901分枝系統 80013世界 02795726時間断面 ISの世界 【改定作業中/第一章完結】   作:白鮭

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旧:獰猛なガールズトークが現れた!! 全面改訂


大切な人の為に

全く、何しに来たんだあいつらは……

 

乱は昨日、シャルルは今日会ったばかりなのに、いきなり寮の部屋を替えてくれとか訳が分からない……とも言えなかった。

ヒントはデュノア。俺が一時期使っていたはぐれメタル号の代わりに、二機訓練機を送って寄越した気前のいい会社なのだが、最近業績が悪化していて逆転のチャンスを俺に求めて来たのかも知れない。

 

そう考えれば、台湾代表候補生の乱の目的も理解出来る。うちのクラスの子が、お茶会を開いたのと同じ理由としか思えなかった。

 

「代表候補生だからって、直接交渉って言う抜け駆けされると後が怖いんだけどな。全員が同じ事しだしたら収拾がつかなくなるし……あの二人には、お仕置きする必要があるかな?」

 

だがIS聖杯を使って戦うと、二人に対してご褒美になってしまうと言う罠が存在していた。そして万が一ケイシー先輩辺りに詳細が流れると、お仕置きを求めて俺に突撃して来るだろうし。

そんな風に二人のお仕置きの事を考えながら、恐る恐る簪さんの方を見るとまだ怒っているらしくて、重くて底冷えするような雰囲気を発していた……俺が比較的冷静さを保っているのは、簪さんが激怒しているからと言うのもある。

 

「簪さん、一緒にお茶しよう。あいつらは追い出したし、外野の言う事を一々気にしてたら生活出来ないよ」

 

現状の不自然さには目を瞑り、簪さんの機嫌を直す事に全力を尽くす為にキッチンへ向かう。その間に簪さん好みのネタを一生懸命考えていたのだった。

 

***

 

「落ち着いた?」

 

「はい……司さん、すみませんでした」

 

簪さんの話す事を相槌を打ちながら聞いていたら、段々と落ち着いて来てくれた。普段大人しい子を怒らせると、大爆発する事が分かったのは収穫だった。今後に生かそうと内心ため息をつく。

 

「あの……司さん。あの人たち、何しに来たんでしょうか? 理由が分からなくて少し怖いです」

 

「二つ考えられるけどな。一つはフェミニストと女尊男卑主義者のコンビが、大人しい簪さんを救おうとやって来た。

この学園に来て初日だから俺の事を知らなくて当然だし、年頃の男女を同じ部屋に住まわせるなんて事してるのがバレたら、俺も簪さんもただじゃ済まないからな。やり方はおかしいけど、やってる事は正しいと思う」

 

簪さんは俺がこの状況を良く思っていない事を分かっているらしくて、表情が硬くなってしまった。それと乱に関して言えば、帰り道の夜に話した限りだとそんな風に見えなかったから、多分違うとは思うけど。シャルルだって男装女子だし。

 

「だけど少なくとも乱は、俺たちが帰って来た夜に話した限りじゃそんな風に見えなかったから、もう一つの方のスカウトだろうね。フランスは欧州連合との仲が良く無いみたいだし、台湾は……色々あるんじゃないかな?」

 

”聖杯”のサーヴァントシステムで、シャルルと乱の情報収集を集めると、表向きの物はすぐに出て来た。

 

二人共代表候補生で、フランスは独自規格に……と言うか、技術力が無くてイグニッションプランから除名されているし、台湾は中国の干渉に悩まされているらしい。まあ、両方とも欲しいものが分かりやすいし、ログ領域にアクセスして詳しい情報を抜くまでも無いだろうな。

 

「……司さんは…………そんな扱いで良いんですか? あの二人は司さんの事を無視して、篠ノ之博士の事を見てるだけじゃ無いですか!? ただ技術とISコアだけしか見ていないなんて、司さんの事をバカにしてます!!」

 

簪さんは全部を納得してはいなかったのだろう。俺の推測を聞いて、怒りの熾火にまた火がついてしまったようだ。簪さんは自力でISを組めるくらいに知識があるから、今のフランスの事を知っているだろうし、日本に住んでいれば中国と台湾の関係もある程度は分かる。

二人の態度と俺の扱いで悔しそうにしてくれているが、束さんの後ろ盾を得ると言うのはそう言う事だと思っていた俺は、簪さんの態度を有難く思っていた。

 

