あげる順番間違えたのであげなおしますw
前半です
一部始終を、遠坂時臣は見ていた。
何だ?
もちろん全てをみれていたわけではない。
何だ?
だがそれでもバーサーカーと刃夜が二人して何かをしているところはみることが出来た。
そして、バーサーカーと刃夜が手にしている物を目にした。
何だ……あれは?
目にしたのは醜い肉の塊。
それは直接的に言って、実に醜悪で卑猥な形をしていた。
しかも半ば朦朧としていながらも、雁夜がはき出した物であったはずだった。
自ら雁夜の体内へと侵入していった何か。
それは十分に優秀である時臣がみれば、すぐにどのような物であるのかは看破できた。
そしてその「どのような物」を無意識のうちに分析している間に……イレギュラーなサーヴァントが屋上へとやってきた。
!? まずい!?
雁夜のバーサーカーと、イレギュラーなサーヴァントが二体。
それに対して時臣のサーヴァントは未だ空の上。
今この場で一斉に二体のサーヴァントに襲われたら時臣はひとたまりもなかった。
だが……二体のサーヴァントは時臣には目をやることもなかった。
ただ二体共に……「どのような物」対して必死に力を振り絞っているだけだった。
それだけならばまだ時臣としても許容できただろう。
だが……どうしても受け入れることが出来ない要因があった。
雁夜の存在だ。
雁夜は「どのような物」をはき出してからただ……自らのサーヴァントと、協力関係にあるイレギュラーなサーヴァントの様子を見つめているだけだった。
時間が経過していたために、先ほどよりは意識もしっかりと保っており、時臣としても仮に雁夜に襲われたとしても、なんの問題もなく迎撃できただろう。
だが……そうならなかった。
二体のサーヴァントがいるという、圧倒的に有利な状況の中で、雁夜は自らのサーヴァントにも、そして協力関係にある刃夜に対しても……
何も言わなかった。
時臣のことを見向きもしなかったのだ。
二体のサーヴァントが動けないとはいえ、自らは動けるはずだというのに。
雁夜はただ、祈るような眼差しをイレギュラーなサーヴァント、刃夜へ向けるだけで何もしなかったのだ。
そしてその何もしてこないという行動が……
時臣の「魔術師」としての感覚を狂わせる。
無論、雁夜だけでは狂うどころか微動だにしなかっただろう。
だが、圧倒的な存在であるサーヴァントが二体が一向に見向きもしない。
そして、雁夜の体からはき出された存在。
雁夜の存在そのもの。
そして……イレギュラーな存在のサーヴァント、刃夜のマスターであるという、桜の存在。
何よりも時臣を揺れ動かしたのは、雁夜の腹より吐き出された存在。
自然界ではおおよそあり得ない存在であり、その様はまさに「それ」だった。
それがどのように使われるのかも……想像に難くなかった。
そして、その存在が……何に対して使われたのか?
それを想像するのもそう難しい事ではなかった。
何よりも……それから感じられる魔力。
それが自らの娘の魔力の色を……確かに帯びていた。
何だ!? あれは!?
『俺がこの世界でしなければならないことはマスターであるこの桜ちゃんを救うことです。故に……その邪魔をしようというのなら俺は全力で貴様らと敵対する。それを覚えておいて欲しい』
刃夜は確かに冬木の教会そう言ったのだ。
そのときは余り深く考えなかった。
だがそれでも今の状況が……「どのような物」が、時臣の頭から離れない。
この全てが重なり合い、時臣を大きく揺れ動かした。
何故こんな物があるのか?
何故、こんな物から桜の魔力を感じられるのか?
だが、答える者はいない。
そんな時臣に目もくれず、刃夜はしばし瞑想するように目を瞑っていると……すぐに鋭く目を見開き、一瞬青白く光ると同時に屋上から消えていた。
そして刃夜がいなくなったことで、バーサーカーが自らのマスターを守るようにしながら、すぐに雁夜を抱えて飛び去った。
疑問が胸中を渦巻く時臣だけを残して。
何だというのだ!? あれは!?
想像せざるを得ない……間桐の魔術。
そして自らの愛娘がされたであろう、行為と状況。
おそらく雁夜に敗れる前の時臣であったならば……おそらくそれも是としただろう。
だが、「人」としてあり続けた雁夜が……
一度魔道を諦めた存在の、薄汚い犬畜生にも劣ると思っていた存在からのあの態度。
雁夜が勝ったのだ。
あのとき殺されても不思議ではなかったのだ。
だというに、雁夜はただ、二人の様子を見守っていただけだ。
その態度が。
時臣の「魔術師」を狂わせる。
だがそのことに……
時臣は気付いていなかった。
その様を……遙か上空から見つめる、血よりも紅い双眸があった。
突如として、空中戦闘を行っていたバーサーカーが消えたため、一体何事かと思ったのだ。
さらに言うのであれば、先の空中戦闘を行った際、違和感を覚えたのだ。
この狂犬……。以前とは違うな?
最初に戦った時よりも、狂気が薄れていた……というよりもなくなっていたのだ。
何よりも、自らと戦っている時に漏れ出ている感情が、狂気でも戦意でもなく……
焦燥
を感じ取った事が大きかった。
バーサーカーが「焦る」などという感情を抱かないとは言い切れないが、狂化を得ているはずのバーサーカーの焦りというのは、どうしてもおかしいと考えられた。
さらにその焦りは、確かに
戦いながらもどこかがおかしいとアーチャーは思っていた。
そしてそのバーサーカーは自らのマスターのそばへと突如として転移した。
令呪を使ったことは容易に想像できた。
そしてその転移先が自らのマスターのそばと言うことで、さすがのアーチャーも少々慌てたが……すぐに様子がおかしいことに気がついた。
何を行っている?
何かをしているのかはわかったが、しかしバーサーカーが何を行っているのか見当も付かない。
するとすぐに川辺にいたはずの刃夜がやってきて、バーサーカーと同じようなことをし始めたのだ。
ふむ……
すぐにでも助けに行くべき状況だったが、何を思ったのかアーチャーは何もすることなく、その様子を眺めていた。
そして、刃夜が戦意をみなぎらせて……姿を消した。
何だと?
これにはアーチャーも眉をひそめた。
令呪を使ったのかと思ったが、しかしその様子は感じられなかった。
何せ圧倒的なまでの魔力の波動を感じられなかったからだ。
感じられたのは、刃夜から一瞬発せられた稲光と力。
それだけだった。
刃夜がいなくなるとバーサーカーは雁夜をつれて一目散に逃げ出した。
魔術師である時臣に対して、何をすることもなく。
ふ……本当におもしろい男よな
この様子を見れば、アーチャーも刃夜が聖杯に興味がないということも十分に理解できた。
では逆に……刃夜は何のために戦っているのか?
そう、興味を抱かせてしまった。
今まで以上に。
刃夜は。
紛う事なき、最強のサーヴァントに。
こうして、巨大海魔と間桐臓硯。
冬木に顕れた巨大な悪魔と
永劫のとも呼べる長き時間を生きた執念の怪物が
この世界から消滅した。