901分枝系統 80013世界 02795726時間断面 ISの世界 【改定作業中/第一章完結】   作:白鮭

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旧:鈴はクンフーが足りないと思う。
後半部分が書き直してあります。


第四世代機と最強の存在

「か、帰って来た……」

 

ニンジンロケットに乗って、ようやくIS学園近くまで戻ってこれた。束さんは戻って欲しくないと駄々をこねるし、クロエは寂しそうにしてるし、多大な精神的ダメージを受けてようやく戻って来たのに、これから織斑先生に帰還の報告をしなければならないのである。お仕置きがありそうですごく行きたくない。

 

夜の道を二人で並んで歩く。学園内の敷地に直接降りるのは、束さんに必死に頼んで遠慮してもらった。せめて次の日の朝になるまでは、現実逃避していたいのだ。

 

「これから織斑先生に報告で、明日はわびおねの打ち合わせかよ。畜生、直行で部屋に行って引きこもっていたい」

 

「がんばれ、私も一緒だし……後ろから二人付いて来てる。束さんの所でやってた事がバレたかな?」

 

俺は嫌そうに顔をしかめる。

 

「もうかよ、監視衛星はスルーしてたんじゃないのか? ……やるか」

 

「一応声をかける。ダメだったらやっちゃおう」

 

俺にしても美夜にしても、束さんの無茶振りで精神が物凄く疲労していた。悪い人じゃ無いんだけど、束さんは俺にくっつき過ぎである。

普段は余裕の表情の美夜も、余りにも束さんが俺に色々押し付けているのを見せ付けられていたから、だんだんイライラしてきて最後は少し怖かったし。

 

ストレスと疲労のせいで、この時の俺と美夜は何かやさぐれていた。そうでもないと、普通こんな事はしなかっただろうし。

 

少しの間黙って歩く。付いてくるのが確実だと思われると、急に美夜が振り返ってドヤ顔をしながら、相手に指を突き付ける。

 

「ここから先はIS学園しかないよ。今なら見逃してあげるから、とっとと帰りなさい!」

 

「…………デートの邪魔したのは謝るから見逃してくれない? 私たちも学園に用があるし」

 

小柄な女の子二人が微妙な表情をしながら立っているのを見て、美夜は真っ赤になって二人から目を逸らした。

いつも余裕を失わないようにしている美夜がした、些細な失敗で顔を赤くしている所を見て、ちょっと可愛いと思ってしまった。

 

***

 

三人はすぐに馴染んだみたいだった。お喋りしながら並んで歩いていて、俺は少し離れて後ろから付いて行く。

一人は凰鈴音、中国代表候補生。確か原作の主要キャラクターの一人だったと思う。

もう一人は凰乱音。凰鈴音の従妹だと言う台湾代表候補生……いた、か? 立ち位置的に重要人物っぽいし、多分いたと思う。そんな事を考えながら後ろを歩いていたら、乱音さんが声をかけて来た。

 

「そんな所で一人で歩いてないで、こっちに来たらどう? 私たちみたいな美少女が三人もいるのに、入ってこなくて良いの?」

 

「ああ、そうだな……」

 

知らない女の子が二人もいて、どうにも中に入りづらい。そう思っていたら美夜が俺の腕を抱え込んで、強引に二人の方に連れて行かれてしまった。

 

「美夜、俺はこう言うのは苦手なんだけど」

 

「知ってる。でも慣れないとダメだから」

 

そう言って、美夜はさらに腕に力を込めて来た。学園に入学してから、美夜はこういう態度を取らなかったから少し驚く。美夜も照れているのか顔が赤くなってるし。

 

「……束さんにベタベタされて、すっごくにやけてた。綺麗だしスタイルも良いけど、誘惑されたらダメだからね」

 

「いや、別に俺h「駄目だから」」

 

「はい、ごめんなさい」

 

美夜の態度と表情から、美夜の事を傷つけてしまったと思い反省していた。束さんが俺に本気になるなどあり得ないと思うのだが、美夜が気にしている以上は注意しておこう。

そして束さんと浮気をしたと思われた俺に対して、尋問が始まってしまう。尋問管は凰乱音、容赦は期待出来ないだろう。

 

***

 

「容疑者は二股をかけた。死刑」

 

「冤罪だ!? 確かに束さんは、俺にくっついてたけど……多分、俺に興味があったんだと思う」

 

「何が冤罪よ! 女の敵! こんなに綺麗な子が気に入らないとか、贅沢過ぎて人誅を下すわよ!!」

 

「それただのリンチだから!? 仕方が無い、訳を話す。他の奴には秘密にしておいてくれよ」

 

「犯罪者のくせに偉そう。まあ、言い訳は聞いてあげるわよ」

 

仕方が無いので、束さんの所で過ごしていた事を話す。場所も俺たちの正体も、束さんの目的も話さなかったので随分嘘くさい感じに仕上がったが、それでも何も知らない二人からしたら驚きの話だったらしい。

