美少女に"格闘戦"をしかけるのは合法である   作:くきゅる

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第十三話 天衣無縫の構え

 約一名を除いて温泉を堪能しきった合宿参加者達。

 セインの手料理に舌鼓を打ち、その後はリビングで楽しく談笑。

 

 

「みんな、ちょっと聞いてくれるか。明日の練習会のことなんだが」

 

 

 ノーヴェがエアディスプレイを立ち上げて、注目を集めた。

 画面には、赤組と青組に別けられた陣営に合宿参加者達の名前が割り振られている。

 シャロンは赤組に振り分けられていた。

 

 

「まず、ルール説明からな」 

 

 

 恒例行事の練習会だが、今回はシャロン等の新メンバーもいるので改めて説明するらしい。

 DSAA公式試合でも使われるタグを用いて、LIFEポイントの管理。

 LIFEはポジションによって異なり、前線で身体を張るフロントアタッカーなら3000、逆に後衛でサポートに徹するフルバックは2500となっている。

 シャロンは当然、フロントアタッカーだ。

 

 

「あれ、ノーヴェが入ってない?」

 

 

 チーム表を見てノーヴェが含まれていない事に気付いたヴィヴィオが疑問を投げかける。

 

 

「あー、それなんだがな。人数が奇数で、各々の戦力を考えたらあたしを抜くのが一番ちょうどいいと思ったんだよ。引率のあたしよりも、シャロンやアインハルトにこういう経験は積ませてやりたいし」

 

「えー! ノーヴェも出ようよー!」

 

「そんなこと言われてもな……」

 

 

 この人数なら、一人の差でも試合への影響は少なくないだろう。

 若く才気あふれる子供達の成長を促すため辞退したノーヴェだが、ヴィヴィオ達にせがまれて困っているようだった。

 

 

 ──(ふむ、アインハルトか俺がいなければ問題なかったわけだ)

 

 

 シャロンとしてもノーヴェに辞退させてしまったという負い目がなくはないし、一人でも多くの美人美少女が参加するのに越したことはないと考えている。

 なので、ここはシャロンも乗っかることにした。

 

 

「ノーヴェさん、やっぱりあなたも参加すべきです」

 

「あーもう! お前もか! だから、あたしは引率だから問題ないって……」

 

「出たくないわけじゃないんですよね?」

 

「そりゃまぁ、あたしだって出れるんだったら出たいけど……」

 

「そうですか。言質は取りましたよ」

 

 

 ノーヴェも試合には出たかったらしい。

 出場意志を確認すると、シャロンは自分のデバイスを使って表示されているチーム表を勝手に編集し始めた。

 

 

「ちょ、お前勝手に!?」

 

「シャロンさん、これは……」

 

「えーと……?」

 

 

 動揺するのも無理はない。

 シャロンが新しく編成したチーム表は、ノーヴェを含めた人数差上等の組み合わせだったのだから。

 ノーヴェとヴィヴィオを赤組に入れて、代わりにシャロンを青組に転向させる。

 ちなみにシャロンは動く必要なかったのだが、エリオと戦うのがいやだったからちゃっかり変えたのだった。

 

 

「まぁ、これで釣りあいが取れるでしょう」

 

 

 つまりは、アインハルトとヴィヴィオ合わせても一人で十分抑えられるということだ。

 随分と挑発的な物言いに、さすがの二人もむっとした顔をする。

 

 

「個人戦とチーム戦は違うんだぞ。戦術次第で、戦力差も簡単に覆ったりもするしだなぁ!」

 

「それも織り込み済みで、釣りあいが取れると言ったんです。俺はそこそこ強いですから」

 

 

 自分で自分を強いと胸を張って言える人間がどれだけいるだろうか。

 大半は自惚れだと嘲笑されるだろうが、シャロンは実際ここにいる全員の前で力を示してみせた。

 

 

「納得していただけませんか?」

 

 

 本人的にも二人を馬鹿にしているわけではなく、冷静に各々の力量を判断しただけだった。

 こういうところは素で世間ズレしていると言わざるおえない。

 

