桜花を護る、超野太刀を持つ開拓者   作:刀馬鹿

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姉妹

ギルガメッシュに目をつけられた刃夜は、そのことに内心で首をひねりつつとりあえず桜のこともあったため急いで自らがリフォームした武家屋敷へと戻り、雁夜に状況を報告していた。

 

「キャスターの討伐?」

「あぁ。精神分身体で見たからわかっていたことだが、どうやら相当キチガイらしい。昨今ニュースでやってる誘拐と連続殺人の犯人コンビらしい」

「コンビ?」

「マスターもその類の阿呆って事だ」

 

その刃夜の言葉を聞いて、雁夜は深々と溜め息を吐いた。

やらなければいけないことがあるというのに、予定外の予定が出来てしまったのだからそれも当然といえた。

そんな雁夜に対して、刃夜は探るような目線を向けていたのだが……それを悟らせる程未熟ではなかった。

 

「とりあえず、行動を起こそう」

「具体的には?」

「キャスターの討伐だ。他のマスターに対して戦闘を行うのは難しいということだろう? 聖堂教会から特例でルールを作ったのだから」

「そらな」

「それに、子供が攫われているということは……凜ちゃんが攫われる可能性もある」

「凜ちゃん?」

 

知らぬ人物の単語が出てきて、刃夜が思わずといったように素っ頓狂な言葉を上げていた。

それがおもしろかったのか、雁夜は一瞬だけ笑みを浮かべたが、すぐに顔を引き締めて説明をした。

 

「桜ちゃんの実の姉だ。名前を遠坂……凜」

 

遠坂に何かあるみたいだなぁ……

 

雁夜が一瞬言いよどんだ遠坂という言葉に、刃夜は雁夜に気付かれないようにしながら、雁夜の様子を見つめてそう判断した。

実際何かあるどころではないのだが……それをどうにかするのは今後の話だった。

 

「じじいの話だと、アーチャーを召喚したのが遠坂時臣で、その時臣の実の娘に当たる」

「ほう」

「御三家の一角で……遠坂、アインツベルンそして俺の家間桐が聖杯戦争を始めたらしい」

「ほうほう」

「そして、当然アインツベルンも今回の聖杯戦争には参加している。じじいの話ではセイバーがサーヴァントらしい」

「ほうほう、フォーウ」

 

聖杯戦争に参加するにあたり、雁夜が間桐臓硯より聞かされていた話を更に刃夜へと説明する。

それにたいして説明を受けていた刃夜だったが……ふと何かに気付いたように、顔を明後日の方向へと向けた。

 

「どうした?」

「いや、精神分身体でぶらついてたら……どーも桜ちゃんにだいぶ似た気配を新都で見つけたんだが……。サイズから言ってほぼ間違いなく子供だな」

「桜ちゃんに似た? もしかして凜ちゃんが!?」

「いや、精神分身体は前にも説明したが眼で見る訳じゃないし、仮に見てたとしても俺、凜ちゃんとやらの容姿を知らんから何ともいえん」

「凜ちゃんに何かあったら葵さんが悲しむ! 急ごう!」

 

葵さんって誰だ~? まぁ声の感じからいって何かあるようだが 

 

感情の機微を口調と声から明確に読み取りながら、刃夜は溜め息を吐いていた。

だがその刃夜の溜め息にすら、雁夜は気付いていないようだった。

それだけでどれだけ「葵」と言った人物に対して執着しているのが非常によくわかる状況だった。

 

やれやれ、こいつは身体だけじゃなく内面もどうにかしないといけないのはわかっていたのだが……ここまでとは

 

「手伝ってくれるか、刃夜? 凜ちゃんを助けるのを?」

「マスターの実の姉で同盟者のお前の頼みだ。断るわけなかろう」

 

布団で寝ていた桜を優しく寝袋へと移しながら、刃夜は自らも得物を虚空から取り出していた。

先ほどギルガメッシュに渡した刀よりも遙かに力強さを感じさせる打刀を。

その刀を先ほどの竹刀袋に入れて紐で肩に提げ、寝袋の桜を抱きかかえた。

準備完了したことを察して、雁夜はフードを被り二人と桜は夜の町へと繰り出した。

 

 

 

そして戦意十分に新都へと来た……主に雁夜が……のだが

 

 

 

おやまぁ。ずいぶんと勇敢なお嬢さんだな

 

新都に着く頃にはなんと驚くべき事に決着がついてしまっていた。

子供を誘拐しようとしていたキャスターのマスター、雨生龍之介が凜を子供と侮っており、また名家の魔術師の一子相伝の後継者とはいえ、幼子一人で雨生龍之介を撃退し、誘拐されていた幼子を助けている様子を、遠巻きに二人は見つめていた。

