美少女に"格闘戦"をしかけるのは合法である   作:くきゅる

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第十六話 お前は誰だ?

「────俺は、アインハルト・ストラトスという人間が好きだ」

 

 

 

『え?』

 

 

 

 

 時が再び流れだした直後、開口一番発した言葉は皆揃って間の抜けたものだった。

 

 "好きだ"

 

 人への好意を表す、たった三文字。

 だが、文字として起こすのは簡単でも口で紡ぐのは難しい言葉だ。

 

 それを堂々と言ってのけるシャロンの勇ましさ、正しく不退転に相応しい。

 

 

 

 

「こ、これって、もしかしなくても!?」

 

「アインハルトさんへの!?」

 

「愛の告白ですか!?」

 

「ひゅー! やるじゃない、シャロン!」

 

 

 

 

 色恋沙汰に興味津々なお年頃の後輩組やルーテシア達。

 もう、祭りだと言わんばかりに目を輝かせてはやし立てている。

 

 

 

 

「う、うわ~! シャロン君って、ほんと凄いというか大胆というか……」

 

「ば、ばか、お前! こういうのは、もうちょっと場の考えてだなぁ……!」

 

 

 

 

 なぜか、なのはとノーヴェの方が初心な反応を見せている。

 二人はいい大人なのだが、その手の経験は皆無なのでしょうがない。 

 優しい目で見守ろう。

 

 

 

 

「あらあら、うふふ♪ 青春ねぇ~」

 

 

 

 

 さすが、子持ちの既婚者は余裕がある。

 

 

 

 

「…………」

 

 

 

 

 そして、アインハルトは余裕どころか生気すら感じられない。

 一人だけ時の凍結から復帰できていないようだった。

 

 

 

 

「アインハルト」

 

 

「…………」

 

 

 

 

 返事がない。

 あたかも屍のようだ

 

 

 

 

「アインハルト・ストラトス!」

 

 

「…………」

 

 

 

 やはり返事がない。

 本当に死んでしまったのかもしれない。

 

 

 

「ハイディ・アインハルト・ストラトス・イングヴァルド!」

 

 

「……ッ!?」

 

 

 

 

 ──そんな訳はなく、普通に生きている。

 フルネームでシャロンが呼んだところで、ようやく反応を示した。

 

 

 

 

「な、ななな、なんでしょう、シャロンさん!?」

 

 

「話の続きなんだが」

 

 

「は、話、ど、どど、どういった内容でしたっけ!?」

 

 

「いや、さっき俺が好きだといった真意について色々と……」

 

 

「え、あ、はい、そ、そそ、そうでしたね! す、すいません! ちょっと、その、と、唐突過ぎて、す、少しばかり、ど、動揺してしまい、ました!」

 

 

 

 

 どう見ても"ちょっと"のレベルではないし、確実に話は聞こえていただろう。

 言うまでもなかろうが、アインハルトもまた色恋に疎い乙女の一人であった。

 

 

 

 

「ひゅー! シャロンがまた好きって言った!」

 

 

「アインハルトさん、お返事は!?」

 

 

「アインハルトさーん!」

 

 

「どうなんですか!?」

 

 

 

 

 飢えた獣の如き後輩とルーテシアにもみくちゃにされる二人。

 余計なこと口走ったかと後悔し始めたシャロンだが、"あ、でも、もみくちゃにされるのは凄く嬉しい"と、数瞬後には内心でニヤケ面を晒していた。

 とはいえ、いつまでも混乱させたままにしておくのもまずいので、一呼吸入れたシャロンが群がる後輩の頭を軽く押しのける。

 

 

 

 

「まぁ、少し落ち着いて俺の話を聞け! ……先に言わせてもらうが、俺はだな────」

 

 

 

 

 ──"別に、異性として愛の告白をしたわけじゃない"と、言おうとした直後。

 

 

 

 

「あ、あの、シャロンさん!」

 

「……って、なんだアインハルト!?」

 

 

   

 

 ──(真っ赤なアインハルトもそれはそれで可愛らしいが、さすがにそろそろ喋らせてほしい)

 

 

