901分枝系統 80013世界 02795726時間断面 ISの世界 【改定作業中/第一章完結】 作:白鮭
乱音Side
鈴おねえちゃんと合流して学園に行く途中、デートしているカップルに遭遇したと思ったらターゲットだった。
最初の出会いの時のやり取りは黒歴史扱いなので、黙っていて欲しいと美夜に言われたので黙っていよう。見た目が儚げな美人さんなのにギャップが酷いけど、すぐに仲良くなった。
彼氏の方は聖司、施設出身なので苗字が一緒だそうだ。美夜が強調していたから言っておく。
司は積極的に私たちに関わらないので内心で焦っていたら、司は人見知りする上に女の子が苦手で、初対面の子には絶対に近づかないとか美夜が言って来た。劉さんにそんな事聞いて無いんですけど!?
取り敢えず声をかけないと始まらないので声をかけたのだけど、やっぱり近寄ってくれない。困っていたら美夜が強引に連れて来てくれた。
「美夜、俺はこう言うのは苦手なんだけど」
「知ってる。でも慣れないとダメだから」
結構美夜ってスパルタらしいんだと思ってたら、美夜がとんでもない事を言いだした。篠ノ之博士に迫られて、デレデレしてたって……こんな美人を侍らしておいて、何が不満だって言うのよ!? 美夜と鈴おねえちゃんとの話し合いの結果、制裁を科すことにした。
「容疑者は二股をかけた。死刑」
「冤罪だ!? 確かに束さんは、俺にくっついてたけど……多分、俺に興味があったんだと思う」
篠ノ之博士が興味を持つって言う意味が分かっているんだろうか? その後篠ノ之博士の所で起こった出来事を教えてもらったけど、重要情報があからさまに抜けていると分かっていても、とてつもない貴重な情報だった。
その中でも特に驚いたのが、篠ノ之博士が二人に供給したISが第四世代機だと言う事。私は事前情報を聞いていても判断出来なかったけど、それずら怠っていたらしい鈴おねえちゃんは、司が嘘を言ったと決め付けて突っかかった。
結果は惨敗。多分司を脅すつもりだったんだろうけど、鈴おねえちゃんは一瞬で返り討ちにあって精神攻撃まで受けていた。
甲龍の装備を一瞬で破壊したISも、不意打ちだったはずなのに、超反応で鈴おねえちゃんを返り討ちにしたその腕前も、目の前であった事なのに信じられない。司はこの学園で最強の存在なのかもしれないと思う。
***
学園に来て司の情報を集めているうちに、予想外の事が多くて私は焦ってしまった。ライバルが多すぎるのだ。基本的に小国ほど国費での留学が多くなるが、その代わりに国の思惑に左右されてしまう。私もそうだし。
昨日友達になったんだからと教室に行ってみれば、すでに司と交渉する予定の人間が四組の予約があると、胸のデカい女と話している最中だった。わびおねってなによ! 思いっきり出遅れている事に危機感が増幅される。
お昼におねえちゃんが一夏たちを待つと言っているので、それまで司と美夜についての話を聞いて回る。ふむふむ、国への所属については美夜は司に全部任せるのか。後、特定のクラスを特別扱いして、その代わりに女の子から守ってもらってるかぁ。わびおねもその一環で、厳格に適用しているから割り込めないって他のクラスの子がボヤいていた。
これは本人に頼むのはダメな奴だ、周りから攻めよう。
フランスから代表候補生のシャルルって男も転入してきたみたい。
朝の件で一夏に怒っていたら、司が一夏に対して文句を言ってくれて、一夏が私に謝った。ふーん、司って気が利くし、友達の一夏を庇ってるし良い奴だなって思った。
後、一夏は鈍感でその対処とフォローに司が関わっているのか。顔が良くてISを使うのが上手くて友達想いか。人見知りはするけど、その人に慣れれば対応は出来るみたい……無意識に一歩引いたりしてるけど。
お昼に司に会った後で独自に情報を集めて回っていると、私たちと同じ日に転入してきた男が話しかけて来た。フランス代表候補生のシャルル・デュノア。
「ちょっと話があるんだけど、良い?」
この男は私のライバルだけど、現状手がかりが無い状態だ。どうにか協力出来ないかと声をかけてみる。
「なに? えっと……」
「凰乱音、乱で良いわ。私もあなたの事をシャルルって呼ぶから」
