美少女に"格闘戦"をしかけるのは合法である   作:くきゅる

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第十四話 最強の変態

ヴィヴィオ(FA)

 

DAMAGE 1200

 

 

LIFE 1300

 

 

アインハルト(FA)

 

DAMAGE 1000

 

 

LIFE 1500

 

 

「いたた……」

 

「……ヴィヴィオさん、無事ですか」

 

「な、なんとか……」

 

 

 シャロンさんの人間離れした絶技で投げ飛ばされたヴィヴィオとアインハルト。

 直前にバリアを張ったお蔭で何とか持ちこたえたが、LIFEを半分も失ってしまった。

 対するシャロンさんはアインハルトが二撃加えたものの、LIFE3000とまだまだ健在。

 

 

「……先輩、強いですね」

 

「えぇ、強すぎです」

 

 

 昨夜の二人相手でも問題ないと豪語していた姿が過る。

 悔しいが、現実はシャロンの言っていた通りだった。

 それどころか、自分達が何人束になっても敵わないような気さえした。

 

 

「ほら、どしたァッ!!! もっと、来いよォッ!!!」

 

 

 獰猛な獣のような笑みを浮かべ、己の武を誇示するかのように膨大な魔力を滾らせていた。

 絶対強者が放つオーラが、二人の心を激しく揺さぶり圧し折ろうとする。

 LIFEも心許なく、絶体絶命と言って差し支えない。

 しかし、ヴィヴィオは両手で頬をバシッと叩き気合を入れ直して立ち上がった。

 

 

「まだ、諦めません!」

 

 

「……ヴィヴィオさん」

 

 

 "特訓"という名の地獄を乗り越えたヴィヴィオに植え付けられたのは、なにもトラウマだけではない。

 追い詰められ、満身創痍な状態からでも折れずに立ち向かう反骨心。

 勝ちたい相手がいて、勝ちたい瞬間がある。

 そんな時に目を背けて屈している暇なんかないと教えてくれたのはシャロンだった。

 

 

 ──(シャロン先輩は、多分私達のことを試してるんだ)

 

 

 普段以上に荒ぶっているのは、きっとその所為なのだと考えたヴィヴィオ。

 

 

 ──(あなたの挑戦、受けて立ちます!)

 

 

 同様の考えに至ったアインハルトも、凛とした表情で立ちあがった。

 

 

 ──(FOOoooo~~~!!! 大人モードがどうとか気にしていた自分が馬鹿らしい!!! さぁ、今度は俺を殴って気持ちよくしてくれ!!!)

 

 

 もうシャロンだかシャロンさんだか知らないが、二人の熱意を踏みにじってドブに棄てるかのように内心であらぶっている変態。

 心が折れていないのを確認すると再びニヤリと顔を歪め、全力で打ち込みに来いと言わんばかりに両腕を豪快に広げる。

 そこからは、"割と良い勝負"になっていた。

 碧銀と金色の挟撃にシャロンさんが苦戦している……わけではなく、ギリギリの対応をする事で拳や蹴りをわざと掠めさせているからだ。

 

 

「いいじゃァないかッ! よく動くッ!!」

 

「くぅッ!!」

 

「はあぁッ!!」

 

 

 実際、二人の連携も巧みなもので、そこはかとなく覇王と聖王の因縁があるようにも思えてくる。

 しかし、シャロンという少年は、他者の努力や才能を真っ向から叩き潰す真の天才──いや、天災である。

 速かろうか、強かろうが、あらゆる打撃を刹那で見切って味わい尽くす変態でもあった。

 そして、とどめを刺し切らないよう注意しながら、たまにカウンターで投げ返したりすること数分。

 

 

『シャロン、スバルさんが一時離脱したから、ノーヴェが攻めてきてるの! なのはさんが足止めしてくれてるけど、なんとか加勢に来てもらえないかしら?』

 

『無茶を言うじゃないかァ、ルーテシア! こちとら、覇王と聖王で手一杯だってのに』

 

『うーそ! ちょっと加減してるでしょ。二人を試すのも程々にして、助けにきなさい!』

 

『……了解』

 

 

 冷や水をぶっかけられ、鎮火させられたシャロンはばつが悪そうに念話を切った。

 さすがに、青組の参謀の目は誤魔化せなかったらしい。

 もっともシャロンが変態プレイに興じているという認識ではなく、あくまで分析するのが楽しくて受けに徹しているという解釈である。

 というのも、比較的身近な人間であるなのはも職業柄よくやっている事だからだ。

 つくづく悪運の強い変態である。

 

 