 

 

 切実に。

 なんて言える筈もなく、冷静さを未だ取り戻せていないアインハルトが勢いのまま続ける。

 

 

 

 

「わ、私も、シャ、シャ、シャロンさんの事は好き……ですよ!」

 

 

 

 

 大胆に言い切った。

 発端となったシャロンが少し申し訳なくなるレベルで、見事に大衆の前で"好き"だと言い切った。

 

 

 

「おぉ~!」

 

「これって、つまり両想い!?」

 

 

 

 ──(いや、違う。勘弁してくれ)

 

 

 

 違うようだ。 

 この流れでお付き合いする事になってしまったらどうしようかと、シャロンは本気で頭を悩ませていた。

 普通の男子なら狂喜乱舞するだろうが、この少年は例外なのだ。

 しかし、その心配も無用らしい。

 

 

 

「……ただ、その、異性として、となると私もあまりよく分からなくて……で、でも! 間違いなく、同じ格闘技者としてはシャロンさんの事をお慕いしております! だ、だから!」

 

 

 

 ──(ありがとう、アインハルト。もうこれ以上、何も言うな)

 

 

 

 

 この流れ、誰がどう見たって行く末は予想できる。

   

 

 

 

 

「こ、これからもお友達として! よ、よろしくお願いします!」

 

 

 

 

 

 アインハルトがそう言ってペコリと頭を下げると、周囲がシーンと静まり返る。

 羞恥を押し殺して返事した彼女は、俯いたまま頬を赤らめつつ、冷める気配のない熱を持て余して何とも言えぬ表情をしていた。 

 外野からすれば、告白したシャロンが綺麗にフラれたように見えただろう。

 まぁ、事実としてはそうなのだが。

 

 

 

 

 

「──シャロン、何か言う事あるんじゃないかしら?」

 

 

 

 

 と、ルーテシアが慰めるようにシャロンの肩に手を置く。

 微妙に癪に障る顔をしているのが憎らしい。

 

 

 

 

 ──(あるよ。あったよ。寧ろ、俺の方が言う事沢山あったよ)

 

 

 

 

 今となっては全てが手遅れだが。

 

 数多の女生徒に告白され、その悉くを振り払ってきた罪深き少年シャロン。

 そんな彼が初めてフラれた瞬間であった。

 もはや、誰も救われない状況である。

 

 

 

 

 ──(……ほんとにフラれて良かった。それだけはマジで)

 

 

 

 

 美少女にフラれて喜ぶ少年も恐らくシャロンくらいなものだろう。

 しかし、問題……というよりは、心労の種はまだ残っている。

 

 

 

 

 ──(もうこのまま大人しく告白して撃沈したって事にした方が、お互いの為になりそうな気がしてきた)

 

 

 

 

 全てを投げ出したい衝動に駆られるも、"いやいや、俺は不退転だぞ。不退転のシャロンだ。投げ出してなるものか"と、半ば自棄糞気味に開き直ってアインハルトと向き合う。

 

 

 

 

「アインハルト」

 

 

「は、はいッ!?」

 

 

 

 

 シャロンの表情からは一切動揺は伺えないが、内心ではとても気まずそうにしていた。

 

 

 

 

「あの、あれだ。さっき言おうとして、言いそびれたんだけどな」

 

 

 

 

 視線を逸らして、頬をかきながら答える。

 

 

 

 

 

 

 

「別に異性として告白したわけじゃないんだ」

 

 

 

 

 

 

 

 そして、暫しの沈黙が訪れた後。

 

 

 

 

『え』

 

 

 

 

 再びロッジ内の時が止まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 その後、事情を説明すると周囲から"紛らわしい(わ)(です)!"とブーイングを散々浴びせられたシャロン。

 謝りつつも、初体験の美女美少女からの罵声も悪くないなと悦に浸っていた。

 シャロンは、殴られても罵られてもプラスに変換してしまう無敵の人だった。

 

 閑話休題。

 

 

 

「俺の言い方が悪かった。本当にすまない」

 

 

 

「い、いえ、わ、私の方こそ早とちりしてしまって、す、すいませんでした!」 

 

