901分枝系統 80013世界 02795726時間断面 ISの世界 【改定作業中/第一章完結】 作:白鮭
「宿命、ここで最後か? まさかこんな辺鄙な分枝世界で、こんな技術が出来上がっているとは思わなかった。潰して早く姉さんの所に帰ろう」
そう言ってこちらに鋭い視線を向けるイケメンが一人。この白い空間自体が軋みを上げてすさまじい音を出している所に、無造作に長柄の斧を振り下ろしてきた。
「待ってくださいトークォ、この二人には利用価値があります」
何処から声を出しているのか分からないが、頭の中に直接染み込むような声? で指輪が言うと、振り下した長柄の斧が目の前で止まった。
***
これまでの経緯を話すとイケメンは胡散臭そうにこちらを見つめ、指輪は興味深そうに話を聞いていた。
「緊急事態だった為に、分枝世界を潰してしまったのは勿体無かったかも知れません。上位永遠神剣との契約に外部から介入する技術など聞いた事がありませんし、この女はそれを知る最後の手がかりです」
指輪がそう言って空中に留まっているが、イケメンはそれを聞いて静かにたたずんでいる。
何か考えながらイケメンはフードさんを見つめ、俺はその前に立った。
どうやったって勝ち目はないけど、怖いけどフードさんを守るために前にでる。
「……こっちの男は? バカな望みのために世界を一つ潰すとは、テムオリンあたりなら喜びそうだがな」
イケメンはにこちらを見つめている、ああ、俺に価値を見出していないのか。
俺だって、こんな事になるとは思わなかったよ。
「ほぼ全ての点でミューギィより劣っていますが、ただ一つシンクロ率で優っています。
歴代の契約者の中で彼が最上位ですね……。カオス・エターナルが”聖賢者”ユウトと”永遠”のアセリアと言う戦力を手に入れて、テムオリンは”統べし聖剣”のシュンを手に入れました。不穏な状況です。戦力の拡充に彼を使うべきです」
イケメンが俺とフードさんを見ながら、渋々了承したみたいだった。
「分かった、しかし上位永遠神剣が二振りだぞ。テムオリンなら三位の神剣を集めていた筈だが、今の時点でバレるのは不味い。どうするつもりだ宿命」
「見ていれば分かりますよ、トークォ。たしか名前は司で良いのでしたね。今から少しあなたの記憶をサルベージします、そのまま立っていてください」
そう言って空中に留まっている指輪、宿命を見ているのだが一向に始まらない。
何かしているのだろうか? 全然分からないのだけど。
そう思って立っていると、イケメンは驚いている様だった。
「何ともないのか。上位永遠神剣に精神支配をかけられているのに」
は? ……なんかすごい事言われてるんですが!?
「……シンクロ率が高すぎて精神に介入出来ません。こんな人間初めて見ました。
司、望みを言って下さい。私との契約は出来ませんが、あなた用の永遠神剣を今から作ります」
永遠神剣ってそんなにすぐに作れるなんて話は聞いた事無がいのだけど、指輪――宿命を見ながら必死に考える。
いくら強くて時間がかかりそうだからって、ロウ・エターナルのトップの持っている永遠神剣と契約しようなどと軽く考えなければ良かった。まさかエターナルがこの世界に本当にいるとは思わなかったんだよ!
