901分枝系統 80013世界 02795726時間断面 ISの世界 【改定作業中/第一章完結】   作:白鮭

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ほ(´・ω・`)もさん、誤字報告ありがとうございます。







Dear My Friend

 IS学園では狩りごっこが流行っていた。

 

 「いた?」「いないよ」「お姉さまに恥をかかせて、許せない!」「捕まえたらボコボコにしてやる」

 

 俺は全校生徒が三百六十人しかいないのに、島一つを丸々学園に作り替えたと言うアホみたいに広い学園内を、目の色を変えて追いかけまわして来る先輩(肉食獣)たちから必死になって逃げ回っていた。

 

 「クソっ……! やっぱり一組教室(安全地帯)を一人で出たのが間違いだったか」

 

 一夏のクラス代表就任は、俺とオルコットさんがガチ気味に戦った末に殴られたのを理由にして、これ幸いと押し付けた結果の事だった。

 みんなを守ると言う事に強い拘りと憧れを持っている一夏の前で、一方的に蹂躙するような戦いを見せればああなるのも納得で、俺がピットから戻った直後は言い争う程度で済んでいたのだが、一向に悪びれないし上に反省も一切しなかったので思わず手が出たと言うのが事の真相なのだが、別にその事は良いのだ。

 

 対人関係に関する事がポンコツな俺は、この事を他人がどう見るかとか全く考えていなかったし、調子に乗ってBT兵器を全損させてしまうとか色々と問題すぎる行動もとった。

 だから最悪、爪弾きにされてもおかしくなかったのだが、その辺りはオルコットさん……いや、セシリアのフォローもあって何とかしてくれたのだ。

 俺もセシリアとの約束を守った上でやった事には後悔は無いが、調子に乗ってセシリアと言う一人の女の子を傷つけたと言う事には反省しているし、俺の反省したと言う態度と行動を見ている周りのみんなも、苦笑するくらいで許してくれたのは正直に言って助かったと思う。

 ただ、この事が切っ掛けでセシリアの一夏に対するあたりが妙に強くなったし、周りのみんながクラス代表である一夏とコミュニケーションを取る為の出汁として、雑用を押し付けすぎると言う問題が発生して、困っていた一夏を助けるつもりで雑用を手伝っただけだったのに……どうしてこんな事になっているんだか。

 

 俺を追っていた子たちの声が段々と離れて行くのを確認してから、隠れる為に強引に突っ込んだ茂みから抜けだして土汚れや制服に付いた引っかき傷を”聖杯”で直してから、そのまま制服が汚れるのも構わずに近くの木に寄りかかりながら座ってため息をつく。

 

 「お姉さま、ねぇ。……先輩が良いとこ無しで自爆したのは、欲をかき過ぎたせいだろ? セシリアと俺との戦いを見てたのに、本気で勝てると思ってたのかよ」

 

 「……オレだってアメリカ代表候補生のIS乗りなんだから、負ける事なんて考えながら戦わねえよ。機材だって練度だって、常識で考えればこっちの方が上なのは当たり前だろ。何で機材も劣ってて、基礎訓練も終わってない奴らに負けるなんて思えるんだよ」

 

 「そりゃあ、さっき言った通りですよ。それと決闘で負けたからって、当たり散らすのはカッコ悪いと思います。ケイシー先輩。

 ……後、独り言に答えないで下さいよ。聞かれてたと思うと恥ずかしいんですけど」

 

 隠れて逃げられたと思っていたのは実は俺だけで、追い込みを掛けられた上で罠にはまった事を頭の上からかけられた声で気が付かされて苦い顔をしていると、下着が見えるくらいに短く改造した制服を着た、長身で不敵な表情を隠そうともしない金髪の子と、逆にストッキングやタートルネック、更には手袋までして肌を極力晒さないでいる、不機嫌そうな表情を隠そうともしていない長い髪を三つ編みで一纏めにしている小柄な子の二人組がISを使って木の頂上付近からゆっくりと降りて来るが、良く見ればそのISはどことなく煤けていた。

 

 この二人はの名はダリル・ケイシー先輩とフォルテ・サファイア先輩。俺が丁度良いカモだと思って、罠にかけた人たちだった。

 

 「まあオレだって負けたからって、こういう報復をするのはダセえと思ってるよ。

 だけどな、司。こっちにも面子ってもんがあるんだ。あれだけ好き放題やったのに、まさかヤリ逃げってのはねえよな?」

 