 

 

 表情が変わらな過ぎて、申し訳なさの"も"の字も感じられないのは置いておこう。

  

 

 

「改めて言わせてもらう。俺はアインハルト・ストラトスという人間が好きだ」

 

 

 

「は、はい! あ、ありがとうございます」

 

 

 

 相変わらず面と向かって言われると照れてしまうアインハルトだが、シャロンの雰囲気から、からかっているわけではないのは理解した。

 "単に好意を伝えたいわけじゃなさそうです"と、深呼吸してシャロンの二の句を待つ。

 

 

 

 

「──だからこそ、だ。俺としては、覇王の意志を継ぐという心意気は捨ててほしい、と思っている」

 

 

 

 

 "覇王の意志を継ぐな"

 シャロンから発せられた真っ直ぐな言葉が、アインハルトの心を穿った。

 

 

 

 

「……それは、どういう意味でしょうか」

 

 

 

 

 彼の王の悲願を果たす事。

 それがアインハルトという少女にとっての存在意義であり、譲れない信念のようなものであった。

 シャロンもそれは知っている筈なのに、その上で志を捨てろと言う。

 はいそうですね、と簡単に頷ける話ではない。

 

 

 

「初めてお前と会った後、色々話をしたよな。覚えてるか?」

 

 

 

 そう言われて、シャロンとの出会いを思い出す。

 ストリートファイトをしていたら偶然出会い、半裸のまま魔力強化もせずに覇王の拳を受け止めた少年。

 なぜか同じベッドで寝かせられたり等、振り返っていく内に、ふと今と同じような事をシャロンから言われたのを思い出した。

 

 

 

「……そういえば、同じような事を役所で話しましたね」

 

 

 

「その通り。あの時は有耶無耶になったが、今回はちゃんとお前の言葉を聞きたい」

 

 

 

 シャロンもシャロンで、あの時は話の辻褄合わせで適当に言い放っただけだった。

 どうして今になってこんな事を言おうと思ったのか、自分で言っておいて不思議な心地を味わっていた。

 

 

 

──(単なる知り合い……以上に思い入れが深くなっていたらしい)

 

 

 

 それはアインハルトのみならず、ヴィヴィオ等後輩も含む。

 友達らしい友達もいないシャロンにとって、こんなにも長く深く関わった相手は彼女等だけだった。

 性的な目でしか見ていないと思ったが、どうも自分にも真人間のような部分があったらしいと自嘲気味に内心で笑うシャロン。

 

 

 

「馬鹿がつく程真面目で、照れ屋で意地っ張りで、おまけにかなりの負けず嫌い。平和な国に産まれた、普通に学校に通う女の子。それが俺の知ってるアインハルト・ストラトスだ」

 

 

 

「…………」

 

 

 

「クラウスとかいう昔の王様は、もうこの世にいない。言うまでもなく、俺の知ってる女の子とは別人だ」

 

 

 

 過去の亡霊に憑かれて、遥か遠く昔の慟哭に囚われ続ける。

 思えば、どうしてこうも悲劇的なのだろうか。

 

 

 

「はっきり言わせてもらう。自分の子孫を苦しめてまで未練を晴らそうとする王なんぞ、クソ食らえだ。そんなモノのために、自分を見失って拳を振るい続ける姿を俺は見たくない」

 

 

 

 これは主観的な問題であるし、何よりデリケート過ぎるので誰も直接言わなかった事だ。

 そんなのはシャロンだって百も承知。

 実際に記憶継承したわけじゃない部外者だからとか、その手の葛藤の一切合切を振り払い、思いの丈をぶつけたのである。

 ただの他人なら、ここまではしない。

 

 

 

 

「──お前は誰だ?」

 

 

 

 

 お前というのは誰だ。

 どういう人物なのか。

 名前、性格、容姿。

 Who are you

 

 

 問われたアインハルト自身、この当たり前な質問に上手く答えが纏まらなかった。

 口に出すべき言葉が見当たらない。

 

 

 

 

「私は……」

 

 

 

 

