだ! よろしくなー!」

 

「とっても良い子なのよ~」

 

 

 メガーヌ基準だと、大抵の子は良い子扱いだろうという突っ込みはおいといて、"随分とフランクな美少女だな"というのがシャロンの第一印象。

 こころなしかヴィヴィオと声が似ている気がしたが、性格は容姿は全く違うようなので関係ないだろう。

 

 

「セインはいいの? みんなと遊んでこなくて」

 

「いやぁ、あたしは教会から差し入れにきただけだから……」

 

「そんな堅いこと言っちゃって、ほんとは遊びたいくせにー」

 

「そ、それはそうなんだけど!」

 

 

 つんつんとセインを突くメガーヌの姿は、ルーテシアと重なる。

 やはり母娘なのだなと、納得するシャロン。

 

 

「俺が言うのもおかしい気がしますが、せっかく遠いとこからきたんですし少しは休んでいってもいいのでは」

 

「そ、そうかー?」

 

「うんうん、ちょっとだけなら大丈夫よ~」

 

 

 セインは結構チョロいらしく、二人の甘言にあっさり乗せられた。

 "じゃあ、アイツ等に温泉サプライズでも仕掛けてから帰るかー!"と、何かやらかす気まんまんであったが、面白そうだったのでシャロンは聞かなかった事にして黙認することにした。

 

 ──(温泉か……これは一つ確認しないといけないな)

 

 面白ついでに、一つ尋ねることにした。

 

 

「……その温泉というのは」

 

「なんか掘ったら出てきちゃったから、ロッジに作っちゃったの!」

 

 

 "設計とか全部ルーテシアがやったのよ~!"と、親ばかっぷりを発揮するメガーヌ。

 

 

「でも、男女に別れてないから、悪いんだけど男の子二人は待っててもらえるかしら?」

 

「そういう事なら」

 

 

 ちょうどその事を聞こうと思っていたので、質問の手間が省けた。

 温泉は男女別ではないらしい。混浴というわけでもないようだが。

 しかし、シャロンの変態としての勘が何かを告げていた。

 

 

 ──(俺には分かる。この展開、ワンチャンあるぞ)

 

 

 それは傍から見ればワンチャンじゃなくて、ただのアクシデントなのだが、とにかく変態の第六感は悲しいかなよく当たるのだ。

 

 

「メガーヌさん、食材しまったり夕食の仕込みとか色々やることあるでしょう。手伝いますよ」

 

「あら、ほんと? じゃあ、私もお言葉に甘えちゃおうかしらね~。セインにも頼んでいいかしら?」

 

「あいよー!」

 

 

 舞い降りた予感に心を躍らせながら、食材が詰まった籠を運ぶシャロン。

 

 ──今宵、他人を巻き込む変態の変態による変態の為のイベントが起ころうとしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 夕方になると、なのはとフェイトを除いた大人組と自主練をしていた後輩組プラスアルファがロッジに戻ってくる。

 汗と石鹸が交じり合ったような魅惑の香にトリップしかけたが、"お疲れ!"とエリオの一声で一気に現実に引き戻されたシャロン。

 

 

「さて、皆さんお楽しみはまだまだこれから! 女の子は、天然温泉大浴場に集合ね~!」

 

 

 "天然温泉!"と、はしゃぐ美少女達を見送り残されたのは野郎二人。

 

 

「女の子達長いし、夕食の準備の手伝いでもしようか?」

 

「それなら俺が大方やっておいた。仕込みはばっちりだし、料理は後でセインさんがやるとかなんとか」

 

「そっか。なら食器並べくらいは、僕がやるよ」

 

「任せる」

 

 

 表情は変わらないが、シャロンはとくに嫌がる様子もなくエリオと会話する。

 シャロンの事をよく知る者が見れば分かる筈だ。

 何かがおかしい、と。

 

 エリオが人数分の椅子やコップ等を並べ終え、シャロンはフリードと戯れていた頃。

 

