オーバーロード 異世界に転移したアリストテレス【停止中】 作:始まりの0
~早朝 村はずれ~
「何も言わずに出てきて、良かったの?」
「あぁ………良いんだよ。麻薬を消す為とは言え、スコーピオンでモンスターを村に嗾けたんだ。だと言うのに村人が英雄視してくるんだぞ………良心が痛む」
ユウは昨夜、モンスターを討伐し村長や村人達に感謝され、子供達には英雄を見る様な目で見られていたのだが………畑を消す口実としてモンスターを嗾けた。つまりは自作自演である。故に人間としての良心が痛む様だ。
「別に気にする様な事はないんじゃないの?」
「俺が気にするんだ………はぁ、さっさとセバス達と合流しよう。と言う訳で………よっと」
「えっ……ちょっと!!」
ユウは早くセバス達と合流する為に、ベルンカステルを抱え上げた。俗に言う、お姫様抱っこである。勿論、恋する乙女である彼女はそんな事をされれば顔を赤くなる。
「おおおおっ追い付けるわよ!」
「絶対に俺の方が速いんでな。ちょっと本気で行く………口を閉じとかないと舌噛むぞ」
「えっ?」
そう言うと、脚に力を入れて地を蹴った。
「にゃぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!」
~数分後~
「ぜぇぜぇ」
「大丈夫か?」
音速で移動していた為、ベルンカステルには少し辛かった様だ。未だに抱っこ状態である。
「取り敢えず、降りる?」
ユウにそう言われて、勢いよく首を横に振る。
「怖い………怖い」
彼女は若干、トラウマになった様だ。先程まで、彼女が体感していたのは簡単に言えば【シートベルトなしで〇ヒ〇ス(世界一怖いジェットコースター)に乗車した】様な物だ。後にそんなに怖いのかと思い体験したアインズがそう言った。ナザリックの支配者もトラウマになったのは言うまでもない。
「そんなにか?」
当の本人は自分がチートの塊だという事を理解していない様だ。
「まぁいいか………おっ、あの馬車は」
ユウは遠くに馬車を確認し、それに近付いていく。すると、馬車から執事が降りてきた。
「此方に居られましたか………旦那様」
「やぁ、セバス。出迎えご苦労」
「ハッ………では御乗り下さいませ」
セバスはそう言うと、馬車に2人を迎える。
~馬車の中~
未だ、恐怖が抜けないのかユウの腕から離れようとしない。
―ギリッ!―
―メキィ!―
この馬車に乗っている、ユウ、ベルンカステル。
そして、セバス、戦闘メイドのソリュシャン・イプシロン、ナザリックの階層守護者、シャルティア・ブラッドフォールン、シャルティアの愛妾の
因みにセバスは竜人、シャルティアは
セバスは特に表情に出ていない。しかしソリュシャン、シャルティア、吸血鬼の花嫁の2人は、ユウ………ゼオス・アルドライグの腕に引っ付いている番外席次を睨んでいた。その眼には嫉妬と羨望の感情が篭っている。
当の原因である、ゼオスはそれに気付きながらも、面倒なので触れないでいた。
「はぁ………それで、セバス。情報は?」
「はい、こちらになります」
セバスはそう言って、羊皮紙に書いてある情報をゼオスに渡した。ゼオスはそれを受け取り、目を通す。
「成程…………やはり、生活水準はこの程度。医療もそれ程、進んでいない」
セバスがナザリックを出てから調べ上げた情報を、頭に叩き込んでいく。書類を10分程で読み終えると、息を吐いた。
「大体、分かった………セバス、アインズからはどう言った命を受けている?」
「はい。王都に着いた後は、情報収集、コネクションの形成を命じられております。ゼオス様と合流次第、御身の命を第一優先にと」
「分かった。後、今の俺はユウだ、番外席次もベルンカステルと名を名乗っている。ナザリックに帰還するまでは、室内等でも気を付けろ」
「「「「承知しました」」」」
NPC達が揃って、ゼオスの意を受け入れた。
「やるべき事は多いな…………セバス、王都まではどのくらいだ?」
「恐らく、このペースで行けば2・3日かと」
「その程度か」
「あの、旦那様」
「どうした、ソリュシャン?」
「襲撃が在った場合、ザック………現在、手綱を握ってる男なのですが、私に頂けませんか?」
ゼオスは馬車に乗る前に、馬の手綱を握っていた男の事を思い出していた。
「あぁ、あの男か。特に利用価値もなさそうだし、構わないぞ」
「ありがとうございます」