 

「何で今すぐ助けないんだ?」

「安心しろ。俺がいる限りあの程度の人間だったら刹那の時間に抑えられる。これは子供ながらに人を助けようとしている凜ちゃんとやらに敬意を表して見守ろう」

 

刃夜に露骨に怒りの目線をぶつける雁夜だが、それを何も感じていないように、刃夜は雁夜を抑えていた。

そして無事に誘拐されていた幼子達を助けて、凜が自らの帰路につこうとした時に、路地裏のビルの壁から一匹の海魔に襲われそうになった。

 

危ない!

 

すぐに自らの黒紫の戦士に指示を出そうとしたそのまさに刹那の時間には……

 

「見事だ、お嬢ちゃん」

「え?」

 

直線上で見える距離にいたとはいえ、数百メートルは離れていた距離をその一瞬で縮めて……ちなみに桜は抱きかかえたままである……凜のそばにやってきて、その左腕が紅の炎に包まれた。

 

「失せろ怪物。紅炎解放」

 

一言そう呟くと、その瞬間には紅蓮の炎が瞬いたと思えば、そこには何もいなかった。

先ほどまでいた怪物が幻だったのではないかと、凜がきょとんとする程だった。

そして刃夜へと目を向けると……そこには穏やかに笑う刃夜がいた。

先ほど同じような成人男性に恐怖を覚えた凜だったが……しかしその笑みにはどこか安心させる何かがあった。

その刃夜が目線をあわせるようにしゃがみ込んで……凜の頭を優しく撫でた。

 

「よく頑張ったな」

「あ、あなたは?」

「うーん。化物かな? 友達を助けたことには敬意を表するが……ちょっと冒険しすぎたのは良くないな」

「え?」

 

そう聞こえた瞬間には、凜の意識はとぎれていた。

撫でていた頭に直接気を流し込み、刃夜が凜の意識を刈り取ったのだ。

倒れそうになる凜を、桜を抱いている腕とは別の腕で抱きかかえて、先ほどと同じようにその次の瞬間には雁夜の元へと戻っていた。

凜のそばにより海魔を消滅させ、凜との会話を行い、そして雁夜のところに戻るまで、30秒と経っていないだろう。

 

「なっ!?」

 

そのあまりの速さに雁夜は驚くが、刃夜が腕に抱えた血の繋がった姉妹の安らかな寝顔を見て……心の底から愛おしそうに安堵の笑みを浮かべていた。

 

「凜ちゃん。良かった。待っててね。必ず元の姉妹に戻してみせるから」

 

間違いなく悪い奴じゃないんだがなぁ……。というか姉妹に戻ったらまずいことになるのわかってないな、こりゃ

 

「さてこのお嬢ちゃんどうすればいい? 親父は遠坂時臣でアーチャーのマスターだろう? 渡しにいったら戦闘になりそうで面倒なんだが?」

「母親の葵さんは魔術師じゃない一般の人だ。きっと彼女が探しに来るから葵さんを探そう」

「ほいほい」

 

精神分身体で、桜と凜に似た気配を持つ女性を捜し始める刃夜は、すぐに高速で移動する精神を見つけて、雁夜と共にその気配の近くにある公園へと向かっていった。

だが、当然凜を探しに来た葵が、公園に偶然やってくる訳もない。

ので……刃夜は凜を雁夜へと預けて、高速で移動する葵の元へと向かった。

車で移動している葵が信号で止まったその瞬間を狙って……運転席のそばへと近寄った。

 

「!?」

 

突如として運転席の外側にやってきた青年に、最初こそ気付いていなかった葵だったが、すぐに気付いてびくっと驚いていた。

しかし周りの他の車の運転手は誰一人として刃夜の存在に気付いていないようだった。

その刃夜は葵に近くの公園を指さして、すぐに姿を消した。

 

今のは?