 

「ただいま~!」

 

「すっかり遅くなっちゃった!」

 

 

 最後まで残っていたなのはとフェイトもロッジに帰還。

 汗だくで、緩めたジャージの隙間から立ち昇る蒸気に目ざとく反応したシャロンは、谷間をバレない程度にガン見しながらタオルと飲み物を運んだ。

 

 

「お疲れ様です。良かったらこれを……」

 

「ありがとう!」

 

「ありがとね。皆はもうお風呂かな?」

 

「ですね」

 

 

 すると、温泉の方から凄まじい音が鳴り響く。

 明らかに魔法を使わないとでないような音と振動だが、"セインの仕業ね~"と当主であるメガーヌは呑気そうに笑っていた。

 "あの子も来てたんだね""もう、セインったら"と、なのはとフェイトも些末事のように扱っている。

 昼間言っていた温泉サプライズに違いないと確信したシャロンは、後で詳細を聞いておこうと思った。

 

 

「それはそうと、私達が入ってたら夕食遅くなっちゃうよね」

 

「僕らはあとでも大丈夫ですよ。ねぇ、シャロン?」

 

「……えぇ、まぁ」

 

 

 エリオと二人で温泉なんて死んでもごめんだし、背中を流そうとしてきた日には自分を殺しきれる自信がないシャロンは危機感を覚えた。

 

 

 ──(どういうことだ……俺の第六感は何かが起こると告げているのに……!)

 

 

 ここにきて、焦るシャロン。

 

 

 ──しかし、真に遺憾ながら運命はシャロンの味方をしたようだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「──なら、みんなで入るのはどうかな?」

 

 

 

 なのはが、冗談とも本気とも取れぬ爆弾を投下した。

 いつもにこやかなので、真意はまるで掴めない。

 

 だが、シャロンの目がカッと見開いた。

 

 

 

 ──(来たか!)

 

 

 

 完全に変態の波動を感じ取ったシャロンに対し、思春期真っ盛りのエリオは激しく反応する。

 

 

 

「え、ええぇぇ!? さ、さすがに、それはちょっとまずいですよ!? そ、それにフェイトさんだって!」

 

 

 

 ちらっと、フェイトの方を向くエリオとシャロン。

 

 

 

「私は平気だよ? 最後に一緒に入ったのも、海鳴市の銭湯以来だよね……久しぶりだし一緒に入りたいなぁ」

 

 

 

 "シャロンもまだ子供だし大丈夫だよ"と、フェイトは特殊な出自故の世間ズレでシャロンにとってファインプレーをかました。

 十二歳はもう親と風呂に入る年齢からは外れてるし、まして後輩の母親と一緒だなんて普通は考え辛いが、その辺の感覚がやや鈍いのがなのはとフェイト。

 女性陣は混浴に満更でもないらしく、エリオは冷や汗をかく。

 

 

 

「いや、それはその……そうだ、シャロン! シャロンもそう思うよね!?」

 

 

 

 唯一の同性であり、理解者であろうシャロンに同意を求めるエリオ。

 

 だが、残念だったな。

 

 

 

「別に俺は、お二方がよろしいのであれば構いませんが」

 

 

「シャロン!?」

 

 

 

 まさかの裏切りに、エリオは面食らう。

 普通じゃないと自覚してはいるが、己の欲望のために気付かない振りをするド畜生でド変態のシャロンも除外され、ここでまともな感覚を持ち合わせているのはエリオだけなのだ。

 

 

 

「じゃあ、一緒に入ろうか♪」

 

「うん♪」

 

 

「えぇ!?」

 

 

 

 "ま、待ってください!"と尚も縋ろうとするエリオだが、無情にも"着替えとか準備してくるね!"と去っていくなのはとフェイト。

 茫然と立ち尽くすエリオを、シャロンはとても良い笑顔で見つめていた。

 

 

