桜花を護る、超野太刀を持つ開拓者   作:刀馬鹿

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36 子供と兵士

「……本当によろしいのですか?」

「逆に聞くが手伝わなくて良いのか? 確かに実戦は慣れているんだろうけど、それでも戦場でしかも女だ。手伝った方が色々と得だろう?」

「それは……」

「秘密の女子の会話を盗み聞いた罪滅ぼしだ。気にしなくて良い。更にいれば脅迫材料に使ったこともあるからそれを思い出してもらえれば、納得することは出来るだろう?」

「……ですが」

「いいから行ってこい。んで現地に着いたら発信器に魔力流して待機してろ。手伝いに行くから」

 

舞夜が成田空港で俺、切嗣、アイリ、イリヤに見送られる状況で、出発間際になってなお渋るものだから俺は何度目かわからない問答を繰り広げていた。

 

「舞夜さん。気をつけて行ってきて。そして帰ってきてね。あの家は貴方の家でもあるんだから」

「……マダム」

 

アイリが本心でそう言っているのが、部外者である俺ですらもわかる。

それほどに本心から、アイリは舞夜の事を心から心配しており、帰ってきて欲しいと願っている様子だ。

そのアイリに、恐縮しながらも嬉しそうに舞夜は頭を下げていた。

 

「僕も行った方が……」

「お前の責任で一番重いのは妻子。確かに舞夜に対する責任もあるが、そっちは下手すると死ぬかもしれないだろう? まぁ俺がいる時点で死ぬわけないけど。ともかく一番重い責任を全うしろ。こっちは俺がフォローするから」

 

自らの子供を探しに行くために紛争地へと向かう舞夜に対して、切嗣が同行を買って出たが俺はそれを却下した。

幼い子供の元を離れるのは個人的にいやだったからだ。

後、責任を果たすことにした以上、これ以上殺す事を俺が許さなかった。

だが、先にも言ったとおり、俺にも責任があるため舞夜の戦闘のフォローは俺が行うことにしたのだ。

 

というか、気配で判断できる人間がいないと、顔も体格も血液型すらもわからない自らの子供を、どうやって探すというのか……

 

出産後直ぐに離れたのだ。

わかるわけがない。

だが俺としても不安はあった。

生きていれば気配でどうにか出来るが……しかし死んでいた場合はどうにも出来ない。

それでも責任を果たさなければいけないので、俺は舞夜のフォローを買って出たのだ。

また……

 

「マイヤ……元気で帰ってきてね!」

 

寂しそうにしながらも、それでも気丈に舞夜を送りだそうとしているイリヤがいる。

本当の姉の様に舞夜を慕うイリヤを悲しませたくないというのも……大きな理由だったが。

 

「はい、イリヤ。無事に帰ってきますね」

 

無垢で純粋な笑顔を向けられて、舞夜も嬉しそうに微笑んだ。

そして舞夜は惜しまれつつ旅立った。

俺は先にイリヤを助けた時と同じように、電磁投射で海を越える。

その方が安上がり且つ早いからだ。

 

メッチャきついんだけどな

 

アインツベルンのカチコミの際にも使用した、雷のキリンの力を用いて使用する技。

 

電磁投射道(でんじとうしゃどう)神風

 

自身を弾丸と見立てて超々距離を移動するための技だ。

だが……生身で電磁加速するので加速Gがやばい。

気力と魔力で強化しなければ内蔵破裂で即おだぶつである。

そして気力と魔力で強化しても気持ちが悪くなる。

到着後数分は、ほとんど無防備になる。

 

弟子達がいるから、数日に一度はこっちにも帰ってこないとなぁ……

 

強行手段を取るので体に負担はかかるが……致し方ないだろう。

だがこれはある意味で予行演習にもなって良かった。

桜ちゃん的に。

どれほど長くいようと、俺はいつかこの世界から旅立つことになる。

幼すぎない年齢でわかれられればいいが……その辺は今もわからない。

故に、予行演習といえばいいのか、とりあえず慣れさせておくことも必要だった。

 

果たして……いつ消えることになるのやら

 

そうしてしばらく俺は紛争地帯と日本を往復することを余儀なくされる。

 

 

 

