季節は春。
天気は雨。
「美月姉様っ
卯月姉様の剣道の全国大会の応援
私も行きたいです」
黒髪を肩上でそろえ、いわゆるおかっぱにし、薄い赤色ー濃いピンク色の瞳の小学生くらいの少女が、
ー美月姉様と呼ばれたー腰より長い髪をし、頭の上にお団子を作った美少女
とおしゃべりしている。
「ありがとうって卯月も言うとは思うけど、すぐに動ける人がいなきゃだめでしょ
父様も伯父さまもお年だし、母様は霊力があるだけだしね
私たち実力者2人の代わりお願いね。
3人いれば大丈夫でしょ。
よっぽどのことがない限り」
幼い方の少女の名は、雛桜 留依。
8歳。もう少しで9歳。小3。
年上の方の少女の名は、雛桜 美月。
13歳。中一。
姉様と呼んでいるし、同じ姓だが、関係は兄弟でなく従姉妹同士である。
美月の双子の妹に当たるのが会話に出てくる卯月である。
「じゃあ、そういうわけでお留守番の間、雛桜をよろしくね、留依。
そうそうもうすぐ留依の誕生日だったよね
今度ほしいものを買ってあげるね」
「はーーい。美月姉様」
これが
今生の別れになるとも知らず。
天は知っているかのように暗く暗くなっている。
真っ赤な血
と
真っ赤な傘
散ったのは赤い赤い 薔薇 の花
あたりは 赤。
一面赤。
一瞬血のように思えるが違う。
朱き紅き朱き炎で覆われた部屋。
ここは炎の間。
彼女ら 雛桜家が最期に眠る場所。
死んでもなお普通には朽ちない精霊術師の肉体。
自らの仕える神の御元へと還るため
それぞれのやり方で遺体は葬られる。
如月家をはじめとする風術師一族は
本家地下にある風の力が溢れる微生物の一匹もいない部屋に死体が朽ちるまで(風化)。
大道寺家をはじめとする地術師一族は
本家地下に半分弱埋められて、地に還るまで
今はもう亡き水術師の神名家は
同じ一族のものに作られた氷の中へ葬られ
神無月家をはじめとする雷術師一族は
一族が絶えず、力を注いだ雷の間で
その体が精霊の力がなくなり朽ちるまで
そして彼女達雛桜家やそれをはじめとする炎術師一族は
この本家地下にある炎の間で
塵とかすその日まで・・・・・・
この炎の間の炎はやはり本家の皆が毎回霊力を補給してほのおwo 熾す。
ね。
この部屋に残るのは、
つい最近や数十年の遺体など
命なきもの。
その中にある一体の真新しい一つの遺体に彼女ー幼い少女
雛桜 留依。
「姉様…
こんな姿で戻ってこないで下さいよ。美月姉様ぁ」
その遺体は、
昨日死んだ美月姉様のもの。
まるで眠っているかのようだった
美月姉様の使うかのような色の炎が舞う。
たぶん前に美月姉様が付け足した炎だ。
肌を
髪を
炎が覆うが
まるでその効果はない。
彼女ー留依もそれは同じだ。
零れた大粒の涙は、この高温であっという間に蒸発する。
そこにもう一人の少女が現れた。
黒髪をポニーテールにし、藍色の瞳の少女。
炎の中を突っ切ってまっすぐ美月の遺体に向かってくる少女。
美少女のはずなのにその瞳にも動きにも、生気がない。
ジュッ
と水蒸気が上がる。
それだけではなく、少し肉が焼けるにおいが上がる。
「何してるんですか!?
卯月姉様っ
力もオート以外ほとんど使わず何してるんですか。
姉様は私たちとは違うんですから」
彼女が美月の双子の妹・雛桜卯月である。
この家で卯月だけが違う。
かつては無能とまで言われた卯月姉様は
1年ほど前に判明したのだが
卯月姉様は精霊術師は精霊術師でも
私たち炎術師とは正反対の水術師。
留依の言葉にも反応せず、心ここにあらずという感じだった。
留依は思った。
このままじゃ卯月姉様もいなくなっちゃうと。
だから…
涙を必死にこらえる。
自分の涙を
「姉様。
大丈夫。
美月姉様の魂はきっと無事。
運命は廻ります。
きっと逢えますよ。」
自殺しそうな卯月姉様を止めたのは私のエゴ。
結局、卯月姉様が自殺しないと決めたのは美月姉様の残した詞だけど
私は卯月姉様の前で
美月姉様を思い出すことも
悲しむこともできなくなってしまった
少女は笑う
それしか悲しみを抑えるすべを知らないから
-2 endー