桜花を護る、超野太刀を持つ開拓者   作:刀馬鹿

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奔走

「主……少々ご報告したいことが……」

「どうした綺礼? 何か動きがあったのか?」

 

衛宮切嗣がケイネスエルメロイを殺害するために、ビルを丸ごと爆破した後。

自らが使役するサーヴァントの報告に言峰綺礼は動揺を隠せなかった。

故に、綺礼は秘密裏に動いてビルの爆破を見に行った後すぐに引き返して……教会の地下にある時臣との通信が出来る装置で、自らの盟主である遠坂時臣へと、アサシンより受けた報告を告げる。

 

「八騎目のサーヴァントらしき存在を捕捉したと……アサシンから報告が」

「何だと? そんな馬鹿な?」

「更にその八騎目のサーヴァントは……主が間桐家に養子に出したご息女、そして間桐家のマスターと行動を共にしているようです」

「なんだって? それは本当なのか、綺礼」

「はい。今もアサシンに監視をさせておりますが……間違いないかと」

 

 

 

 

 

 

時間が遅かったこともあり、結局四人……といっても黒紫の騎士は現界していないので実質三人……は、近くのビジネスホテルに泊まることになった。

三人分の弁当をコンビニで買い、遅めの食事を行っていた。

 

「何でサーヴァントなのに食べる必要があるんだ?」

「だから俺生きてるの。死んでないの。だから霊体化もできないし、魔力だって自分で生み出せる。だから腹も減る」

 

もりもりと、コンビニ弁当を食べるサーヴァント。

実に滑稽とも言える状況ではあったが、それでも雁夜としても本人が望むのだから協力関係である以上、弁当を買ったのだった。

そして食べ終えてきちんと御礼を言った後、刃夜は腰のポーチから小瓶を取り出した。

黄色の液体が詰め込まれた小瓶だった。

 

「それは?」

「お前の身体を治療するって言っただろ? 怪しく見えるが間違いなく薬だ。とりあえず飲んでくれ」

 

小瓶の中身を少し手に取り舐めた後、刃夜は雁夜に小瓶を渡した。

少々いぶかしみながらも、刃夜が口にしたことで毒じゃないと判断し、雁夜はその薬を飲み干して……元気よく身体を動かしていた。

その背に……刃夜は紫の炎が発現している左腕を当てていた。

 

「まずその虫……全て燃やしてくれる」

「!? まっ――!!!」

 

その刃夜の言葉に、雁夜は慌てていたがその言葉を言い終える前に、雁夜の身体に衝撃が走った。

そしてそれと同時に、今まで身体を蝕んでいた全ての痛みが消失したのを感じた。

その痛みの消失は……魔力を生み出せなくなったという事実に他ならなかった。

刻印虫を全て燃やされたのだから、それも当然といえた。

 

「な、なんてことを!?」

「やかましい。桜ちゃんが起きたらどうする?」

 

その言葉に雁夜ははっとして、ベッドで眠る桜へと眼を向けるが、特に起きた様子は見受けられなかった。

それにほっとしつつ、再度刃夜へと眼を向けて声を上げようとしたその口を……小さな小瓶を問答無用で口にくわえさせて刃夜は封じた。

 

「!?!?」

「魔力が生み出せなくなるって話だろ? 多少ならお前が生み出せるから、基本的に現界しなければ消えることはないだろう。だがそれだと万が一があるからな。だから……これを渡しておく」

 

そう言って渡されたのは、黒いシースに入れられた双剣だった。

それを手に持った瞬間に、雁夜は眼を丸くした。

何せ魔術については素人以下である雁夜にすらわかるほどに……凄まじいほどの魔力がその双剣には充ち満ちていたのだから。

 

「これは!?」

「魔力を切り裂き、魔力を吸収することの出来る魔剣だ。俺が今まで溜めてきた魔力が結構充填されている。当面はそれでどうにかなるだろう」

「だが……」

「そうでもしないとお前の身体の治療が出来ん。つーか治療してもその都度虫に喰われてるんじゃ治療の意味がない。魔力については最悪俺からお前に譲渡も出来るし、回復のための薬もまだまだある。心配しなくていい」

 

魔力の譲渡は結構高度な技術を必要とするが、それを簡単にできると言ってのける刃夜に、雁夜は驚くしかなかった。

そして更にいくつもの小瓶を渡されて強制的に飲まされて、身体を元気よく動かして……さらにベッドに横にさせられて、パンツ一丁に剥かれた。

 

「……お前、今までよく生きてたな」

「……否定はしないよ」

 

その身体は悲惨な姿だった。

本当に何故生きているのかと不思議に思えるほどに……。

刃夜はその身体と、この雁夜という男に敬意を払いながら……身体に手を当てる。

すると刃夜の手が淡く光り輝き、その光の暖かさに……雁夜は久方ぶりに穏やかな気持ちで眠りにつけた。

眠った後も、しばらく刃夜は治療を続けていたが……それも終えたのか、自らもソファーの横になって眠りについた。

刃夜も寝てしばらくして……何の変哲もない一匹の小さな虫が、部屋のドアの隙間を通って、部屋の中へと侵入してきた。

 

ほ……まさかいきなり殺しにかかってくるとは予想外じゃったが――

 

 

 

「早速来たか、虫野郎」

 

 

 

!?!?

