桜花を護る、超野太刀を持つ開拓者   作:刀馬鹿

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共同戦線(ひも)

「さて、では俺の話を聞いてくれると想定して話させてもらう」

 

そうして刃夜は自らの目的と、自らの存在の有り様を話し始めた。

その話の内容はにわかには信じられない話だった。

曰く……この世界とよく似た並行世界の、この時代よりも少し未来の日本に生まれた存在であり、強制的にあちこちの異世界に修行の旅に出ている存在であること。

次の世界に行くためには課題をクリアしなければならないと思われること。

そして長年の経験から鑑みるに、この聖杯戦争の関連した出来事が課題であると思われる事……等々、実にうさんくさい言葉を並べ立てていた。

 

「……本当なのか?」

「信じられないだろうが……信じてもらうしかない」

「だが……俺よりも年下なのに英霊になれるだなんて」

「英霊なんて柄じゃない。しかも年下ってのもあくまでも肉体年齢で見ればだ。怪物(モンスター)とでも呼んでくれ。もしくは普通に名前で構わない」

 

英霊と呼ばれるのが心底嫌なのだろう。

嫌悪感を露骨に振りまきつつ、辟易するように刃夜はそうお願いしていた。

別段、いやがることをする理由もないので、雁夜は英霊と呼ぶことはしないことにした。

ついでに言えば、確かに雁夜は刃夜よりも肉体年齢的には年上だろうが精神年齢……この場合少々意味合いが異なるが……は圧倒的に上である。

 

「では、刃夜と……呼ばせてもらう」

「あぁ。俺も雁夜と呼ばせてもらおう。構わないかな?」

「大丈夫だ」

 

マスターである雁夜と、敵サーヴァントである刃夜がとりあえず互いを敵とは認識しなくなった。

では次にという意味合いを込めて……刃夜は黒紫の騎士へと、視線を投じた。

 

「さて、それでお前さんはどうする? 全てを壊すためにまた狂うか?」

「……私の狂気を壊してからそれをいうか?」

「まぁそれについては謝るが……。んで? サーヴァントとして現界したということは聖杯に託したい望みがあるんじゃないのか? ちなみに俺にはない」

「……私は」

 

その先は続かず、ただ一言そう呟くだけだった。

そうこぼす表情と吐息には……常人には理解できない感情が込められていた。

苦悩と懊悩。

憎悪に嫌悪。

贖罪と罪悪。

その全てが刃夜にわかるはずもなく……マスターである雁夜にもわかるわけがなかった。

 

「まぁいい。まだ信頼できないだろうから言わなくていい。使い方次第だが、仮に聖杯が手に入ったならお前らが使えばいい。聖杯を譲渡すると言うことで、協力し合わないか?」

「協力するのはいいが……何をだ?」

「簡単だ……。特に雁夜。ぶっちゃけお前が鍵だ」

「俺が?」

 

鍵だと言われても雁夜としては疑問符を浮かべることしかできなかった。

しかしそんな雁夜に……刃夜は非常に簡単な事実を口にした。

 

 

 

「何せ俺には……金も家もないんだからな!」

 

 

 

「…………あぁ」

 

そう言われて、雁夜も思わずといったように納得していた。

確かにその通りだろう。

日本生まれであるのは本人……刃夜が口にしていた通りだったが、並行世界を旅させられているという言葉を信じるのであれば、金などあるはずもない。

正しくは、刃夜には自分の世界における日本円はかなりの額を所有していたりするのだが……並行世界に刃夜の口座はない。

そして家だが……

 

「間桐の家にいるにはあまりにも危険すぎる。それに桜ちゃんにあの家にいさせるのはあまりにも不憫だ」

「……確かに」

 

間桐臓硯が支配している間桐の家。

虫は残らず燃やすことは可能だろうが、それでも他にも何かしらの仕掛がある可能性はぬぐえなかった。

もちろん刃夜としてもマスターである桜のそばを離れる気はないのだろうが、念のためだった。

そして間桐家が使えないとなると……当然だがマスターが桜(幼子)、サーヴァントが刃夜である開拓者(フロンティア)陣営には拠点がないということになる。

そうなると必然的に頼れるのは桜を敵と認識しておらず、また大人であるためにある程度の金がある間桐雁夜以外に頼れる存在はいなかった。

 

「というわけで……非常に申し訳ないが俺はお前に金を出してもらわなければならない」

 

つまり直接的に言うと、刃夜は雁夜のヒモになるしかなかった。

 

「わかった。ある程度の貯金はあるからなんとかなる」

「その代わりといってはなんだが、お前の身体。俺が少し治療しよう」

「身体を?」

 

まさか自分のことも言われると思っていなかった雁夜は、刃夜の言葉に疑問符を浮かべる。

その事で刃夜は先ほどから思考していた雁夜の内面が間違いないことを確信し……内心で溜め息を吐きながら言葉を続けた。

 

「もし全てがうまくいったなら、この聖杯戦争が終わった後に桜ちゃんの面倒を見る存在が必要だ。俺はおそらくそう長くはこの世界にとどまることは出来ない。わかってるんだろう? 自分の身体のことはある程度は。だがはっきり言わせてもらう。今のままだとお前はあと数日で死ぬぞ?」