 「それにロスチャが相手の時と違って、司は明らかに手を抜いたッス。例のテレポートも使わないなんて、私たちをバカにしてるっスよね?」

 

 「いや、サファイア先輩。テレポートもクソも、二人共俺と美夜とのタッグ戦の開始直後の近接戦闘で、一撃で斬り倒されたじゃないですか。――俺も美夜も格上の国家代表候補生に対して、手なんか抜きませんよ」

 

 俺は目の前の二人がどことなく焦っているのを感じながらも、ここで言質を取られると後でロクな事にならなさそうなので、微妙に声を上ずらせながらも強気な態度を取っているのだが、二人はISを除装した後でにじり寄って来たのだ。

 

 「うんうん、そうだよな。オレたちにも主張はあるし、司にも主張がある。

 オレはそのすれ違いが悲しいんだよなぁ……。だから、オレたち二人と一緒に茶でもシバきに行こうぜ。ちょっと島の外に出るが、特別ゲストも出て来るサプライズパーティーだ。

 ――まさか、嫌とは言わねえよな!?」

 

 「そんなの嫌に決まってるだろ!? 何がサプライズパーティーだ!」

 

 「なぁに、お話するだけで大金が手に入る素敵なパーティーだから良いじゃねえか。

 ……良いだろ司、オレたち色々とヤリあった友達じゃねえか」

 

 座っている俺を無理矢理腕を引っ張って立たせて、そのまま体全体を押し付けるようにしながら肩を抱いて来る。

 至近距離にケイシー先輩の顔が迫って来ているので、俺が素で顔を遠ざけるようにしながら仰け反ると、先輩は微妙に傷ついたような表情をした。

 

 「おい、流石に素でそれをやられると傷つくんだけど」

 

 「すいません。身体が勝手に動くんです……」

 

 「先輩! 司さんに何やってるんですか!? 離れなさい!!」

 

 「あぁん!? 今、大事なお話し……チッ、ロスチャと美夜か。意外と早かったな」

 

 ケイシー先輩が肩を抱いたまま振り返ったので俺もそっちの方向を見ると、怒って眉を吊り上げているセシリアと不機嫌そうにケイシー先輩とサファイア先輩を見ている美夜が俺の方に……いや、サファイア先輩が美夜の方に歩いて行き、そのままガンをとばし始めたが、それを受ける美夜はサファイア先輩を見下すように眺めていた。

 

 「――美夜、月夜の夜は気を付けた方が良いっスよ。なにがあるかわからないっスから」

 

 「ふーん。オバケでも出るのかな? 心配してくれてありがとう。

 ――でも大丈夫だよ。私、強いから」

 

 そう言った後、美夜も冷たい表情でサファイア先輩を睨み始めて、お互いにガンのとばし合いになったのを見たケイシー先輩は、強引にサファイア先輩の襟首をつかんで引きずり始めた。

 

 「フォルテ、止めろ。じゃあな、司。お茶の話はマジだから何時でも連絡くれ」

 

 「待ってくれ。セシリアがロスト・チャイルド(迷子)って言われるの嫌がってるから、止めて欲しい」

 

 「本人次第だ。オレは男にくっついてるだけの奴なんか認めないから、実力を示せってな」

 

 そう言いながら俺のポケットに何かを強引に押し込むと、そのままこちらを振り返らずに肩口の辺りで手を振りながら去って行った。

 ……引き摺られたサファイア先輩は、美夜に対して中指を立てたままだったが、兎に角俺が助かったのは事実だった。

 

 「助かった。ありがとう美夜、セシリア」

 

 「いえ、司さんがあの二人に連れて行かれないで幸いでした。

 でも、わたくしの事を、まだロスト・チャイルド(迷子)って呼んでいるんですね」

 

 「ああ。そうみたいだけど、ケイシー先輩が言ってる事は間違ってるよ。

 実際はセシリアが俺にくっついてるんじゃなくて、俺がセシリアにくっついてるだけだし」

 

 「……そうなんですか?」

 

 「現状がそう言ってるよ。俺の平穏な学園生活は、美夜とセシリアが居ないと成り立たないからな。

 それと美夜も機嫌直せ。あの二人が喧嘩を売って来たのは事実だけど、返り討ちにしてボコボコにしたんだから許してやれよ」

 

 「でも、あいつら反省してない」

 

