桜花を護る、超野太刀を持つ開拓者   作:刀馬鹿

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31 壊れかけの戦闘機械と壊れたことに気づかない人形

それは、セイバーとバーサーカーが剣を交える少し前。

罠を警戒しながらゆっくりと歩を進めていた切嗣が参道を上り始めた辺りの時だ。

罠に警戒しながらも、だがそれでも遅くなりすぎないように、歩を進めていて切嗣は気がついた。

 

 

 

アレは……?

 

 

 

参道の中腹辺りで、奇妙な物を見つけたのだ。

 

 

 

『聖杯の大元、大聖杯はこちら→』

 

 

 

はっきり言ってふざけているとしか思えない呪符の様なものがあったのだ。

魔力の波動を受けると文字が浮かび上がるだけの呪符だ。

そのため先ほど駆けていった清廉で強力な魔力を有したセイバーが通り抜けたことで、文字が浮かび上がったのだ。

こんな巫山戯た物を設置するのが誰かなど……考えるまでもないだろう。

 

あのイレギュラーなサーヴァントめ……

 

切嗣としては内心で毒づくしかなかった。

今までの切嗣であれば、こんなものなど無視して山頂へと向かい、おそらく山頂にいるサーヴァントのマスターを殺しにかかっているだろう。

だが……どうしても切って捨てることができなかった。

 

皮肉にも……先日この柳洞寺で巫山戯た存在の刃夜に罠に嵌められたばかりなのだから。

 

 

 

『変わり果てたその願望の力……それがどのような結果を及ぼすのか?』

 

 

 

 

 

 

『それを……覚悟しておくことだな?』

 

 

 

 

 

 

その呪いの言葉。

変わり果てた願望の力というのは、聖杯戦争に参加しているのであれば、誰もが簡単にわかる。

聖杯の事を差しているのだと。

だが聖杯が変わり果てたというのが一体どういう意味なのか?

それがわからない。

わからない……疑問というのは厄介だ。

また不確定要素というのは戦闘に置いては十分に考慮する必要性があるのも事実だった。

故に……切嗣は罠であると疑いながらも、呪符が指し示す先へと進んでいく。

そして岩に偽装された地下への……

 

 

 

地獄の釜の中へと入っていき……

 

 

 

 

 

 

それを目にした。

 

 

 

 

 

 

「な……なんだこれは……」

 

 

 

 

 

 

隙だらけになっていることにすらも気付かずに……切嗣は眼下の……

 

 

 

くぼんだ釜の底より伸びる呪いの塊を見上げて絶句した。

 

 

 

 

 

 

■■■■■■■■■■■■■■■■■■

 

 

 

 

 

 

凄まじいほどの魔力の波動を感じる。

 

それに比例するかのように……怨嗟の声が、気持ちが伝わる。

 

これだけの巨大な魔力の波動を感じ取れるのは間違いない。

 

これが真の聖杯であると……

 

魔術師の端くれである衛宮切嗣はそう理解した。

 

理解できたのだ。

 

 

 

この黒き呪いの塊の様な物が、聖杯であると。

 

 

 

こんな物が……自らが追い求め、出来ないと悟ったがために縋った、万能の願望機なのだと。

 

 

 

「馬鹿な……」

 

 

 

逃れるように、気付かぬうちに切嗣は後ろに下がってしまっていた。

 

だがそれはある意味で生命として自然な行動だった。

 

こんな物を受け入れられる()がいるのならば、それは人間ではない。

 

 

 

「そんな……馬鹿な!?」

 

 

 

こんな物が……こんな呪いが聖杯であるというのか!?

 

自らの妻がなるなれの果ての姿だったとでも言うのか!?

 

こんな物が、どうして万能たり得る!?

 

 

 

どうやって世界を救うと言うんだ!?

 

 

 

今までの苦悩と懊悩。

 

世界で起こる悲劇と戦闘という地獄。

 

それら全てが切嗣の頭の中を駆けめぐっていく。

 

あまりの邪気と聖杯の真実に……切嗣は思わず吐きかけた。

 

だがそれを寸でのところで無理矢理呑み込んだ。

 

背後の気配に気付いたからだ。

 

もしも背後から忍び寄ってきた男が、問答無用で切嗣を殺すつもりであったのならば、すでに切嗣は死んでいただろう。

 

だがそうはならなかったのだ。

 

何故か?

 

背後から迫ってきていた男……言峰綺礼も、その存在に心奪われていたからだ。

 

切嗣は絶望と恐怖。

 

綺礼は……

 

驚愕と歓喜で……。

 

 

 

目の前にそびえる地獄の聖杯を……見つめていた。

 

 

 

これが……聖杯だというのか?

 

 

 

あまりに醜い、あまりに恐ろしい……

 

 

 

そしてあまりにも美しい……

 

 

 

何かだった。

 

 

 

その美しい物を見上げて……綺礼は生涯で初めて、心が何かで震わされている事に気がついていた。

 

 

 

「言峰……綺礼……」

 

 

 

自らの最強の得物、起源弾を放つトンプソンコンテンダーとサブマシンガンを油断なく綺礼へと向けて……切嗣はぼそりとそう呟いた。

 

だが宿敵とした相手が自らに凶器を向けているにもかかわらず……綺礼は茫然と、取り憑かれたかのように……

 

 

 

黒き大聖杯を……見上げていた。

 

 

 

胸の鼓動が鳴りやまない。

 

どれほど激しく体を動かしても、今の綺礼では、僅かにしか心臓の鼓動は高鳴らないというのに……。

 

過去に感じたことがないほどに、心が震えていた。

 

これほどの物があふれ出せば……どれほどの憎悪と絶望があふれかえる?

 

 

 

何よりも……これが誕生を望んでいると……

 

 

 

綺礼は気付いた。

 

 

 

生まれ出でれば自らの迷いの全てを導いてくれる物だと……

 

 

 

 

 

 

本能的に綺礼は察していた。

 

 

 

「素晴らしい……」

 

 

 

綺礼がこぼした一言の言葉。

 

憎悪と絶望が蠢く地獄の釜の底で、何故か聞こえたその一言。

 

その言葉が耳に入った瞬間に……衛宮切嗣は動いていた。

 

 

 

指を掛けていた引き金を絞り、言峰綺礼へとサブマシンガンを乱射した。

 

言峰綺礼は、その弾丸全てを瞬時に取り出した黒鍵ではじき飛ばす。

 

 

 

唐突に……

 

 

 

必然として……

 

 

 

最後の戦いが始まる。

 

 

 

二人の生涯最後の戦いが……

 

 

 

幕を切って落とした。

 

 

 

今、目の前にいる相手だけは殺さなければならないと

 

 

 

二人が互いを絶対の意志と殺意を持って……

 

 

 

 

 

 

殺し合いを始めた。

 

 

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