 

「うん、私はいいと思うよ。バランスが悪かったら、二回目と三回目で調整すればいいんじゃないかな」

 

「私も悪くない編成だと思うわ。けど、LIFEポイントは少し調整した方がいいわね」

 

 

 なのはとメガーヌは概ね賛成のようだった。

 

 

「それでノーヴェが参加できるなら、私もそれで……」

 

「……分かりました」

 

 

 渋々といった感じだが、アインハルトとヴィヴィオも了承する。

 

 

「不服なら、ぜひその思いを拳に乗せてぶつけてくれ。強い感情のこもった拳は、常識外の力を発揮するというものだ」

 

 

 かのジェイル・スカリエッティと同等か、それ以上にも思える欲望を備えたシャロン。

 常識外のタフネスは、単に肉体能力が優れているからというだけではない。

 このクソメンタルこそ、最強の肉体を十二分に活かしているのだ。

 

 

「それとも、負けるのが怖いか?」

 

 

 あまりやる気のない拳では絶頂できないシャロンは、"さぁさぁ!"と煽っていく。

 ここまで言われて何も言い返せないような二人ではない。

 

 

「アインハルトさん! 先輩を倒しましょう! 二人で!」

 

「えぇ! ヴィヴィオさんとなら、必ずやれます!」

 

「いや、練習会でのマッチは絶えず変化していくんだが……」

 

 

 "ふぁいとですっ!""はい!"と、一致団結して闘志を燃やす二人にノーヴェの声は届かない。

 闘志の余熱はリオやコロナにも伝播し、それを良きかなと見つめる大人達。

 予測不能な大乱闘が幕を上げようとしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 合宿二日目。

 大自然の清涼な空気と、小鳥の囀りが何とも心地よい朝。

 昨晩、就寝前に後輩組の部屋へ戯れに向かったものの"作戦会議中なので先輩は入っちゃダメです!"と門前払いをくらい、そのダメージを引きずっているシャロン。

 ついでに味方チームのリオまで加わっていたことから、彼女の友情>シャロンの図式も垣間見えた。

 それも地味にダメージソースとなっている。

 ここまで計算してやっていたなら大したものだし、そうじゃないにしろシャロン打倒作戦は彼女等の知らないところで少なからず効果を上げていた。

 

 

 

 ──(いやよく考えてみれば、ツンツンな後輩というのもまた一興じゃないか。俺としたことが、混浴イベントで高まり過ぎて感覚を鈍らせていたようだ)

 

 

 

 訂正。

 やはり、シャロンを元気にさせただけだった。

 少し色づいた朝日を眺めながら、溢れ出した妄想が下卑た笑みとなって表に出る。

 もっとも、見てくれだけはいいので例によって画になってはいるのだが。

 

 

「シャロン、早いね。もう起きてたんだ」

 

「先輩、おはようございます~!」

 

 

 と、声をかけてきたのはネグリジェ姿のルーテシアとひらひら短パンが可愛いコロナだった。

 

 

 ──(大人っぽいというかませているというか、水着よりも煽情的な印象を与えるルーテシアは言うまでもなく百点だが、尋常じゃないローライズで美脚をこれでもかと晒すコロナも文句無しの百点だ。しかも、コロナの清楚で上品なお嬢様というイメージとのギャップで更に捗るな)

 

 

 変態スカウターはマルチタスクで常時フル稼働中である。

 

 

「おはよう。コロナとルーテシア……さん」

 

「あはは、呼び辛かったらルーテシアでもルー子でもルールーでも、好きな呼び方でいいよ」

 

「えっと……じゃあ親しみを込めてルールー子で」

 

「語呂悪いから、どっちかにして」

 

「ルーテシア」

 

「親しみはどこにいったの……」

 

 

 漫才みたいなやり取りだが、思考のソースを割きすぎてシャロンが素でボケただけである。

 それが切っ掛けでルーテシアとシャロンの距離感を縮めることになったので、結果オーライだったと言えるが。

 

 

「ねぇ、シャロンって今日は大人モード使うの?」

 

