オーバーロード 異世界に転移したアリストテレス 作:始まりの0
~城内 一室~
「初めまして、私はリ・エスティーゼ王国第三王女、ラナー・ティエール・シャルドルン・ライル・ヴァイセルフと申します」
ユウとラキュースの前に座る美少女がそう言った。
「(こんちくしょう!予感が当たった、相手は王女かよ)
ユウだ。冒険者をしている、言葉使いや礼儀知らずな所は勘弁してくれ」
「お気に為さらずに……ユウさんと言うんですね。お噂はラキュースから聞かされております」
「そうか……(何だこの娘は……こんな作り笑顔を浮かべて)」
ユウはラナーの浮かべる笑顔が故意的に作っている物だと感じた。
「それにしても……ラキュースにも好い人が出来て嬉しいわ」
「?」
「なっ何言ってるのよ、ラナー!?」
ユウは何の事かと首を傾げ、ラキュースは顔を真っ赤にして叫んでしまった。
「だって、この所ラキュースは貴方のお話しばかりするからてっきりそう言う関係なのかと思ったのだけど?」
ラキュースは親友であるラナーにそう言われ、最近の事を思い出してみた。そう言えば、最近ラナーと話をする時には何故か彼の話題になっていることに気付いた。
ラナーからすれば、そう思っても仕方がないなと思い顔を赤くするラキュース。
「残念ながら俺と彼女はそんな関係ではない。会ったのも今日で3回目だしな」
「あらっ、そうなのですか………(でもラキュースのあの顔は…)」
「それより依頼の話をしてくれ」
取り敢えず早く話を終わらせたいので依頼の事を話す様に催促するユウ。
「そうでした……では」
ラナーが今分かっている八本指の情報、依頼の内容を説明する。
「……成程。此方の情報をお前達に提供、殲滅する際には
「はい」
「それが依頼と言うなれば受けてもいい。だが何故俺に依頼を?」
「貴方のことはラキュースから聞きました。
黒粉の原料を栽培していた村では誰1人村人に犠牲を出さずに、未知の魔法で畑を消し去ったとか」
「あの程度は大したことはない」
「それだけでなく、ラキュース達でも敵わない様な魔獣を使役してるとか」
「別にそれほどでは」
何やらラナーは目がキラキラしているのは気のせいだろうか?
「それで……俺に依頼した訳を聞きたい」
「まずはラキュースから聞いた貴方の印象からですね。
ラキュース達との会話で麻薬と言う言葉が出てきた時、過剰に反応していたと聞きました」
ラナーは笑みを浮かべながら、そう言った。
「……それだけで?」
「それだけではありませんが、それが主な理由です。麻薬と聞いて過剰に反応する人は、それを扱っている人間か、それに対して良くない感情をもっている人間ですから。話を聞いた感じては貴方は後者の方と思いまして」
そう笑みを浮かべながら話すラナー。
「成程……貴女は頭がキレるようだ。
確かに俺は麻薬というものを憎んでいる。初対面でそれに気付いたのは貴女が始めてだよ」
ユウはそう笑みを浮かべながら言う。
「いいだろう。依頼は受けよう」
「本当?」
「ありがとうございます!」
ユウがそう言うと、喜ぶラキュースとラナー。
「協力はする………しかし、俺は俺のやり方でやらせて貰う」
「えぇ、それは構いませんわ」
「では確認だ。此方は此方、其方は其方で動く、情報は交換しよう。勿論、其方の都合が悪いならば此方に報告してくれれば対処しよう。それで構わないか?」
ユウの言葉にそれで問題ない答える、ラナーとラキュース。それから詳しい話を30分程掛けて行った。
「じゃあ、私は少し失礼して…」
ラキュースは少し席を外し、ラナーとユウの2人となった。
「………」
「……(ニコッ」
-ピピッ-
(ん?メッセージ?)
『ゼオス様………御時間宜しいでしょうか?』
メッセージをしてきた相手はセバスの様だ。
『少し取り込み中でな……手短に頼む』
『申し訳ありません、此方は急ぐ事ではないので後ほどで構いませんので』
とセバスはメッセージを切ろうとするが、それを止めた
『いや構わない。丁度都合がいいんでな』
『?』
『こっちの話だ。それで何か問題でもあったか?』
『いぇ………実は』
とセバスから話を聞くと、これは自分が戻らなければならんと考えた。
「少しばかり用を思い出した。俺はこれで失礼させて貰う」
ユウはそう言うと、席から立ち上がる。
「あらっそうですか。もう少し御話したかったのですが………」
「またいずれ会う事もあるだろう……何かあれば、この紙に書いてある屋敷へ使いを出してくれ。ではこれにて失礼させて頂きます、お姫様。【
ユウはそう言い騎士のする様な敬礼をすると、転位魔法を使いその場から消えた。
「あらあら………魔法ってあんなこともできるのね。あんな魔法聞いた事ないわね」
ラナーは先程、ユウの使った魔法について考察しているとガチャっと音がして、扉が開きラキュースが戻ってきた。
「今戻ったわよ、あれ………彼は?」
「何か用があるらしくて、帰られたわよ」
「そうなの?」
「………それにしても、面白いわね彼」
「面白い?」
ラナーの言葉に首を傾げるラキュース。
「えぇ…………初めてよ、あんなにも読めない人は……それに」
「それに?」
「いぇ……何でもないわ」
ラナーは紅茶を飲みながら、ユウの事を思い出していた。
(こんな事は初めてね。大体の人間の考えてる事は顔を見れば分かるのに、彼からは何も読み取れなかった。
それにまるで人ではなく、それ以外の何かと話している様な変な感じだったわね。少し情報を集めてみようかしら)
(何があったか分からんが、物凄く重い空気だな、こりゃ)
良く分からないが、何かあった事は間違いさなそうである。ソリュシャンはゼオスに一礼すると報告を始めた。
「ゼオス様、御報告申し上げます……」
「はっ?」
そして、ゼオスに戻った彼は何とも間の抜けた声を出したのであった。