「簪さん、俺の為に怒ってくれてありがとう。でも、束さんに関わって生きて行くってそういう事だから」

 

「…………そうですね。私も司さんをスカウトしたかった一人ですから、二人の事について何か言う資格は無いですもんね。でも、司さんは私にとってはヒーローですから」

 

「そうか。じゃあ、簪さんの期待に答えられるようにしないとな。しかし、俺がヒーローねぇ……間違ってもそんな柄じゃ無いんだけど、近しい人を守れるならそれも良いかもな」

 

ロウ・エターナルとして生きて行く事を決めている俺が、人間のヒーローって言うのは何の冗談なのかと思うが、身近な人のヒーローになるのなら問題無い。

 

「あ……あと、今度から簪って呼んで下さい! …………セシリアの事が羨ましかったんです」

 

「お? おお、分かった簪。じゃあ、そろそろいい時間だから夕飯でも食べに行こうか」

 

「はい、行きましょう!」

 

そう言って機嫌が直った簪と夕飯を食べに行くのだが、実はこれが簪の遠回しな告白なのかも知れないと言う考えに至って冷や汗が出て来た。

食事を終わった後も鼻歌を歌いながら機嫌良くしていて、俺を見て赤くなったり、何か行動が可愛くなったりしているけど普段通りだと思おう。

 

一夏の事を偉そうに言えないよな……

 

嬉しそうにしている簪を見て、内心頭を抱えていたのだった。

 

***

 

次の日の朝、教室に入ると一夏の頬に紅葉が張り付いていた。

 

「おはよう、一夏。その紅葉はどうした。もしかして篠ノ之を襲ったのか!?」

 

「何で嬉しそうなんだよ! 鈴にひっぱたかれた。昨日部屋に乱入してきて、部屋を変われだってさ」

 

そこで何故鈴が出て来るのかが分からないので聞いてみたら、セカンド幼馴染とか言い出した。乱の件もあったので数字で人を呼ぶのは良い事じゃ無いとは思ったが、一夏の癖なのなら仕方が無いのか?

 

後、俺に流れ弾が飛んで来そうなので、聞きたくは無いが疑問に思った事を聞いておく。

 

「それで、部屋を替えたのか?」

 

「ああ、シャルルとな。男同士だから気が楽だ、部屋が変わって良かったぜ」

 

……一夏は良いのかも知れないが、この流れは俺にとって非常によろしく無い。何故なら、篠ノ之が俺に向かって飛んでくるであろう案件だからだ。それとシャルルが男装女子だとバレたら、絶対にろくでもない事が起こる。

 

そう思っていたら、早速厄災がすっ飛んできた。

 

「司、昼休みに顔を貸して」

 

怒りに充ち満ちた表情で、一夏を睨みつけている鈴が一方的に約束を取り付けて、自分のクラスに帰って行ったのだ。篠ノ之じゃない事に疑問を持ったが、鈴にしたって昨日のお昼に話を聞いて、今日厄介事を持ち込むとか止めろと言いたい。

だけどあの状態の鈴と話すのは嫌だが、怒りが飛び火するのはもっと嫌だ。昼にドナドナされる子牛の気持ちで食堂に行くと、鈴と篠ノ之と乱とシャルルが待っていた。

 

「何なんだ、このカオスな面子は?」

 

「良いから座って。司に頼みたい事があるのよ」

 

怒りが収まったみたいだが、それでも何かイライラしている鈴と篠ノ之と、気まずそうにしている乱とシャルルと言う集団なのだ。嫌々ながらに席に座ると、鈴が俺に頼みごとをして来た。

 

「一夏の訓練の相手を決めたいの。私か箒なんだけど、司が判断して」

 

「そんな事二人で決めろよ、俺が決める事じゃ無いだろ。そもそも何で一夏に言わないんだ、一夏本人の事だろ」

 

「……いや、昨日アリーナでどっちが教えるかで喧嘩になって、二対一で一夏をボコボコに…………一夏本人は自己主張しなかったから、一夏の面倒を見ている……司……にと…………」

 

篠ノ之が小さくなりながら、途切れ途切れに言って来る。鈴は視線を逸らして俺を見ない様にしているし、そんな様子の二人を乱とシャルルは白い目で見ていた。そして聞いていて俺も呆れてしまった。いくら何でもこの二人は相性が悪すぎる。