 

 "ていうか、ずっと使えるの?"と、尋ねるルーテシア。

 

 

「あぁ、問題なく。ただ……そうだな」

 

 ──(使えることには使えるが、悩ましいところだ。しかし、相手はヴィヴィオやアインハルトだけじゃないからな。片づけ終わったら、他のメンバーもお触りしにいかねばならないし……)

 

 

 お触り。

 突っ込みたい気持ちを持つ者は多かろうが、一応"合法"ということで大目に見てほしい。

 

 閑話休題。 

 

 今回はいつもの狭く遮蔽物のない試合形式のものとは違う。

 あのビル群を掻い潜り、見晴の良い場所を陣取るであろうセンターガード(※以降、各ポジションはCGのように省略)のティアナを攻めるのも、今の子供サイズでは少し骨が折れるかもしれない。

 フェイトに至っては空戦魔導師であるので、尚の事使わざるえない状況だった。

 

 

「……使わせてもらおう。今回も手を抜けない、というのは言い方悪いが形振り構ってられそうにない」

 

 

 フェイクの肉体を纏うのは不本意だが、これだけの美人美少女と存分にプレイできるならお釣りがくるだろうと内心シャロンは思っていた。

 

 

「うんうん。シャロンには、責任とって覇王聖王コンビを抑えてもらわないといけないからね。ついでに、コロナも潰してもらおうかしら~?」

 

「任せろ」

 

 

 コロナどころか、あわよくば全員お触りするつもりのシャロン。

 

 

「つ、潰されないもん!」

 

「いや、潰す」

 

 

 想像以上にマジなトーンのシャロンがヴィヴィオとの"特訓"を想起させ、コロナは"ひっ"と小さな悲鳴を上げて青くなる。

 

 

「シャロン、目が怖い。というか、全体的に怖い」

 

「普通の顔だと思うが」

 

「鏡、貸してあげようか?」

 

「遠慮しておく」

 

 

 "そろそろ、朝食の時間だ"と、ロッジに引き返す三人。

 熱り立つシャロンから溢れ出る殺気(欲望)を感じ取り、心底味方で良かったと安堵するルーテシアと、どうか酷い事にはなりませんようにと天に祈るコロナ。

 

 どうなるかは、神のみぞ知る。

 

 

 

 

 

 

 「────あとはみなさん、正々堂々頑張りましょう!」

 

 

 "はーい!"とノーヴェの宣誓に返事をすると、いよいよ合宿名物の練習会の開始だ。

 各々がセットアップの掛け声と共にバリアジャケットを纏う。

 一瞬、服が弾けて露わになるシルエットを見逃さなかったシャロンもシャロンさんに変身完了。

 そしてチーム毎に所定の位置で待機する。

 

 

「シャロン、私が最初にウィングロードで空中に道を作るからそれを使って!」

 

「ウィングロード?」

 

「そう! ノーヴェも名前は違うけど、同じように道を作る筈だからそれも利用して!」

 

「はぁ」

 

 

 スバルがそう言うも、全く想像がつかなかった。

 とにかく、空中戦も容易になるのは確かか。

 

 

 ──(いや待て。なら、別に大人モードにならなくても……)

 

 

 そう思ったが、今更やっぱり大人モード解除しますと言える程シャロンさんは図々しくなれなかった。

 

 

『それではみんな元気に……試合開始!!!』

 

 

 ジャアアァァァン!!!と、異世界のものと思われる特大ゴングをガリューが鳴らして試合開始。

 始まったからにはやるしかないと切り替え、シャロンさんはスバルのウィングロードに便乗して敵陣地に突貫する。

 止められる者など誰もいないとばかりに馬鹿正直に最短距離を往くと、待ち構えていたかのように大人ヴィヴィオとアインハルトと接敵する。

 

 

 ──(こいつぁすげぇな……なんてモノ……持ってやがる……!)