「まぁ聞け、エリオ。さすがに女の子しかいない中で、汗だくでいるのはいただけないだろう。そういうの、キャロも意外と気にすると思うぞ」

 

「キャ、キャロは関係ないでしょ!」

 

 

 キャロの名前を出されて分かりやすく反応するエリオ。

 シャロンは当然スルーして話を続ける。

 

 

「そんなに恥ずかしがることはない。タオルも巻くし、浴場も広いだろうから気にするほどのことじゃないだろ。それとも、ジロジロ見るつもりか?」

 

 

 さすが、次元世界お前が言うな選手権を連覇している男。

 自分が一番やるつもりなのに、棚上げしてよくぞ言えたものだ。

 

 

「そ、そんなことするわけないよ!?」

 

「なら、問題ないだろ。ほら、準備しに行くぞ」

 

「えぇ!? ちょ、ちょっと待ってよ!?」

 

 

 強引に話を纏めて、混浴を成立させたシャロン。

 通常なら、自分となのはとフェイトだけで楽しみたいところだったが、話の流れ的にそれは叶わない。

 それでもシャロン的にはプラスであるし、なによりエリオにしてやった分でプラス百万点くらいの価値があった。

 

 

 ──(フハハハハハハ!!! 思春期特有の羞恥心に苦しむがいいエリオ!!! 精々、羞恥すら興奮に変換できない己の未熟さを悔いることだな!!!)

 

 

 

 "リベンジ成功だ"と内心で高笑いが止まらないシャロンだが、エリオは別に負けていない。

 人として終わっているシャロンと比べて、エリオの方がよほど高潔で立派なのだから。

 

 だから強く生きてくれ、エリオ・モンディアル。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 湯上りの女性陣とすれ違い、温泉に向かうシャロン一行。

 "なんだ、混浴かぁ?"とノーヴェに冷やかされたり、"私もエリオ君と入りたかったな"と羨ましそうにするキャロだったり、川遊びのことを思い出して赤面するアインハルトだったり、多種多様な反応を見届けて浴場入りした。

 羞恥すら己の興奮の糧とするシャロンは、迷う事無く全裸になって腰にタオルを巻いた。

 "僕がおかしいのかな……?"と、自分を見失いつつあるエリオも渋々服を脱いでタオルを巻く。

 

 

「凄いな。うちの大浴場の比じゃない」

 

「……だね」

 

 

 "かっぽーん"と、どこからともなく聞こえてきそうな大浴場。

 かなり本格的な造りになっており、滝湯まで完備されていた。

 この状況に適応どころか、余裕ですらあるシャロンは素直に感心していた。

 

 

「すごいお風呂だねぇ~!」

 

「ほんと! エリオ、シャロン、背中流してあげるからおいで!」

 

「はい」

 

「……なんで、シャロンはそんなに堂々としていられるの」

 

 

 

 シャロンは一見平然としているが、大人の色気マシマシのなのはとフェイトと対面して、内心では祭りもかくやと言わんばかりにフィーバーしまくっていた。

 

 

 ──(フォオオオォォオオオウ! フオオォオオフォオオウウ!)

 

 

 肉体と精神を切り離して興奮するという、常人離れした絶技をやってのけるシャロン。

 その内なる奇声は、どこかで聞いたことがあるような小動物の鳴き声に似ている気がするが、きっときのせいだ。

 シャロンに愛くるしさは皆無なのだから。

 

 

 ──(高町シャロンになれば毎日のように女神が背中を流してくれ、おはようからおやすみまで面倒を見てくれるというのか! しかも、出来が良くて優しい美妹(びもうと)付! 結婚というのにあまり気は進まないが、これは真面目に婿養子になるのも検討するしかないな……)

 

 

 頼むから生涯独り身を貫いて、その遺伝子を後世まで残さないでくれ。

 

 "痒い所はないかな?"と、なのはにちゃっかり頭まで洗ってもらいながら、シャロンは大気圏外までぶっ飛んだ頭でクソな妄想をしていた。

 当然、ヴィヴィオも断る権利があるのだが、そんな事を考慮する変態ではない。

 そして"もし両親に不幸な事故が起きたら、絶対に何が何でも引き取ってもらおう"と、決意を固めるシャロンの横では、"僕は何をしているんだろう"と、エリオが壊れたように自問自答を繰り返していた。

 

 

 ──(不退転にやられっぱなしという文字はないのだ、フハハハハハ!!!)