 

「お前ら何やってるんだよ……まあ良いや。俺に丸投げしたんなら、後で文句は受け付けないからな。鈴、一夏の面倒を見てくれ。ただし指導に問題があったら、変わってもらう事もありうるけどな。これで良いか?」

 

俺の言う事を聞いた瞬間、鈴は得意げな表情になってガッツポーズを決めているが、納得が行かなかったのは篠ノ之だろう。

一夏との事を俺は応援しているし、今回も自分が選ばれると思って俺に決めさせたのだろうが、生憎IS関連はそうもいかない理由があった。

 

「司! 何でだ!?」

 

「文句は受け付けないって言ったのに、もう反故にするのか? 鈴が代表候補生で専用機を持っていて、篠ノ之はISを持ってないからだ。

選択肢を増やしたとしても、俺と美夜は協定で無理だしな。セシリアは訓練中で自分の事で精一杯だと思うし、簪に頼む訳には行かない。乱、シャルル、一夏の指導役を出来るか?」

 

俺の知っている代表候補生は全員無理なので、ここに居る代表候補生に聞いてみるのだが、芳しくない答えが返って来た。

 

「鈴おねえちゃんに恨まれるからやらないわよ」

 

「僕も出来ないかな。転入したばかりで色々やる事があるし」

 

「二人ともありがとう。そう言う訳だ。鈴、一夏の事頼むな」

 

「司に頼まれたんだから仕方ないわね。まあ、私の実力を考えれば当然なんだけどね!」

 

選択肢がこの二人だけって言われると選びようが無いのだ。後は指導方法を見て、駄目なら他の人に頼むと鈴にはあらかじめ断っているから問題は無い。教えられる人間を確保出来るかと言う別の問題が出て来るが。

 

「私の方が一夏の太刀筋を分かってるし、癖だって分かる。司は鈴の指導方法だって知らないだろう!」

 

理由をきちんと話したのに、篠ノ之はまだ納得しなのか……ここから先は篠ノ之にとってはキツイ事を言わないといけないから、出来れば避けたかったんだけどなぁ。

 

「じゃあ束さんに連絡を取るか? 篠ノ之が頼んだって知れば、直ぐにISを送って来る筈だぞ。

それに鈴の指導方法は知らないけど、篠ノ之はこの件に関しては問題外だって事を理解してるのか? ISを持って無い、この学園に来るまでISに触った事が無い、ISに関する実績が無い。これで一夏の指導役になれるって何で考えられる? 剣道じゃない、ISの扱い方の指導をするんだぞ」

 

上手いとか下手とか以前に、最低限の前提条件を篠ノ之は満たしていないのだ。ISの訓練は一夏にとっては急務なのに、この二人はその事を全く気にしていない。

男性IS搭乗者である事が分かった以上は、否が応でもその世界で生きて行くことを強制される。一夏の専用機は一夏自身をを守る為の物でもあるのに、どちらが教えるかで揉めるなんて論外だ。

 

それと、俺は近くで昼食を取っていた美夜を呼んで来て、この二人に足りないものを見せ付けた。

 

「なに? 今日は頼まれ事があるから、一緒に食べられないって言ってたのに」

 

「美夜、愛してる」

 

「うん。私も司の事愛してるけど、どうしたの?」

 

「この二人に足りないものを提示したんだ。呼び出して悪かったな」

 

篠ノ之と鈴を見て事情が分かったらしくて美夜は苦笑していたが、二人は俺と美夜を見て黙ってしまった。一緒に訓練して、その内一夏と……なんて考えているんだろうが、あいつの人気を考えれば、悠長な事などしている暇など無い筈なのに。

 

「別に意地張ってるのも理想を夢見るのも良いけどさ、人間って言葉にしないと伝わらないぞ。後で後悔しないようにな」

 

忠告のつもりで俺は二人言って、美夜もそれ聞いて肯いている。偉そうで全然俺らしくは無いと思うけど、篠ノ之には幸せになってもらいたいし、鈴は友人なので一応言っておいた。篠ノ之も鈴も人の話を聞かないから、どれだけ効果があるかは不明だけど。

その後美夜が要件が終わったので、セシリアと簪が居る席に戻ろうとしたら、今度は乱とシャルルが呼び止めていた。

 