 「そうだな、俺もそう思うよ。

 ただ、負けた上に俺たちに対して下手に出たら、それこそ国家代表候補生としての面子が無くなるだろうから仕方ない面もあるんだろ。それに不満だって言ってISを持ち出せば、喜ぶのは寧ろあっちの方だし。……後、生身でやり合うのは流石に止めとけよ」

 

 「分かってるよ。手加減間違えて死んだら面倒だし」

 

 「あのね、美夜。わたくしの為に怒ってくれるのは嬉しいですが、その為に誰かを傷つけたらわたくしは悲しいですわ」

 

 「……うん。セシリアがそう言うなら…………分かった」

 

 ちっとも納得していなさそうな表情で分かったと言う美夜の頭を、ため息をつきながら乱暴に撫でると、髪がグシャグシャになっちゃうと言いながらも俺の手に頭を擦り付けるようにして来たので、撫で方を切り替える。

 そのまま丁寧に櫛梳るように撫でていると、俺たちをじっと見ている視線を感じるのでそれを辿って行くと、何故か羨ましそうに撫でているのを見ているセシリアの顔に辿り着いた。

 

 「セシリア、どうした?」

 

 「いえ、何でも無いです……。そうだ! せっかく司さんを助けたんですから何かお礼を下さい。そうですね、折角ですから食堂でスイーツでもご馳走して下さいな」

 

 「助けてもらったし、お礼がそのくらいで良いのなら。まあ、一夏には連絡しとけば大丈夫か」

 

 美夜の頭から手を放してスマホをポケットから取り出そうとすると、無意識なのかセシリアがその手を取って引っ張って来た。

 

 「ほら、司さんも美夜も、つまらない事は忘れて早く行きましょう」

 

 「つまらない事って。セシリアも関係してるんだけどなぁ」

 

 「んー……? うん。まあ、いいか……」

 

 理性ではこの辺で抑えないといけないのは分かっても感情で納得しきれない美夜と、最近のセシリアの距離の取り方がおかしくなってるのを右手の暖かさで感じながら、俺はあの時もう少し上手く出来なかったのかと考えてしまうのだった。

 

 ***

 

 あの時の事を思い返せば、俺がオルコットさんに勝ったけどオルコットさんも偏向制御射撃(フレキシブル)の発現に成功したし、戦闘経験値を沢山得る事が出来ました。

 めでたしめでたし……。何て都合良くは、当然終わる筈もなかった。

 

 何しろイギリスが威信をかけて作り出した第三世代機が、初期化(フォーマット)最適化(フィッテイング)もされてない第二世代の訓練機に手も足も出なかったのだ。

 一応偽装の為の意味深なガラクタを取り付けていて、その結果の超高性能機だと思わせる雑な細工はしていたが、それで相手が納得する訳がない。

 面子を潰されたイギリスが、オルコットさんの処分を決定するまでに手を打っておく必要がある。パーティー中にその事について考えていると、丁度いい有名人が乱入してきた。

 

 俺に体を擦り付けるように近づいてきて、挑発的な笑みを浮かべるのは三年の専用機持ちのダリル・ケイシー先輩で、後ろには二年の専用機持ちのフォルテ・サファイア先輩。

 ……今からやる事と後々の事を考えると、後で絶対に揉め事になるのは分かっていた。それでも必要な事だと覚悟を決めて演技を始める。

 まあ体を擦り付けられて逃げ場が無くて、助けを求めたのは本気だったのだが。

 

 「ちょ、待て!? 助けてくれ、オルコットさん!」

 

 まあ、こう言う時に助けを求めるのも、いつもの事と言えば何時もの事だった。美夜は安易に助けを求める俺に不満のようだが、クラスの中では結構がんばってるので勘弁して欲しい。

 それに下着が見えるくらいに短く改造した制服を着て、俺に張り付いて来るケイシー先輩の方がどう考えたって悪いのだ。

 ただ今回は今までとは違って、オルコットさんがささやかなお願いをして来た事が違っていた。

 

 「これからずっとセシリアって呼んでくれたら、助けてさしあげますわ!!」

 

 その瞬間、ほんの少しだけど思考が止まった。たかが呼び名を変えるだけで別になんて事は無い筈なのに、オルコットさん……いや、セシリアの顔を見て、それ以上の意図があるのではないかと思わず勘ぐってしまったからだ。

 まさか、なぁ……。緊張しているのか硬い表情をしているセシリアを見ながら考えていると、ケイシー先輩が急に動きが止まった俺を不思議に思ったのか、とんでもない事を言い始めた。

 

 「マジで女が苦手だったのか。もしかしてホモか?」

 

 真顔でケイシー先輩がツッコミを入れてきて、それを聞いていた周りから黄色い悲鳴のような声が上がっている。いや、みんな違うから!? そんな腐ったワードに反応しないでくれ!