「あの、色々疑問に思うことがあるんですけど聞いても良いですか?」
そんな事を思いながら、考える時間を稼ぐために指輪とイケメンに質問をする事にしたのだった。
***
「自己紹介ですか? 私は司に呼び出されたのですが……。私は、永遠神剣第一位・”宿命”です。今の契約者はミューギィ、私はあなたと契約する気はありませんよ?」
そんなに警戒しないでも、無理矢理契約なんてしないし出来ません。
あなたの方が圧倒的に立場が上なんですから。
「僕もか。僕はトークォ、”虚空の拡散”トークォ。契約している神剣は永遠神剣第二位・”虚空”だ。カオス・エターナルからの攻撃かと思ったが、まさかこんな間抜けな理由だとは思わなかったよ」
うう、すみません。俺だってこんなことになるとは思わなかったのです。
「私は……」
とフードさん。少し考えた後こう言った。
「名前はありません。人間達には女神様とか神様とか呼ばれていましたが、あくまで転生のシステムを管理運営するだけの存在でしかないのです。宿命さんは技術を持っているだろうと考えているようですが、今は全てのシステムにアクセス出来ません」
宿命はフードさんに話を聞いて、残念そうにしていた。
「厳重に隠された領域だったから何か大切な物でも仕舞ってあると思ったのだけど、マナを保管する為の金庫だったのね。で、そこに誤って司が仕舞い込まれてあなたが探しに来ている時に色々あって、ここ以外の分枝世界はマナに帰った、と」
宿命がフードさんの方にゆっくりと漂って行く。ただし、視線のようなものを俺に向けている様だ。これ、見透かされてるよな。
「あなた、ここを出たら消滅するけど何か出来る事はある? 司は役に立ちそうだから貰っておいてあげるけど、私は名前も無いお人形に興味は無いの。なければ……」
「宿命、俺の望みは彼女を助けることだ。そうすればロウ・エターナルに成る」
宿命がこちらに近づいて来る。殺気というのだろうか、全身から冷や汗がふき出してきて、その場に石になったように硬直する。言葉を一つでも間違ったら殺されるだろう。
「良いの? さっき覗いた時には、このまま消える事を望んでいたのに。あなたは有用そうだけど、逆らったり言う事を聞かなかったりしたら困るの。それを理解しているなら望みを叶えてあげる」
宿命は機嫌良さそうに俺の前を漂っている。どうやら俺は戦力的に結構有望らしい。
「彼女に名前を付けなさい、それをもって契約は完了する。そして、これを手に取りなさい」
今、この瞬間に作り出したのだろうか。空中に浮かんでいる物は、一つは黄金に輝く杯。そして、もう一つは漆黒の大剣?
「あなたを覗いた時に、私と似たような権能を持った伝説があったからそれを真似たの。永遠神剣第二位・”聖杯”」
フードさんも自分に与えられたらしい漆黒の大剣を手に取って、興味深そうに見つめているみたいだ。
「この子が、私の名前は永遠神剣第三位・”絶炎”だって言ってます」
フードさんの契約に満足したのか、機嫌良さそうに宿命が俺の目の前に浮かび上がって来た。
「絶炎も彼女を認めたみたいよ。それで、彼女の名前は?」
俺は目を閉じた後、少し考えてからゆっくりとここにいる全員を見た。
「彼女の名前は、
そして俺も美夜に続いて黄金の杯を手に取ると、白く輝くエンジェルハイロゥと背中から宙に浮いている、同じく白く輝くウイングハイロゥが顕現した。
空中に独立して浮いている特徴的な翼はブルー・スピリットの持つ物で、少なくとも人間が持っている物じゃない。
驚きつつもぎこちなく翼を動かしていると、フードさんもローブを脱いで身体を見ながら戸惑っている様だった。
ふくらはぎくらいまである、艶のある長く美しい濃い藍色の髪と、真紅の瞳と白い肌。
優しそうと言うか、儚い様な雰囲気の物凄い美少女で、身に着けている服は黒い膝丈のドレスのような服と甲冑が組み合わさったような感じのドレスアーマーで、胸元にはワンポイントで赤いネクタイを締めている。
そして、頭に黒いナースキャップの様な帽子を身に着けており、その上で黒く輝くエンジェルハイロゥと黒く輝くウイングハイロゥが背中から宙に浮かんでいるのだ。
後、おっぱい大きい。
宿命は俺たちが戸惑っているのを見ながら、機嫌良さそうにクスクス笑っている様だった。
「エンジェルハイロゥとウイングハイロゥはサービスよ。司の記憶を覗いたらISの世界に行くみたいだし、飛べる手段は必要でしょ? それと直ぐに行くのではなく、ここで修業をしていきなさい。
それと、教師役にはトークォに頼みましょう。この場所は見つかりにくくてマナが豊富だし、元の場所より安全みたいね。ミューギィもここに連れてきましょう。トークォ?」
トークォの方を見ると、ずっと涼しげな顔をしていたはずなのに、美夜を見て愕然とした表情を浮かべていた。
俺はトークォの表情を見ながら、不安を押し殺してこれからの先行きについて思いを馳せる。
バカな理由で死んで、バカな理由で世界を滅ぼし、そして、長い長い旅に出ることになった。
バカな俺こと”聖杯”の司と、こんな俺に優しくしてくれたばっかりに、とてつもない苦労をかけることになった”絶炎”の美夜との、これが最初の出会いだった。