 

この街、冬木で聖杯戦争が行われていることは時臣の妻である葵は当然知っていた。

そして聖杯戦争が非常に危険なために、葵と凜は時臣の指示で街の外に避難していた。

故に今自らのそばに現れた存在が普通ではないとわかっていたが……どうもこの存在が無関係に思えず、葵は適当な場所に車を停めて指さされた公園へと足を踏み入れて、探している自らの娘である凜が、公園のベンチで寝ていることに気付いた。

 

「凜!」

 

寝ている凜に駆け寄る葵は、すぐに凜の状態を確かめようとしたがその前に声がかけられた。

 

「凜ちゃんは無事だよ。ただ眠っているだけ」

「!? 誰!?」

 

後ろからかけられた声に振り向けば、そこにいたのはフードを目深に被った男と思しき人物。

警戒しない方が無理があるだろうが……フードを被った男、雁夜がすぐにフードを取っ払い顔を見せたことで、純粋な驚愕へと変わった。

 

「か……雁夜君?」

「あぁ、久しぶりだね、葵さん」

「その顔は……どうしたの?」

「これが間桐の魔術だ」

「へ?」

「術者の肉を喰らって魔術を行う。これが間桐の魔術なんだ。でも大丈夫。桜ちゃんはこうなる前に、俺が必ず救ってみせる!」

「……へ?」

 

ここでまさか桜の名前が出てくると思っていなかったのだろう。

葵が驚愕したように口を開けている。

 

「臓硯が欲しいのは聖杯だ。だから聖杯さえ手に入れば桜ちゃんはあいつにとって必要なくなる。聖杯を俺があいつに渡せば桜ちゃんを解放すると、あいつは約束した」

 

そんなタマじゃないとおもうがね~

 

雁夜のすぐ後ろで、二人を見守る刃夜は雁夜のその言葉に首を傾げていた。

だがその雁夜を見る目は少しの変化も見逃さないとでも言うように、鋭く細められていた。

しかもその刃夜の姿はどうやら葵には映っていないのか、雁夜にしか葵は目線を向けてなかった。

 

「それに桜ちゃんには驚くべき事にサーヴァントだっている。あいつと俺がいれば、絶対に桜ちゃんを救ってみせる!」

「桜に……サーヴァント? ど、どういうこと? それに聖杯を手に入れるって……」

「待っててくれ、葵さん。またこの公園で、桜ちゃん、凜ちゃん、葵さんで仲良く遊べる日が来るから。だから祈っていてくれ。俺の勝利を」

 

そう言い残して、雁夜は刃夜に帰ろうと一言呟いて、先に歩き出した。

その雁夜に続こうとしたが……その前に刃夜は葵へと声をかけた。

 

「安心しろ。あいつと同じ事をいうが、必ず桜ちゃんは救って見せよう。無論、雁夜も……まぁお前の夫もな」

「!?」

 

その声でようやく刃夜が見えたのか、突如として出現した刃夜に驚く葵だったが……刃夜が安心させるように笑みを浮かべて、大げさに肩をすくめていた。

その仕草がちょっと芝居じみていたために、葵は今の衝撃的な状況を忘れて、きょとんとしてしまうほどだった。

 

だが、こいつにもやっておいてもらわないといけないことがあるからな

 

「まぁともかく早く帰ったほうがいい。この街は少々危険だ。それと自らの夫に聞いた方がいい。桜の状況についてな」

「!? そう言えば桜がマスターって。もしかして……あなたが?」

 

察しが良いな

 

その問いに対して、刃夜は頷くことも否定することもせずに、背を向けて雁夜の後を追っていった。

その背中に何かを感じたが、それでも疑問を口に開こうとしたのだが……

 

「ぅ……ぅうん」

 

自らが腕に抱いている娘の凜が身じろぎすることで、意識を凜へと向けざるを得なくなった。

 

「凜!」

「……お母様?」

「もうあなたって子は……」

 

凜の無事に安堵し、すぐに視線を戻すが……そのときには雁夜の姿も刃夜の姿もなくなっていた。

 

 

 

今の話……まさか本当に、桜が?

 

 

 

にわかには信じられない、受け入れられない事実だった。

夫に尽くすと誓い、同盟者である間桐に桜を養子に出すと言った時臣の判断に対して、葵は何も言わなかった。

魔術の事は葵には何もわからないのだから。

だから夫が正しいと信じて桜を断腸の思いで養子に出した。

だが先ほどの間桐雁夜の姿。

雁夜が話した真実。

 

 

 

そして刃夜の存在。

 

 

 

といっても、葵は刃夜の名前を知らないわけだが。

 

それがもしも本当だとしたら……桜は一体どのような状況になっているのか?

 

調べてもらうしかないわね

 

自らの夫である時臣に調べてもらいたいと、葵はそう決めた。

 

 

 

こうしてまた一人。

 

 

 

運命を狂わされた存在が、自らの願いのために……

 

 

 

行動を開始した。

 

 

 

 





仕事で忙殺されてるけど、やっぱり好き勝手書けるから進みますね~

不定期に二話あげたりするかもしれないし……



更新がやむかもしれないw


まぁまだだいぶストックあるけど


暇つぶしになれば幸いです
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