 

 「ふざけんな! 入学初日から散々彼女がいるアピールしてるのに、何で男に転ばなきゃいけねぇんだよ! 喧嘩売ってんのか!?」

 

 「そうだ、喧嘩を売りに来たんだよ。お前面白そうだしな」

 

 そう言って俺を見ながらケイシー先輩が獰猛な笑みを浮かべるが、一転して俺を助けようとしてくれていたセシリアの方を見て、バカにしたように見下して来た。

 

 「で、お前がロスト・チャイルド(迷子)か。男性IS搭乗員なんて超エリートが優遇してるのが、街中で見つけた迷子女とはね。体で媚でも売ったのか?」

 

 その発言に俺も切れかけたのだが、それ以上に本気で怒ったのが美夜だった。

 思わず力の加減を間違えたのかコップを握りつぶして割ってしまい、みんながギョッとしている所に殺気を撒き散らしながら、人間には反応できないスピードで飛び込んだ。

 そしてそのまま、ケイシー先輩の首を掴んで片手で吊り上げたのだ。

 

 「見て分からない? 私たちは楽しくパーティーしてたの。空気が悪くなるから邪魔しに来たならさっさと帰って欲しいし、何で初対面のお前なんかに友達のセシリアをバカにされなきゃいけないのかも分からない。――そんなに喧嘩が売りたいなら、司より私が高く買ってあげるよ」

 

 そう言って話を一方的に終わらせた後、そのままケイシー先輩を放り投げた。

 

 「お帰りはあちら」

 

 「ふざけるなっス! ここまでされて逃げ帰るとでも思ってるっスか!」

 

 そう言って今度はサファイア先輩が激高したが、正直、喧嘩売りに来て返り討ちにあったからって逆切れされてもな……。と言うのが俺の感想なのだが、何とか俺の想定した流れに持って行くことが出来た。

 その後は俺とケイシー先輩との決闘に持ち込めれば良かったのだが、友達をヤられた美夜とサファイア先輩が両方納得出来なくてタッグ戦となってしまったのだ。

 ……まあ、色々と計算違いの所も出て来たが、後は勝つだけだ。

 

 結局、先輩たちの乱入でパーティーが滅茶苦茶になってしまったので、そのお詫びとして俺がみんなのお願いを出来る範囲で聞くと言う事にして泣く泣く場を収めた。

 美夜やセシリアだけじゃなくて、クラスのみんなにも大分協力してもらっているからそのお礼と言うのは別に良いのだ。ただ、添い寝だとかお泊りでデートとか、俺の許容範囲を楽勝で超える不穏なワードが聞こえて来るのは胃が痛くなるので勘弁して欲しい。

 

 で、もうここまで来ると立派なイベント扱いである。

 一組のみんなの協力と簪さんに頼んで四組の協力を得て、ISの使用許可とかアリーナの使用許可なんかをどうにか誤魔化して、訓練用ISの使用許可もまだ取れない筈の俺と美夜(新入生)対、ケイシー先輩とサファイア先輩(国家代表候補生)との決闘(タッグ戦)が成り立つ事となった。

 

 「美夜、前にも説明したけど永遠神剣を使う。概念破壊で一撃で落とすぞ」

 

 「うん。話は聞いてたけど、あの二人完全にかませ犬扱いだね。

 ――私はケイシー先輩を狙うから、サファイア先輩はお願い」

 

 「分かった。――とにかく派手に勝利を印象付ければそれで良いんだ。行くぞ」

 

 そしてどう考えても無謀でしかない、ラファールと打鉄vsヘル・ハウンドとコールド・ブラッドの試合は、僅か五秒で終わったのだった。

 

 ***

 

 最後の仕上げとして、俺たちのやらかしを見て本気で怒り始めた織斑先生に頼んで、IS学園から通達を出してもらった。

 

 専用機持ちで俺と美夜が最優先で戦うのは、イギリス代表候補生のセシリア・オルコットのみ。又、それに対しての異議、申し立てが俺と美夜に出来るのは日本代表候補生の更識簪のみ。

 

 ぶっちゃけると、イギリス製の第三世代機が弱かったんじゃない。俺たち自身が強いんだと証明したかったのだ。

 だからセシリアを辞めさせるな。後、日本は簪さんの機体をとっとと作れと言外に要求したのだ。

 その代わり、これを飲めば戦闘経験値を取り放題だぞ、と。

 

