「なんだ」
「なんだは無いだろ、なんだは」
B.A.Rで俺の過去の話を掻い摘んで15分程話していた。
MMOTODAYでは、どうやらプチ祭になっているらしい。
「市長降臨」とか「伝説は生きていた」とか「俺は市長の右腕だ」等々。
ジェイクは俺の話に相づちをうちながら、どこからか来るメッセージに大急ぎで返信している。
「ジェイク、で会えそうか」
問題の引退プレイヤーへの接触について聞いても返答は今ひとつだ。
「待て待て待て!今情報屋達からの問い合わせで手一杯だ!もう5分待て!」
まあ、俺のハンドルネームはどこにでもあるモノだし、アバターの外面は実際の年齢より若い。
現実、SAO、GGOと共通するのは金髪であることぐらいだ。
ザザに聞いたら「名前と金髪っでビビッときました」とのこと。
SAOのアクセス前週に勢いで金髪にしたことが、ここに来て目印となっていた。
SNSなどもやっていないし、ゲーム用のアカウントとの紐づけもしていない。
俺の個人情報は全てこのアバターの外見情報だけだ。
バレたところで、怖くないし課金をすれば外見は多少調整できる。
手元のグラスを空けるとジェイクも一息ついたようで、手元のウイスキーボトルからもう一杯、俺の目の前のグラスに注ぐ。
「で、お前もこれで有名人だ。どうするんだ?」
「どうするんだって言われても、その二人目の情報が欲しい。ちゃんとこの件のディテールを知ってみたい」
警察の掴んでいない、二人目の被害者。それは事件の活路になるのか迷路への入口か。
推理とか調査とか言うほどでもないが、繋がりだけは持っておきたい。
必要があれば警察に伝えて事情聴取もあるだろう。
「なんだ、探偵か。チャンドラーにしては…身なりがな」
探偵には早すぎる。いいとこ警察の御用聞きだ。
若々しい外見だとフィリップ・マーロウとはいかないか。
「気に入ってるアバターなんで変える予定はないぞ」
金髪細身の優男、いいじゃん。
やっぱりスタイルが細い方が服の選択が多いのは嬉しい。
「じゃ、そうだな。明日同じ時間に来れるか?それまでには段どってみる」
俺はその言葉を受けて、モニタリングしている野木さん用に発行されたアカウントにメッセージを飛ばす。
彼女がこのメッセージを受けて菊岡さんなりに確認して行動指針が決まる。
「ちょっと待ってくれ、明日の予定を確認してみる」
ウィンドウを開きスケジュール確認をする風にしつつ時間を潰す。
ジェイクからは「それでSAOはどうだったんだ?」「本当の首謀者は?」といくつか質問が来るが「本件は刑事事件であり、裁判の結審がされていない現状では本件に関する情報の公開は不適当と考えます。また多くの本件被害者の方々、死亡存命関わらずいらっしゃいます。その方々の心のケアを含めて今後対処する必要があり、現時点でその方々の心理的負担になるという判断も含まれます」と以前の警察の公式回答をそらんじてみた。
「自分がSAOサバイバーだってばらす奴は気を付けた方がいいぞ。そいつはいかれているか、疲れているかのどっちかかもな」
俺の言葉に口を閉ざすジェイク。
そうさ、俺はこの事件に贖罪を求め、自分の情報を切り売った。
自分でもわかる。一つ心が重くなったのを感じる。