 

その言葉に、雁夜は黙るしかなかった。

うすうす感じてはいたが、それでもその事実を突きつけられたため、事実と認識せざるをなかったのだから。

更に言えば……

 

「それに、遠坂の家に桜ちゃんを戻すというのも難しいだろう。何せ生粋の魔術師なんだろう? なら魔術の存在を知ってしまった以上、別の家の養子に出される可能性がある。この子には素質があるのだろうが……それでも平和な世界にいれるのであれば、それにこしたことはない。となると……聖杯戦争が終わった後、お前は生きていなければならない」

「……俺が?」

「当たり前だろう? 幼子を助けるだけ助けてそれで役目が終わりだと? ふざけるな。この子に寂しい想いをさせるつもりか?」

「!?」

 

この刃夜の言葉は、雁夜には衝撃となって襲いかかった。

そのことを……自らが桜を解放した後のことを何も考えていなかったことに気付いたのだ。

聖杯戦争はどんなに長くても一週間程度の内に終わる。

そして仮に臓硯を殺すことが出来たなら、魔術を継承する存在がいなくなる。

遠坂の家に戻される可能性があり、戻された場合別の家に養子に出される可能性は大いにある。

死よりも恐ろしい経験をした桜が、別の家で魔術を続けられるかは未知数だが……刃夜としてはあんな苦痛を味わった桜を、元の日の当たる日常に戻してあげたかったのだ。

ならばその後保護者が当然だが必要だ。

その役割を……全く考えてなかったのだから。

そしてこれは……刃夜の狙いでもあった。

 

少しこいつを元に戻さんと、こいつも危ないな

 

しかし刃夜はそれをおくびにも出さずに、目下もう一つ重要な事柄を相談を始めた。

 

「さて……今夜の寝床をどうするか?」

 

 

 

 




サーヴァント 開拓者(フロンティア)

真名 鉄刃夜
特技 刀の鍛造、料理
好きな物 刀、料理、読書
嫌いな物 人に迷惑を掛けて平然としているクズ
天敵 祖父、親父
属性 混沌、多重パラレル



ステータス

筋力 B+
耐久 B+
敏捷 A-
魔力 A-
幸運 C
宝具 ???

スキル

単独行動EX
生きているので単独行動もくそもない。ある意味でバグのスキル。生きているが故にマスターからの魔力供給の必要性は皆無。また宝具も普通に使用可能だが、本人の力量に大きく依存する

故郷の料理S
モンスターワールドにて作り上げた一つのジャンル和食。和食のみ味が最強の領域に達している。また他の洋風、中華もかなりのレベルの物を作ることが可能。しかし元々の腕がいいのであまりこのスキルは効果がない

温泉探知A
匂いさえ出ていれば、どこに温泉があるのか直ぐにわかる。武装があれば、掘ることも可能。が、この世界で発掘する機会はない

刀鍛造???
気と魔力を注ぎながらの鍛造のため、強力な刀の鍛造が可能。

農作業A
米、大豆などの農作業を行うとすばらしい実力を発揮、スキルの恩恵でほぼ確実に豊作になる。

鎧鍛造A
新たな鎧を作り上げたことに寄る恩恵。

外道B∞
己の願いのために数え切れないほどの女性を棄てた男。

不老EX ←NEW
並行世界にいる間は、経験を蓄え、知識を得るが、肉体的に老化することがない。



宝具

夜月
ランク 測定不能
種別 対人宝具
最大補足 不明
刃夜の祖父が、刃夜が誕生したのと同時に造り上げた一振りの打刀。究極の防御壁を展開可能。


封龍剣【超絶一門】
ランクB+++
種別 対龍宝具
モンスターワールドで手に入れた武器。不思議な鉱石で作られている。魔力マナを切り裂きそれを吸収する性質を持ち、意志が込められた生きた魔剣。魔力オドで作られたものも同様に切断、吸収するが魔力マナと比較すれば精度や量が落ちる。刃先にのみではなく、剣全体にその効果を持つ。発動された魔術も切り裂くことが可能。だがどれだけの規模の魔術を切り裂き吸収するかは仕手の力量に大きく左右される。呪いなどの解除も行えるが、これも仕手の力量次第。またその出自、剣に宿った意志の働きで、強力な「龍殺しドラゴンキラー」の性質を備えている。龍だけでなく、龍の因子をもつ存在に対してもその能力が発動する。恨みを果たしたことで効果が薄れているが、微々たる量しか違いがない。斬られればかなりのダメージを及ぼす。


Gショック(腕時計)
種別 対人宝具
最大補足 一人
刃夜が異世界に紛れ込む際に身につけていた時計。刃夜の時間を一切狂うことなく、壊れることもなく正確に刻んでいる。この時計を見れば、刃夜の実際に過ごした年月を確認することが出来る。




とりあえずこんな感じでしょうか?
ほかにもいろいろありますので、お楽しみにw

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