 ──(そろそろ、頃合いか。まだ遊び足りないが……まぁ、次はノーヴェさんの身体を楽しませてもらうとしようか。フフ)

 

 

 心の中で下卑た笑みを浮かべて、息の上がったヴィヴィオとアインハルトと向かい合う。

 

 

「よくぞ折れずにここまで戦ったな。花丸評価をやろう」

 

「……まだ、まだぁッ!」

 

 

 残存LIFEの値以上に消耗している筈のヴィヴィオ。

 それでも動きを鈍らせるどころか、むしろ増したくらいの勢いでシャロンさんに食らいついた。

 

 

「ヴィヴィオ、お前には格闘技をやるなんて正気じゃないと言ったが──」

 

「ッ!?」

 

「ヴィヴィオさんッ!!!」

 

 

 拳を躱して両肩を掴むと、腹部に強烈な膝蹴りを見舞う。

 

 

「う……ッ!?」

 

 

DAMAFE 1000

 

 ↓

 

LIFE 300

 

 

 LIFEが僅かに残ったことに少し驚いた様子のシャロンさん。

 

 

「──あぁ、やっぱり才能あるよヴィヴィオには」

 

 

 膝蹴りで削りきれると思ったが、ヴィヴィオは魔力防御を固めていたのだ。

 肉体や技術の完成度以上に、ヴィヴィオの人並み外れた精神力を体感して素直な賞賛を贈った。

 

 

(特訓からかなり成長したようで、俺は嬉しいぞヴィヴィオ。心が折れずに最後まで立ち向かってくるのは、こちらの興奮……もといやる気を維持する上でなくてはならない要素だ。もう少し粘れるようになれば、美少女サンドバックの資格も取れるだろう。頑張れ、ヴィヴィオ!)

 

 

 贈られたのは、心からの最低な賛辞であった。

 ある意味、罵られる以上の侮辱ではなかろうか。

 

 シャロンとしては自分と同等以上に苛烈な相手を望むが、満足な攻撃をしてこない相手であっても、最後の最後まで闘志を滾らせ立ち上がる相手であれば十分に満足できるのだ。

 ちなみに、ヴィクトーリア・ダールグリュンはシャロンの理想の相手の一人だったりする。

 

 閑話休題

 

 首の皮一枚繋がったとはいえ、窮地を脱したわけではない。

 アインハルトに手を出される前にヴィヴィオの背面に回り込むと、両脇を腕で挟んでがっしりホールドする。

 金髪のポニーテールが肩にかかると、濃密な美少女特有の香りが鼻孔をくすぐり、さらに甘酸っぱい汗が肉体の生々しさを強調させ、シャロンを興奮度を極致にまで押し上げた。

 

 

 ──(やばい! 達する! 達する!) 

 

 

 しかけたのはシャロンさんだが、ヴィヴィオよりも先に意識を飛ばしかけていた。

 そして大人ヴィヴィオの自己主張が激し過ぎる胸を、シャロンの腕が窮屈そうに圧迫しており、正面から見るとかなり際どい絵面となっている。

 

 

 ──(や、やるじゃァないか、ヴィヴィオォッ!!! まさか、こんな隠し玉でカウンターをしかけてくるとは……いや、実に素晴らしいッ!!! なんかもう、とても良いぞッ!!! 柔らかいッ!!!)

 

 

 極上の感触に語彙力すら消し飛んでいた。

 背面で顔が隠れているのをいいことに、イケメンでもカバーしきれない程の気色悪いニヤケ面を晒すシャロンさん。

 間違いなくシャロンさんがやっていい顔じゃない。

 軽く放送事故である。

 幸いというか、やはり悪運が強いというか、サーチャーもその瞬間は捉えていなかったが。

 

 

「フィニッシュだ!」

 

 

 そう言い放つと、10メートル以上の高度からくるっと宙返りして飛び降りた。

 意味深に聞こえるが、とどめを刺すという意味である。

 誤解無きように。

 

 

 ──(ウオオォーッ!!! キマるぞーッ!!! 確実にキマっちまうぞォッ!!!)