 

 

 

その言葉に、虫は……間桐臓硯は驚くしかなかった。

今は暗闇の中で、常人では絶対に視認できない小さな虫でしかない己を見つけたのだ。

驚くのも無理はなかった。

 

「今殺しても無駄だろうから殺さないでいてやる。だが必ずお前を見つけ出して殺して……桜ちゃんを救ってみせる」

 

その殺気はあまりにも鋭かった。

その場にいる他の存在にわからないように。

小さな女の子に怖い思いをさせないために、鋭く小さく……ただ一点のみを貫く鋭利な殺意だった。

その殺意は、分身ごしに見る臓硯に真に死の恐怖を覚えさせるほどの苛烈さがあった。

分身越しでさえも感じる……絶対的な殺意。

まるで死の宣告のようだった。

さしもの臓硯も、たまらずに逃亡するほどだった。

その気配を感じ取りながら……刃夜は内心で深々と溜め息を吐いていた。

 

やはり分身越しではわからんか……。俺も未熟だな

 

しなければいけないことの多様さに溜め息を吐くが……それでも暗い中でも、まるで光るように戦意に満ちた眼を見れば、刃夜の心中は考えるまでもなかった。

 

何か方法を考えないとな。これだけ修行しても呪術系はやはり苦手だ……

 

自らの無能さに刃夜は内心で深々と溜め息を吐いていたのだが……しかししょうがないと割り切って方法を思案する。

端から見れば刃夜以外に起きている者がいない空間で物騒なことを独り言で呟いている……実に危ない光景だったが、そんなことは刃夜には瑣末事だった。

 

 

 

そんな刃夜を……霊体で見つめる存在がいた。

言うまでもないかも知れないが……黒紫の騎士だった。

霊体であるため、この意味不明な存在である刃夜が行う行動を監視するかのように見つめていた。

監視というのは雁夜からの命令でもあった。

 

『少なくとも桜ちゃんが心を許しているのは間違いないみたいだし……信じたい。だけど万が一もある。狂化がなくなったなら監視も出来るはずだ。頼む』

 

 

 

……

 

 

 

狂戦士(バーサーカー)として召喚された存在。

真名は円卓の騎士であるランスロット。

伝説の騎士王、アーサー王の部下として様々な武勇伝を持つ、最強クラスの騎士だった。

ランスロットである黒紫の騎士は、一つの願い……贖罪をするために、この聖杯戦争に参加していた。

ただただ狂った獣のように暴れ回れば……騎士王の悪名を少しでも注げるのではないかと?

だがその願いも刃夜が狂気を吹き飛ばしたことで、全てが霧散した。

狂気がなくなり、冷静にならざるを得なかった。

言っていることは正しいと判断せざるを得なかった。

サーヴァントとして刃夜が桜を救ったとしても、この世界にとどまるわけではないのだから、最後まで責任が持てない。

ならば元々救うつもりだった雁夜……己のマスターにそれを任せるというのも理解できた。

だが……それで自らの願いを邪魔された。

本来であれば怒らなければいけないはずだった。

 

だが……何故かそれが出来なかった。

 

 

 

何故だ?

 

 

 

黒紫の騎士は自らの思考に疑問を抱く。

自らの願い……ただただ獣のように荒れ狂う事を真っ先に否定されたのだ。

願いを否定されたのだから怒らなければいけないはずだった。

だが、それができない。

何故できないのかもわからない。

困惑して然るべきだというのに、それすらもできない。

ただただ困惑しかできないとき……ふと違和感を覚えて、黒紫の騎士は違和感を覚えた場所、窓の外へと視線を向ける。

だがそこには暗い夜の闇しか見えなかった。

 

「……虫以外にも監視がいるみたいだな」

 

!?

 

その言葉は独り言ではなく、明確に黒紫の騎士に向けられた言葉だった。

それに気付いて黒紫の騎士であるランスロットは、驚愕しながら刃夜へと眼を向ける。

霊体化しているため姿形が見えないはずの黒紫の騎士のランスロットの眼を……刃夜はまっすぐに見つめていた。

 

 

 

「怪しむのもわかるし、疑うのもわかる。だが俺としても悪いようにするつもりはない。そこは安心してくれ」

「……――」

「出てこなくていい。現界すると魔力が減るだろう。しばらくは、問題が起こらない限りは、雁夜をそっとしておいてやって欲しい」

「……」

「もしもって事はないとは思うが……万が一は己のマスターを優先してくれ。こっちは大丈夫だ」

 

そう言って今度こそ眠りについたかのように、規則正しく呼吸をし出した。

意味がわからないというのが本音だった。

だが……何故か斬り捨てる事が出来ないと思った。

何故かはわからない。

 

その迷いこそが……自らを救うと言うことを、黒紫の騎士

 

 

 

ランスロットは

 

 

 

気付けるはずもなかった。

 

 




うーん

マジでただのひもだなw
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