美少女に"格闘戦"をしかけるのは合法である   作:くきゅる

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第××話 不退転のシャーロ

"不退転のシャーロ"

 

 その名が広まったのは、二年前のDSAA。

 当時だった無名のシャーロ・クーベルは、初出場にして本戦進出及び入賞を成し遂げた。

 翌年も同様に入賞を果たす。

 齢にして十を少し超えた程度の少女が成したと言えば、上出来を通り越して偉業の域である。

 加えて、銀糸を思わせる美しい長髪に、人形のように緻密に整った容姿。

 期待の大型新人に、魔法戦技界隈は大いに沸いた。

 

 

 そんな彼女は、名門St.ヒルデ魔法学院の中等科の一年生。

 

 立てば芍薬、座れば牡丹、歩く姿は百合の花。

 

 文武両道で容姿端麗且つ家柄良しな彼女は、同性さえも魅了してしまうパーペキ美少女であった。

 

 

 当然、モテる。

 モテて、モテて、モテまくりである。

 学院のお上品で奥手なシャイボーイだろうと、胸の高鳴りを抑えきれなくなる程の魔性の美少女なのだ。

 しかし、相手がどれだけイケメン御曹司であっても、彼女が首を縦に振ることはなかった。

 罪な少女である。

 

 いつも憂鬱げに溜息を吐きながら窓の外を眺めるのが彼女の日課だ。

 深窓の令嬢、という言葉があるがシャーロの為に作られた言葉に違いない。

 

 まぁ、というのも────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ──(あー私も実技の方に混ざりたいなぁ……美少女の汗と石鹸の匂いを嗅ぎながら、くんずほぐれつ……はぁはぁ……!)

 

 

 

 

 

 ──四六時中、見た目麗しい少女との絡み合いを妄想しているむっつりド変態であるからだ。

 

 

 別にレズというわけではない。

 ただ、男性よりも女性……それも美少女の方が性的興奮を覚えるというだけだ。

 つまるところ、両刀使いである。

 

 じゃあ女性からの告白は受けるのか。

 そう、実際彼女は後輩先輩問わずラブレターを受け取った事がある。

 けれど、シャーロは丁重にお断りしていた。

 

 プラトニックなお付き合いで満足できない以上に、自分のパーペキ美少女像を維持したいというクソしょうもない理由で自制しているのである。

 

 同性からの告白に対し、涙を流しながら抱擁して"ごめんなさい、ごめんなさい"と何度も謝り続けたのは、シャーロの聖女っぷり明らかにした逸話としてあまりにも有名である。

 

 

 

 

 ──(ちょ、超好みなのに……ほんとは今すぐ抱きしめてベッドインしたいくらいなのに……く、くやしい……くやしいけど断らなきゃ私のイメージが……! あぁでもこの子の身体柔らかいし良い匂い過ぎやばい達する達する達する)

 

 

 

 

 とんでもない性女である。

 

 そも、シャーロが格闘技、それもわざわざDSAAの魔法競技に参加したのは己の欲を満たす為だ。

 余程、露骨な触り方でなければ接触も許される。

 しかも、ミッドはレベルの高い美少女達がこれまた際どいバリアジャケットで参加しているのだ。

 それ目当ての観客も多い。

 選考会やノービスクラスの予選は微妙な男子もちらほらいるが、エリートクラスは殆どが女子である。

 

 

 ──ここでなら、私のイメージを保ちつつお触りし放題!

 

 

 成熟の早かった幼き日のシャーロはこう考え、すぐに実行に移した。

 

 

 "いやいや、無茶だし無理だろ"

 

 

 普通の人はこう考えるかもしれないが、シャーロの熱意はそんなものじゃなかった。

 加えて、神は二物を与えないというが、恵まれた容姿以外にも魔法と強靭な肉体を彼女に与えていた。

 

 

 

 ──才能ある者が、並々ならぬ情熱をもって努力した結果。

 

 

 

 あらゆる射砲撃も真っ向からぶち破って接近戦をしかける規格外インファイターが完成した。

 

 ……いや、してしまったのだ。

 

 

 

 クソ迷惑な話である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

☆★☆★☆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「──セットアップ完了。さぁ、来なさい!」

 

 

「ふ、ふざけているんですか! は、は、早く、服を着てください!!」

 

 

「ふざけてなんかないわ。これが一番動きやすいもの。スポブラだし、私達同性だから恥ずかしがらなくてもいいでしょう?

 

 

「~~~~ッ!!!」

 

 

 

 色々と端折るが、なんやかんやあって自称覇王の美少女と組みあうチャンスを得たシャーロ。

 自称覇王──アインハルト・ストラトスを分からせるべく、彼女は今しがた上着を脱いでスポーツ用のブラとパンツだけになったのだ。

 

 何を言ってるか分からないかもしれないが、神様でも理解しがたい状況であるので、あまり気にしないでほしい。

 

 

 

「──私は攻めない。好きに撃ち込んだらいいわ」

 

 

「……それは、私に対する挑発なのでしょうか」

 

 

「えぇ、そう捉えてもらって結構。あなたの軽くて歪んだ拳なんて、これっぽっちも効かないから」

 

 

「ッ!!!」

 

 

 

 自らサンドバックを志願する性女。

 

 予告通り、アインハルトの拳を生身で受け止め続けていた。

 

 

 

「そ……んな……」

 

 

「はぁ……はぁ……なんだ……なかなか、良い……拳……じゃない……ッ!」

 

 

 

 アインハルトがノックダウンしたのを確認すると、シャーロもアへ顔晒してぶっ倒れた。

 

 以上。

 お終い。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

☆★☆★☆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ──(食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べ……)

 

 

 

 以上が、アインハルトと同じベッドで寝ている事に気付いたシャーロの反応である。

 

 反応でした。

 終わり。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

☆★☆★☆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ねぇ、アインハルト。あなたはヴィヴィオについてどう思う?」

 

 

 

 

 藪から何とか。

 

 

 

 

「えっと、思いやりがあって強くて優しい子だな、とは」

 

 

「そう。あなたの記憶の中のオリヴィエと比べたら?」

 

 

 

 めっちゃぐいぐい質問する性女。

 

 

 

「……別人、とも言い切れないような……すいません、よく分かりません」

 

「ううん、気にしないで。ただ、昔の覇王様と聖王様は相思相愛だったのかな、なんて」

 

「こ、恋……ッ!? ……わ、分かりません!」

 

 

 

 ダウト。

 はぐらかし方が下手くそ可愛いハルにゃん。

 

 その反応をおかずに、脳内でヴィヴィオ×アインハルトを堪能するシャーロでした。

 終わり。

 

 

 

 


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