 

 

 常時キマっているので、今更じゃなかろうか。

 ノーカードでヴィヴィオ諸共直下ダイブするあたり、相当頭がおかしい。

 

 

「う……へ? な、なに!? なんですか、これ!?」

 

 

 可哀そうに。

 飛ばしかけていた意識を、運悪く取り戻してしまったヴィヴィオ。

 あと何秒か遅かったら、楽に逝けたものを。

 

 

「アハハハハハッ!!!」

 

「ひゃああああッ!?!?!?」

 

 

 数秒後、凄まじい衝撃音を鳴り響かせて地面に激突。

 怪我防止用のセーフティが施されているとはいえ、10歳の少女を死人が出てもおかしくない高度から地面へ叩き込むなんて、鬼畜生でもなければ出来る事じゃない。

 もしくは、超弩級の大変態か。

 

 

 ヴィヴィオ(FA)

 

DAMAGE 1300

 

 ↓

 

LIFE 0 撃墜

 

 

 シャロン(FA)

 

DAMAGE 200

 

 ↓

 

LIFE 2200

 

 

 判定は1300だが、明らかに数値以上のダメージを負ったであろうヴィヴィオ。

 クリスの補助もあり怪我はなさそうだが、目をぐるぐる回して痙攣していた。

 

 

「……ふぅ。いやはや、こんな高度からのダイブはさすがに初体験だ。中々、スリリングだったなヴィヴィオ……ヴィヴィオ?」

 

 

 シャロンさんはまともに障壁すら張ってなかったのに、何故か体内の魔力強化のみで凌ぎ切っていた。

 マジモンの化け物である。

 あれをスリリングだったと同意できる人間なんてこの世界でも限られているし、そもそも当のヴィヴィオは三途の川を渡りかけているので物理的に返事が出来ない。

 

 

『……もしもし、シャロン君。えっとその……ヴィヴィオは大丈夫、だよね……?』

 

 

 ヴィヴィオとは敵チームであるにも関わらず、即座にシャロンに心配の念話を飛ばしてくるなのは。

 やはり敵味方以前に、高町ヴィヴィオの母親という事なのだろう。

 

 

『セーフティは抜いてないので大丈夫でしょう。ほら、なんかぴくぴく痙攣してるし生きてますよ』

 

『それ、多分大丈夫じゃないよね!?』

 

『いや、大丈夫ですって。ダメージの痛みはそのまま反映されますが、実際の負傷は一定でカットされるのは知ってるでしょう? 試合中、ショックで倒れて痙攣する選手なんてたくさん見てきましたし』

 

 

 心情的に、痙攣して倒れている少女を見て"あぁ大丈夫だな"と言い切れるのはさすがにおかしい。 

 といっても、実際に怪我はしてないのだから言い返せないのがもどかしい。

 

 

『色々言いたいことはあるけど……あーもう、今は試合に集中します! アインハルトちゃんもこっちに来てるみたいなの! シャロン君はもう動けるかな?』

 

『まだまだ余裕ですよ。残存LIFEも余裕があります』

 

『じゃあ、ノーヴェの相手をお願い! アインハルトちゃんは私が引き受けるから!』

 

『了解』

 

 

 再び念話を切ると、シャロンさんは跳躍して建物の屋上に上がる。

 情け容赦がないのは向こうも同じなようで、ヴィヴィオと共にシャロンが落ちたのを把握すると、すぐさまアインハルトに追撃を出させたようだった。

 しかし、誤算だったのはシャロンさんのリカバリーの早さだろう。

 

 

「あそこか」

 

 

 魔力弾が飛び交い、人影三つが激しく動いているのを視認した。

 エースオブエースの高町なのはでも、縛りのある練習会においてFA二人を同時に往なすのは難しいようだった。

 まぁ、容易く往なしてみせた変態はここにいるが、これで一概にシャロンの方が戦闘能力に長けているとかいう話ではない。

 

 閑話休題。

 

 大人モードでトップギアのシャロンさんの跳躍は、一蹴りで数十メートルの距離をゆく。

 

 

「オラァッ!!!」

 

 

 弾幕を無視して三人を分断するように突進をかます。

 ダンプカーを彷彿とさせる勢いで、すれすれで回避したノーヴェが冷や汗を流す。

 

 

「うげぇッ!? シャロンかッ!?」

 

「人を化け物みたいに。ヴィヴィオはきっちり落としたし、アインハルトも軽く削ったので、次はノーヴェさんです」

 

「……オッケー、上等だ。姉貴はお前らの試合が気になって集中切らしてたみたいだし、こっちも不完全燃焼なんだ。本気でいかせてもらうぜ」

 

「スバルさん……まぁ、いいです。ノーヴェさんともしてみたかったので」

 

 

 何をしてみたかったのかと聞かれても、ただの試合である。

 邪推しないよう気を付けてほしい。

 

 

「ジェットエッジッ!」

 

 

 先手、動き出したのはノーヴェだった。

 足場を自在に引き伸ばしては、両足のローラーで宙を踊るように滑走する。

 

 

「魔法戦技ならではですね。正に、変幻自在ってかんじでしょうか」

 

「ったく、お前も集中できてないようなら、目ェ覚まさせてやるよッ!!」

 