シャルルがこっちを警戒しながら見ている。まあ、あの対応じゃ私の用事も分かるか。
「僕は男で同じクラスだから、乱には手を貸さないよ。ライバルが多すぎて困ってるのに、敵に塩を送る余裕なんて無いから」
「情報交換とかは? あなた男だから困ってるでしょ?」
苦手だけど、表情を変えないようにがんばる。シャルルは素直みたいだ、露骨に顔に困ってるって書いてあるし。
「分かった、良いよ」
私は学園から集めた情報、シャルルは一組から集めた情報を交換したけど……
「シャルルの情報少なすぎ。男だからってさぼってるなら、司と美夜は台湾に連れて帰るから」
「女の子からの情報だからあっちこっちに飛んで、司と美夜さんだけの話が聞けないんだよ。美夜さんの話を聞くと変な想像し始めるし。嫌われたら終わりなのに、手を出すわけ無いじゃないか。僕の事を露骨に誘惑してくるし。もう、嫌になるよ」
私は疲れたようにボヤくシャルルの事を見ながら、次の手を考える。寮の部屋の情報もあったからこれで……同室になれば上手く行くかな? 想像してちょっとだけ頬が赤くなる。
「シャルルはどうするの?」
「司と同じ部屋になれば解決する問題だから、織斑先生の所に行ってくるよ。情報ありがとうね」
そう言って、イイ笑顔でこっちに手を振っている……え?
「ちょっズルい!!」
「男の特権だから。乱は騙されやすいけどがんばって」
そう言って去っていった。え、騙されたのって私の方!?
「シャルルのサイレンダー・モンキー、ばかー!!」
「今回勝ったのは僕の方だから、その言葉は当て嵌まらないかな? 後は乱は女の子なんだから、そんな汚い言葉を叫ばない方が良いよ」
こっちを振り向いて、余裕の表情でそう言った。何か気が抜けてしまって、授業が終わったらとぼとぼ寮に帰ってきたら、しょんぼりしたシャルルに遭遇した。
「何よ、私に勝ったんだから司の所に行けばいいじゃない。こんな所でなにやってるのよ」
「織斑先生が、僕の同室は一夏だって。司の所は調べてたけど、一夏については何も調べて無かったから休憩だよ」
そう言ったっきり、シャルルは空を見ながら落ち込んでいた。ライバルが上手く行かないのを喜ぶべきなのかもしれないけど、私も苦労しているからそんな気持ちにはなれなかった。まあ、ライバルがこんなのだと張り合いが無いから、助けてあげるか。
「フランスってそんなに困ってるの? コアだって確か十個くらいあったはずだし……ああ、欧州連合の防衛計画から除名されてるからか。どこも世知辛いわね。良いわ、一夏の部屋はこっよ。ついてらっしゃい。昨日おねえちゃんが調べてたから知ってるし、連れてってあげるわよ」
「いや、場所が分からないわけじ……うん、よろしくね」
私はそう言いながら、シャルルを連れて一緒に一夏の部屋に行ってあげた。
***
何か部屋の中で騒いでいるらしい、かすかに音が漏れている。
「着いたわよ、ここだから。じゃあ一夏と仲良くね」
「うん、乱もありがとう。でも、負けないから」
そう言ってノックして部屋に入っていったけど、すぐに私の腕をシャルルが掴んだ。
「何よ?」
「乱のおねえさんが部屋で暴れてる、どうにかしてよ!」
シャルルと一緒にコッソリ覗いてみると、おねえちゃんと箒が言い争いをしていた。最初は箒が全然相手にしないであしらっていたのだが、しだいに一夏を巻き込んでエキサイトして行き、おねえちゃんが一夏をひっぱたいた所で、私たちはそっと扉を閉じた。
「がんばれ男子、あそこに割り込むのは私は嫌」
「僕だって嫌だよ!」
「でも、シャルルが男で良かったじゃない、話せば多分分かってくれるわよ。これでもし女だったら、あの二人に八つ裂きにされるんじゃないの?」
「ハハハ、ソウダヨネ。オトコデヨカッタヨ」
? 何か眼が虚ろだし、乾いた笑みを浮かべているけど、あそこに突っ込めって言われたらそうなるか。
「私は司の部屋に行くから。交渉相手の下見くらい済ませてこないと」
「僕も行くから」
「え?」
「僕も行く」
「……うん」
そんなにあそこに突入するのが嫌か。
***
司の部屋に行ってノックをしたら、出て来たのは気の弱そうなメガネっ子だった。う~ん、こういうタイプって不満を貯め込むから、突っついたら部屋を替えてくれるかな?
