桜花を護る、超野太刀を持つ開拓者   作:刀馬鹿

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サーヴァント ソルジャー

その光景は、見れば誰もが驚愕する事だった。

 

「なっ……馬鹿な……」

 

そしてそれは見ている者ではなく、他でもない本人がもっとも驚く事だった。

確かに斬られたはずだった。

だが斬られた騎士に傷はなく、ただ纏っていた漆黒の狂気が消え失せて、黒紫の鎧の騎士が……戦士が姿を現した。

 

「ば、バーサーカー?」

 

その言葉は雁夜より呟かれた疑問だった。

バーサーカーと呼んでいた黒紫の騎士に意識を向けて気がついた。

 

身体が……軽い?

 

そう、雁夜の身体を常時蝕んでいた痛み……魔力を生成するために蠢いていた体内の刻印虫が、活動を緩やかにしたのだ。

まだ喰われているという感覚はある。

だが自らのサーヴァントであるバーサーカーを……黒紫の騎士を現界させているにもかかわらず、身体の負担が軽いというのが驚きだった。

 

「……何故だ?」

 

そしてその驚きは……黒紫の騎士が声を上げることで更に驚くことになった。

狂気をもって召喚された自らのサーヴァントであるバーサーカーは、言葉を話すどころかまともな意思疎通すらも行えていなかったのだ。

バーサーカーというそのクラス名の通り、ただ荒れ狂う狂気の騎士でしかなかったはずだった。

先ほども雁夜が桜がいるために制止を掛けたが、それでも止まることなく刃夜……新たなイレギュラーサーヴァントに攻撃を仕掛けた位なのだから。

 

「何故……私を狂気から解き放った?」

「そうでもしないと保護者が死ぬだろう? 俺の目的のためだ」

 

保護者? 目的?

 

刃夜が言った言葉の意味が理解できず、雁夜は疑問符を浮かべる。

保護者で思いつくのは今そばにいる自らが助けたいと願った桜だった。

何となくそちらに眼を向けて……再度雁夜は驚いた。

 

……浮いている?

 

そう。

先ほどまで刃夜が膝枕をしていたが、バーサーカーに何かしらの事を行うために立ち上がった刃夜。

本来であれば膝がなくなったために、桜は頭を打っているはずなのだが……まるで見えない膝がまだあるかのように、桜の頭が宙に浮いていたのだ。

そう思っているとその瞬間にはその空白の膝が元に戻り……いつの間にか腰掛けている刃夜の姿があった。

 

「ついでにいうと、こんな子供がいるのに暴力を振るってくるような輩は好かん。だからその好かん原因を取り除いた。それだけの話だ」

「……」

「気に入らんと言うのであればそれはそれで構わない。剣を持って襲ってくるのなら反撃するまでだ。さて……いかにする?」

 

いつの間にか抜いていた長い長い太刀を鞘に収めて肩に乗せてすごむその姿には、話している言葉の割には敵意も戦意も感じられなかった。

だが……それでもなお、薄ら寒さを感じさせる何かだった。

 

「お前がどういう輩なのかは、まだこの雁夜から聞いていないからわからない。狂いたいという気持ちも……わかる。だがそれでも狂っただけでは何も解決しない。するわけがない」

 

左手に持つ、長い太刀を見つめながらどこか遠い場所を見て言っているかのように、刃夜がそう呟いていた。

その言葉とその言葉に乗せられた感情に、何か感じる物があったのか……黒紫の戦士は、ゆっくりと頭を上げて、椅子に腰掛ける刃夜へと眼を向ける。

 

「ともかく……お前にもやりたいこと、こうなりたいという願いがあるのだろう。俺にもある。互いに協力出来るなら協力をさせて欲しい。何せ……俺らは二組になっても色々と問題があるからな」

 

問題……

 

雁夜は刃夜の問題という言葉に対して、顔をうつむけることしかできなかった。

何せ自分たち……少なくとも雁夜とバーサーカーの陣営は問題しかなかったのだから。

雁夜は間桐としては魔術師の才能はあったが、それでも普通の魔術師……ひいては遠坂などの優秀な家系……とは比べるべくもなく、その上でバーサーカーという制御が難しいサーヴァントを使役しているのだ。

バーサーカークラスの利点は制御が難しいというデメリットを遙かに超えたその圧倒的なまでの戦闘力と突破力だ。

だが、雁夜ではその戦闘力を続けるための継続力がない。

むしろ無理をすればするほど、雁夜の命を食いつぶして……消滅してしまう。

問題がないはずがなかったのだ。

そして問題は、刃夜にもあったのだ。

 

何を隠そう、桜の存在自体そのものだった。

 

 

 

「さて、では反論意見もなく、それ以上に戦う気がないのなら……俺の考えを聞いてもらえないかな?」

 

 

 

大げさに、芝居がかった仕草で肩をすくめる刃夜。

だがその芝居以上に……自らの膝枕で眠りにつく桜の頭を静かに撫でるその仕草は、見る者を信じさせる優しさがあった。

あまりにもおかしな存在であるこの刃夜という存在を信じていいのか? 雁夜はそう思った。

バーサーカーを切り裂いてどんな変化をもたらしたのかは、マスターである雁夜は完璧に把握していた。

そんなことがありえるのか? そう思う疑念が頭を渦巻いていた。

だが実際に変化が起こっている以上、信じるしかない。

刃夜はバーサーカーを切り裂いて……その狂気を……

 

クラス特性であるバーサーカーの狂化を消し飛ばしていたのだ。

 

それを行った理由は己の目的のためだという。

その目的が何かはわからないが……考えを自ら話すと言っているのだから、話だけでも聞いてみても良いのかも知れない。

雁夜はそう判断し、とりあえず話だけでも聞いてみることにしたのだった。

 

 





題名でソルジャーって書いたけど、実際はバーサーカーのままですね
狂化がなくなっただけで
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