 物心ついてからというもの、継承した記憶と自分を混同して何度も訳もなく涙を流した。

 苦しくて、悔しくて、悲しくて、切なくて。

 名状し難い感情を薙ぎ払わんと、苛烈を極めた鍛錬に身をやつしてきた。 

 そして、強くなればなるほどクラウスの無念が溶け込み蝕んでくる。

 理解者もなく、最近まではシャロンと同様に知り合いらしい知り合いも居なかった。

 

 

 

 

「……」

 

 

 

 

 

 ──私は一体、誰なんでしょうか

 

 

 気づかないふりをしてきた心にぽっかり空いた穴が立ちふさがる。

 

 

 一度覗きこめばそのまま吸い込まれて何もかも消え入りそうな…………────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「──アインハルトさんは、アインハルトさんです!」

 

 

 

「ッ!?」

 

 

 

 

 沈黙を破ったのはヴィヴィオであった。

 人一倍他者に共感し、手を差し伸べられる優しい少女。

 その分、当人以上に傷つく事もあるのに、彼女はそれをやめようとしない。

 

 

 

 

「格闘技が凄く強くて、かっこよくて、優しくて、私たちの大好きな先輩です!」

 

 

 

「ヴィヴィオさん……」

 

 

 

 

 "似ている"

 クラウスの記憶の中を彩る、あの鮮烈な少女の姿とヴィヴィオが被って見えた。 

 健気で儚い、手を伸ばせど届かなかったあの少女に。

 

 

 そして、続くようにコロナとリオがアインハルトの手を握る。

 

 

 

 

「その通りです! アインハルトさん!」

 

 

 

「胸を張ってください!」

 

 

 

 

 後輩達だけではない。

 ここにいる者達は皆、アインハルトの背を押すように微笑み頷いていてみせた。

 

 

 

 

「──さぁ、アインハルト。お前はどこの誰で、何を成したい?」

 

 

 

 

 継承した記憶。

 積み重ねてきた鍛錬。

 涙を流し続けた日々。

 

 

 どこまでが自分自身を構成しているのか、今まで生きてきたのは本当に自分だったのか。

 

 今考えても、やはりはっきりとは分からない。

 

 

 けれど──

 

 

 

 

 

「──私は……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……覇王流継承者、ハイディ・アインハルト・ストラトス・イングヴァルド。この拳が最強である事を証明するために、戦い続けます!」

 

 

 

 

 ──例え植え付けられたモノだったしても、心に決めた"信念"を貫き、その先を見たいと思った。

 

 

 

 

「それは、お前自身(・・・・)の意志か?」

 

 

「はい。……ですが、その、お恥ずかしながら、漠然とした理由なのは事実です」

 

 

 

 

 自分とは無関係の過ぎ去った記憶と一蹴できれば、これまでの人生はどれだけ楽だったろうか。

 どうして、こんなに辛く苦しいモノを自分に託したのか。

 アインハルトが彼の王を恨まなかったと言えば嘘になる。

 

 

 

 

「……けど! シャロンさんやヴィヴィオさん達と出会って、こうして今日の合宿を通して確かに思えたんです!」

 

 

 

「…………」

 

 

 

「私が継承したこの力を完成させて、そしてその先を見てみたいと! 他ならぬ私自身が!」

 

 

 

 

 アインハルトがここまでポジティブに熱く語るのは珍しい、というより初めてだった。

 慣れない言動に不備はなかったかと、少し不安げにシャロンの反応を伺っている。 

 

 

 

「そうか」

 

 

「は、はい!」

 

 

 

 

 一方、シャロンは黙って聞いていた。

 それはもう、気持ち悪いくらい真剣な眼差しを向けながら。

 まるで別人……いや、別人であった。

 

 

 

 

 

「なら良い。野暮な事言って悪かった。……けど、その覚悟を押し通したいなら、もっともっと強くなれ」

 

 

 

 

 ──(そして、俺を満足するまで昇天させてくれ)

 

 

 

 

 

 訂正、間違いなくシャロン・クーベル当人であった。

 

 そんな心の声など露知らず、アインハルトは目の前のガワだけイケメンに認められて顔を明るくさせる。

 