 

「それで篠ノ之博士に認められて後ろ盾になってもらって、一緒に研究する事にしたって事? そう言う裏話があったんだ。参考になるけど……」

 

「束さんは人の選り好みが激しいから、役に立つのかどうか分からないよな。そもそも逃げ回ってて捕まらないし」

 

乱音さんは俺の話を興味深そうに聞いていたのだが、鈴音さんは胡散臭そうに俺を見ながら質問して来る。

 

「その話、何か証拠とかあるの? そう言う話って、大抵お土産とかもらうって言うのが相場だしね。玉手箱とか大きなつづらとか」

 

何でその品を選んだのか激しく聞きたかったが、絶対に口では勝てなさそうなので止めておく。

 

「あー……ISを貰った。IS”聖杯”とIS”絶炎”って言う機体。束さんは、第四世代機だって言ってたけどな」

 

そう言うと、さらに鈴音さんの目つきが鋭くなって来た。

 

「第四世代機って、いい加減な事言ってるんじゃないわよ! 各国で試行錯誤してるのが第三世代機なのよ!?」

 

「それは知ってるし、その事を俺に言われてもな。文句は束さんに言ってくれ」

 

全部本当なのに、傍から聞いたら嘘くさく感じてしまうのは仕方ないと思う。神秘が存在しないこの分枝世界で、俺たち(エターナル)より嘘くさいものなど無いと思うが。

 

「じゃあ、その第四世代機を私が試してあげるわ! 私は中国代表候補生、凰鈴音よ!!」

 

そう言った瞬間、鈴音は右腕部分のISを部分展開して、量子変換(インストール)されていた青龍偃月刀で斬りかかって来た。

時詠みで見ると、ギリギリで刃を止めるのは分かっているので俺は落ち着いているし、万が一直撃されてもオーラフォトンを抜けないから問題は無い。

ただ鈴音さんは中国代表候補生のくせに、喧嘩っ早いにも程がある。脳筋と言うか、感覚で生きてると言うか……だけどこういうアホの方が女の子らしく無くて、友達として疲れないかもしれない。

 

それに鈴音さんは期待しているみたいだし、本邦初公開の第四世代機を見せてあげよう。お代はちゃんと取るけどな。

 

エンジェルハイロゥとウイングハイロゥ、それとIS”聖杯”を同時展開。法の迷宮で”虚空”を作り出して青龍偃月刀と刃を打ち合わせるが、そもそも武器の質が違い過ぎる。

 

キン…………

 

空間ごと青龍偃月刀を半ばから斬り飛ばすと、澄んだ音を立てて切り離された上半分が、アスファルトに落ちて一転して重い音を立てた。そして、そのまま”虚空”を鈴音さんの首筋に突き付る。

 

「はい、紹介おしまい。織斑先生に帰還の報告しないといけないから、早く学園に行こう」

 

展開していたもの全てを格納して元に戻る。鈴音さんが未だに呆然として動かないので周りを見ていると、美夜は苦笑しているし、乱音さんは、鈴音さんと切り飛ばした青龍偃月刀を引きつった表情で見ていた。

 

「喧嘩を売って来たんだから、お代として鈴音さんのプライドを貰ったよ……大丈夫か?」

 

全然動かないので、流石に心配になって…………軽く肩に触れて、ゆさゆさと揺すると、鈴音さんが再起動を果たした。

 

「だ……大丈夫な訳ないわよ! どうすんのよ!? IS学園にまだ着いてないのに、双天牙月壊れちゃったじゃない!! や、(ヤン)候補生管理官に怒られちゃう」

 

鈴音さんが落ち込んでしまったのだが、追い打ちをかけさせてもらう。

 

「そんな事を俺に言われても。状況を見れば100%正当防衛が成立するし、ついでに国際法違反も追加されるぞ。がんばって生きろ」

 

「追い打ちかけるの止めてよ!? うう、どうしよう……」

 

実は俺もISを展開したから国際法違反なのだが、やっちまったものは仕方が無い。織斑先生に怒られる程度で済めば良いと思って内心でドキドキしていると、気を取り直した鈴音さんが俺に声をかけて来た。

 

「……あんた、名前何て言うの? 私は凰鈴音。鈴って呼んで」

 

鈴が自己紹介をして来たのでそれに答えようと思ったら、乱音さんが呆れたようにツッコミを入れて来た。

 

「何良い話にしようとしてるのよ、負け犬おねえちゃん。相手の話を一方的に否定して喧嘩を売って、ボロ負けするって見てて恥ずかしいよ? 私は凰乱音です。乱って呼んでね」

 

乱が乱入してきて、今までの雰囲気を打ち消そうとしていた、鈴の目論見が台無しになってしまったみたいだ。その事が原因で二人が言い争いを始めてしまったけど、普段から仲が良いのだろう。

