ガンゲイルオンライン:rehab   作:madamu

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人間の悪意が現実と変わらない

「馬鹿どもが~!」

俺は岩陰で身じろぎもせず伏せていた。

 

対人戦闘をやって何一つ感じることもなく(逆に夜中一回吐いた)俺は別の方法でVR慣れをしようと思った。

狩猟である。この世界でもモンスターは少なからずいる。

そういったモンスター狩りを専門として始めたのだ。

多くの人は光学銃を使うが、別に成果を求めてのプレイではないので、ここは実弾銃を使ってのプレイをしてみた。

なんかSF設定の世界だけど、実銃と同じなものがあるなら使ってみたかった。

こればかりは銃に対して非日常感を感じる日本人だと自分を思った。

 

狩猟用ライフル。レミントンのモデルらしい。

ライフルの中で一番安かったので取り敢えず装備して、目につくモンスターを撃っている。

大型モンスターではなく、小型の鳥系だったりを相手にしている。

これはこれで集中力が必要で楽しい。心拍と連動するといわれるバレットサークルの変化も、自分の緊張と向き合うようで

なかなか考えさせられる。俺ってここまで緊張しただろうか。

 

山岳フィールドのはげ山の中腹。岩陰に隠れて今日も今日とて小型のモンスターを狩っていたら

何者かに追われた数人のグループが来た。

「スコードロン」ギルドとかパーティとかチームみたいな意味でGGO内で使われる用語だ。

4人ばかりの集団が走って逃げてきた。それを追うように三台のバギーが現れた。

 

「追い剥ぎかよ」岩の陰に隠れ、状況を見たが追い剥ぎが今にも犠牲者に追いつきそうだ。

助けようかと思ったが、なんとも居心地が悪くなり、どうにかしてこの場をやり過ごせないか身を縮ませた。

 

追い剥ぎの銃口が犠牲者に向けられた瞬間。

一発の銃声が響き、バギーの一台が転倒した。

数秒の間をおいて、もう一度銃声。

もう一台バギーが転倒した。

追いかけられていた4人が反撃した様子もない。

 

あいつらは撒き餌だ。きっとどこかに狙撃手が潜んでいて、タイミングを計って狙撃したのだ。

すでに目の前では反撃に転じた4人組が無差別に銃を撃っている。

「馬鹿どもが~!」

俺は岩陰から飛び出し、逃げるタイミングを逃した。

あいつらは完全に頭が血がのぼっている奴の行動だ。

笑い声も聞こえる。逆転して一気に優位になったのだ。狩られる側が狩る側へと変わった。

岩陰に身を潜め、事が終わるのを待った。

 

断続的に聞こえる射撃音が収まると「やったぜ!」「これで安心だ」と声がする。

恐る恐る岩陰から顔を出したとき、俺の目の前に銃弾が着弾した。

どこかにいる狙撃手が撃ってきたのだ。

4人組は俺の方を向き、銃を構える。

 

「なんだ!あいつらの仲間か!」「こいつもやっちまうか!」「いいね~」

有利な状況で見せる加虐的な表情を浮かべ4人が近づいてくる。

 

俺は岩陰に身を隠し、ライフルの装弾数を再度確認する。

ついていない。ゲームのデスペナルティ、ランダムで装備品を落とすことより殺されるというのが嫌だ。

痛みは無くても嫌なものだ。

 

俺を威圧するように、身を隠す岩には銃弾が撃ち込まれる。

VRMMOの悪い点だ。人間の悪意が現実と変わらない。

 

少しばかり俺を嬲るのを楽しんだ4人に声がかかる。

「つまらないことしてるんじゃないわよ。その人は関係ない」

女性の声だ。

青い髪をした少女アバターだ。太もも丸出しなのはゲームのお約束なのかな。

手には狙撃用ライフルを持っている。

「シノン。やっぱりいい腕だな」「そうそう」

少女、シノンと呼ばれた彼女は先ほどよりも不機嫌な声で返す。

「関係ない人を撃つなら、今後あんたたちとは仕事をしないわ」

その語気に押されたのか4人組は

「いや~」「ちょっと遊んだだけで・・・」と弱弱しく返事をする。

なにやら言い訳じみたことを2度3度言って、シティへと戻っていった。

 

「ねえ、あんた、大丈夫?」

俺は岩陰から身を出した。怖いので両手を上にあげている。

「助かったよ。戦闘に巻き込まれるとはね」

彼女、シノンと呼ばれた少女アバターはため息を一つつく。呆れた、といったニュアンス。

「なんで、戦わなかったの?それは玩具じゃないでしょ」

顎で俺の持つライフルを指す。なんだ、西部劇みたいなことを言うな。

俺はライフルを肩にかけ直す。

「対人戦がダメでね。モンスター狩り専門でやってる」

「そう」

俺の返答に納得したのか彼女は帰ろうとする。

「ナイヴズっていう。君はシノンでいいんだよな。ありがとう助かった」

彼女は俺の声を背中で聞いて軽く手をあげる。

スゲーカッコいい西部劇のヒーローみたいだ。

 

 

彼女との出会いは、そんな感じだ。

俺は猟師気取り、彼女は狙撃手。

フィールドにおける高所やブッシュ、物陰で偶然会うことが二度ほど続いた。

「お互い考えることは近いわね」

「あっちに猪いたんだよ」

 

笑い話をするわけでもないが

「猟の場所取りに楽だから」と言う意味でフレンズ申請をしてみたら

彼女も「狙撃ポイントの把握が楽」ということで受理された。

その時プロフィールに「学生」の文字があったので、男の下心を説明してみた。

「男ってホント、ダメね」と言ったので、ガチで女子学生なのだろう。

 

クールというより、人嫌いな感じのするシノンはたまに顔を合わせるゲーム内の知り合いとなった。

友人と言えるような関係ではなかった。

 

それでいいと思う。

 

 

 

 

 

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