 一応これが成功して、イギリスからはセシリアがお咎めを受けることはなかったし、通達を出した次の日には、倉持の技術者が大勢やって来たのだ。

 最後に、大っぴらにやると問題になるらしくて非公式にだったらしいが、打鉄弐式の専属技術者だった人たちが簪さんに謝っていたようだった。

 

 このせいなのか簪さんも、少しスッキリした表情をしていたから成功だったら良いのだけど。

 

 兎に角これが、俺と美夜で出来る二人に対する精一杯のサポートだった。

 

 ***

 

 「面白い情報があるんだけど、聞く~?」

 

 この子は、のほほんさんと一夏は言っていた。一夏と仲が良くて、その縁で俺とも自然と話すようになった。そして意外と情報通だ。

 

 「ケイシー先輩とサファイア先輩の国のお偉いさんが、学園に圧力をかけたんだって~。私たちのクラスに編入させろって。あれって、意図的な抜けが作ってあったでしょう~?」

 

 それで焦って俺を狙って襲撃したのか。そう思いつつ、俺は困惑した表情を浮かべた。

 

 「あれは俺と美夜の我儘で一夏と戦えないのはおかしいって事で、授業中の事に関しては何も書かなかったんだけど、まさか……」

 

 「二人を一年一組に編入させろって言ってきたみたいだよ~? 本当に来たら、下がる女と呼んであげよう~。後、かんちゃんを助けてくれてありがとうね」

 

 「いや、止めてやれよ。ああ、うん?」

 

 ……かんちゃんって、誰だ? そう思って声を掛けようとすると、のほほんさんは言いたい事だけ言ってフラフラと一夏の方に行ってしまった。

 色々と学園内の話に詳しくて俺にも親切にしてくれるが、のほほんさんは本名も含めて相変わらず謎な女の子だった。

 

 ***

 

 千冬Side

 

 「司、美夜、お前らの想定通りにデュノアが引っかかった。司が使っていた、はぐれメタル号は不良品だから引き取ると。

 代わりに今までのお詫びとして、ラファールを二機納品してくれるそうだ」

 

 私の話を聞いて司が満足そうに頷いていがこいつも中々に曲者で、コミュ障なんて表面上だけで侮っていると大火傷しそうだった。

 

 「先生までその名前知っているんですか。しかし二機か。三機は引っ張れると思ったのに、デュノアのけちんぼめ」

 

 因みに、素早くて経験点がたっぷりだからはぐれメタルらしい。布仏が命名したそうだ。

 

 「不良品の回収とお詫びの体裁は取っているが、アラスカ条約違反スレスレだぞ。ここまでしなくとも……」

 

 そう言うと、司は眉をひそめた。

 

 「訓練機が足りないから苦肉の策ではあるんですよ。この規模の学園で、訓練用のISが三十機しか無いって最初は冗談かと思いましたし。

 まあ、元の数が四百六十七機しか無いから仕方が無いとは思いますが」

 

 そう言って司はため息をついているが、それに関しては私も同感だ。だが、教師としては出来れば反対をしたかったんだ。

 

 この二人は一年一組と四組を優遇している。オルコットと更識は別格扱いで一夏とは仲が良いし、篠ノ之とも仲が良い。ただし、問題児だ。

 入学式当日に男女問題で私に説教されたのに、半月もしない内に国家代表候補生のケイシーとサファイアとイザコザを起こして決闘騒ぎを起こしている。

 詳しく聞けば、オルコットと同室の更識を助ける為だと私に頼み込んで来たので協力したが、その陰に隠れて犯罪スレスレの行為を平然と行っているのを見ていると、手伝った私が言うのも何だが本当に大丈夫かと不安がよぎる。

 ……まるで私の友人を見ているようだからだ。

 

 だから私はカマをかけてみた。

 

 「で、だ。お前たちは()だ」

 

 二人はお互い目配せをして、そして司はこう言った。

 

 「エターナル。ロウ・エターナルの”聖杯”の司」

 

 「同じくロウ・エターナルの”絶炎”の美夜です」

 

 困惑する事を言われた。

 

 何? そう聞くと、篠ノ之束博士と連絡が取りたいと言って来た。我々が意図して無かったとは言え、この分枝世界を無意味に混乱させた事に対して謝罪したいと。

 

 「なぜ束なんだ」

 