じゃれ合っている様にしか見えない。じゃれ合いに夢中になっていて気が付かないかも知れないが、一応俺も自己紹介をしておく。

 

「聖司だ、司って呼んでくれ。美夜と一緒の苗字だから、学園内では名前で通ってる」

 

「よろしく、司」

「よろしくね、司」

 

一応は聞いてはいたらしい。

 

「次は絶対に負けないわ。首を洗って待ってなさい」

 

「ああ、鈴は知らないのか。俺と美夜はイギリスと協定を結んでいて、専用機持ちの場合は、イギリスと日本としか戦わない事になってるから再戦は無いと思うぞ。さっきのだって、正当防衛と油断してた鈴が一方的に負けただけだから、戦いになってないしな」

 

「ふざけんじゃないわよ!? 勝ち逃げなんて、許さないんだからね!!」

 

乱とじゃれ合いながら鈴が俺に再戦を求めて来たのだが、これは一回だけのサービスだから次は無い。悪いが俺の勝ち逃げにさせてもらう。

俺たち四人はそんな事をしながらIS学園の門をくぐった。俺と美夜にとっては、帰って来たって感想だったのだが。

 

***

 

楊Side

 

「……で、双天牙月を壊したと」

 

「はい、(ヤン)候補生管理官、申し訳ありませんでした!」

 

今日IS学園に転入する予定だった凰鈴音代表候補生から、信じられない報告が届いた。先日世界中を駆け巡った情報、篠ノ之博士の協力者である聖司、聖美夜両名と偶然遭遇して、ISによる戦闘を仕掛けたと言うのだ。

天才的で能力は高いのだが、天才特有の感覚で生きている所のある、凰鈴音代表候補生は私の頭痛の種だったのだが、今回の事に関しては大金星を挙げたと思う。

 

「きちんと双天牙月は回収していますね? それと……」

 

今後の予定を話そうとしたら、候補生の様子がおかしい。まさか……

 

「凰鈴音代表候補生、きちんと双天牙月の残骸は回収したのでしようね?」

 

「アハハ……済みません、忘れました」

「すぐに回収してきなさい!! 早急に準備を整えますから、私が連絡をしたら工作室(セッティング・ルーム)に来て下さい。新しい双天牙月の搬入と、甲龍から戦闘情報の回収を行います」

 

「はい、分かりました。今回の件は申し訳ありませんでした」

 

「反省しているようなので、今回の件は不問にしておきます。凰鈴音代表候補生も自重するように」

 

「はい、分かりました。凰鈴音代表候補生、これより双天牙月の残骸の回収任務に就きます」

 

凰鈴音代表候補生との通信を終了させた後、各方面に連絡を取り始める。候補生は幼馴染である織斑一夏と再会するのを楽しみにしていたようだが、その前に中国代表候補生としての仕事をこなしてもらわなければならない。

 

偶然とは言え、篠ノ之博士が作った第四世代機の情報を手に入れた上、シールドバリアーを貫通して装備を破壊する……機体を破壊しうる単一仕様能力(ワンオフ・アビリティー)の情報まで手に入れたのだ。双天牙月一本の犠牲で、随分と大物を釣り上げたものである。

 

私の権限では、残念だがここまでだ。後の情報収集は凰鈴音代表候補生に期待しよう。候補生に口に出して言ってしまうと、調子に乗って失敗しそうだが。

 

楊Side out

 

***

 

乱音Side

 

初対面での印象付けは多分成功したと思う。おねえちゃんが割って入らなければ、友好的に話を終えられた筈なのに。ISで脅しに行くとか、我が姉ながら何を考えているか……まあ、司はあんまり気にしてなかったみたいだけど。

 

「私の任務の重要性が凄く高くなった。篠ノ之博士も自重してよ、第四世代機とか聞いて無い……」

 

ターゲットの司と美夜に偶然会ってから何かの参考になるかと思って、ISでデーターを取っていたのが役に立つとは思わなかった。ほとんど何も分かっていない、篠ノ之博士関連の情報も手に入ったし、何より司のISの実働データーが手に入ったのが大きい。

 

「おねえちゃんが手も足も出ないとは思わなかった。量産機で専用機を落としてたのは、実力だってハッキリしたけど……私と戦闘訓練して欲しいなぁ」

 

あれが実戦なら、おねえちゃんは為す術もなく落とされていた。実力が違い過ぎて現実逃避したくなるレベルだけど、だからこそ私は司と戦いたい。

 

「取り敢えず劉さんに報告しよう。後はダメ元でイギリスと交渉してもらって、司と訓練出来るようにしてもらわないと。多分ダメだがら、私も司にお願いしに行くけど」

 

おねえちゃんと一緒に学園に通って訓練すれば強くなると考えていた私は、校門をくぐる前に消え去ってしまった。IS学園には、どうやら最強が存在するらしい。

 

乱音Side out

 

 

 

 

 

 

 

 

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