許しを貰ったソリュシャンは笑みを浮かべて頭を下げる。
~夜 テント~
事前に用意していた簡易テントを張り、一同はそこで夜が明けるのを待つ事にした。
ゼオスやNPCは人間でない為、別に食事をとる必要はないのだが………ゼオスは未だ、人間の時の習慣で食事をとる様にしていた。
そして今夜、食事を作ったのは至高の存在であるゼオス・アルドライグだった。
「「「「「…………」」」」」
「どうした、お前等?早く、食え。冷めてしまうぞ」
そう言ってスープを啜るゼオス。
セバス達、NPCは自分達の持つ皿に入ったスープを驚愕と感動が入り混じった表情で見つめていた。当然だろう、本来であるなら自分達の役目であり、下々の仕事だ。
だと言うのに、至高の1人であるゼオスが自分達に手料理を作ってくれた………感動しない訳がない。スープを食べた彼等が泣いたのは言うまでもない。
食事を終え、食器を片付け終わり、ゼオスは月を見上げていた。
「旦那様」
「セバスか?」
「はい、お休みにならなくて宜しいのですか?」
「おいおい、俺はそんな柔ではないぞ」
「それは承知しておりますが………」
「フム………あっ、そうだ。セバスに聞きたい事が在ったんだ」
「なんでございましょう?」
「お前は人間をどう思う?」
ゼオスはセバスに人間の事についてどう思うかを聞いた。
因みにナザリックの戦闘メイド・プレアデス達の意見は、長女のユリ・アルファ以外は餌やら玩具やらと言う物だった。
基本的にナザリックの者達は人間を見下し、下等な生物と見ている。
「私が思うに人間は素晴らしい生き物だと思われます。愚かな者も居ますが、弱き者に手を差し伸べる優しさを持つ存在だと考えます。そんな者達がいるからこそ、私は嫌いにはなれません」
「手を差し伸べるか………フフフ」
ゼオスはセバスの言葉で昔の事を思い出した。
「『誰かが困っていたら助けるのは当たり前』」
「!」
セバスはその言葉に驚いた。それは自分の創造主、たっち・みーが良く言っていた言葉だったからだ。
「セバスは異形種狩りを知っているか?」
「いえ」
「俺やモモ……アインズ達の様な異形種は、特異性故によく他の種族に狙われてな。
当時は毎度、毎度、狙われてうんざりしていた。でもそんな時、ある聖騎士が立ち上がった。困っていたら助けるのは当たり前だと言い、虐げられていた異形種達を助けたのが、俺達【アインズ・ウール・ゴウン】の始まりだ。
勿論、その聖騎士と言うのは我が盟友であり、お前の創造主であるたっちさんだ」
「!!!」
セバスは、自分が創造される以前の………アインズ・ウール・ゴウンの誕生の話、それに自分の創造主である【たっち・みー】が関わっている事を知り、感動で身体が震えた。
「お前のその考えは間違ってはいないと思う。俺はその考えに好感を持てる。
それにお前のその考えはたっちさんから受け継いだものだ。誇りを持っていいぞ。大切にしろ」
「はい!」
「あっ、そうだ。これをお前に渡しておこう」
そう言って、彼はポケットの中からアインズ・ウール・ゴウンの刻印の入った懐中時計を取り出した。
「懐中時計でしょうか?」
「開けてみろ」
セバスはゼオスに言われた通りに懐中時計を開ける。蓋の内側の部分に【正義降臨】と言う文字とたっち・みーを現す刻印が刻まれていた。
「!?」
セバスはその言葉を知っていた。彼の創造主であるたっち・みーが使っていたエフェクトと同じ言葉だったからだ。
「そいつは元々、俺が作った物でな。アインズ・ウール・ゴウンの仲間達との絆の証として、渡そうと思ったんだが、渡す前に皆、去っちまったからな。だから代わりにお前に渡しておくよ」
「っ!ありがとうございます!!!」
「フフフ………じゃ、少し休ませて貰おう。朝になったら起こしてくれ」
「はっ!」
ゼオスはセバスを見ると、セバスに一瞬だけかつての友の姿が被った。その友との思い出を、胸に仕舞うと休む為にテントにへと戻って行った。
・懐中時計
かつて、ゼオスが仲間達の為に自費で造ったアイテム。
特に効果はないが、結構金が掛かっているアイテムである。
蓋にはアインズ・ウール・ゴウンの刻印、蓋の内側には個人のマークと言葉が入っている。(たっち・みーの場合は正義降臨)
制作したはいいが、渡そうとした矢先、それぞれの仲間はギルドを離れていったので渡せず終いになった。
次回、ちょっとした事件が起こります。