 

 

 

 

「……必ず!」

 

 

「私達も!」

 

 

「がんばりまーす!」

 

 

「そうしてくれ。正直、今のままじゃ公式試合では楽しめそうにない」

 

 

「せ、先輩それはぶっちゃけ過ぎ~~!!!」

 

 

 

 

 

 そんなこんなで、一時はどうなるかと思われた告白騒動も一件落着である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 翌朝、合宿三日目の早朝。

 今日は大人組も午前は休息を取って、ゆっくり過ごす予定となっている。

 そしてシャロンはというと、己の習慣となっている早朝鍛錬に励んでいた。

 

 

 

「──……365……366……」

 

 

 

 両の腕だけで全身を支え、足を宙に浮かせている。

 腕力は言わずもがな、強靭な体幹等、様々な筋力を要求される難易度の高い腕立て伏せである。

 

 

 

「678……679……」

 

 

 

 もっとも、魔力を持った人間ならぶっちゃけ誰でもできる。

 

 

 

「988……989……」

 

 

 

 まぁ、シャロンの場合は当然のように魔力強化は使っていないのだが。

 魔導師のフィジカルトレーニングにしろ、魔力を使わないのは常識中の常識である。

 

 閑話休題。

 

 

 

 

「999……1000っと……こんなもんか」

 

 

 

 

 本人は標準的だと思っているが、十二歳でやるには比較的頭のおかしいメニューをこなし切ったシャロン。 

 すると、足音が聞こえてきたので、そちらの方を向く。

 

 

 

 

「あ、シャロンさんおはようございます」

 

 

「ん、おはようアインハルト」

 

 

 

 

 足音の主はアインハルトであった。

 

 

 

 

「鍛錬ですか」

 

 

「今終わったところだ」

 

 

「そうですか」

 

 

「あぁ」

 

 

 

 

 会話終了。

 別にアインハルトとて用があったわけでもなく、話題があるわけでもない。

 

 

 

 

 ──(な、何を話せば良いのでしょう……昨日の事もあって、な、尚更話しにくいです……)

 

 

 

 

 シャロンは返事をしたきり、アインハルトと向き合ったまま何も言ってこない。

 

 

 

 

 ──(この合宿、普段はあまりお目にかかれない私服が拝めるのは素晴らしいな。なんてことないシャツと短パン、このラフさにはえも言われぬモノがある。加えて、この絶妙な沈黙と気まずさで戸惑う表情も良い。真面目だから、必死に話題を考えてますって顔が良い)

 

 

 

 

 こんな事を考えているので、何か言う訳がなかった。

 

 

 

 

「そ、そういえば、今日は八神司令とデバイスの相談をするんでしたよね!」

 

 

 

 

 よね! と言われても、相談するのはアインハルトであってシャロンには関係がない。

 

 

 

 

「そうだな」

 

 

「あ、えっと、その、ど、どんなのになるんでしょうか……なんて」

 

 

「全く想像だに出来ない」

 

 

「で、ですよね」

 

 

 

 ──(ポンコツになるアインハルトも可愛いらしい)

 

 

 

 可愛い子を困らせたい、意地悪したいと思う心理は男子らしいといえばらしい。

 シャロンのはどこか生々しさがあって、普通に気持ち悪いが。 

 

 

 

「……皆の起床時間までには時間あるな」

 

 

 

 おもむろに背伸びをしながら、そんな事を口走るシャロン。

 

 

 

「折角だし、軽く手合せでもしないかアインハルト?」

 

 

 

 ──(さて、昨日の今日で少しは"味"に変化が出たかどうか……はたして)

 

 

 

 気を遣ったかのように見せかけて、まぁろくでもない動機である。

 シャロンの内心も知らず、水を得た魚のように顔を明るくさせるアインハルト。

 

 

 

「はい! 是非!」

 

 

 

 

 その後二人は、皆が呼びに来るまで延々と組み合っていたとかなんとか。

 

 

 

 ──自然豊かなカルナージの片隅。

 

 深まった春に吹いた風が、人知れず木の葉をさらっていった。

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