 「あの人は、この分枝世界の支配者ですから。他はともかく、あの人の機嫌だけは損ねたくない」

 

 そう言って、二人は私のもとから去っていった。

 

 千冬Side out

 

 ***

 

 束Side

 

 ちーちゃんから連絡が来て、良く分からない事を言われた。ちーちゃん自体分かってないのだろう。相手は白子と貞子。特に貞子は、ちーちゃんに勝ったクソだ。

 ちーちゃんに勝ったのを見てから適当に監視していたが、いっくんと箒ちゃんと仲良くしている。

 特に箒ちゃんがいっくんを好きだと分かると、二人で色々と協力し始めた。悔しいけど、あれは私には真似出来ない。

 

 ぐぬぬ……

 

 さらに監視すると、ラファールでブルー・ティアーズに勝った。相手が弱かったのかとデーターを見たら、物理的にありえない情報が出て来た。

 慣性を無視して瞬間移動!? しかもシールドバリアーを貫通して、一撃で第三世代機を撃破している。

 ……何だこれ? 機体に如何にも急造で取り付けたような一斗缶が付いていて、適当に開けたようにしか見えない穴から光が漏れている。――え、まさかこれでやってるの?

 それに、ただの訓練機で何でここまで出来るの!? 悔しいけど私にも分からない。分からないからデュノアに送られるらしい機体をかっぱらおう。情報が何か残ってるかもしれないし。

 

 そして、意味不明の言葉の羅列……。ロウ・エターナル、聖杯、絶炎、分枝世界――

 

 「もしかしたら、宇宙人なのかもしれない!」

 

 さすがにちーちゃんでも、宇宙人には勝てなかったのだろう。世界最強でも、宇宙最強じゃないからね。

 

 「ふふふ。つかちゃんと、みゃーちゃんか」

 

 今度、会いに行こう。宇宙人に会うのが、今から楽しみだ。

 

 束Side out

 

 ***

 

 夜中に屋上に上がって、ベンチに寝転がりながら月を見上げる。だんだんと暖かくなって行くのが、肌で分かって気持ち良い。

 

 「こんばんは」

 

 俺が悩んだり寂しくなると、必ず相手をしてくれるよな。いつもありがとう。そう思って美夜を見上げると、月の光に照らされながら優しく微笑んでいた。

 

 「交信の世界で本になってたからって、イコールここの人間が本の登場人物な訳ないのにな。

 最近セシリアの距離の取り方がおかしくなって、どうしていいか分からなくなった。折角できた大事な友達なのにな」

 

 「本当は分かってるくせに。見てたら分かるよ、セシリアは司が好きなんだって」

 

 「……セシリアは美人だし、優秀だし、金持ちだし、性格だって良い。なのに、よりによって俺とか趣味が悪すぎる。

 俺だって男だ。あんないい子に好かれて悪い気はしない。……だけど俺は人間じゃ無い、エターナルだ」

 

 俺の悩みを聞いて、最初に美夜がしたのは苦笑だった。

 

 「セシリアが性格良いのは、司の前だけだよ。織斑くんでまあまあ。他の男なんて、木石扱いだからね」

 

 「ははっ……。別に大した事してないのに、随分好かれてるんだな」

 

 「うん、そうみたいだね」

 

 俺は月と美夜を見上げながら想いを口に出して言うが、美夜はそのまま黙って聞いていてくれた。

 

 「本を読んだのが交信の世界があった頃、もう五百年も前の話だ。あのころに比べて俺は努力して色々出来るようになったし、エターナルに成った事に後悔なんて無い。だけど万が一、セシリアが泣く事になったら何か嫌だな」

 

 「私も嫌だけど、じゃあどうするの?」

 

 「うーん……。美夜とイチャイチャしてれば良いんじゃないか? 告白されなきゃ仲の良い友達で終われるだろ」

 

 「悩んでた割には、答えが適当。……まあいいや。司がそれで良いなら私も気楽だし」

 

 「他にどうしようもないからこれで良いんだよ。エターナルって言っても神様じゃないんだから、全ての人に都合の良い答え何て出せないしな」

 

 そのまま美夜はズリズリと俺の頭の方に体を割り込ませて、黙って膝枕をしてくれる。

 お互い特に話とかをする訳では無く、昔のようにただ寄り添っているだけだったが、それが少しだけ懐かしい気分にさせてくれた。

 

 

 

 

 




束さんってこんな感じで良いのかな?

天才じゃ無いから分からない。




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