だが尽力したおかげか……何とか舞夜の子供の痕跡を発見し、そして直ぐに結果を知ることになった。

僅か半年だ。

僅か半年で見つけられたのは、見つける対象が途中で(・・・)動くことがなかったからだ。

だが見つかったことを……再会したことを手放しで喜ぶことは出来なかった。

 

「……」

 

ベッドで横たわる……体の所々が欠損した姿を見れば、何も言えないだろう。

名前もつけることも出来ず、抱き上げることすらも出来なかった、自らの子供。

しかもベッドに横たわっているその人が、自らの子供であるということを伝えたのは俺が感じ取った気配という……あまりにも現実的ではない、曖昧な確証でしかない。

俺自身は精神分身体で見ることが出来ているため、確実に舞夜の子供であるとわかっているが……そのことを他人にわかれということの方が難しいだろう。

 

「……」

 

俺がいるとはいえ、それなりに苦労はした。

その結果が目の前の現実だ。

 

未だこの世界は紛争が続いているという……どうしようもないほど悲しい現実だ。

 

「……」

 

舞夜は何も言わずに、ただただ自らの子供であるという人を……静かに見つめていた。

正直言って……もう長くない。

この紛争が続いた地域での治療レベルでしか治療がされておらず、そのレベルですらろくな処置が施されていない。

まさに使い捨てであると……そう言っている様だった。

 

間に合ったというべきなのか……間に合わなかったと言うべきなのか?

 

そう思えてしまうほどに……残酷な現実だった。

 

もしももっと早く行動していれば、会話をすることが出来たのでは?

早く行動していれば、もしかしたら出会えたかも知れない……。

 

もしももっと遅く行動していれば、「死」という現実で、何も考えなくて良かった。

すでに死んでいたら、ただただ冥福を祈るしかなかった。

 

言うならば……残酷な言い方をするのであれば、あまりにも半端な状況だった。

俺の力で生かすことが出来なくはないが……しかし精神分身体で見たこの人は、すでに心が死んでいた。

故に……治療を施しても心がそれについていかずに……長くはない。

 

 

 

間に合ったというべきなのか……間に合ってしまったと言うべきなのか……

 

 

 

俺も舞夜も……ただただ静かにその人を見つめていた。

 

「刃夜……。申し訳ありませんが、少し外してもらえますか」

「あぁ……」

 

舞夜にそう言われ、俺は少々心配しつつ部屋から出て行った。

外に出て……荒れた大地に立つ、壊れかけの街の姿を見つめる。

至る所に弾痕と、爆薬によって吹き飛ばされた痕跡。

地面に座り……銃を抱きしめながら眠る子供達。

そして大人達はまともな家の中で何かをやっている。

 

……吐き気がするな

 

心底おぞましい光景だった。

この紛争を終わらせることは、俺には出来る。

だが直ぐに別の理由で紛争が起こるだろう。

そんな土地だった。

せめてまともな家を吹き飛ばすだけでもしてやりたかったが……そんな無責任なことは出来なかった。

この紛争にどんな意味があるかはわからない。

何せここには今来たばかりだ。

理由などわかるわけもない。

大人達も賄賂で治療の家に入れてもらっただけで、友好的じゃない。

むしろ舞夜が女と言うことで露骨に下卑た顔を向けてくる奴もいた。

だがそんな奴らに対して舞夜は何も言わず……淡々と会話をしていた。

それで相手も舞夜がそれなりに出来る人間だと判断したのだろう。

俺がいることも相まって、問題は起こらなかった。

しばらく何も考えず……ただただ周囲を警戒していたが、一時間ぐらいして舞夜が家から出てきた。

 

「お待たせしました」

「……あぁ」

 

何も聞かなかった。

 

何も聞けなかった。

 

聞けるわけがなかった。

 

ただ最後を見ることが出来た。

 

行方不明でならずにすんだ。

 

それだけでも意味はあったのかも知れない。

 

なかったかも知れない。

 

舞夜にこのことで何かを聞くことが出来ず、舞夜も日本へと戻る道すがら何も言わなかったからだ。

 

もしかしたらアイリ辺りには報告をするかも知れない。

 

アイリにも言葉を交わさないかも知れないが、それでもこれ以上俺が踏み込むべきではないため、俺はただただ……帰り道の護衛に徹して、舞夜を無事に日本へと向かう飛行機に乗せる。

 

やりきれない気持ちを俺自身も抱えて……俺は電磁の力で日本へと帰国した。

 

 

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