そう思って少しづつ話していたんだけど、だんだん普通に話して行く内にシャルルが焦りだした。シャルルの事をメガネっ子が不審そうに見ていて、思いっきり避けているからだと思う。
「更識さんも男が同室なんて嫌なんじゃないかなって? 気を遣うし司だって女の子苦手だし。だから僕と部屋を変わらない?」
「そうそう。司って優しそうに見えて結構おおざっぱみたいだし、気苦労が絶えないかなって。私が変わってあげるわよ?」
「……司さんは優しいです……悪口言うの止めて下さい……」
私はこの辺で引こうと思った。司には彼女もいるし、学校側の都合でこの子の相部屋になったのだとしても、結構仲良くやっているみたいだし。
この子と後で友達になって話も聞きたいから、焦る必要なんて全然無い。だけど、そう思っていたのは私だけであって、あの修羅場に叩き込まれる瀬戸際のシャルルは、私とは全然別の考えを持っていたみたいだった。
「女の子と男が同じ部屋なんておかしいよ! 司だって若いし、男だし……こう、色々あるかも知れないじゃないか! 更識さん可愛いんだから、もっと危機感を持たなきゃダメだよ!!」
いきなりシャルルが司の事を危険人物扱いしだした。私もいきなり何言ってんだシャルルは!? と思って思考が停止してしまったのだけど、言い訳する前に目の前の子が激怒し始めた。
「司さんの事を何も知らない癖にナイト気取りですか? フランス人男性ってよっぽど暇みたいですけど、私は忙しいんです。帰って下さい……これ以上ここに居るんだって言うなら、呼び出されて襲われたって言いますよ?」
シャルルの余計な言葉で、部屋にいたメガネっ子の様子が一変した。さっきまでの大人しそうな感じが跡形も無くなって、空気が重く底冷えする様な雰囲気を出しながらシャルルを睨み付けてるし。
代表候補が喧嘩を売って血を見る事態になると、どうしたって今の状況を説明しないと収まらない。この子もシャルルもタダでは済まないと思って止めようと思ったら、司が来て喧嘩を止めてくれた。
それは良いんだけど、司がシャルルの考えを間違っていないと言い出したら、女の子が話を遮って司を部屋に引っ張り込んで鍵を掛けてしまう……その態度で、あの子が司の事をどう思っているかが分かってしまった。
「あんた、馬に蹴られて死ぬんじゃないの?」
シャルルを見ながら呆れてしまう。もっとこの男に対して私は怒っても良いと思うんだけど、血の気が引いて呆然とした表情のこいつを見て、怒りが失せてしまった。
「私は明日にでも司に許してもいに行くから。あんまりデリカシーの無い事ばっかり言ってると、この先辛くなるわよ」
ここは女子高みたいな物なのに女の子に気を使えないとか、いくら顔が良くてもダメだと思う。忠告と言うか、お節介で言った事なのだけど、その返事が予想外の事だった。
「……やっぱり、男に変装してIS学園に潜り込むなんて無理だったんだよ。僕だってこんな事はしたくなかったのに……」
そう言いながらすすり泣きをし始めたシャルルを見て、私は厄介事に巻き込まれた事に気が付いたのだった。
乱音Side out