 

 ノーヴェは限定ながらも空戦可能な陸戦魔導師でもある。

 対して、シャロンさんは陸戦オンリー。

 視界に見える360度が足場となるノーヴェと、基本的な行動可能範囲が目下の建物の屋上だけのシャロンさんとどっちが有利かは言うまでもない。

 しかも、いくらシャロンさんの跳躍が凄まじかろうと、あくまで直線的な動きしかできないのだ。空中に疑似的な足場を作るにしても、差はそう埋まらないだろう。

 

 

「いっけえぇぇッ!!!」

 

 

 背後からの蹴り。

 シャロンさんは例の脱力姿勢のまま目を瞑り、全神経を集中させて着弾位置を正確に見切って防ぐ。

 

 

「……なるほど、そうきましたか」

 

 

 してやられたと、多方面から迫りくる猛攻を防いでいく(・・・・・)シャロンさん。

 

 

「お前とは正面からやりあっても勝てそうになかったからな! 悪く思うな……よッ!!!」

 

「さすが、ノーヴェさん。対策練るのも早いですね」

 

 

DAMAGE 100 50 50 40 160

 

 ↓

 

LIFE 1800

 

 

 防いだと言っても、まともなシールドすら張れていなければ多少のダメージ判定が出る。

 3ケタに届くか届かないかのダメージだが、塵も積もればなんとやら。

 攻撃は見切っているのに、掴めないのがもどかしい思いのシャロンさん。

 

 

「芸が細かい……着弾箇所にパリングを付与ですか」

 

 

 最強のタフネスと反射神経を誇るシャロンさんに対して、真っ向勝負は分が悪いどころじゃない。

 そこでノーヴェが行ったのは、文字通り地の利と機動力を活かした完全なるヒット&ウェイ戦法。 

 更にパリングと呼ばれる異なる魔力を弾く効果のある魔法を付与することで、一瞬であればシャロンさんでさえ足を掴む事が困難になっている。

 言うのは易いが、ノーヴェの繊細な魔法行使と身体運用だからこそ出来た芸当だ。

 

 

「もう一発ッ!!!」

 

「…………」

 

 

DAMAGE 100

 

 

LIFE 1700

 

 

 あれだけ余裕のあったLIFEも今や1700。

 

 

 ──(……焦らしプレイは嫌いじゃないが、俺もそろそろぶっ放したくなってきたなぁ)

 

 

 ヴィヴィオと空中ダイブをキメて発散させた性の高まりが、ノーヴェの焦らし……もといヒット&ウェイで再び蓄積され頂点に達しつつあった。

 

 もう爆発寸前である。

 

 

 

「うおりゃああぁぁッ!!!」

 

 

 

 今度は頭上。

 直撃すれば、無事では済まなさそうだが──

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「──小賢しい」

 

 

「ッ!?」

 

 

 

 

 シャロンさんは見切ったのにも関わらず、防御姿勢を取らなかった。

 

 

 

 

「う、嘘だろ……ッ!?」

 

 

 

 

DAMAGE 500

 

 ↓

 

LIFE 1200

 

 

 

 しかし、直撃したのは脳天ではなく肩。

 

 

 

「──捕まえた」

 

 

 

 ニヤリと不敵に笑うシャロンさん。

 魔力で弾かれるのなら、いっそノーガードで受け止めてしまえばいい。

 そんな思いで僅かに身体を反らして、着弾位置をずらしたのである。

 そして脚を引き抜こうにも、肩と首でがっちり挟み込まれて、無様に宙吊りになるノーヴェ。

 

 

 

「は、離せ、このヤローッ!」

 

 

「もう逃がしませんよ」

 

 

 

 人間離れというか、ゴリラすら軽く凌駕する膂力で抑え込んだ脚を、片手で持ちあげた。

 すると大人モードというのもあって、掴んだ腕を頭上まで持ってくると丁度目の前に股倉がやってくる。

 

 

 

 ──(これはやばいなぁ……あぁ、やばいぞ、やばい。やばいです)

 

 

 

 爆発した欲望が一周回って落ち着いてゆく。

 何がやばいって、スク水と大差ない股下の浅さ故、太腿から股関節までの柔肌が露わとなっているのだ。

 貞操観念の乱れというかなんというか、よくもまぁこんな際どいデザインを思いついたものである。

 

 

 

「くっそ、まったくふりほどけねぇ!?」

 

 

「…………」

 

 

 