 

 

「なのはさん、よろしければ背中を流しますよ」

 

「はーい、お願いします♪」

 

 

 歳の離れた弟か、もしくは息子がいたらこんな感じなのかなぁと想像して微笑むなのは。

 

 

 ──(プロポーション完璧過ぎるよなのはさん……さすが教導隊のエースオブエースだよなのはさん……はぁはぁ、肌はすべすべ滑らかだし女神過ぎるよなのはさん……あなたの射砲撃なら食らって死んでも悔いはないです……!)

 

 

 それはぜひ、この興奮度マックスで恍惚とした表情と気持ち悪すぎる心境を見てから想像していただきたい。 

 どれだけ出来が悪くはねっかえりだろうと、この変態を息子か弟にするよりは万倍マシだと思われる。

 

 

「シャロン君みたいなお兄ちゃんがいたら、ヴィヴィオも喜ぶだろうなぁ」

 

「どうでしょう。彼女はしっかり者ですし、居ても居なくても変わらない気がしますが」

 

「ヴィヴィオ、ああ見えて子供っぽいところもあるから、居たらきっと毎日甘えてくると思うよ~?」

 

「それは可愛いですね。ヴィヴィオみたいな妹なら、俺も大歓迎ですよ」

 

「ふふ、じゃあうちの子になってみる?」

 

「はは、喜んで」

 

 

 冗談っぽく返しているが、目と顔がマジだった。

 

 

 ──(妹とのスキンシップは合法である)

 

 

 黙れ。

 今こうしてこの場にいる事自体、非合法だ。

 どこの世界に後輩の女の子の母親と風呂でいちゃつける人間がいようか。

 一切ぶれない声色と、天が間違って与えた容姿とキングオブポーカーフェイスのお蔭で成り立った奇跡である。

 

 

「エリオに背中流されてると、なんだか昔を思い出すなぁ」

 

「そ、そそそ、そう、ですね……!」

 

「そんなに照れなくてもいいのに……」

 

 

 シャロンの隣には、素で無茶振りをしてエリオを精神的、社会的に殺そうとしているフェイトが。

 これの何が恐ろしいかと聞かれれば、100%純粋な善意と親心によるところだろう。

 保護責任者とはいえ、フェイトは少し歳の離れたお姉さんのようなものだと思ってきたエリオ。

 14歳になって、余計異性として意識するようになったのに加え、フェイトの事をよく知っているから無碍には出来ない。

 

 その後は、美少女と美人の成分がよく染み出た温泉で最高のエクスタシーを感じつつ、恥ずかしさに耐えきれず別の湯に避難したエリオのお蔭でなのはとフェイトを独り占めしたりと、やりたい放題だったシャロン。

 

 

 

「最高の温泉でした」

 

「気持ち良かった~!」

 

「今度はキャロも入れて皆で入りたいね」

 

「……それはほんとに勘弁して下さい」

 

 

 

 全身に活力が漲り、艶々しているシャロンと精神力を全て使い果たしたかのようにげっそりとするエリオ。

 

 

 

 ──(やはり、世界は俺を中心に回っているに違いない)

 

 

 

 強ち、自惚れとも言い切れぬから性質が悪い。

 

 

 

 超濃密度なイベント目白押しであったが、驚くべきことにまだ合宿は初日。

 ハチャメチャな訓練合宿は、まだまだ続くのであった。

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