 

 

 いつ見ても圧巻のダイナマイトボディに高まるシャロンさん。

 "出ている部分"を目を見開き観察していると、何を勘違いしたのか後ずさる二人。

 

 

 ──(この殺気……やっぱり、本気なんだ先輩)

 

 ──(……弱気になってはいけない! 私とヴィヴィオさんで必ず押し通して見せる!)

 

 

 知らぬが云々。

 

 数秒の沈黙の後、最初に動きだしたのはヴィヴィオだった。

 

 

「一閃必中! ディバイン・バスターッ!!!」

 

 

 そう、魔法戦技は格闘技や近接武技のみがものを言うわけではない。

 ヴィヴィオは母親直伝の高速砲を編むと、聖王家特有の七色の魔力光を迸らせながらシャロンさん目がけて魔法を放った。

 魔力弾より応用が利かない高速砲だが、その分速さと威力は折り紙つき。

 回避する気もなさそうなシャロンさんにそのまま直撃する。

 ヴィヴィオも内心"やった!"と飛び跳ねそうになるが、自分が今相手にしている人物を思い出すとすぐに気を引き締めた。

 

 

「アインハルトさん!」

 

「任せてください!」

 

 

 追い打ちをアインハルトに任せて、ヴィヴィオは援護の為の魔力弾を生成する。

 

 

「シャロンさん、覚悟してください!」

 

「お前がな」

 

「ッ!?」

 

 

 DAMAGE 0

 ↓

 LIFE 3500

 

 シャロンさんはバリアジャケットを纏ってはいないが、肉体が既に鎧として完成している。

 加えて、高速砲が直撃する前にフィールドタイプのバリアを展開していた。

 本来ならバリアを張らずとも平気なくらいだが、DSAA公式のダメージ判定は競技向けになっており、当人の防御力以外に当たり方によってもダメージ判定が大きく変わる。

 選手が限界を超えて立ち上がらないようにする安全装置の役割も果たしているが、このルールがシャロンにとって足枷になっていた。

 

 閑話休題。

 

 そういうわけで、バリアを展開したシャロンさんの被ダメージは0。

 そして、隙も0だった。

 

 

「こんな砲撃でLIFEを削りたくなくてな。ほら、お返しだ!」

 

 

 ヴィヴィオの射砲撃なら興奮の糧になりえるが、どうせ格闘技者の直撃を受けるなら打撃の方が望ましいというアレな理由だ。 

 シャロンさんは拳を受け止めて、そのままぐいっと引き寄せた。

 すると、アインハルトも負けじと空いた手に魔力を込める。

 

 

「はぁッ!!」

 

「ッ!」

 

 

 近くなったシャロンさんの顔面にカウンターの掌打を見舞う。

 以前のスパーでの反省を活かし、着地と同時にハイキックも叩き込んで腕を振りほどいた。

 

 DAMAGE 200+300

 ↓

 LIFE 3000

 

 ──(いくらなんでも、堅すぎます……ッ!)

 

 分かっていたとはいえ、そう嘆かずにはいられないアインハルト。

 これでも楽しむために力を多少緩めていると知ったら、どんな顔をするだろうか。

 

 

「いいぞッ! もっとこいッ!!」

 

「くッ! はああぁぁぁッ!!!」

 

 

 攻めているのはアインハルトなのに、拳を防がれる度に逆に追い詰められているような気さえしてくる。

 良い感じに高まってきたシャロンさんの凶悪そうな笑みが、プレッシャーとなって圧し掛かる。

 

 ──(あれは……ヴィヴィオさん!)

 

 苦戦していると、シャロンさんの背後に魔力弾を携えたヴィヴィオの姿を捉えたアインハルト。

 

 

「シュートッ!」

 

 

 魔力弾と近接格闘の合わせ技はシンプル故に強力。

 両方を完全に防ぎきるのは困難な上、不意を突いて挟撃に持ち込めた。

 アインハルトもこれが好機と、断空拳の構えをとる。

 

 

「リボルバースパイクッ!!!」

 

「覇王……断空拳ッ!!!」

 

 

 虹と碧銀の閃光がシャロンさんに迫る。

 

 

 ──(これでッ!)

 

 ──(倒しますッ!)