「待って! 司と美夜が両方いるんだったら私の話を聞いて!」

「司も美夜さんも僕の話を聞いて! お願いします!」

 

「あのな、昨日お前らがした事を、俺はまだ許して無いんだぞ? ……簪が許すまで謝ってこい。それで許すから」

 

二人に対してそうは言ったが、結局お仕置きのネタは思い浮かばなかったし、友人相手に酷い事もしたくないので無難な線で納める事にする。

俺の話を推測はしていたのか聞いたら直ぐに簪の所に行って、恥も外聞も無くペコペコしていたので簪はすぐに許した。注目されている男性IS搭乗者に頭を下げられて、凄く居心地悪そうにしてたのだが。

 

***

 

「そう言う訳で台湾に来て下さい。お願いします」

「フランスに来て下さい。最大限の望みは叶えますから」

 

「ごめんなさい、無理です」

「司が嫌って言ってるから、私も嫌かな。ごめんね」

 

二秒で二人の要件は終わった。二人共絶望的な表情を浮かべているが、正直に言って選択肢としては微妙だからなぁ……セシリアが言って来た時には真剣に考えていたが、それは俺がセシリアを信用しているからだし。

 

「理由を教えてよ! 詳しい話を言う前に断られたら、条件も出せないから!! フランスは食べ物だっておいしいし、綺麗で住みやすいよ!! 田舎の方はだけどだからおいでよ!!」

 

「台湾だっていい所なんだから! 話も聞かないで断らないでよ!!」

 

「理由って言われると、フランスはイギリスより魅力が無いから。セシリアの事を信用してて、イギリスと協定まで結んでるのに、欧州連合のライバルの所になんか行けないよ。

台湾は俺を守れる力が無さそうだから。日本もそうだけど、中国に強く言われたら身柄を差し出されそうで嫌だ」

 

乱もシャルルも国家代表候補生だから自分の国が大事だと言うのは分かるのだけど、俺は周りの近しい人が大事だし、そう言う人を守りたいのと同時に自分の事を守ろうとすると、今の所イギリス一択なのだ。

 

「俺は大切な人と大切にしたい人を守る為に力を使う事にしてるから、その延長線上でしか国に所属する気はないよ」

 

そう言って、食事が終わったらしい三人(美夜、セシリア、簪)と一緒に食堂を出た。

 

「司さん、よろしいのですか? 今の話だと、わたくしの国に来て下さると言っている様なものなのですが……」

 

「セシリアの事を信用してるからな。後は束さんの所で放浪しながら、研究の手伝いくらいしか考えて無いし」

 

セシリアはそれを聞いて、機嫌良さそうにしながら俺の隣を歩いていた。反対には簪が困り顔をしながら歩いていて、美夜は俺たちを見ながら嬉しそうにしていた。

 

その日もわびおねを済ませて部屋に帰り、このまま平穏に過ごせると思っていたら、次の日に嵐がやって来た。

 

つまり、司の大切にしたい人枠に入ればいい訳よね……おはよう司、これからよろしくね!」

 

元気な乱が、部屋の前で待っていたのだ。

 

***

 

ハイロゥ:本来はスピリットが戦闘態勢に入ると現れる現象で、司と美夜は”宿命”に授けられた。戦闘を行う時に、周囲のマナを利用して神剣魔法を使ったり、筋力を強化して神剣を振るう事をする為、その身体を瞬間瞬間で再構成します。

呼吸をするようにマナを体に吸収させてエーテル化して、マナ化を繰り返してパワーを上げる時のインターフェイスの役割を果たしています。

司と美夜はエターナルなのに、ハイロゥと束さん謹製のISを持っている為に、同クラスのエターナルの数倍の能力を持っています。

 

オーラフォトン:強力な神剣を使う時に現れる現象です。その世界における空間に神剣が介入している証でもあります。空間に入ったヒビみたいな物で、そのヒビから神剣の力が漏れ出して発光して見えるのです。

オーラフォトンは指向性を持たせることが出来、高速で射出して攻撃に使用したり、その場で停滞させて回転運動をさせれば、あらゆる力を逸らして防御に使う事も可能です。

これに関しては、司の方が扱うのは上手いです。ただし、美夜も並みのエターナル以上の事は出来るのですが。

 

 

 

 

 

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