 ノーヴェがじたばたして暴れるも、無心で股倉を見続けるシャロンさん。

 時間にして数秒間だが、彼はこの為だけに余剰魔力を費やして思考を何十倍も加速させているので、実質数分間も拝んでいたことになる。

 魔力制限がかかっているにも関わらず、がんがん使い込んでいた。

 余剰というか、戦闘で使った魔力よりも多い。

 馬鹿の極み変態である。

 

 

 

「……ッ!? いいところでッ!」

 

 

 

 魔力弾が飛来し、トリップしていたシャロンさんも現実に帰還。

 

 

 

「……っと、ナイスタイミングだティアナ!」

 

 

 

 放り出されて、ようやく変態の魔の手から解放されたノーヴェ。

 シャロンさんは目を細めて射手を睨みつける。

 どうやらアインハルトがなのはを抑えていたお蔭で、ティアナの最大射砲支援が完成したらしい。

 

 

 アインハルト(FA)

 

LIFE 0 撃墜

 

 

 橙の光が戦場一体を覆い尽くし、青組全体が退避を強いられる。

 状況はあまり芳しくはないように思える。

 

 

『青組一同、少し早いけど作戦を実行します!』

 

『『『『『了解!』』』』』

 

 

「……は?」

 

 

 ルーテシアはそれでも臨機応変に、チームに指示を送る。

 シャロンさん以外の全員が動きを変えた。

 

 

『ルーテシア、作戦ってなんだ?』

 

『あ、シャロンに伝えるの忘れてた! えっとね、今から2ON1で確実に速攻で狙った相手を潰す作戦にシフトしたから、よろしく! スバルさんと二人でノーヴェを潰してね』

 

『勘弁してくれ……了解』

 

 

 はぁ、と溜息を吐いて念話を切るシャロンさん。

 この二人は相性がいいのか悪いのか、なんとも言えない間柄に思える。

 

 

「お待たせ、シャロン! さぁ、今度こそ本気で行くよー!」

 

「余所見厳禁ですよ」

 

「ごめんごめん!」

 

 

 さらっとスバルを咎めるが、史上最低の余所見をしていたのは誰だったか。

 第n回お前がいうな選手権以下略。

 

 

 ──(この戦い、そろそろ終わりだな。それも、一瞬の幕引きだ)

 

 

 シャロンさんの純粋な武人としての勘がそう告げる。

 

 

「リカバリー発動」

 

 

LIFE 1700→2200

 

 

 医療系の魔法も得意なシャロンさんは、試合を引き延ばす為によく自己修復を施す。

 医者として合法的に云々な道を考えたかは不明だが、とにかく即席とはいえそこそこのLIFEを取り返すことができた。

 

 

「やりますよ、スバルさん」

 

「オッケー!」

 

 

 

 

 

 ──その後、うまいことルーテシアの作戦は嵌って、ノーヴェや赤組主力のフェイトを撃墜する事に成功。

 しかし、そのルーテシアとリオも、キャロとコロナの策に嵌って撃墜。策士策に溺れるとはよくいったものだ。

 そこからなのはがキャロを撃墜し、コロナを捕縛。

 

 そして、迎えた最終局面。

 

 

 

 

『マルチレイドで、ティアナのブレイカーを相殺します!』

 

 

 

 

 ついになのはから、最終兵器解禁の号令がかかった。

 数の面では圧倒的に優勢だが、ブレイカーなら逆転すらありえる。

 どのみちブレイカー同士がぶつかれば、とんでもない余波が生じるのだ。

 退避命令も同時にくだるが、逃げ場なんてないのに無茶振りではなかろうか。

 

 

「……行動不能な人はどうするんだろう」

 

「だ、大丈夫! セーフティと脱落者用の防護フィールド二重にかかるから! それより、早く離脱を……って間に合わない!?」

 

「…………」

 

 

 シャロンさんは暫し考え、ティアナを叩けて最大限にこの試合を楽しんで終わらせる方法を導き出す。

 

 

「こうなったら、シャロンだけでも……って、シャロンどこ行くの!? そっちは、危ないって!?」

 

 

 レスキュー魂に燃えるスバルの制止で、振り返るシャロンさん。

 その顔はこれから死地に赴く顔……というよりは、ワクワクが止まらないといった表情だった。

 

 怪訝そうなスバルに、シャロンさんは告げる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「──ちょっと、ブレイカーに挟まれてきます」

 

 

 

 

 

 普通に意味が分からない。

 頭がおかしいのか。

 いうもさらなり。

 

 

 

 

「え……えぇ!? 何言ってるの!? はやく戻ってきて! シャローン!!!」

 

 

 

 

 スバルの叫びは、彼の変態には届かない。

 

 練習会も、いよいよクライマックスを迎えていた。

 

 

 

 ──to be continued


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