 

 

 相手は化け物じみた力を持つ不退転シャロンさん。

 勝利を確信するなんて出来ないことは二人とも身に染みている。

 だが、これで必ず決めると腹は括っていた。

 

 

「…………」

 

 

 シャロンさんは冷や汗一つかかずに、ただ黙ってその場に立ち尽くしていた。

 諦めたかのようにも思えるが、シャロンさんにそれはない。

 

 そして、最速の魔力弾が着弾する寸前──

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ──自然体な姿勢から一変。四発の魔力弾を即座に弾き飛ばした。

 

 

 更にそこから爆発的に魔力を練り上げ、身体への伝達と思考の速度を極限まで加速させる。

 アインハルトとヴィヴィオが止まって見えるような領域まで踏み込むと、まず碧銀の拳を再び捕まえ、僅かに遅れて到達する後頭部への蹴りも受け止めた。

 

 

 

「キエエェェェイッ!!!!!」

 

 

 

 獣すら畏怖してしまうような奇声にも等しい雄叫びと共に、迫ってきた勢いそのままにビルへ向かって二人を投げ飛ばした。

 

 

 

「アハ、ハ、アハハ、アハハハハハハッ!!!!!!」

 

 

 

 快楽を引き起こす脳内物質がドバドバ溢れ、狂ったように笑うシャロンさん。

 

 

 

「ちょーーーーー気持ちいいィッ!!!」 

 

 

 

 傍から見れば戦闘狂のソレだが、美少女の鬼気迫る挟撃を捌いたことで性的に興奮しているだけである。

 狂っているのは間違いないが。

 

 

 

 

 

 

 

 一方で、観戦しているメガーヌとセインはというと。

 

 

 

「……アイツ、別人とかじゃないよな?」

 

「……まぁ、普段物静かな分、試合で熱くなっちゃう子はいるからねぇ」

 

 

 

 それでも度は超えていると内心メガーヌも思っていたが、それよりも驚くべきはその技量である。

 エリオとの試合を見た上で更に驚くことになるとは思わなかった。

 

 

 

「なんか一瞬消えたかと思ったら、二人が投げ飛ばされてたんだけど……」

 

「私も殆ど見えなかったけど、思考と身体を極限まで強化すれば可能かもしれないわね」

 

 

 

 しかし、あくまでそれは理論上。

 実際には努力の問題以前に、肉体資質的な才能が大前提となってくる。

 魔力で強化できるとはいえ、肉体への負担も考えればその上限も青天井じゃない事は素人でも分かる。 

 よしんば才能に恵まれていたとしても、それは激しい苦痛を伴う行為故、とてつもない精神力も要求される。

 

 莫大な努力と才能と精神力。

 

 この三つの要素を合わせて、はじめて可能性が見えてくるというレベルだ。

 

 

 

「それに、あの脱力姿勢からの一転攻勢。まるで、"天衣無縫の構え"ね」

 

「てんいむほー?」

 

「遠い異世界発祥の深奥……それこそ、ルーフェン伝統武術と同じくらい古い流派のね。自然体で全神経を研ぎ澄まして、多方の同時攻撃さえも刹那で見切って捌く守りの構え。しかも、相手からはどんな反撃に転じてくるか悟らせない……けど、体現するのは困難を極めるどころじゃないわ」

 

「うん、あたしも聞いてて訳わかんないし」

 

 

 

 物心ついた頃から複数の妄想と現実に対応するための思考を同時に熟し続け、先天的な肉体の才と、果てなき欲望を精神力に変えた結果、知らぬ間に武の深奥に辿り着いていたシャロン。

 

 うーん、もはやノーコメントだ。

 

 

 

 

「どれだけ苛烈な鍛錬……いえ、何が彼をそこまで駆り立てたのかしら」

 

 

 

 

 ノーコメント。

 ノーコメントである。

 

 "鍛錬内容も謙遜してたのかしら"というが、言えばさらなり。知らぬが云々。

  

 波乱の幕開けとなった練習会の行方や如何に。

 

 

 

 


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